NHK政治部・原聖樹記者宛てに質問書~611名の連名で~(2)

2017726

                         2017725
NHK
政治部
原 聖樹 様

      「クローズアップ現代+」(619日放送)における
         貴職の発言についての質問書(続)

                   NHK視聴者有志611名(有志名簿は同封別紙)

ご発言②について

 d613日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、
 「平成2811月の特区諮問会議決定で『広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り』との限定を付したのは、これは誰がどのように起案して、どのように話し合いがされて、ここで限定が付されたのでしょうか。」

という記者の質問に対し、八田達夫氏は、

「これは基本的には3大臣の中で決められたわけです。最後、諮問会議に出されたこの案を提示されたのは、山本大臣だったと理解しています。山本大臣はその前にワーキンググループのサジェスチョンを聞いて下さいました。」

と答えています。

 e)しかし、諮問会議の有識者議員が山本幸三特命担当大臣に対して、いつ、どこで、どのようなサジェスチョンをしたのか、それに対して山本大臣はどのような応答をしたのかについて、諮問会議の議事要旨にも配布資料にも一切、記録はありません。
 また、山本大臣が有識者議員のサジェスチョンを踏まえて「広域的」という文言を追加することを諮問会議で提案した事実も、諮問会議で「広域的」とか、平成304月を開学予定とするとかいった重要な条件をめぐって議論が交わされた事実を証する記録も、議事要旨に一切、見当たりません。
 結局、京都産業大の申請を不可能にし、加計学園だけが残る結果になった「広域」条件、「平成304月開学」といった条件が、いつ、どのような議論を経て決まったのか、その経緯はブラックボックスになっています。

 f)諮問会議の有識者議員が適正な手続きの一つとして挙げた「三大臣合意」について、山本特命担当大臣は今年の66日に開かれた参議院内閣委員会で、この「三大臣合意」が交わされた経緯の説明、「三大臣合意」文書そのものの提出を再三、求められたのに対し、次のように答弁しています。

 「この三大臣合意というのは、これは大臣として確認した事項であります。公式の文書として作ったものではありません。
 そもそも行政文書というのは、国家公務員がその職務を遂行するに当たり法令等に基づき適正に作成、保存しているものであり、これに違反した場合には懲戒処分等、さらには公文書偽造罪に該当することになるなど、その真正性については制度的に担保されているところであります。
 ただ、二十八年の十二月二十二日に作成されたこと、これはもう私ども三大臣として確認しているわけであります。したがって、その真正性を証明するために、これ以上役所が保有する個別の電子ファイルについて逐一プロパティーデータ等に遡って確認することまで求められるとすれば今後の行政遂行に著しい支障を生じることになるために、行政サイドとして到底対応できるものではないと考えております。」
 
 g)しかし、上記の三大臣合意は国家戦略特区として新設の獣医学部を選定する際の重要な条件を定めた文書であり、「内閣府本府行政文書管理規則」の「別表第1 行政文書の保存期間基準」の分類に従えば、「6 関係行政機関の長で構成される会議(これに準ずるものを含む)の決定又は了解の立案の検討及び他の行政機関への協議その他の重要な経緯」を証する行政文書に該当し、10年の保存を義務付けられるものです。
 となりますと、山本大臣の上記の国会答弁は内閣府が「公文書管理法」の次の定めに違反する行為を行った公算が強いことを意味します。

 「第4条 行政機関の職員は、第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
 一 省略
 二 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
 三~五 省略」

 質問2-1
 獣医学部新設をめぐる最大の疑惑は「加計ありきの選定ではなかったか」という  点ですが、原様は、特区選定の手続きは適正に行われ、違法性はない、という諮問
会議有識者議員の主張をなぞる解説をされました。
 しかし、原様がなぞられた諮問会議有識者議員の主張には、事実に反する点、重
要な事実を無視した点があります。
 この意味で、原様の解説の③④の箇所は「正確な取材に基づいて真実や問題の本質
に迫る」姿勢、「虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢」を欠くものだったと私たちは考えます。
 この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-2
 原様は解説③④の箇所で、「違法性はなかった」という諮問会議の有識者議員の発言
を紹介されました。しかし、619日の「クローズアップ現代+」の主題は 「特区選定の過程で公平性や透明性は保たれていたのか」ということでした。
 このような番組の主題、ねらいに照らせば、問題を「違法性」に絞る諮問会議有
識者メンバーの主張をそのままなぞった原様の解説は番組の主題、ねらいにそぐわず、「問題の本質に迫る」姿勢に欠けるものだったと思われます。
 この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-3
 上記のような山本特命担当大臣の国会答弁は「公文書管理法」第4条に抵触する
可能性が強いと私たちは考えます。この点で、今回の特区選定過程には 「違法性」の面から見ても、重大な問題があると考えられます。
  原様はこの点をどのようにお考えか、お聞かせください。

                               以上


(醍醐補注)文書で実在を確認できない三大臣合意

~参議院農林水産委員会会議録(201746 日)より~ 

櫻井充君)・・・・さてそこで、私は三月の十七日に改めて、医学部の場合には三
省合意のある文書がありました、これはホームページにも掲載されております。これについて、三月十七日にうちの事務所から内閣府地 方創生推進事務局企画調整官の方にお願いしたところ、メールが返ってまいりまして、それは何かと いうと、十一月九日の一枚紙、十一月九日の一枚紙しかないと言われました。
 この十一月九日の一枚紙しかなかったので、翌日、再度確認をいたしました。
省合意に当てはま るようなものはないんですかと聞いたところ、ありませんと明確に答えております。それが、いつの 間にか十二月二十二日なる文書、三大臣合意の文書が出てきていること自体、本当におかしなことだ と思います。これはちゃんと明確にしていただきたいんですよ。事務方要らないから。ここは明確にしていただきたいんです。副大臣がだまされているかもしれないんですからね、副大臣。う一度申し上げておきますが、その時点でなかったものが、なぜ急に、突然出すか

  副大臣 松本洋平君))・・・・その上で、その十二月二十二日の文書の取り扱い いうことでありますけれども、そもそもその十二 月二十二日の文書というものはあくまでも内部的な三大臣の確認でありまして、これを正式に外に、 対外的に表している文書というのはまさに諮問会議の取りまとめというような位置付けの下で我 としては処理をさせていただいているところであります。実際に、その取りまとめの中にはこの一校 に限るということが明確に記述をされているわけでありまして、これをもちましてしっかりと皆様 方には提示をさせていただいているという認識であります。

 櫻井充君) そうすると、内部にはあったけれど公表しなかったということでよろしいですね。  

 副大臣 松本洋平君) あくまでも内部の文書であったというような、そういう理解であります。

櫻井充君そうすると、これは稟議書回してちゃんと決裁されているということですよね 

 (副大臣 松本洋平君) 各省庁においてどういう取扱いをされているかというの私の方でお答えを する立場にないと思いますけれども、少なくとも内閣府におきましは、稟議書は回っておりませ ん。しかしながら、先ほど来答弁をさせていただいているとおり、現にその文書は存在をし、そして山本幸三大臣の指示の下に事務方が作成をし、そして山本大臣が確認の下に各省、文科省、農水省に対 してお渡しをしている文書であるということであります。  

