BPOへ審議要望書を提出~NHKの瑕疵ある辺野古報道を正すために97名の連名で~

2015422

 4月20日、全国各地で活動している、NHKなどメディアの放送のあり方を考える市民団体の有志とメディア研究者など97名が連名で、放送倫理・番組向上機構(BPO)に対し、
   「辺野古の米軍基地建設に関するNHKの報道の不公平と
    不作為を正すための審議を求める要望書」
を提出した。私もこの要望書の提出者の連名に加わった。要望書の全文は次のとおりである。
 審議要望書全文
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/bpo_henokohodo_yobosho.pdf
また、次のような添付資料2点もあわせて提出した。
 添付資料1 「辺野古新基地建設をめぐる動き」(年表)
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/nenpyo_henoko.pdf
 添付資料2 「参照番組・記事・論説一覧」
 
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/sansho_kizi_bangumi_henoko.pdf

 要望書は4点にわたって、辺野古の米軍基地建設に関するNHKの報道の瑕疵を指摘しているが、要旨は次のとおりである。

審議要望書の要旨
1)基地建設に反対する沖縄の民意を伝えない瑕疵  
 本年1月以降再開された辺野古沖基地建設の準備作業に対して、翁長沖縄県知事だけでなく、沖縄県選出の超党派の国会議員、沖縄県議会、名護市議会、那覇市議会等が工事の中断・中止を求める決議を採択した事実(詳細は添付資料1〔年表〕を参照いただきたい)をNHKはまったく伝えなかった。
 また、321日、名護市瀬嵩の浜で開かれた辺野古新基地建設に反対する集会には県内外から3,900人が参加(主催者発表)、あいさつした安慶田県副知事は「知事が近いうちに最大の決断をする時期が来ると思う」と発言した。全国紙とともに、「テレビ朝日」、「日本テレビ」はその日のニュースで集会の模様を単独項目で伝えた。しかしNHKは沖縄放送局が当日、「移設計画反対の大規模集会」という見出しで伝えるにとどまり、全国ニュースでは、4日後の325日のニュースウオッチ9で、多くの話題の一コマとして約30秒、集会の模様を紹介するにとどまった。

2)海上保安庁、沖縄防衛局の「過剰警備」の実態を伝えない不作為
 海上保安庁、沖縄防衛局は基地建設に抗議行動を続ける地元市民やそれを取材した報道関係者に対し、「警備」に名を借りた暴力・威嚇行為を繰り返してきた(添付資料2を参照)。その実態はメディアの映像に収められており、全国紙も大きな紙面を割いて過剰「警備」の実態を報道した。
 しかし、NHKは、222日に2人の市民が米軍に拘束され、沖縄県警に逮捕される事件を伝えたのみで、過剰「警備」の実態も、市民、地元首長・議会、沖縄県選出国会議員がこれに厳重に抗議した事実もまったく伝えなかった。

3)翁長知事と政府との対話をめぐる事実経過をゆがめた不公平な報道
 翁長知事は昨年末以降、知事就任のあいさつ、新年度沖縄振興予算ならびに辺野古基地建設反対の要望を政府に伝えるためたびたび上京し、安倍首相、菅官房長官、中谷防衛相らとの面会を要請した。しかし政府関係者はその都度、「知事の上京を知らなかった」、「面会の申し入れはなかった」などとかわし、面会は45日まで実現しなかった。
 ところがNHKは翁長知事に対する政府の冷遇ぶりは一切伝えない一方、324日になって、中谷防衛相が閣議後の記者会見で沖縄県側との対話の姿勢を打ち出すと、一転、これをその日の定時の全国ニュース(324日、正午のニュース、2330分からのNEWS WEB)で伝えた。同じく中谷防衛相が327日の閣議後の記者会見で翁長知事と面会し理解を求めていきたいと発言したことも、その日の定時の全国ニュース(NHKNEWS WEB投稿時刻、1023分)で伝えた。
 さらに、NHK326日、菅官房長官が「そんなに遠くないうちに機会があったら〔翁長知事と〕お会いしたい」と語ったことも、その日の定時の全国ニュース(NEWS WEB, 2330分~)で伝えた。
 
しかし、中谷防衛相は上記の発言に先立つ313日の記者会見で「〔翁長知事に〕こちらから会う考えはない。より対立を深めるなら会っても意味がない」(「時事通信」313日、1216分)と発言した。この防衛相発言は地元紙から厳しい批判・ひんしゅくを浴びたほか、全国紙や在京テレビキー局もその日のニュースで大きく伝えたが、NHKは一切、報道しなかった。
 つまり、NHKの報道は、昨年の各種選挙で示された沖縄県民の基地建設反対の民意を政府に伝えようとする翁長知事の面会要請に背を向けた政府の対応は伝えず、「いずれ機会があれば」という政府の断り付きの発言であってもそれを大きく伝えた。
 また、325日のニュースウオッチ9では、翁長知事、菅官房長官との単独インタビューを終えた大越キャスターの感想という形で、「接点がなかなか見えない中、対話の必要性では政治家どうしの意見は重なるところがありました」という発言を放送した。
 しかし、中立、等距離をよそおった、このような伝え方は対話を要請し続けたのは誰で、それを拒み続けたのは誰かをあいまいにし、政府も対話に前向きの姿勢であったかのような印象を視聴者に与えるゆがんだ放送と言って過言でない。
 こうした報道のあり方は、「ニュースは、事実を客観的に取り扱い、ゆがめたり、隠したり・・・・しない」という「NHK国内番組基準」第2章第52の定めに反している。

4)「発表報道」への偏向、その裏返しとしての課題設定の役割の放棄
 
近年、報道の重要な使命の1つとして「課題設定機能」(日々の報道におけるニュースの選択・提示行為を通じて、いま何が重要な課題であるかを報道の受け手の知覚に働きかける機能)が重視されている。この点からNHKの辺野古基地建設に関する報道番組を検討すると、政府首脳の記者会見での定番の発言(「粛々と工事を進める」など)を論評抜きで伝える「発表報道」が大半である。
 その結果、辺野古での基地建設をめぐって焦点となっている次のような論点がまったくといってよいほど俎上に乗せられず、視聴者が必要とする判断材料が提供されないばかりか、政府が意識的に喧伝するゆがんだ争点が咀嚼されないまま視聴者に伝えられるという「国策」報道に変質してしまっている。
 本来、辺野古基地問題をめぐって、NHKに求められるのは、
 ①辺野古への移設が果たして沖縄の基地負担の軽減につながる
  のか?
 ②沖縄に駐留する米軍(海兵隊)にどのような「抑止力」があ
  るのか? 「抑止力」を認めたとしても沖縄に駐留すること
  が必然なのか? 軍事力に依存した「抑止力」は「戦争の脅
  威」に対する真の抑止力になるのか?
という課題を設定し、それぞれの課題について国民が理性的な判断をするのに必要な情報を提供することである。

 このうち、①の課題を報道するにあたっては、「辺野古への移設」という側面だけでなく、辺野古での基地建設には「軍港の機能」が付け加えられているという指摘(注6、米軍北部訓練場の一部返還に先立って、東村高江集落近辺にヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設用の土地を提供することが閣議決定され、すでにオスプレイの飛行訓練が激化している事実、伊江島で米軍の最新鋭ステルス戦闘機(F35B)の配備・訓練が計画され、伊江村議会は320日、計画の即時中止を求める決議と意見書を全会一致で可決した事実など、沖縄全域での米軍再編の動きを調査した上での報道が不可欠である。
 
また、②の課題を報道するにあたっては、沖縄に駐留する海兵隊はどのような任務を負い、どのような活動をしてきたのかを調査の上、報道する「調査・取材報道」が不可欠である。
 ところがNHKは、この間、「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」などで辺野古基地建設の動きはもとより、沖縄における米軍基地再編の動きをテーマにした番組を一度も企画しなかった。
 「放送法」(第4条第1項第4号)は、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を求めているが、NHKの報道は政府発表をそのまま伝える「発表報道」に終始している。その結果、独自の調査・取材を通じて沖縄での基地建設の実態を多角的に伝えるという点でも、政府が強調する基地負担の軽減の真偽を判断する材料を国民に提供するという点でも、著しく瑕疵のある報道になっている。これは報道番組の質の面でも由々しい問題である。

 私たちは、以上指摘したNHKの辺野古基地建設をめぐる報道の瑕疵について貴機構が「放送法」等の精神に則って慎重に審議し、NHKの報道の政治的不公平、不作為を正すとともに番組の質の向上を促す措置(意見表明、勧告等)を講じてくださるよう、要望する。

 
「もっと届け 大切なこと」
 
~誰に向かって言うセリフか?~
 
 今朝の報道によると、「クローズアップ現代」(「出家詐欺」)に「やらせ」があったとして、番組に出演した人物がBPOに申し立てをしたとのことである。そのような疑惑が提起された以上、BPOはもとより、NHKは番組に対する視聴者の信頼を裏切る「やらせ」があったのかどうか、徹底究明するのは当然である。
 しかし、沖縄の基地問題、憲法「改正」、安全保障の法整備、秘密保護法の法整備、TPP交渉、労働法制の見直しなど、国政の重要課題をめぐる今のNHKの報道を見ていると、論評抜きの「薄味報道」、官邸のプレス・リリースと大差のない「発表報道」が大半である。
 これでは、NHK19時のニュースの直前に流す「もっと届け 大切なこと」というフレーズは誰に向かっていうセリフなのかと失笑してしまう。
 BPOも世間の耳目を集める話題の審議ばかりに追われるのではなく、報道機関がその根幹的使命――国政をめぐる重要問題について、理性ある判断に資する材料を国民に提供するという使命――を果たせているのかどうかについて、真正面から取り組むよう、求めたい。

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官邸、事前の約束に反し、翁長知事の発言の公開を途中打ち切り

2015419

突然、「はい、報道は退出」

  
4
17日に首相官邸で安倍晋三首相と沖縄の翁長雄志知事の初の会談が行われた。そのうち、両者の冒頭発言の模様が当日のテレビ・ニュースで映像入りで伝えられた。しかし、そのうち、翁長知事の発言は伝えられたのがすべてではなかったことが明らかになった。
 官邸と沖縄県側の事前の打ち合わせでは、沖縄県側が会談のすべてを公開するよう求めたが、調整の結果、双方の5分ずつの冒頭発言を報道陣に公開することになったという。ところが、当日、安倍首相の発言(250秒)に続いて、翁長知事が発言を始めて313秒が経過したところで、突然、官邸スタッフが「報道、退出」と指示、以後の翁長知事の発言は非公開になってしまったというのだ。
 私が知る限り、NHKも民放全国キー局もこのような事情に一切触れなかったが、沖縄の2紙はこの点をはっきり伝えている。

 「知事発言が突然非公開に 官邸が3分で打ち切る」
 (『沖縄タイムス プラス』2015418 07:18
  http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=112125
 
(以下、記事からの抜粋)

 「翁長雄志知事と安倍晋三首相の初会談で、官邸側は沖縄県側と約束した知事の冒頭5分の発言時間を打ち切る形で切り上げ、知事の発言途中で報道陣を退室させた。県側は事前に5分ずつと約束しており「あれはルール違反」(県幹部)と不満の声も出ている。
 報道陣に公開された会談冒頭は約6分。・・・・知事が発言メモ4枚のうち2枚目を読み上げたところで、官邸スタッフが「報道、退室」と指示。公開された知事の発言時間は313秒だった。
 県幹部によると、会談の事前調整で県は会談を全部公開するよう求めたが、調整の上、会談は30分で冒頭5分ずつの発言を公開すると約束。発言順は知事が先だったが、17日朝に官邸側が「総理から」と変更を申し入れ、発言時間は「5分ですよ」と念押しがあったという。 ・・・・・
 発言を事実上阻まれた格好になった知事は会談後、非公開になった発言内容を記者団に紹介、発言メモも報道各社に配るよう県職員へ指示した。辺野古新基地反対の知事メッセージを警戒し、メディアに「画」を撮られないよう官邸側が意識したのではないかとの指摘も上がっている。」

 『琉球新報』は18日の紙面で、双方の冒頭発言の全文を掲載し、翁長知事の発言の途中で、「はい、報道は退室-と官邸スタッフが打ち切る」という説明書きを挿入したうえで、「非公開部分」と断って、それ以降の翁長知事の発言も掲載した。

 翁長知事・安倍首相会談全文(冒頭発言)
 (『琉球新報』2015418 07:00
  http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=112136
  (以下、一部、抜粋)

 「翁長雄志知事(313秒)
 
・・・・そして政府は今、普天間飛行場の県外移設という公約を、失礼な言い方かも知れませんが、かなぐり捨てた前知事が、埋め立てを承認したことを錦の御旗として、辺野古移設を進めておられますが、昨年の名護市長選挙、沖縄県知事選挙、衆議院選挙は前知事の埋め立て承認が争点でありました。
 全ての選挙で辺野古新基地反対という圧倒的な民意が示されたわけであります。沖縄は自ら基地を提供したことは一度もございません。普天間飛行場もそれ以外の基地も戦後県民が(捕虜)収容所に収容されている間に、(土地が)接収された。または居住場所をはじめ銃剣とブルドーザーで強制接収され、基地造りがなされたわけであります。
 自ら土地を奪っておきながら老朽化したから、世界一危険だから沖縄が負担しなさい。嫌なら代替案を出せと言われる。こんな理不尽なことはないと思います。
 (はい、報道は退室-と官邸スタッフが打ち切る)
■非公開部分
 翁長雄志知事 安倍総理が2度目の政権を担ったとき「日本を取り戻す」という言葉がありました。私はとっさにそこに沖縄が入っているのだろうかと思いました。戦後レジームからの脱却ともおっしゃってましたが、沖縄に関しては戦後レジームの死守をしているかのようであります。
 安倍総理にお聞きしたいと思います。ラムズフェルド米国防長官が12年前、普天間基地は世界一危険な基地だと発言し、菅官房長官も普天間の危険性除去のために辺野古が唯一の解決策とおっしゃっております。辺野古基地ができない場合、本当に普天間基地は固定化されるのかお聞かせ願いたいと思います。
 普天間飛行場の5年以内の運用停止について、仲井真弘多知事は県民に対し「一国の総理および官房長官を含めて政府としっかりやるとおっしゃっている。それが最高の担保である」と説明していました。
 5年以内の運用停止は、きょうまでの状況を見ますと、辺野古埋め立て承認というハードルを越えるための空手形ではないかと危惧しているところです。総理ご自身から5年以内運用停止を約束できるかお聞きしたいと思います。
 私は沖縄にある米軍基地や米国政府の責任者から、辺野古の問題は日本の国内問題だとよく言われます。
 われわれ県民から見たら、米軍基地の運用について日本政府がほとんど口を挟めないことをよく知っていますから、辺野古の問題についても、県民からは実感として、県民と米軍、県民とアメリカ政府との問題だとも思えます。
 ですから、私も近いうち訪米をして県民の思いを米国政府、シンクタンク等さまざまな方々に訴えようと思っています。
 このまま政府が地元県民の理解を得ることなしに辺野古埋め立てを強行するようであれば、私は絶対に辺野古への新基地を造らせないということを改めて申しあげたいと思います。
 安倍総理には、かたくなな固定観念に縛られず、まずは辺野古への移設作業を中止することを決断され、沖縄の基地固定化の解決・促進が図られることを期待しております。訪米した際には、オバマ大統領へ沖縄県知事はじめ、県民は、辺野古移設計画に明確に反対しているということを伝えていただきたい。よろしくお願いします。」

誰に向かって言う言葉か
 官邸、自民党はこのところ、報道機関にあれこれの注文をつけたり、報道機関の幹部を呼びつけて、個別の番組の編集のあり方に干渉したりする発言を繰り返している。挙句は放送界が自主的な番組検証機関として設置した「放送倫理・番組向上機構」にまで非難の矛先を向け、「BPOは全然透明性がない」と非難し、今後、BPOのあり方も問うていくとしている。

「自民党、テレ朝「報道ステ」をBPOに申し立て審理求める考え」

FNN 201417 18:59)
 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00290539.html

 政府・与党はメディアがもっとも注視すべき監視の対象である。そのメディアを政府・与党が監視しようなどと言うのは本末転倒であり、言論の自由と自立を根本原理とする民主主義国家の成り立ちのイロハをわきまえない傲慢不遜な態度である。
 