櫻井充君) 稟議書が回らないで大臣の名前使うということ、あり得るんですか少なくとも私が内 閣の一員でいたときには、政府の一員でいたときには、そういう決裁の仕方はなかったと思います が、文部科学省と農水省も稟議書はないんでょうか。 

政府参考人 今城健晴君) お答えいたします。十二月二十二日の日に私から山本農林水産大臣に御説明をし御確認をいただいたという行為はございますが、稟議書はございません

  政府参考人 松尾泰樹君) 文科省におきましても、十二月二十二日に内閣府からだいた文書につきまして、松野大臣の御了解をいただき、内閣府に回答したところでざごいまして、稟議書はございません。」

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NHK政治部・原聖樹記者宛てに質問書~611名の連名で~(1)

2017726日 

  6月19日に放映された「クローズアップ現代」は、「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」などと記された新文書をスクープ報道した。番組には匿名で現役の文科省職員も登場した。これは社会部が独自取材で得た資料、証言だった。番組では社会部の記者と並んで政治部の官邸キャップ・原聖樹記者がスタジオ出演した。
  その中で、原記者は、この番組がスクープ報道した文書で示された不公平で不透明な特区選定の実態をことごとく否定し、手続きは全て「議事録」で公開され、一点の曇りもないと胸を張る山本幸三大臣や特区諮問会議民間議員の言い分をなぞり、代弁した。NHKの政治報道を政府広報に貶める元凶は何かを雄弁に物語る解説だった。
  そこで、私たち視聴者有志は特区選定のプロセスについて必要なファクト・チェックを行った上で、昨日、7月25日、611名の連名で原記者宛てに質問書を提出し、8月2日までに文書で回答を求めた。
 質問の骨子は次の2つである。

 ①国家戦略特区諮問会議や同会議による関係者ヒアリングの議事要旨を精査すると、原記者が紹介した山本幸三大臣や諮問会議民間議員の言い分は、特区選定の真相を著しく歪めたものであることが判明する。
 原氏の解説はこうした資料を主体的に吟味することなく、内閣府や「公正・中立」とは到底思えない「民間議員」の言い分を喧伝したものではないか?

 ②「NHK放送ガイドライン 2015」には次のような規定がある。
   「報道番組やドキュメンタリィー番組、情報番組などでは、正確な取材に基づ いて真実や問題の本質に迫ることが大切である。虚構や真実でない事柄が含まれ ていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢が求められる。」 
 原氏の解説は、「NHK放送ガ イドライン 2015」のこうした規定に反するものではないか?

  今回の質問書提出には各地の視聴者のほか、元NHKプロデューサーなどNHK・OBやメディア論専攻の研究者、現・元大学教員、弁護士なども連名に加わっている。質問書は長文なので、2回に分けて転載することにする。 

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                       2017
725日 

NHK
政治部
原 聖樹 様 

 「クローズアップ現代+」(619日放送)における貴職の
         発言についての質問書
 

 NHK視聴者有志611名(有志名簿は同封別紙)

  原様におかれましてはNHK政治部の官邸担当キャップという重責を担われ、ご多忙の毎日をお過ごしのことと存じます。
 去る619日にNHK「クローズアップ現代+」は<波紋広がる“特区選定“~独占入手 加計学園”新文書“>というタイトルの番組を放送し、その中で、「国家戦略特区」として獣医学部の新設が決定される過程で行政の公平性、透明性が確保されたのかどうかを、NHKが独自に入手した文書をもとに検証しました。この番組の内容は国会でも取り上げられ、市民の間でも活発な議論を喚起しました。

 原様はこの番組の後半で、大河内直人・社会部記者とともにスタジオ出演され、「諮問会議のメンバーからは、選定のプロセスについて一点の曇りもないという発言が出ているが、これはどういうことか?」という武田真一キャスターの問いに対して次のように発言されました。

 「すべての決定の過程が議事録が残っている上に、オープンにインターネット上でされていると。すべての場所に必要な人が出席して、意思決定をしている中において、間違いが起きるはずがないということなんですね。
 さらに先ほど『広域的』という文言もありましたが、有識者の方々は記者会見で、われわれが獣医師会や、規制を緩和したくない文科省に譲歩してなんとか認めてもらうために入れた文言であって、なんらかの変な形で入ったわけではなく、われわれのサジェスチョンで山本大臣が決定したのだと。ですからそこに違法性はない、政府もこうしたプロセスを踏んでることから、手続きが適正に行われていて違法性もないと強調しているわけなんです。」(下線と番号①~④は質問者が追加)

 このような原様の解説は、武田キャスターが紹介した諮問会議メンバーの主張を補充する形でなされたものですが、ファクト・チェックが必要と思われる箇所、NHKの報道番組に求められる自立した論点設定という観点に照らして疑問点があります。下線を付した①~④がそれです。
 そこで、ご多忙のところとは存じますが、以下の私たちの質問について、82日(水)までに、別紙に記載しました宛先へ、文書でご回答をくださるよう、お願いいたします。

 ご発言①について

 a)私たちは国家戦略特区諮問会議、国家戦略特別区域会議、国家戦略特区ワーキンググループがそれぞれ公表した議事要旨、ヒアリング議事要旨(議事録は諮問会議運営規則第8条により、会議開催後4年を経過した後に公表するとなっています)を調査しましたが、獣医学部の新設申請が加計学園1校となる大きな理由になった「広域的に」、「開校時期を平成304月とする」といった条件を設けることをめぐって議論が交わされた記録はどこにも見当たりませんでした。

 b) 逆に、613日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、今治市から諮問会議に提出された申請資料、今治市へのヒアリングの議事要旨が申請者の希望で公表されなかった事実が明らかになっています。

 c) また、同上記者ブリーフィングにおける質疑の中で、諮問会議ワーキンググループ座長の八田達夫氏は、京都についても公平性を保つためにヒアリングの議事要旨を公表しなかったと発言したのに対し、記者から、京都府と京都産業大に取材したところ、ヒアリングの最初に記録をすみやかに公表することに同意していたという回答を得たことが指摘 され、京都側は諮問会議の非公表の理由を否定しています。(醍醐注:後掲)

 質問1―1 
 上記a~cのようなファクト・チェックに照らせば、「すべての決定の過程が議事録が残っている」という原様の解説とは裏腹に、重要な意思決定の過程が議事録(正確には議事要旨)に残されておらず、原様の解説は事実に反する関係者の主張を主体的に検証することなく紹介されたと思われますが、いかがですか?
 私たちの判断が間違いとお考えであれば、相応の反証事実をお示しください。

 質問Ⅰ-2
 「NHK放送ガイドライン2015」に収められた「4 取材・制作の基本ルール」の①企画・制作の3項目に次のような規定があります。
 「報道番組やドキュメンタリィー番組、情報番組などでは、正確な取材に基づいて真実や問題の本質に迫ることが大切である。虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢が求められる。」
 原様の解説の中の①は、諮問会議有識者議員の真実でない発言を冷静に見極めることなく、そのままなぞる解説といえるものであり、私たちは「NHK放送ガイドライン2015」の上記の規定に反するものと考えます。
 原様の見解をお聞かせください。 (質問書の後半は次の記事に続く)