 「透明性」というなら、事前の了解を反故にして、沖縄県知事の発言の途中で報道陣を退出させ、翁長知事の発言の模様を国民の目から遮蔽した官邸の姑息なやり方こそ、「透明性」に背く恥ずべき行為である。
 
 本土のメディアは、権力の監視を自らの使命と言うなら、こうした官邸の姑息な振る舞いを毅然と調査し、国民に伝えるべきである。
 

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翁長知事と産経・前ソウル支局長

2015417

片や3ヶ月、片や翌日
 今年の16日以来、翁長知事が求めていた安倍首相との会談が今日(17日)、
ようやく実現することになった。ただし、予定時間は30分。
 他方、安倍首相は14日に帰国した産経新聞前ソウル支局長・加藤達也氏と翌日(15日)官邸で会い、「ご苦労様でした。裁判が続くようなので体に気をつけて」とねぎらったとのことである。

 「首相、産経前ソウル支局長と面会 『ご苦労様でした』」
 (「朝日新聞デジタル」20154151055分)
  http://www.asahi.com/articles/ASH4H3HBBH4HUTFK002.html 

 加藤氏が手がけた朴槿恵・韓国大統領の動静に関する取材・報道に公益性があったのか、取材の自由と倫理の境界をどのように判断すべきかなど、慎重に検討されるべき問題がある。ただ、これらの点を考慮しても、加藤氏を8回の延長を経て、8か月間、出国禁止措置にする合理的理由があったのか、疑わしい。

 しかし、そうした出国禁止が解かれた1人の新聞記者を帰国の翌日、時の首相が官邸に招いて、労をねぎらうのは異例の対応である。しかも、当の記者は8ヶ月間に及ぶ出国禁止で心労が重なっていたとはいえ、他国の大統領の名誉を毀損した疑いで裁判が継続中の人物である。

 そんな中、安倍首相と沖縄県の翁長知事との面会がようやく今日(17日)実現することになった。翁長知事は今年の16日以降、安倍首相との面会を希望していたから、それから約3ヶ月余を経て、ようやく実現したことになる。

面会の用件は
 しかも、3ヶ月間、安倍首相との面会を待ち続けた翁長知事が求めた用件とは、目下、政府が沖縄県民の民意に背いて強行している普天間基地の辺野古への「移設」――正しくは「移設」というより、軍港機能を備えた新基地建設――が無理筋であることを訴えるという喫緊の課題である。
 さらに、会談が実現しないまま3ヶ月が経過する間に、沖縄防衛局は翁長知事の工事中止指示に見向きもせず、「粛々と」ボーリング調査の開始に向けた海上作業を進めた。既成事実の積み上げそのものである。
 片や慰労のための帰国「翌日」の面会、片や日本全体の抑止力の維持を名分にした基地建設の是非をテーマにした会談の実現までに要した3ヶ月。これが沖縄差別でなくて何なのか?

あからさまな沖縄差別、それを許すのが本土の民意なのか
 加藤・前ソウル支局長が出国禁止措置を受けて韓国で過ごした8ヶ月間、その間どのような処遇を受けたのか、詳しくは分からないが、心身の疲労が積もったことは想像に難くない。
 しかし、翁長知事が安倍首相に直接訴えようとする沖縄の基地問題は沖縄県民が戦中戦後70年以上、本土防衛の捨て石として、あるいは植民地同然の日米地位協定・アメリカ軍駐留の下で、屈辱をなめてきた体験に根差すものであり、目下の辺野古基地問題もそうした体験を背負った課題である。

 政府首脳は折に触れて、普天間基地の危険性除去は一刻の猶予も許さないという。ならば、解決の糸口を探る会談を実現するまでに3ヶ月を空費したのは誰の責任なのか? 安全保障は一地方の民意で決める問題ではなく、国の専権事項だ、などと「上から目線」の物言いをしながら、日米地位協定の見直しはおろか、普天間基地の5年以内の返還という「国内向けの口約束」をアメリカに面と向かった要求すらしない日本政府に「専権」を口にする資格と能力があるのか? 
 その間も、普天間基地や嘉手納基地周辺では、米軍機からの部品落下が相次いだ。その中には、200キロものミサイル発射装置の部品の落下など、一歩間違えば大惨事となった事例もあった。
 このような政府の二枚舌とあからさまな沖縄差別をなすがままにさせている「本土」の有権者の政治意識が厳しく問われている。

                       沖縄県平和祈念資料館(旧館)運営協議会 作)Photo
      戦争をおこすのは たしかに 人間です
      しかし それ以上に 
      戦争を許さない努力のできるのも
      私たち 人間 ではないでしょうか
                          

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普天間基地の辺野古「移設」の民意は的確に調査されたのか

2015年4月14
 
 ~3年を隔てたNHKの2つの世論調査の結果の違いをどう読むか~
 

 
 昨夜(4月14日)のNHKのニュース7でNHK世論調査の結果が放送された。今月10日から3日間、全国の20歳以上の男女(回答は1,085人)を対象に行った電話調査の集計結果である。

 NHK世論調査 内閣支持率51%」
 (NHK NEWS WEB 4月13 19時00分)
 http://www3.NHK.or.jp/news/html/20150413/k10010047161000.html

 このなかで、安倍内閣の支持率が先月より5ポイント上がって51%になったなど、いくつかの回答結果もさることながら、私が一番、関心を持ったのは、今、政府が進めている普天間基地の名護市辺野古への移設について、

  「賛成」26% 「反対」22%  「どちらともいえない」44

という結果だった。「やはりそんなものか」と思う反面、非常に気になることがあった。それは次の2つである。

(1)賛否の割合もさることながら、「どちらともいえない」が、なぜ、こんなに多いのか?
 
(2)私が記憶していた、2012年2月にNHKが行った「復帰40年の沖縄と安全保障」に関する全国意識調査の時の同旨の質問に対する回答結果と大きく食い違ったのはなぜなのか?

 
「復帰40年の沖縄と安全保障~『沖縄県民調査』と『全国意識調査』から~」
 (『放送研究と調査』2012年7月)     http://www.NHK.or.jp/bunken/summary/research/report/2012_07/20120701.pdf

20127月の世論調査5択形式の個別面会法)
 
 普天間基地の名護市移設の賛否:
 
  賛成 ・・・・・・・・・・・・・・  5.8
 
  どちらかといえば、賛成 ・・・・・  30.3
 
  どちらかと言えば、反対 ・・・・・ 34.0
 
  反対 ・・・・・・・・・・・・・・ 10.9
 
  わからない、無回答 ・・・・・・・ 19.0
 
  (注)「どちらかといえば」を含めると、「賛成」36.1%、「反対」
      
44.9

 今回(20154月)の世論調査3択形式の電話調査法)
 
 「普天間基地を名護市辺野古に移す計画を進めている政府の方針に:
 
  賛成 ・・・・・・・・・・・・・・ 26
 
 反対 ・・・・・・・・・・・・・・ 22
 
  どちらともいえない ・・・・・・・  44

 
 私は、約3年を隔てた同旨の質問に対する回答がこのように大きく食い違った理由はどこにあったのか―――民意の変化なのか、調査方法の違いが影響したのか、「どちらともいえない」に振り分ける基準は何なのか―――に強い関心を持ち、二つの世論調査を担当した「NHK放送文化研究所」に今日、次のような質問書を送り、今月24日までに文書で回答をもらうよう要望した。

NHK放送文化研究所宛て
 
 「この4月に実施された『政治意識月例調査』に関するお尋ね」
   http://sdaigo.cocolog-nifty.com/NHK_hobunken_ate_situmon.pdf 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                                                                        2015年4月14
NHK放送文化研究所 御中
   この4月に実施された「政治意識月例調査」に関するお尋ね

                                                                             
  醍醐 聰
 前略

4月13日夜、NHKニュース7で、今月10日から3日間にわたって行われたNHK世論調査の結果が放送されました。その内容は貴研究所のホームページにアップされている「政治意識月例調査」2015年4月分の集計結果を紹介したものと思われます。
 
 そこで、この世論調査の方法と結果の解釈に関して、以下のような質問をいたします。ご多用中とは思いますが、4月24日(金)までに文書で項目ごとにご回答をお願いいたします。

〔質問1
 
 回答の選択肢が2択の質問、3択の質問、4択の質問が混在していますが、どのような判断・基準で選択肢の数が使い分けられたのでしょうか?
 
 (注)
 
  2択の質問例 
      
   *安倍内閣を支持するか ・・・・ 「支持する」、「支持しない」
   3択の質問例 
 
   *景気が回復していると感じるか
 
     ・・・・ 「感じる」、「感じない」、「どちらともいえない」
 
   *アメリカ軍普天間基地を名護市辺野古に移す計画を進めている政府
             の方針に
賛成か
 
     ・・・・ 「賛成」、「反対」、「どちらともいえない」
 
   *集団的自衛権の行使を可能にするための法律を整備するという政府
             の方針
に賛成か 
 
     ・・・・ 「賛成」、「反対」、「どちらともいえない」
   4択の質問例
 
   *安倍内閣の経済政策について
 
     ・・・・ 「大いに評価する」、「ある程度評価する」、「あまり
                             評価
しない」、「まったく評価しない」

   *去年4月の消費税率引き上げ以降の家計のやりくりの状況
 
     ・・・・ 「たいへん厳しくなっている」、「少し厳しくなってい
                             る」、

 
          「あまり変わっていない」、「まったく変わっていな
                             い」


〔質問2

 今回の調査は全国20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける「RDD」法で行われたとのことですが、その具体的な方法についてお尋ねします。

21 電話調査にあたっては、調査員が調査対象者に、調査の趣旨、回
           答の仕方について説明されたものと思われます。また、調査対象者
           から質問を受けた場合、調査員は何らかの形で応答をしたものと思
           われます。その際、次のどちらの方法を採られたのでしょうか?

 
 (A 説明・応答の仕方についてマニュアル(標準的な説明・応答の仕方
           を記した文書)を用意し、それをもとに電話調査をするよう、調査
           員に周知した。

 
 (B 特に、マニュアルといったものは用意せず、調査の趣旨の説明や調
           査対象者から質問を受けた場合の応答は、調査員の随意の判断に任
           せた。

 
 (C A, B のどちらでもない。(では、どのようなやり方を採用された
           のか、ご説明ください。)

 
   (要望)(A)であれば、作成されたマニュアルに相当する文書の全文
          を貴研
究所のHPか、貴誌『放送研究と調査』で公表されるよう要望
          します。


22 3 択形式の質問について回答の求め方は次のどれだったのでしょうか?
  
(A 調査員があらかじめ、3択を説明し、いずれかを選んでもらうやり方
        を採用した。

 
(B) 調査員は、まず、賛成/反対、支持する/支持しない、などの2択を
       説明して、どちらかと尋ねる。そのうえで、これら2
択のどちらかを選
       べない、選ぶのをためらう人を「どちらともいえない」に入れるよう指
       示した。

  
(C)A, Bどちらでもない。
   
 (では、「どちらでもない」に振り分ける基準はどのようなものだった
        か、ご
 説明ください。)

〔質問3
 
 貴研究所が2012年2月18日~2月26日にかけて全国の20歳以上の1,800人を対象に個人面接法で実施された「復帰40年の沖縄と安全保障」に関する意識調査では、「普天間基地の名護市移設の賛否」(第18問)については5択の質問形式が採用され、集計結果は次のとおりでした。(以下、河野利行「復帰40年の沖縄と安全保障~『沖縄県民調査』と『全国意識調査』から~」(『放送研究と調査』2012年7月を参照)

 
1. 賛成 ・・・・・・・・・・・・・・  5.8
 
2. どちらかといえば、賛成 ・・・・・ 30.3
  3. 
どちらかといえば、反対 ・・・・・  34.0
  4. 
反対 ・・・・・・・・・・・・・・  10.9
 
5. わからない、無回答 ・・・・・・・   19.0

 他方、上記の電話世論調査(この4月に実施)の中の同旨の質問(「アメリカ軍普天間基地を名護市辺野古に移す計画を進めている政府の方針に賛成かどうか」)に対する回答の集計結果は次のとおりでした。

 
1. 賛成 ・・・・・・・・・・・・・・ 26
  2. 
反対 ・・・・・・・・・・・・・・ 22
  3.  
どちらともいえない ・・・・・・・44

 このように2つの世論調査で同旨の質問に対する回答が相当、食い違った(注)理由を貴研究所はどのように解釈されますか?
 
 (注)2012年の調査では、「どちらかといえば」も含めると、「賛成」が
            36.1
%、「反対」が44.9%

  (A 調査方法の違い(個人面接法か電話調査法か、5択か3択か等)に起
          因するものではなく、民意の変化を反映したものと考えられる。

 
(B)調査方法の違いに起因する面も否定できないが、民意の変化の方が主
        であると考えられる。

 
(C)民意の変化に起因する面も否定できないが、調査方法の違いに起因す
        る面が主であると考えられる。

  
(D)民意の変化に起因するものではなく、調査方法の違いに起因するもの
        と考えられる。

 
  (E)現時点では、理由を説明するのは困難である。

〔質問4・要望〕
 
 上記の〔質問3〕で(A)~(D)を選ばれた場合は、そう解釈される根拠をご説明ください。また、(E)を選ばれた場合は、私が指摘した、当該質問に対する2つの世論調査の回答結果に食い違いが生じた要因分析を手掛けていただき、貴誌(『放送研究と調査』)にその結果を公表していただくよう、要望します。

            
                       以上

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相次ぐ米軍機からの部品落下~沖縄の「空の強制接収」のなせる業~

2015411

米軍機からの相次ぐ部品落下~全国ニュースは伝えないが~
 矢部宏治著『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』(2011年)という書物があるが、最近、沖縄で頻発している米軍機からの部品落下はその一例といえる。これについて、
昨日(2015410日)、NHK沖縄放送局は次のようなニュースを伝えた。

 

「米軍に機体総点検求める」

NHK沖縄放送局 2015410日 1902分)

http://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/5093804141.html?t=1428717108808

 要点は次のとおりである。
 「沖縄では、先月、嘉手納基地に所属するアメリカ空軍の偵察機が飛行中に重さ900グラムの部品を落下させるなど、ことしに入って同様のトラブルが6件相次いでいます。こうした事態を受けて、嘉手納基地がまたがる沖縄市、嘉手納町、北谷町 の市長や町長、それに議会議長が、10日午前、基地の司令部を訪れ、部品を落下させ たのと同じ型の機体の総点検と住宅地上空での飛行停止などを申し入れました。」

 

 NHK沖縄局は317日にも「米軍機部品落下相次ぐ」という見出しのニュースを伝えていた。

 「嘉手納基地を拠点に活動しているアメリカ軍の偵察機が16日、飛行中に重さ900グラムのパネルを落下させていたことがわかりました。」
 「県内では、ことし1月に普天間基地所属のヘリコプターが200キロあまりの部品を海上に落下させたほか、16日にも、普天間基地のオスプレイからアルミ製の部品が落下していたことがわかるなど、アメリカ軍機による部品落下はことしに入って、6件目です。」
 「翁長知事は17日夕方、県庁で記者団に対し、『相次ぐ部品落下は、怒り心頭で、残念の極みだ。どんなに抗議をして原因究明を求めても、納得いく答えが返ってこない。今後は抗議の仕方も考えなければならない』と述べました。」

 しかし、NHKは、私が調べた限り、全国ニュースでこのような出来事を一度も伝えていない。
この問題について『琉球新報』は318日の社説で、次のように米軍を断罪している。

<社説>米軍機部品落下 沖縄の空飛ぶ資格なし

 (『琉球新報』2015318日)

  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240481-storytopic-11.html


 「極めて危険な事故が起きていたにもかかわらず、米軍が日本政府に連絡をしたのは発生から4日後の16日だ。しかも米軍海兵隊は原因を明らかにしないまま飛行停止の措置も取らず、沖縄の上空でオスプレイの飛行を続けている。」
 「昨年3月からことし3月までの1年間で米軍機の部品落下事故は16件も発生している。ことし1月には普天間基地所属のAH1攻撃ヘリがミサイル発射装置など200キロの部品を落下させている。沖縄の空は米軍機の部品が頻繁に降ってくる異常な状態に置かれている。」

自衛隊の外郭誌も強い懸念 
 しかし、部品落下といっても、まだピンと来ないむきもあるかと思う。この点で紹介したいのは、自衛隊の外郭誌と言われる『朝雲新聞』が今年の219日号のコラム欄<朝雲寸言>に掲載した記事である。その中で、コラム子は次のように記している。

 