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補足資料:「一点の曇りもない」どころか「曇りだらけ」の特区選定手続き

*国家戦略特区諮問会議・有識者議員 記者ブリーフィング(要旨)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/briefing.html 
 → この資料の1920ページで、記者が京都府に対する独自取材にもとづいて、「関係者の要請により」という八田達夫座長の説明に疑問を投げ掛けている。

*この件は国会でも森ゆう子議院、櫻井充議員が取り上げ、内閣府を追及している。衆参国会会議録で検索し、次のように関係する部分の抄録を作成した。
 国家戦略特区ワーキンググループによる関係者ヒアリングの公表をめぐる国会質疑抄録
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/tokku_wg_gizi.pdf

 これについて、内閣府は、京都府と京都産業大のヒアリングが行われたのは20161017日で、公表したのは2017326と答弁している(上記抄録の2ページ)。
 しかし、「国家戦略特区諮問会議運営規則」の第7条には、「2 前項に規定する議事要旨は、会議の開催された日から起算して3日以内に公表するよう努めなければならない」と定められている。 
 「国家戦略特区諮問会議運営規則」 
 
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/kisoku.pdf  
 結局、今年の3月に平成304月開校、1校のみに絞られるまで加計学園と京都産業大の学部新設企画を比べる資料は公表されなかったのである。
 ちなみに、森ゆう子議員は昨日725日に開かれた参議院予算委員会(閉会中審査)において、再度、こうした情報公開の大幅で不可解な遅れを質している。
 この点をみても、「一点の曇りもない」どころか、「曇りがたくさんある」選定手続きだったことは明らかである。





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NHKはネット配信に執心する前にやるべきことがある

2017711

〔追記〕記事のタイトルを改めました。(2017年7月12日、12:20)
 (旧)NHKはネット配信に執心する場合か?
 (新)NHKはネット配信に執心する前にやるべきことがある

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 NHKが年来、検討してきた常時同時のネット配信の可否、課金のあり方を検討してきたNHK受信料制度等検討委員会はこの627日に「常時同時配信の負担のあり方について」と題する答申(案)を公表し、今日711日まで意見募集をしてきた。答申(案)の概要は次のとおりである。
 http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/

 

 締め切り間際になったが先ほど、インターネットで意見を提出した。以下はその全文である。

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「常時同時配信の負担のあり方について」答申(案)に対する意見

                         醍醐 聰

 (1)答申(案)は視聴環境設定型の負担方式を推奨しているが、答申(案)が例示しているアプリケーションのダウンロードを課金の契機にするとなれば、従量制の「有料対価型」に酷似したものとなり、現行の〔定額制の〕受信料制度との接合性は到底成り立たない。また、IDの取得を前提する場合、各種の受信端末を保有する世帯の中で、テレビ受信機を持たない世帯を識別するのは容易でない。答申(案)は、認証の具体的なあり方は今後さらに検討していくことが必要としているが、今後ではなく、実行可能な課金の方法を示さなければ、有償の常時同時配信は机上の空論で終わる。

 (2)答申(案)は「インターネットの特性上、自分に都合の良い情報だけを見るようになる傾向がある」、「事業者側が個人の嗜好に沿ってレコメンド(推薦)することによって発生するいわゆる『フィルターバブル』という現象が起きうる」と指摘しながら、結論では、各種の認証、特にアプリケーションのダウンロードを前提にした課金付きのネット配信を容認している。しかし、上記のとおり、アプリケーションのダウンロードを前提にした受信方式は自分に都合の良い情報だけを見る視聴傾向を助長し、「多様な価値観への思いがけない接触や多くの人々の間の共有体験」を保障できないことは明らかである。
 検討委員会が、NHKの常時同時配信を是とするというなら、こうしたネット配信の負の機能にどのように対応するのか、対応できるのか、見解を示すべきである。それなしにネット常時同時配信を是認するのは支離滅裂である。

(3)昨年6月にNHK放送文化研究所の世論調査部が行った「テレビ・ラジオ視聴の現況」(木村義子・山本佳代・吉藤昌代・林田将来共著『放送研究と調査』20169月)によると、NHKの代表的な報道番組の年代別視聴率は次のとおりである。

 〔NHKニュース7〕 
      20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上
   男   1%   4    4     7    16    33
   女   1%      2      5     8       16       27
 〔NHKニュースウオッチ9
      20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上

          男   1%    1        4     6    13    17

   女   1%   1              4     5     7      13

 

〔クローズアップ現代+〕
     20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上
  男   0%   2       4     4        6 
  女   0           0             1              1             3     5 

2040代に見られる極端に低いテレビ視聴率はインターネットによる視聴に流れたからなのか? 常時同時配信をしたら上昇する見通しがあるのか? NHKはネット配信に労力を傾注するより、このような発問を真剣に検討し、本来業務の現状を再考するのが先決である。ちなみに、木村義子・関根智江・行木麻衣「テレビ視聴とメディア利用の現在」(『放送研究と調査』20158月)は201523月に実施された「日本人とテレビ・2015」の世論調査で行われた「いくつかの目的に一番役立つのはどのようなメディアか」という質問への回答結果を次のようにレポートしている。

                      テレビ  インターネット
  A.世の中の出来事や動きを知るうえで     64.5%                16.5
  B.教養を身に着けるうえで                        28.5%                  9.3% 
  C.政治や社会の問題を考えるうえで         54.8      9.3% 

 つまり、インターネットが普及した中でも、熟議民主主義の基礎となる多様な価値観との接触、共有体験の保障、民主主義社会における言論・報道機関としての役割という点では、多くの市民が、インターネットよりも、テレビの存在価値を認め、期待を寄せているのである。であれば、今、NHKに求められるのは、ネット配信への業務拡大ではなく、テレビ番組を通じて、市民に有意な知見を提供し、さまざまな考え方の出会いの場を作るという本来業務をいかに充実させるかということである。政府広報機関に成り下がっている、国政の重要課題が審議される国会の模様を中継しない、などという視聴者の不評に木で鼻をくくったような対応しかしないまま、有料のネット配信に傾注するのは本末転倒である。

 

 

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われはながく苦しまん、6月15日の警官として

2017618

 戦後の日本の国会制度の基本とされた委員会中心主義(戦前は本会議中心主義)を蹂躙して「公明党への配慮」(実際は加計問題をめぐる安倍疑惑隠し)などというなれ合いの物言いで共謀罪法案が本会議で採決された615日。

 その57年前の同じ日に、樺美智子さんが反安保デモで亡くなった。あれから57年後の615日、奇しくも、当時の首相の孫によって共謀罪法案が成立したのである。

 57年前というと、私は地方の中学校に通う年頃だったが、大学生になって政治に「目覚めかけた」頃、樺事件のことを周りからよく聞いた。ほとんどは「警察の挑発に乗るな」といった「ご注意」だったが。

 去年、筑波杏明『海と手錠』(19615月版)という歌集に出会い、樺さん自身というより、あの時、デモ隊と対峙した1人の機動隊員の心中に触れて、樺事件の意味も改めて考えさせられた。