 「ミサイル発射装置は論外だが、5キロを超す部品が航空機から落下し、地表や海面に激突するときの衝撃を想像しただけでもゾッとする。しかも、嘉手納基地のF15だけで、昨年5件の部品落下事故を起こしているというから驚きだ。

 『あきれて言葉が出てこない』と憤る地元首長らの気持ちは十分理解できる。・・・・ガイドラインの見直し協議で、日米両政府は顔を突き合わせている。苦言を呈してほしい。」

沖縄の空の危険負担はむしろ増している
 政府は沖縄県民に向かって、ことあるごとに「沖縄の基地負担の軽減」を口にする。しかし、沖縄の危険負担は「地上の」基地だけではない。ほんのわずかな面積の西普天間基地(全体の5%)が返還されても沖縄の空(空域)を米軍が好き放題に使う状況を止めなければ、基地の危険は去らず、基地負担は軽減されない。 
 現在、沖縄周辺には28カ所の水域と20カ所の空域が訓練区域として米軍の管理下に置かれている。そして、ほとんどは早朝から夜間まで区域内への立ち入りが制限されている(詳しくは、沖縄県「沖縄の米軍基地」参照)。
 これについて『琉球新報』は昨年718日の社説で次のように指弾している。

「飛行制限拡大 どこが『負担軽減』なのか」
(『琉球新報』社説 2014718日) 

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-228680-storytopic-11.html
この中で、社説は次のように記している。

 「米軍キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブにまたがる中部訓練場の上空で、米軍が民間機の飛行制限空域を拡大する方針であることが明らかになった。海兵隊の基地運用計画『戦略展望2025』で記している。
 県民を締め出す空間を一層広げようというわけだ。これを認めるなら日米両政府は今後一切「負担軽減」と口にしないでもらいたい。
 現在の飛行制限空域はキャンプ・シュワブ上空で高度608メートルまで、ハンセン上空は912メートルまでだ。計画書はそれを『raise引き上げる』と記す。どの高さまで上げるかは判然としないが、制限を拡大する方針なのは間違いない。
 この『空域の再設計』によって『小火器を使った質の高い効果的な訓練ができるようになる』と書いている。おそらく、小型武器の届かない高さまで上昇した攻撃型ヘリによる対地攻撃訓練を想定しているのだろう。」
 「そもそも沖縄はおびただしい制限空域・海域に囲まれている。制限空域の総面積は9万5千平方キロ、沖縄の県土の42倍にも及ぶ。
 それをさらに広げるというのだ。言い換えれば、沖縄の主権剥奪をさらに進めることになる。それなのに沖縄側の意見を一切聴こうとせず、米国が勝手に決め、日本政府も容認している。この態度の中に、民意を重んじる民主主義の精神は存在しない。日米両国はこれでも民主主義国と言えるのか。」

 

基地あるがゆえの沖縄の危険負担は「地上での負担」にとどまらない。「水上での負担」、「空の負担」「空から危険」もあわせ、全体を見据えなければならない。
 アメリカ軍による接収は「土地の強制接収」だけではない。今、辺野古沖で進められている新基地建設は「海の強制接収」であり、度重なる米軍機からの部品落下は沖縄の「空の強制接収」のなせる業であることを直視しなければならない

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「基地の固定化を口にするのは政治の堕落」・・・仲井真前知事もそう語っていた

201547日  

 45日の菅官房長官との会談の中で翁長・沖縄県知事は、<辺野古がだめなら、世界一危険な普天間基地の移設先について代案を示せ、でなければ普天間基地の固定化につながる>と主張する菅官房長官ら政府の言動を指して、意に反して強制接収された基地あるがゆえに辛酸を味わってきた沖縄県に向かって「こういった話がされること自体が日本の国の政治の堕落ではないかと思う」と厳しく批判した。

 実はこれと同旨の発言を、今から約2年半前に前任の仲井真知事がしていたことを記しておきたい。

「知事、普天間固定化は『堕落』 政府姿勢を批判」
(『琉球新報』2013112日) 

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-214699-storytopic-53.html 

 この記事のなかで仲井真・前沖縄県知事が2013111日に行われた定例記者会見の中で次のような発言をしたことが伝えられている。

 「仲井真弘多知事は1日の定例記者会見で、米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古沿岸部の埋め立てを知事が承認しなければ、普天間が固定化するとの考えが政府内にあることについて『固定化という発想、言葉が出てくるのは一種の堕落だ』と強く批判した。県外移設を求めている知事として、辺野古移設か固定化の二者択一を迫る政府の姿勢をけん制した形だ。・・・・・ 『(役人が)固定化と軽々言うのは自分が無能だと表現することだ。・・・・』と厳しく指摘した。」

 このような発言を原資料で確かめようと沖縄県のホームページを検索すると知事公室名で、仲井真知事(当時)の定例記者会見録全文が公表されていた。該当する質疑の個所を引用しておきたい。

沖縄県知事公室 マスコミ発表(定例記者会見:平成25111

http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kohokoryu/kense/chiji/kishakaiken/kishakaiken/tere/h2511/01.html#shitugioto  

記者 普天間に関して、知事が先ほどから実現可能性と言うことをおっしゃいましたが、知事が東京に行かれた際等々に政府に取材をしますと、辺野古が駄目なら固定化しかないといったような声も取材する中では聞こえてきます。・・・・
 知事は今後、この問題が固定化するのではないのかという懸念について、どのように思っていらっしゃるのかということと、今後、辺野古の承認申請を判断されていく際に知事が最も重視されること、固定化を防ぐということなのか、それとも名護市の地元の民意を重視されるということなのか、いろいろ判断する基準というのがたくさんあると思いますが、知事としては何を最も重視して判断していかれるお考えなのか、お願いします。」

知事 政府のどの筋の方の見解か知りませんが、固定化ということの意味を、軽々にお使いになるのは、自分が無能だという意外の表現なのです。そういうものを、もし、重要なポストにある方がおっしゃるとすれば、なにをかいわんやで、県民国民の上から同盟国の機材が落ちてくる、場合によってはもの凄い惨事になりかねないという、東京で言えば銀座4丁目のようなものです。よく日比谷公園を例に出すのは、あれは結構広いから。もっとクローズに、民家がぎっしりなっているでしょう。青梅街道のどこかの真ん中でやるような状況です。皆さんご覧になればすぐ分かるはずなので。そういうものを固定化するという発想、言葉が出てくるということ自身が、一種の堕落だと思います、政治家として。もし政治家がおっしゃったとすれば、とんでもない話で、国民の生命財産、特に、フィージブルかどうかというのを頭に置いて、きちんと決めていくべきもので、その原点みたいなところに疑問を持たれたのでは、信頼できる政治でも政治家でもないでしょう。それを避けるというのはまず原点ではありませんか。ですから、それをイージーに口にされる人がいたとすれば、その人は、その任に置いちゃ駄目だと思うくらい問題がある発言だと思います。・・・・」

 

【醍醐コメント】

この仲井真前知事の発言からすれば、菅氏は官房長官の任に置いてはダメな、無能な人となる

 また、こう言ってから1ヶ月半後に、「普天間基地の危険性除去が最優先と称して、辺野古移設を容認した仲井真氏もまた政治家の堕落の極みと言わなければならない

40              白梅学徒看護隊自決之壕(糸満市国吉) 
              2014年11月13日 撮影

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籾井NHK会長の即時辞任・罷免を求める申し入れ書を提出~視聴者コミュニティ~

  2015210

 籾井NHK会長が、去る25日に開催された定例の会長会見において、戦後70年の節目にあたってNHKが「従軍慰安婦」問題を取り上げるかどうかは、この問題に関する政府のスタンスを見てから、などと発言したことに関し、私が共同代表の一人になっている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は今日(210日)の11時、NHK視聴者センターへ出向き、次のような2通の文書を提出した。

籾井会長宛て(副会長ほか、全NHK理事にも提出)
2月の定例会見における籾井会長の発言に関する申し入れと質問」
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/momii_kaicho_ate_20150210.pdf
 (申し入れの要旨)
 今回の発言は、放送の自主、自立に対する外部からの干渉、介入というより、NHKが進んで政府の方針に順応することを明言した放送の自主、自立の放棄宣言に等しい。NHKの信頼を貶めるこうした言動を平然と繰り返す籾井氏に残された道は会長職を辞すこと以外にない。一日も早い辞任を強く要求する。

NHK経営委員会宛て
「放送の自主・自立を堅持する意思と資質を欠く籾井会長の即時罷免を求める申し入れ書」
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/keieiiinkai_ate_20150210.pdf
 (申し入れの要旨)
 1.籾井氏を即刻、会長職から罷免すること
 2.経営委員会で籾井氏を罷免できない時は、籾井氏を会長に任命した責
  任、同氏を厳正に監督しなかった責任を取って浜田経営委員長は辞職
    すること
 3.浜田委員長ほか、全経営委員は籾井会長に対する監督責任の懈怠に関す
       る責任を取って、本年上期の期末報酬を返上すること

(参考資料)
 この1年間、浜田経営委員長は国会の委員会審議で、委員から、経営委員会の会長任命責任と監督責任を質される都度、「籾井会長は放送法を遵守して業務の執行に当たると明言しているので、それを見守りたい」、「経営委員会としては、執行機関の今後の動きを監督し、助言し、必要に応じて苦言も呈して、委員会の職務を一層果たしてまいりたい」という答弁を繰り返した。(当会が衆参委員会会議録で調べたところ、本年1月末までに浜田委員長は前者の発言を延べ18、後者の発言を延べ27繰り返した。)

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誰のための農業・農協改革なのか?

201529

「岩盤規制」の打破?
 「農協改革」がヤマ場を迎えている。これについて、26日付けの『北海道新聞』は「農協改革 これで『攻めの農業』に?」と題する社説を載せ、次のように記している。
 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/590675.html 

 「担い手の減少、耕作放棄地の増加…。農業を取り巻く環境は厳しさを増している。それなのに政府・与党の論議からは、肝心の部分が聞こえてこない。重要なのは、組織論より今の農業が抱える問題への対策である。」
 「監査の仕方を変えれば、農業が活性化するのか。そんな単純な話ではなかろう。」
 「道内を含め金融機関などが農協だけの地域もある。制限で、こうしたマチの人が不利益を被る恐れもあった。結局、見送りになったが、これも改革論議が現実とかけ離れている証左と言えよう。」

 目下の「農協改革」を指して安倍首相らは「岩盤規制の打破」と称している。「岩盤規制」と言うと、いかにも「頑強な既得権益」を連想させ、郵政事業を「抵抗勢力」の象徴かのようにフレームアップして、「改革」=「既得権益打破」=善行、という虚構を拡散させ、地方の疲弊、富の格差をもたらす「似非改革」を強行した小泉「改革」と同根の手法である。

「地方創生」の美名の下で
 私が高校生まで過ごした実家は農家ではなかったが、近隣農家は政府の無秩序な減反政策に振り回されて後継者もいなくなり、耕作放棄地が増える一方だった。
 医療の面では、近くにあった「国立病院」が閉鎖され、中核病院と謳われた隣の市の県立病院も勤務医不足で小児科が閉鎖の危機に直面しているという。また、同じ地域にある赤十字病院でも産科が休止され、医療崩壊の危機に瀕している。
 
 地域の産業の中で農業、畜産業が大きなウェイトと占める地方では、これらの産業が衰退すると関連産業も連鎖的に衰退し、人口減少が止まらない。そうなると公的医療機関は患者数減→採算悪化→規模縮小・統廃合→医療アクセスの悪化→人口流出、という悪循環から抜け出せなくなる。

 
 TPP
交渉と並行して進められた日米二国間協議で、日本は米国車の対日輸出の非関税障壁になっているとして軽自動車の「軽課税」措置をやり玉に挙げ、軽自動車の増税を日本に押し付けた。
 しかし、全国軽自動車協会連合会の調べによると、20133月末現在で、軽四輪車の世帯当たり普及台数を都道府県別に見てみると、佐賀、島根、鳥取、山形、長野、福井の各県は0.98以上であるのに対し、東京都は0.11、神奈川県は0.21、大阪府は0.27だった。軽自動車は農作業に向いた小回りの利くほか、狭い農道や市町村道を買物、医療機関への送迎などにも適した車種なのだ。「地方差別」と言いたくもなるこうした増税がアメリカへの市場開放と称して行われたことを銘記しておく必要がある。

 私たち国民は今、政府が進めようとしている「農業・農協改革」を「農業固有の問題」とか「農協組織の問題」と狭く、他人事のように捉えて傍観することは大きな禍根を残す。

 「米百俵」の美談に淡い期待を寄せて、改革の痛みに耐えた先に、「富の格差」と「ふるさと衰退」の帰結を思い知った人なら、「誰のための改革」かという問いを立てなければならない。

 政府が農協の影響力を削いで、農業に「ビズネスチャンス」を与えようとしているのは企業参入ではないのか?
 しかし、地域に生活の場を持たず、採算に合わないとなれば、さっさと撤退するのが営利企業の原理である。 

 旧農地リース制度により農業に参入した企業の参入後の動向(撤退・継続)を調査した大仲克俊「農地リース制度による農業参入企業の経営展開と撤退」『JC総研レポ-ト』2013年夏、によると、32の企業が参入した新潟県では、そのうちの6社(18.8%)が撤退している。31の企業が参入した青森県では、そのうちの12社(38.7%)が撤退、島取県では参入した30社のうち8社(26.7%)、鹿児島県では参入した29社のうち9社(31.0%)、岩手県では参入した17社のうち5社(29.4%)が、それぞれ撤退している。
 こうして、撤退後に投げ出された荒地を誰が再興するのか?

「無知は罪」の自覚
 
 私も参加した大学教員の「TPPによる関税撤廃が農産業に及ぼす影響試算チーム」が昨年試算したところ、
  ・北海道は主要8品目の合計で50.5%の生産額、14.7%の農業所得を
         失う。
  ・富山県は米だけで富山県の全農業所得の26.3%を失い、福井県は
   25.6%を失い、石川県は19.8%を失う。
という結果を得た。
 農業、畜産業の衰退はこれら産業からの税収で成り立つ地方財政の破綻、雇用の場の消滅、学校教育や育児、医療、介護の崩壊につながる。ひいては、今でさえ、先進諸国で最低水準の食糧自給のさらなる悪化につながる。その先には、今以上に、どこで、誰が作ったかわからない食糧への依存度が一段と高まることになる。
 いまやシャッター通りと空き家は過疎地の代名詞ではなくなりつつある。地方都市にまで、急速に外延を広げつつあるのだ。

 安倍政権は「農業・農協改革」まで「成長戦略」に取り込むかの言辞を弄している。しかし、そのねらいは、地場の農産業の衰退、そこへの企業参入が辿った上記のような帰結は起こらないという見通しを何ら検証しないまま、「地方創生」なる美辞麗句で人々の期待をかき立て、政権の支持基盤を維持・底上げする点にあると思える。

 最近、私は「無関心は罪」という言葉以上に、「無知は罪」という言葉に魅かれる。国民が政治の主人公になるには、多くの国民が「無知は罪」を自覚できるかどうかにかかっていると思えてならない。

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死刑存廃の世論調査はどう設計されるべきか

2015131

今回は主体的解釈にもとづく報道も見られた
 前回(20123月)の死刑存廃の世論調査に関するメディアの報道は、内閣府が発表した主質問に対する結果をそのまま受け止め、「85.6%が死刑容認」をメインの見出しにした横並び報道だった。
 それに対し、今回は新たに「終身刑(仮釈放のない無期懲役刑)を導入した場合の死刑制度の存廃」が質問事項(注)に追加されたこともあって、メディアの報道にはバラツキが生まれた。
 (注)この質問に対する回答結果は次のとおりだった。
    死刑を廃止する方がよい (37.7%)
    死刑を廃止した方がよい (51.5%)
    わからない・一概にいえない (10.8%)

 「読売新聞」、「朝日新聞」、「毎日新聞」はそれぞれ「死刑『容認』、高水準を維持」、「死刑制度を容認80%」、「死刑制度 容認8割」という見出しを付け、主質問に対する回答結果に重きを置いた記事を掲載した(いずれも125日朝刊)。
 これに対して、NHK124日のニュースで「『終身刑導入でも死刑存続』は半数」という見出し(字幕)を付けて、「現状での死刑制度の存続は80%の人が容認する一方、仮に終身刑を導入した場合でも死刑は存続した方がよいと考える人は51%にとどまりました」と伝えた。「東京新聞」(125日朝刊)も、「死刑容認 微減80%」という小見出しを添えた上で、「終身刑導入なら『存続』は51%」という文言を主たる見出しにした記事を掲載した。
 ただし、「朝日新聞」は記事の最後の部分で終身刑を導入した場合は、「死刑容認の割合が大きく減る一方で、半数以上は「終身刑は死刑の代わりにならない」と答え、意見が割れた状況も伝えた。「毎日新聞」も「終身刑を導入した場合の死刑容認派は半数程度にまで減るとの結果も今回初めて出た」というコメントも付け加えた。