 さらに、目下、森友・加計問題で問われている「公務員論」を考える題材にもなり、ひいては、あるNHKOBが「放送犯罪」とまで断罪する「政府御用放送局」に劣化した昨今のNHK内の役職員の良心を考える題材にもなっている。

筑波杏明:1960年安保条約改定当時、警視庁機動隊隊員。歌集『海と手錠』の刊行を機に退職

 『海と手錠』の原本を手に入れたくて去年から、古書情報などいろいろ検索しているが未入手である。そこで、筑波さんも出席した誌上座談会「日本人の帰属意識六十年安保をめぐって-」(『Q』第30号、2004年刊)を入手したので、そのなかで筑波さん自身が再録した上記歌集収録の短歌数首を紹介しておきたい。感想など野暮である。

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装甲車つらねてデモをはばむなか<殺ってしまへ>といふこゑがする

警棒に撲たざることをぎりぎりの良心としてわれは追ひゆく

思想なき警官として生きしこと夜ふけの窓にふと涙湧く

武装して守るに価せぬものと議事堂はたつ夜の霧の中

われは一人の死の意味にながく苦しまむ六月十五日の警官として

 


 

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「森友・加計問題を考えるシンポジウム」開催のお知らせ

2017521

(追記)
 このシンポジウムの会場の収容人員は300人です。入場者が300人に達したら、受付を終えます。玄関ロビーでの入館証渡しは14時からですが、早めにお出かけください。


 517日から「安倍昭恵氏ほかの国会証人喚問を求める署名」を呼びかけた各界の有志は、このたび、「森友問題の幕引きを許さない市民の会」を作り、次のようなシンポジウムを開くことになった。

      「森友・加計問題を考えるシンポジウム」

    日時:2017年6月13日、14時30分~
    (14時から玄関ロビーでスタッフが入館証渡し開始)
    会場:衆議院第一議員会館 大会議室(地下1)
   パネリスト
    小川敏夫(民進党参議院議員)
    宮本岳志(日本共産党衆議院議員)
    杉浦ひとみ(弁護士)
    青木 理(ジャーナリスト)
   コーディネーター
    醍醐 聰(東京大学名誉教授)

613


 シンポジウムの広報用チラシ
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/moritomo_kake_sinpo_chirasi20170613.pdf

「森友問題の幕引きを許さない市民の会」のHP
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-7be4.html

会への問い合わせ
 E
メール:moritomosimn@yahoo.co.jp
 電話:070-4326-219910時~20時)

 安倍昭恵氏ほかの国会証人喚問を求める署名
 署名用紙のダウンロード:http://bit.ly/2qkwucT
 ネット署名のフォーム:http://bit.ly/2rdgyXe 
 ネット署名/メッセージの集約状況の閲覧サイト
            http://bit.ly/2r68HhH 



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安倍昭恵氏らの証人喚問を求める署名運動、今日からスタート

2017517

  政府・与党は安倍夫妻が疑惑の中心にいる森友学園問題の幕引きを図ろうと執心しているが、逆に疑惑は深まる一方である。8億余円もの値引きの根拠として、地下9
mのゴミの撤去費用が挙げられてきたが、工事業者自身、そのようなゴミの存在を確認していないと語っているし、籠池理事長も約3m以上、掘った覚えはないと証言している。国会でも、
地下9mとは沖積期時代の地層であり、そのような地層にゴミが存在するはずがないという指摘もされている。
 このような指摘に対し、安倍首相は悪意の「印象操作」と突き放すばかりで、疑惑を払しょくする答弁を全く行っていない。昭恵夫人に向けたれた疑惑についても「妻は妻は」と無内容なはねつけを続け、夫人の証人喚問をかたくなに拒む一方で、野党を挑発するすり替え答弁は切れ目なく続けている。
  しかし、昨日、今日の報道では疑惑は加計学園(岡山市内の学校法人)にも及んでいる。政府が国家戦略特区として同学園が新設を計画していた獣医学部を認定するにあたって、内閣府が文科省に対し、「安倍首相の意向だ」と伝えた文書があるという指摘が国会で出された。

   このように安倍首相がらみの疑惑が深まり、広がるなか、各界の有志15人は連名で「安倍昭恵氏ほかの国会証人喚問を求める要望署名」の運動を企画し、準備が整った今日から、この署名運動をスタートさせた。署名用紙の全文は次のとおりである。
 署名の第一次集約日 614

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安倍昭恵氏ほかの国会証人喚問を求める要望署名

衆議院議長 大島理森 様
参議院議長 伊達忠一 様

呼びかけ人
池住義憲(元立教大学大学院特任教授)/太田啓子(弁護士)/丘修三(児童文学作家)/きどのりこ(児童文学作家)/小林和子(『週刊金曜日』編集長)/笹井明子(老人党リアルグループ「護憲+」管理人)/佐々木江利子(児童文学作家)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐聰(東京大学名誉教授)/武井由起子(弁護士)/根本仁(元NHKディレクター)/藤田高景(村山談話を継承し発展させる会・理事長)/八木啓代(健全な法治国家のために声をあげる市民の会・代表)/湯山哲守(元京都大学教員・NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ)/ 渡辺眞知子(キリスト者政治連盟)

  森友学園問題に関するどの世論調査をみても回答者の78割が「政府の説明に納得できない」と答えています。その最大の理由は鑑定価格9億円余の国有地が約8億円も値引きされて森友学園に払い下げられた経過、根拠について政府が納得のいく説明をしていないことにあります。また、国有地払い下げの経過を記した公文書を廃棄したと繰り返す財務省理財局の答弁にも強い批判が向けられています。
  さらに、時の総理大臣夫人・安倍昭恵氏が、教育勅語を礼賛するなど教育基本法の理念に反する教育を進める森友学園の小学院(20174月開校予定)の名誉校長に就任したことに批判が起こっています。また、昭恵氏が同夫人付きの政府職員を介して、問題の国有地の払い下げに深く関与していた疑惑も指摘されています。にもかかわらず、安倍夫人が沈黙を続けていることに批判が広がり、安倍夫人も籠池泰典氏と同じ条件で証人喚問を行うべきという意見が高まっています。
  そこで私たちは、皆院議長に次のことを申し入れます。
          
                      申し入れ

 

  安倍昭恵氏、迫田英典氏(前財務省理財局長)、武内良樹氏(前財務省近畿財務局長)、田村嘉啓氏(財務省国有財産審理室長)、松井一郎氏(大阪府知事)、酒井康生氏(森友学園元弁護士)をすみやかに国会に証人喚問し、国有地の格安売却など森友学園をめぐる一連の疑惑を徹底究明すること

 -----------------------------------------------------

 *署名用紙のダウンロード → http://bit.ly/2qkwucT
 *ネット署名のフォーム  → http://bit.ly/2rdgyXe 
 *ネット署名/メッセージの集約状況の閲覧サイト
              → http://bit.ly/2r68HhH 
   アクセスして、ネット署名に添えられたメッセージをご覧いただけ
   たらと思う。皆様にも、メッセージを添えてネット署名をお願いし
   たい。
 *問い合わせ窓口
   E・メール:moritomosimin@yahoo.co.jp 
   電話:070-4326-219910時~20時)


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いのち還る季節に根拠なき祝日を想う

 20175月12日

鉄線の咲く季節
  今年もわが家の庭の生垣に鉄線が咲いている。4月の連休に入ってまもなく、暖かな陽射しに誘われるように咲き始めた。それから日に日につぼみが開き、一面に大きな花輪が広がってきた。

20170511
    2009525日に、「鉄線によせて」というタイトルの記事をこのブログに投稿したが、そこで、次のような短歌を載せた。

  鉄線花むらさき沁みる家垣に二人となりし夕餉整ふ  森 淑子

 二人暮らしとなった今の自分に似合う歌のように思え、親しみを感じる。

本が焼かれた広場 
 先日、連れ合いに寄贈いただいた正古誠子・歌集『卯月の庭』(20174月刊、不識書院)をなにげなく読んでいくと、ベルリンのベーベル広場を詠んだ歌が目にとまった。4年前に私たちも訪ねた場所だ。

  言葉の力怖れたるナチは本を焼く狂気といふはたやすけれども
  書物焼きたる広場みぞれに人もゐず地中に並ぶ本のなき棚

 ミッテ地区にあるこの 18 世紀の広場には、オペラ座、教会、図書館がある。道路を挟んで向かいはフンボルト大学だ。この広場はかつてナチスによる焚書が行われた場所だ。夕闇の中、広場の中央にある地面にはめられたガラス窓をのぞき込むと書籍のない書架がライトに照らされて見えてきた。その時撮った写真を探し出して見つめると、忘れかけた旅の思い出がよみがえってきた。と同時に、「言葉の力怖れたるナチ」と詠んだ正古さんの表現などどこ吹く風の今どきの日本の政権党の面々の言葉の不遜、下劣さを思い知らされた。

Photo
Photo_2
還るいのち
 ところで、上の歌が収められた正古さんの歌集の一つ前のページを見ると、こんな歌があった。

  春にしてかへるいのちをたしかむる鉢植の木それぞれ芽吹く

 わが家でも炎天が続く夏以外、水やりもせず放りっぱなしの生垣に毎年、決まった季節にあでやかな紫色の鉄線が一面に咲き出すのを見て、「かへるいのち」を実感させられる。そのような姿を観察して沈着な一首を書き留めた正古さんのセンスに魅せられた。

根拠なき祝日
  そんなわけで、最初は無造作に読み出した正古さんの歌集を繰っていくと、こんな歌が目にとまった。

  根拠なき祝日なれば移動して「みどりの日」といふ 木々は緑に

 なんとも鋭い表現力である。私などは、皇族の減少を心配するより、このまま「象徴天皇制」が続くと、いずれカレンダーが「根拠なき」祝日で埋まってしまうことの方が気になる。


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「あるはずだ」ではなく、現にある文書の調査・活用を~森友交渉記録の廃棄は「脱法」:(第3回)

20174月9

森友学園関連の文書を突き止めるために
 この連載を始める時は、第3回目の記事で、森友学園問題に関連した行政文書と類似の文書の取り扱いの実態を調べ、それを参照して、「森友学園の案件は売買契約の締結を以て終了したので、保存期間を1年未満とした交渉記録は廃棄した」という佐川理財局長の答弁の信憑性、合規性を検証する予定だった。
 しかし、各省庁が公開している「行政文書ファイル管理簿」を、さまざまな条件を設定して検索していくなかで、近畿財務局、さらに局内で国有財産を所管した管財部が管理者となっている行政文書を検索すると、森友学園にどんぴしゃりの文書は出てこなかったが、森友学園関連の情報が含まれている可能性があるカテゴリーの文書にたどり着いた。
 そこで、この記事では、予定を変更して、私が試みた行政文書ファイルの調査の方法と調査の結果を説明することにした。

行政文書ファイル検索の試み
 具体的には、次のような条件を設定して行政文書ファイル管理簿を検索した。なお、以下で検索対象の文書作成・取得の期間を201241日からとしたのは、この時期から「公文書管理法」が施行されたからである。(法施行後に作成・取得された文書の管理簿を「新管理簿」と呼んでいる。)
 と同時に、2016620日に森友学園への国有地売却に至る次のような経緯があったことが知られている。こうした年譜を突き合わせると、上で設定した文書作成・取得の期間は本件国有地をめぐって、近畿財務局が大阪航空局、大阪府私学課、森友学園とさまざまなやりとりをした時期とちょうど重なることがわかる。

森友学園への国有地売却に至る経過 
  2012年  7月頃   森友学園とは別の学校法人が7億円前後で本件国有地を
         購入したいと近畿財務局に申し出た。しかし、金額をめ
         ぐって交渉が折り合わず、売却に至らなかった。

  2013   6 3日 近畿財務局、公用・公共用に本件土地の取得要望を受け
         付け

       9 2日 森友学園が近畿財務局に取得要望書を提出
       913日 近畿財務局職員、大阪府庁を訪問し、森友学園の小学校
         認可の見通しを聴き取り

    10 2日 籠池夫妻、鴻池議員に陳情 
 20141031 森友学園、小学校設置認可申請書を提出
      1218日 大阪府私学審議会、同上申請について認可保留
 この間、森友学園と近畿財務局の交渉継続
20151月   近畿財務局、大阪府私学課を訪問。再度、上記申請の認
         可の見通しを質問。「私学課事務局がある程度まで審
         議
会をコントロールできるのではないか」と発言

201746

     127日 私学審議会、上記申請を条件付きで認可
     210日 国有財産近畿地方審議会、大阪府の私学審議会が付けた
        条件が満たされることを前提として、本件土地を森友学
        園に
10年の定期借地とすることを了承
    529日 近畿財務局、森友学園に本件土地を、買受特約を付けて
        定借

2016 311日 森友学園、定借中の土地から新たに地下埋蔵物が発見さ
        れたと近畿財務局に連絡

    324日 森友学園、本件土地を購入したいと近畿財務局に申し出
    330日 近畿財務局、大阪航空局に対し、地下埋蔵物の撤去費用
        の見積もりを依頼

   414日 大阪航空局、撤去費用の見積もりを81900万円と近畿
        財務局に報告

   531日 不動産鑑定士、本件土地の鑑定評価額を95600万円と
        報告

   620日 近畿財務局、森友学園と本件土地の売買契約を締結。
        売買価格は
13400万円

試行錯誤の文書ファイル検索
<検索条件Ⅰ>
 *キーワード: <国有財産>&<売払い>
 *文書作成・取得の期間:201241日~201749
 *文書管理者:近畿財務局
<検索結果>
 *ヒット件数:0件 キーワードの「売払い」を「売却」、「売買」と置き換えても、ヒット件数はゼロだった。

 そこで、キーワードの条件を緩め、次のような条件で検索した。

<検索条件Ⅱ>
 *キーワード: <国有財産>
 *文書作成・取得の期間:201241日~201749
 *文書管理者:近畿財務局
<検索結果>
 *ヒット件数:711

 今度はヒット件数が多くなったので、ヒット件数を減らすため、文書管理者を国有財産担当の管財部に限定して検索すると結果は次のとおりだった。

<検索条件Ⅲ>
 *キーワード: <国有財産>
 *文書作成・取得の期間:201241日~201749
 *文書管理者:近畿財務局管財部
<検索結果>
 *ヒット件数:229