 死刑を廃止したイギリス、ドイツ、フランスで死刑廃止後の最高刑として、各国それぞれに適用緩和の条件を付けて、終身刑を採用している事実を参照すると、終身刑を導入した上での死刑廃止に関する賛否を問う意味は十分あると思われる。
 しかし、「死刑の存続か」、「最高刑として終身刑の導入による死刑の廃止か」という枠組みに収斂させて死刑存廃の世論調査なり国民的議論なりを進めるのはなお早計と思える。
 その前に、死刑存廃(特に廃止)の時間軸を明確にした世論の趨勢を見極めることが重要と思える。

死刑制度の存廃を問題にする時間軸
 政府が行った死刑存廃の世論調査の結果に関し、「当面は存続、将来、状況が変われば廃止してもよい」という回答を政府解釈のように「死刑存続」に含めるべきか、「死刑廃止」に含めるべきかの判断を難しくするのは、一連の質問の設計の仕方に問題があるためと思われる。
 というのも、冒頭の主質問で死刑の存廃に関する回答を求めた後で、「即時廃止か」、「漸進的廃止か」、あるいは「将来も存続か」、「状況が変われば、将来的には廃止してもよいか」を選ぶ質問が設けられたところからすると、「死刑制度の存廃」を問う主質問は暗黙裡に将来はともかく、「当面は存続か」、「ただちに廃止か」を問う趣旨だったと解される。そのうえで、「当面は存続」と答えた人に「将来的にはどうか」、「状況が変化した場合はどうか」を問う質問形式と受け取れるのである。
 質問の趣旨がそうなら、その趣旨が調査対象者に明瞭に伝わるよう、質問の文言を工夫する必要がある。また、質問の形式がこのように段階的なものだとしたら、「当面の存廃」を問うた主質問への回答結果が、その後のサブ・クエションと切り離して、一人歩きすることがないような広報や報道のあり方が求められる。 
 なぜなら、死刑制度について日頃から特定の強い主義・信念を持ち合わせている人は別として、死刑制度に疑問を感じている国民の間でも、「即時廃止に賛成か」と問われるとためらいを感じ、十分な国民的議論を経て(段階的に)廃止といった意見を選好する国民も少なくないと予想されるからである。

 実際、法務省が「死刑制度に関する世論調査についての検討会」第1回会議(2014828日開催)に提出した「死刑廃止国における死刑廃止に至る経緯等について」という標題の資料によると、イギリス、フランスにおける死刑廃止までの経緯は次のとおりである。

イギリス
 1957年以前 謀殺罪には死刑を絶対刑として適用
 1957年 犯情の重い謀殺犯、以前に別の謀殺で有罪判決を受けた者には死
      刑を適用し、これらに該当しない謀殺には終身刑を適用するとの
      法律を施行
 1965年 5年間の死刑停止を定めた法律が成立
 1969年 1965年制定の死刑停止法を恒久的なものとする動議が可決さ
                れ、謀殺罪が全廃される。
 1998年 反逆罪、暴力を用いた海賊行為罪の死刑および軍法犯罪の死刑廃
      止(死刑全廃)

 つまり、死刑制度をめぐる議論が立法府で議論され始めた1957年から起算すると死刑全廃まで41年を要し、その間、謀殺罪など犯罪の類型ごとに死刑の適用が段階的に停止・廃止されてきたのである。
 また、イギリスでは、その間、下院議会ではたびたび(直近では1994年死刑復活の是非を問う投票が行われたが、いずれも復活反対票が賛成票を上回った。
 死刑廃止後の最高刑は無期刑とされ、裁判所は無期刑を言い渡す場合、犯罪が極めて重大な場合は最低拘禁期間を「終身」とする(終身刑)ことも可能とされている。

フランス
 1970年代に相次いで発生した凶悪殺傷事件およびその被告に対する判決な
      どが国民の間にも死刑の存廃をめぐる議論を喚起
 1977年 この年に死刑が執行されたのをきっかけにバダンテール弁護士を
      中心とする死刑廃止派が死刑の廃止に向けた運動を強力に展開、
      数回にわたって死刑廃止法案が提出されたが、いずれも可決に至
      らなかった。
 1981年 死刑の存廃が争点の一つになった大統領選挙で死刑廃止法 案の
                提出を公約に掲げたミッテラン候補(社会党)が勝利 
 同年6月 司法大臣に就任したバダンテールは死刑廃止法案を国民議会に提
      出、可決・成立し、同年1010日から施行
 
その後、2007年までに死刑復活を規定した法律案が約30回国会に提出され
 たが、いずれも否決または採決見送り。
 2007年 死刑禁止規定を創設した憲法改正。これにより死刑復活の議論終
      結 

 
このようにイギリスでは死刑存廃の議論が始まってから死刑廃止に至るまで41年を要した。フランスでも死刑存廃の議論が起こってから死刑廃止が確定するまで37年が経過した。
 わが国でも、かりに死刑廃止の是非に関する議論を起こすとしても、立法的結論に至るまでには死刑をめぐるそもそも論や効用(犯罪抑止力)などについて、国民的な議論、国会での審議、専門家の間での国際的な刑法制度の比較研究などに長い年月を要することは間違いない。

死刑の存廃に関する世論調査の設計私案
 であれば、今の時点での死刑の存廃に関する世論調査は、死刑制度存廃をめぐる論議の長期的な展望に立って、次のように設計されるべきではないか。

 主質問 1 死刑の存廃をめぐる今後の議論の進め方について
   A. 死刑存続を基本にして議論を進めていくのがよい
   B. 死刑廃止を基本にして議論を進めていくのがよい
 
      C. わからない、一概に言えない。
 
主質問 2 死刑の存廃が定まるまでの間の制度の運用・見直しについて
   D. 現在の死刑制度に則り、対処していく
   E. 存廃の議論が定まるまで、死刑を停止する
   F. わからない、一概に言えない
 サブ質問1 (A, Bどちらを選んだかを問わず、すべての対象者に)
  今後、死刑の犯罪抑止力に関する評価が変わるなど、死刑をめぐる状況
      が変わった場合
   D. 議論の基本的方向性を見直す
   E. 議論の基本的方向性を見直す必要はない
     F. わからない、一概に言えない
 サブ質問2 (Aを選んだ回答者に対して) 
 
終身刑を導入した場合の死刑制度の存廃について
   G. 死刑を存続させる
   H. 死刑を廃止する
   I.  わからない、一概に言えない

 上川法務大臣は、さる127日の記者会見で内閣府が実施した死刑制度に関する今回の世論調査の結果について、死刑について「肯定的な結果が示された」、「慎重かつ厳正に対処していく」と述べつつ、死刑制度を維持し、刑を執行していく考えを示した(「朝日新聞」2015128日)
 現職の法務大臣として現行制度に則って死刑を施行していくのは当然と言えば当然であるが、刑の執行については大臣の判断が介在してきたことは周知のところである。そして、その判断にあたって、死刑をめぐる国内世論(冤罪の確定、それが死刑制度や死刑執行に及ぼす世論の動向なども含む)や死刑制度をめぐる国際的な議論の動向が斟酌されるのも当然だろう。
 その意味で、内閣府が行う(質問形式は法務省が作成)世論調査の回答結果は慎重に解釈される必要があると同時に、質問形式の適否にまで及ぶ十分な検討が必要である。


 

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今回もおかしい死刑存廃の世論調査

2015131

前回の調査(質問形式)について感じた疑問
 昨日、内閣府大臣官房政府広報室は「基本法制度に関する世論調査」の一環として昨年11月に行った「死刑制度に対する意識調査」の結果の概要を公表した。
 「基本法制度に関する世論調査 2. 死刑制度に対する意識」
 
「調査結果の概要」(2015126日 内閣府大臣官房政府広報室)
   http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-houseido/2-2.html