 そこで、以下では、この229件を検索対象にすることにした。まず、各件の「詳細」を開くと、「作成・取得年度等」、「大分類」、「中分類」、「名称(小分類)」、「作成・取得者」、「起算日」、「保存期間」、「保存期間満了日」、「媒体の種別」(電子/紙の別)、「保存場所」(システム/事務室等)、「管理者」、「保存期間満了時の措置」(移管/廃棄の別)が表示された。
 ここで注意しなければならないのは、全ての件の「作成・取得年度等」が「2015年度」など年度単位になっていることである。これは相互に関連する文書は1件ごとではなく、年度単位で束ねてファイリングされていることを意味する。
 したがって、229件のどの文書を見ても、「森友学園」とか、「豊中市」とか言った文言は見当たらなかった。そのため、「名称(小分類)」で表記されたタイトルから、森友学園の案件を含むと想定できる文書を選び、その文書の年度ごとのファイルを逐一、調べることによってしか、森友学園関連の文書にアクセスする方法はないと思われた。

ファイルをスポット検索すると
 229件といっても、1件ごとの詳細情報を読んでいくと、国有財産地方審議会の委員任命文書、付議文書、議事録のほか、国有財産の台帳整理、行政表彰の選考案、庁舎使用に関する文書など、すでに公表済みの文書や森友学園関連とは無縁のものが少なくなかった。
 そこで、各ファイルの内容をうかがわせる「名称(小分類)」に注目して、森友学園に関わる記録が含まれている可能性があるファイル(未利用国有地の活用・処分に関する現況を記した文書、処分計画を策定した文書、鑑定評価依頼書など)をスポット的に調べた。

 調べ終えて、森友学園にたどり着くのは至難の道と実感した。しかし、「残っているはずだ」、「隠しているのでは?」と言い続けるだけでは真相究明は前へ進まない。
 そこで、以下、私が注目したファイルをリストアップしたい。なお、たとえば、「処分すべき国有地の現況調書」とか、「国有財産1件別情報」とか言っても、文書管理者は京都事務所、神戸事務所、奈良事務所など所在地ごとに細分されている。以下のリストは、地域事務所ではなく、近畿財務局管財部が管理者となっている文書、つまり、大阪府内に所在する国有地に係わるファイルに限っている。また、各文書ファイルの冒頭の文書名は大・中・小の分類階層の内の「小分類」、つまり、最も細分化された分類名である。また、作成・取得年度は、特に断らないかぎり、20122016年度の全ての年度に保有されている。保存期間の起算日は、特に明記しない限り、すべて作成・取得年度の翌年度の41日だった。

調査する価値があると思われる文書ファイルのリスト
「管内における国有財産の現状
  作成・取得者(=管理者。以下、同じ):管財総括第2課長
  保存期間:3
 *文書名だけでは内容を推定するのは難しいが、近畿財務局が保有した国有財産を俯瞰するのに役立つと思われる。

「売払収入収納見込(実績報告)」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:3
 *森友学園に本件土地が買受特約付きで定借される以前から売却されるまでの間、学園に売払った場合の収入見込みがどのように記載されていたか(いなかったのか)、確認できると思われる。

「処分すべき国有財産の現況調書」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:3
 *森友学園に本件土地が買受特約付きで定借される以前から売却されるまでの間の本件土地の現況がどのように記載されていたのか、確認する意味がある。

「国有財産事務担当者連絡会議」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:3
 *簡単な会議録程度かも知れないが、本件土地について、何か触れられていないか、確認してみる意味はある。

「処分計画の策定」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:5
 *本件土地が森友学園へ売却されるまでの間、別の学校法人からの購入申し込みも含め、処分計画がどのように記載されていたか(何も記載されていなかったか)、確認する意味はある。

「国有財産見込現在額事由別調書」
  作成・取得者:管財総括第3課長
  保存期間:5
 *本件土地が森友学園へ売却されるまでの間、本件土地の現在額が、事由別にどのように記載されていたか、確かめる価値がある。

「国有財産13億円以上増減調書(大分類名:平成○○年度国有財産増減及び現在額報告書)」
  作成・取得者:管財総括第3課長
  保存期間:5
 *物件ごとの面積、金額の情報だけかもしれないが、本件土地の評価額は3億円以上だったので、おそらくこの文書に何らかの記載があると思われる。

「未利用等国有地の総点検」
  作成・取得者:国有財産調整官1
  保存期間:5
 *この文書ファイルで注目したいのは、国有財産調整官が文書作成・取得者となっている点である。近畿財務局のHPに記載された職務分担表によると、国有財産調整官は、普通財産の管理処分に関する企画立案、債権管理、徴収・収納事務、法令・通達適用審査の業務を担当する部署となっている。
 この点から、本文書ファイルには森友学園への本件土地の定借、売却に関する何らかの経緯、方針、法令の適用・解釈等が記載されている可能性がある。

「国有財産一件別情報」
  作成・取得者:国有財産調整官1
  保存期間:3
 *「1件別情報」と言われると、本件土地に関してもそれなりに詳しい情報が記載されているように思えるが、大分類は「平成○○年度国有財産情報公開システム」となっているので、外部公開を前提した情報とみられるので、未確認の情報は含まれないかもしれない。

「未利用国有地の現状把握」
  作成・取得者:国有財産調整官1
  保存期間:5
 *前記の「「未利用等国有地の総点検」と同様、この文書ファイルも作成・取得者は国有財産調整官となっており、管財部の中でも国有財産の管理処分に関する企画立案、法令解釈等の観点からまとめられた文書と思われ、調査する価値がある。

⑪「取得協議等審査」大分類「平成○○年度国有財産の評価に関する事項」、中分類「鑑定評価」)
  作成・取得者:首席国有財産鑑定官
  保存期間:5
  *「首席国有財産鑑定官」が文書作成・取得者となっている数少ない文書ファイルである。前記のように、森友学園は201392日に本件土地の取得要望書を近畿財務局に提出している。したがって、2013年度から2016年度にかけてのこの文書ファイルに森友学園からの取得要望に関する審査・検討の状況が、本件土地の鑑定評価も含め、何らかの形で記載されている可能性が高い。それだけに必見の文書ファイルと言える。

 の文書ファイルはファイルのタイトルを見る限りでは、「交渉記録」、それも8億円もの値引きに至る交渉記録を直接伺わせるものは見当たらない。その意味ではこれらの行政文書を「宝物さがし」のように扱うのは禁物である。
 
 48日の『東京新聞』朝刊の<こちら特報>欄に掲載された「森友ファイル 実は温存?」という記事は時宜にかなったもので、興味深く読んだ。ただ、記事は「交渉記録」に焦点を当てて、「どこかにあるはず」というトーンで書かれている。
 私もこの連載の1回目の記事で書いたように、向こう10年の賦払いで、10年間有効の買い戻し特約が付いた売買契約を締結したことを以て、「案件は終了した」などと考える行政職員は、まず、いないから、交渉記録も含めた文書がどこにもないとは到底、思えない。
 しかし、佐川理財局長の国会答弁を、目下、利用可能な資料を活用して反証するには、役人は文書を「特定しないとなかなか出さない」と嘆くだけではらちがあかない。

 この記事でリストアップした行政文書ファイルを国会議員、報道関係者が未入手なら、特にあたりを至急、入手してもらい、精査の上、そこから芋づる式に調査を進めてほしいと思う。私自身、近畿財務局へ出かけ、文書ファイルをめくりながら、調査したい気持ちは山々だ。しかし、そうなると45日は現地に張り付いて調べものをしなければならず、もどかしい気持ちでいる。 

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起算日規則に従えば記録は残っているはず~森友交渉記録の廃棄は「脱法」:(第2回)

201747
 
保存期間1年未満でも即廃棄とはならない
 佐川宣寿理財局長は、森友学園への国有地売却の事案は契約の締結を以て終了したので、省内の規則に従い、保存期間1年未満の文書として廃棄したと答弁している。
 確かに、「保存期間1年未満」となると「即廃棄もあり」かに思える。専門家の中には、これを逆からとらえて、「即廃棄も可能となる『保存期間1年未満』という規則や慣例は不当だ」と指摘する論者もいる。
 しかし、こうした議論には、行政文書の保存期間に「起算日」があることを考慮しない致命的な欠陥がある。

 「財務省行政文書管理規則」の第13条第4項によると、行政文書の保存期間の起算日は原則として行政文書を作成・取得した日の翌年度の41日とする、となっている。
 とすれば、森友学園関連の行政文書の管理者である財務省近畿財務局長が、本規則を順守していたら、かりに保存期間が1年未満だったとしても、保存期間の起算日は201741日となるから、森友学園への国有地売却問題が審議された今年の2月~3月の時点では問題の文書は「あった」はずである。

森友関連の文書に「ただし書き」は当てはまらない
 ただし、上で引用した「財務省行政文書管理規則」の第13条第4項には、上記の文章に続けて、次のような「ただし書き」がある。

 「ただし、文書作成取得日の属する年度から1年以内の日であって41日以外の日を起算日とすることが行政文書の適切な管理に資すると文書管理者が認める場合にあっては、その日とする。」

 ここでいう「行政文書の適切な管理に資する」とは、どういう意味なのか? 近畿財務局はこのくだりを使って、起算日を翌年度(2017年度)の41日より早い日とすることができたのだろうか?
 そこで、この文言の解釈を確かめるため、331日、財務省文書課文書係に電話で問い合わせた。そして、途中で代わって応対したOさんと、概略、次のようなやりとりをした。

 醍醐 「第13条第4項の『ただし書き』を保存期間1年未満とされた森
    友学園関連の行政文書に適用したら、文書を作成した後、今年
    の
41日より早く文書を廃棄することもありとなりますが、そ
    ういう処理は想定できますか? 
 
O 「・・・・」
 醍醐 「『ただし書き』で言われる『行政文書の適切な管理に資する』
    という文言を使って、森友学園関連の交渉記録を売買契約締結の
    あと、すぐに廃棄するのは無理な解釈だと思いますが。」
 
 O氏 「・・・・」 
 醍醐 「私の言っていることは法規の解釈として明らかにおかしいです
    か?」
 
O氏 「ご意見としてうかがっておきます。」

 この時、私は起算日以外のこともいくつかOさんに尋ねた。情報公開請求をしなければ入手できない「細則」について、一部を口頭で読み上げて教えてもらったりした。そして、「規則」や「細則」に関する質問には明快にYesNoで答えてもらった。しかし、起算日については、日頃あまり出ない質問だったためか、はっきりした答えが返ってこなかった。そこで、私は自分の解釈は、あながち見当外れではないのではと思ったりした。

 というのも、1つ前の記事で書いたように、起算日を翌年度の41日としない事例の大半は、訴訟関係資料(特定日以降10年保存)、告示・訓令・通達等(通知日を起算日としている模様)、休暇簿、出勤簿など(暦年を用いて11日を起算日としている)、確かに行政事務に資すると思える理由がある場合ばかりだった。森友学園関連の文書に、これに類するような行政事務上の便宜は想定できないのである。

類似の行政文書はどう扱われたか?
~国有財産の売却に関連した行政文書ファイル管理簿の調査より~
 しかし、それは「心証」だと言われたら、それまでだ。そこで、各省庁所管の「行政文書ファイル管理簿」をネットで検索して、森友学園関連の行政文書と類似の文書はどのように管理されたか――具体的には、類似の文書の保存期間の起算日はどのように決められたか、保存期間はどのようになっていたか――を調べてみた。私の調査はまだまだ限られた範囲であるが、これまでに次のような条件で検索した。その結果を書き留めておく。

〔検索の方法〕
 キーワード:<国有財産>&<売却>
 文書作成・取得日の期間:201341日~201746
 文書管理者:全省庁

〔検索の結果の概要〕
 ヒット件数:45件 うち、森友学園案件に類似した文書31
  (注:その他14件のうち13件は「処分すべき国有財産調査票及び売却
    予定表」、
1件は「国有財産用途廃止」に関わる文書)
  *保存期間の起算日(45件すべて)
    文書作成・取得日の翌年度の41日(原則通り) 43
    文書作成・取得日の年度末(331日) 1
    文書作成・取得日の翌年11日(この文書の保存期間は10年)
         1
  *保存期間(森友学園案件に類似した文書31件の場合)
    3年:5件  5年:21件  10年:3件  30年:2

〔コメント〕
  起算日は、45件全体の96%に当たる43件で原則どおり、文書作成・取
  得日の翌年度の
41日となっていた。
 残りの2件のうち1件は文書作成・取得日の年度末(331日)で、原
  則を採用した場合と
1日違い、もう1件は原則日より3ヶ月早い、文書
  作成・取得日の翌年の
11日だった。しかし、この場合も文書の保存
  期間は
10年だったから、文書が作成・取得された年度内に廃棄される
  ことはなかった。

  森友学園案件に類似した文書31件の保存期間はすべて3年以上で、68
  %は5年だった。しかし、そうはいっても、保存期間1年未満とされ、
  保存期間が満了したため、すでに廃棄された文書があった可能性は
  ある。

  以上から、今回調査を行った国有財産の売却に関連した行政文書を見
  る限り、文書の保存期間の起算日を、文書が作成・取得された年度内
  の恣意的な月日と決めて、
1年未満で文書を廃棄した(できた)と考
  えられる事例は見当たらなかった。


佐川理財局長の答弁のジレンマ
~違法行為? それとも虚偽答弁?~

 このような調査と「財務省行政文書管理規則」の条文解釈を踏まえると、森友学園関連の行政文書を今年の41日よりも前倒しで廃棄することは事実上、不可能だったといって間違いない。
 とすれば、森友学園関連の行政文書は、超最短でも今年の41日までは保存されていたはずだ。にもかかわらず、佐川理財局長は今年の224日に開かれた衆議院予算委員会で、森友学園への国有地売却の事案は2016620日の契約締結を以て終了したので、省内の規則に従い、保存期間1年未満の文書として廃棄し、もはや残っていないと答弁した。その後、3月中に開かれた委員会でも同様の答弁を繰り返した。
 そうなると、佐川理財局長の答弁は次のABのどちらかを意味すると考えるほかない。