 これに先立ち、NHK124日夜のニュースで、新聞各紙は125日の朝刊で、「死刑制度を容認80%」(朝日新聞)、「死刑『容認』80%、高水準を維持」などの見出しで調査結果の要旨を伝えた。

 こうした死刑制度の存廃に関する政府の世論調査は1956年以降これまでに9回実施されているが、私がこれに関心を持ったのは、2012329日、3人の死刑囚に対する死刑が執行されたことを伝えた同夜のニュース番組で2009年に内閣府が行った死刑制度の存廃に関する世論調査の概要が紹介されたのを視たのがきっかけだった。
 その折、私は、NHKのニュース番組の画面に、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」が5.7%だったのに対して、「死刑を容認する国民は約85%」という字幕が出、そのすぐ後で、この約85%という数字は「場合によっては死刑もやむを得ない」という問いに対する肯定の回答だったことを示す字幕が出たのを視て驚いた。「場合によっては」という条件がついた死刑肯定を「死刑容認」と括ってしまってよいのか、「場合によっては」という条件を、なぜ「死刑存続」の方にだけ付けて、死刑廃止の方には付けないのか(「場合によっては死刑もやむを得ない」という選択肢を設けるなら、それと対称的に、「場合によっては死刑を廃止してもよい」という選択肢を設けるべきではないか)という疑問がよぎったからである。

 そこで、改めて内閣府政府広報室が公表したこの世論調査の結果の概要を見ると、「場合によっては死刑もやむを得ない」に肯定の回答をした人に対して次のような追加質問がされ、その回答結果が掲記さていることが分かった。

  d. 将来も死刑を廃止しない。(60.8%)
  e. 状況が変われば、将来的には、死刑を廃止してもよい。(34.2%)
  f. わからない。(5%

 となると、世論調査の結果は次のように集約するのが的確ではないか、というのが私の感想だった。

  *将来とも死刑を存続させせるべきである。(52.6%)
   (注)0.856×0.6080.526
  *現在はやむを得ないが、将来、状況が変われば廃止してもよい。
         (29.3%)
   (注)0.856×0.342=0.293

  *どんな場合でも廃止すべきである。(5.7%)    
  *わからない、一概にいえない。(8.7%)
   (注)10.8560.0570.087

 このような資料分析とそれをもとに、その日のうちにこのブログに論評記事をアップした。
 「死刑制度に関する内閣府の誤導的世論調査、それを受け売りしたメディ
   ア
の報道」(2012330日)
 
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-34ef.html

 また、翌41日にはNHKニュース番組制作担当へ次のような意見を送った。
 「死刑支持は85.6%ではなく、52.6%と伝えるべき~NHKに意見を提出
     ~」
201241日)
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/856526nhk-88b7.html
 

 このような経緯があったので、今回の世論調査について正式の公表前に報道された「死刑容認80%」という調査結果の詳細ならびに質問形式の変化の有無に強い関心を持った。

今回の質問正式と回答結果は
 今回の質問正式と回答結果の詳細は前記の内閣府政府広報室の発表記事で示されている。その要点を再掲すると次のとおりである。(アルファベットは醍醐が追加)

 1. 死刑制度の存廃(該当者総数1,826人) 
   a. 死刑は廃止すべきである(9.7%)
   b. 死刑もやむを得ない(80.3%)
   c. わからない・一概に言えない(9.9%)
 2. 即時死刑廃止か、いずれ死刑廃止か
  (1で「死刑は廃止すべきである」と答えた者に)
   d. すぐに、全面的に廃止する(43.3%)
   e. だんだん死刑を減らしていき、いずれ全面的に廃止する(54.5%)
   f. わからない(2.2%)
 3. 将来も死刑存置か
  (1で死刑制度について「死刑もやむを得ない」と答えた者に)
   j. 将来も死刑を廃止しない(57.5%)
   k. 状況が変われば、将来的には死刑を廃止してもよい(40.5%)
   l . わからない(2.0%)
 4. 終身刑を導入した場合の私刑制度の存廃
  (注:すべての調査対象者に対して)
   m. 死刑を廃止する方がよい(37.7%)
   n . 死刑を廃止しない方がよい(51.5%)
   o . わからない・一概に言えない(10.8%)

誘導的な文言は消えたかに見えるが
 ここから、「死刑容認80%」という報道の見出しは質問1に対してbを選択した人が80.3%だったことを捉えたものだったことがわかる。ただし、前回2009(平成21)年の調査と比べ、「死刑容認」が5.3ポイント減少し、「死刑廃止」が4ポイント増えている。
 ここで注意したいのは、質問1(しばしば「主質問」と呼ばれる)の死刑容認の選択肢から「場合によっては」という文言が削除されていることである。これは日弁連の意見書や国会での質疑で、死刑廃止の選択肢には「どんな場合でも」という強い意思を想定した文言が付けられていたのに対し、死刑容認の選択肢には「場合によっては」という緩やかな意思を想定した文言が付けられ、死刑容認への回答を誘導しがちな形式になっているとの指摘を受けた見直しと言われている。
(注)日本弁護士連合会が20131122日に発表した「死刑制度に関する
 
   政府の世論調査に対する意見書」の全文は次のとおり。
         http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opi nion_131122_4.pdf
  
 こうした見直しによって、「死刑容認」と「死刑廃止」の選択肢の表現の非対称性が幾分緩和されたことは確かだ。しかし、対称的な質問形式というなら、冒頭の質問を「死刑は廃止すべきである」、「死刑は存続させるべきである」とするのがすっきりした文言であり、「死刑廃止」の選択肢の方は「べきである」という強い意思を想定し、「死刑存続」の選択肢の方は 「やむを得ない」という柔軟な意思を想定させる文言を使ったのは見直しの不徹底を物語っている。とりわけ、婉曲で温和な意思や考えに支持が集まりやすい日本人の気質を前提にすると、質問1の文言にはなお見直しの余地があると考えられる。

条件次第で「死刑廃止」に転じる意見も「死刑容認」と括ってよいのか
 しかし、今回の世論調査にはもっと大きな問題がある。「死刑もやむを得ない」という選択肢を設けることによって、条件次第で「死刑廃止」に転じる意見まで「死刑容認」と括ってよいのかというのがそれである。 
 今回の世論調査でも質問1(主質問)に続くサブ・クエッションの一つとして、「死刑は廃止すべきである」と答えた人に対して、「即時死刑廃止か、いずれ廃止か」という質問が設けたれた。回答結果は先に再掲したように、即時廃止か漸進的かで意見が分かれているが、「死刑廃止」の考えはこのサブ・クエッションへの回答でも揺らいでいない。では、「死刑存続」の方はどうか?
 サブ・クエッションとして設けられた「将来も死刑存置か」という問いには、「死刑存続」論者のうちの40.5%が「状況が変われば、将来的には死刑を廃止してもよい」を選び、「将来も死刑を廃止しない」を選んだ人は57.5%にとどまっている。

集計結果の組み替え~世論をより的確に表すために~
 とすれば、死刑制度の存廃をめぐる世論は次のようにまとめるのが実態にもっとも忠実な集計になると考えられる。

  ①将来とも死刑を存続させる(46.2%)
    (注)0.803×0.5750.462 
  ②当面は存続、将来、状況が変われば廃止してもよい(32.5%)
 
  (注)0.803×0.4050.325
  ③当面は存続、その先どうすべきかはわからない(1.6%)
 
  (注)0.803×0.0200.016
  ④だんだん死刑を減らしていき、いずれ全面的に廃止する(5.3%)
    (注)0.097×0.5450.053
  ⑤すぐに全面的に廃止する(4.2%)
 
  (注)0.097×0.4330.042 
  ⑥廃止すべきだが、すぐにか、段階的にか、はわからない(0.2%) 
 
  (注)0.097×0.0220.002 
  ⑦(存廃の是非は)わからない・一概に言えない(9.9%)

 ここで、死刑の存廃に関する世論を二者択一的に分類しようとすると、②③の扱い方が問題になる。これらを存続に加えれば、死刑制度を支持する回答は一部の新聞報道の見出しに付けられたように80.3%となり、圧倒的国民が死刑の存続を支持しているという解釈になる。
 他方、③はともかく②を「死刑廃止を支持する回答」とみなすと、死刑存続は46.2%、死刑廃止は42.2%(=32.55.34.20.2)となり、存廃の意見分布は接近する。

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