  A:近畿財務局は「財務省行政文書管理規則」第13条第4項に反
   して、今年の
41日以降、所定の保存期間満了日まで保存し
   なければならなかった行政文書を、それ以前に廃棄するとい
   う違法行為を行った。

  B:今年の23月の時点では実際には「あった」文書を「ない」
   と虚偽の答弁をした。


 現在の私には、AB以外の第3の可能性は想定できない。と同時に、「起算日」規則を知らないはずがない行政事務、法令解釈に精通した財務省役職者が、違法を承知で、今年の41日以前に森友学園関連の行政文書を廃棄するとは考えられないから、Bが真相ではないか? そう考えて、「残っているはず」というタイトルを付けた。
 実際はABのどちらなのか? 国会議員各位は簡単にいなされる質問ではなく、入念な調査のうえ、ギリギリ詰めた質問で、真実を究明してほしい。



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森友交渉記録廃棄は「脱法」:その法的根拠は幾重もある(第1回 総論)

201745

 調査を進めて浮かび上がったこと
 森友学園へ格安で国有地が売却された経緯について、約8割の市民が納得できないと答えている。その大きな理由の一つは、交渉記録は残っていないと財務省理財局が強弁していることにある。佐川宣寿理財局長は、契約の締結を以て事案は終了したので、省内の規則に従い、保存期間1年未満の文書として廃棄したと答弁している。しかし、この説明は到底、納得できない。
 それどころか、公文書管理の関係法令、規則を調べ、内閣府、財務省への問い合わせ、財務省ほかいくつかの省の行政文書ファイル管理簿の調査を進めると、かりに佐川理財局長の答弁通りだとしたら、この件の行政文書管理者である当時の近畿財務局長ないしは本省理財局長は「公文書等の管理に関する法律」第6条に違反する行為を行った疑いが強まる。以下、私がそのように判断するに至った根拠を数回に分けて説明する。

 第1回 「契約締結で事案は終了した」は誤り
 第2回 「保存期間の起算日は翌年度の41日」に違反
 第3回 類似の行政文書に準じると35年間保存が義務
 第4回 他の省の実例に照らしても「廃棄」は不当 

 なお、この連載では、「交渉記録は廃棄した」という佐川理財局長の答弁が事実だと前提して議論をする。しかし、違法性を承知の上で廃棄したとは考えにくいから、前提そのものを改めて、文書は残っていると推論するこを排除していないことを、前もって断っておく。

 まず、この第1回の記事では根拠説明の「総論」を兼ねて、「契約締結で事案は終了したので廃棄した」という佐川理財局長の答弁が誤りであることを論証する。

「契約締結で事案は終了した」とは到底いえない

(理由その1)売買代金の完済は10年先。その完済も赤信号
 まず、佐川局長の答弁とは裏腹に、契約の締結を以て事案は終了したとは到底いえない。2016620日に近畿財務局が森友学園と交わした売買契約書では売買代金13,400万円の支払いは向こう10年の賦払いとされた(第5条)。そのため、契約締結の時点で森友学園が国に即納すべきとされたのは総額の約2割(2,787万円)に過ぎなかった。(実際に森友学園が契約時に即納したのは、売買契約に先立つ定借契約で森友学園が国に納めていた保証金2,730万円を差し引いた57万円だった。)
 
 その先、地下埋蔵物の撤去費用が本当に約8億円だとしたら、森友学園がこの撤去費用の負担はもとより、10年の定期借地の間に小学校用地を買い取る資力があるのか、計画通りに児童と寄付金が集まるのかについて、国有財産近畿審議会でも大阪府の私学審議会でも疑問が続出していた。

近畿財務局が森友学園と国有地の売買予約権付の定期(10年)借地契約を結ぶ案件が審議された「第123国有財産近畿地方審議会」(2015210日開催)の議事録を読むと、会長を含む複数委員から、基本財産が乏しく、寄付に頼る森友学園が定借期間内に土地を買い取れず、定借期間の延長になる恐れはないのかとか、児童が集まらず閉鎖に追い込まれる危険はないのかなど、不安視する意見が相次いでいた(詳しくは末尾の〔付属資料1〕を参照いただきたい。)

 森友学園の小学校開校の可否を審議した大阪府私学審議会でも、20141218日に開かれた会合で、委員から、「基本金がゼロだから計画性がない。かなり赤字になっているのでは」とか「もしうまくいかなかったら迷惑を被った保護者や子供たちに誰が責任をとるのか」といった厳しい意見が出ていた。
 それから2か月後の2015127日に開かれた臨時の審議会でも、委員の中から、「児童・生徒を集めて開校しても計画が頓挫したら、結果的に運営ができない」とか、「こんな絵空事でうまくいくとはとても思えない」といった意見が出ていた。それでも大阪府教育庁の私学課が森友学園の「財務状況を適正なものと判断している」と発言したため、委員のためらいもそこで止まり、「疑念のある点については本審議会が今後も確認を進めるべき」という条件を付けて開校認可となった。

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 今になって委員からは匿名を条件にこんな発言も。(329日、「報道ステーション)

         私学審メンバー 「松井知事と維新の報復が怖い」
329
 もともと10年賦払いだったのに加え、上で触れたように森友学園の財務状況が危ういとなれば、売買代金の完済も赤信号となる。であれば、2割ほどの即納金を得た売買契約の段階で事案終了とみなすのは常識的に無理である。

(理由その2)行使される可能性が低くなかった買い戻し特約があった
 2016620日に近畿財務局と森友学園が交わした国有財産売買契約書では、森友学園は、売買物件について2017331日(以下「指定期日」という)までに必要な工事を完了し、指定用途(注:学校用地)に自ら供さなければならない」(第23条第1項)とされ、この指定期日までに土地を指定用途に供さない場合、近畿財務局は売買物件を買い戻すことができるという特約が付けられていた(第26条第1項)。ただし、近畿財務局による、この買戻し権は売買契約の締結日から10年間、有効となっていた(第26条第2項)。

 森友学園が(理由その1)で指摘したように、きわめて不安定な財務状況にあった中では、この買戻し特約が実行される可能性は低くなかった。とすれば、狭く解釈しても、買い戻し特約が実行される日、または買い戻し特約の有効期間が終わる2026619日までは森友学園への国有地売却の事案は終了しないと考えるのが適当である。

類似の文書の実例に照らすと35年保存すべき文書だった

 次に、「保存期間1年未満の文書として廃棄した」という扱いにも疑問がある。近畿財務局は大阪府教育庁、大阪航空局と学校認可の見通し、土地の鑑定評価、地下埋蔵物の撤去に要する費用の算定などをめぐって、たびたび、協議していた。

「財務省行政文書管理規則」の別表第1によると、他の省庁との協議の経緯を記録した文書の保存期間は10年となっている。また、国有財産の管理・処分に関する重要な経緯を記録した文書の場合も10年となっている。
 ただ、「他の省庁との協議」とか「国有財産の管理・処分に関する重要な経緯」とか言っても、内容はさまざまで重要性をどのように判断するかで保存期間も違ってくると考えられる。

 そこで、財務省あるいは近畿財務局が管理者となっている「行政文書ファイル管理簿」のうち、201441日以降に作成または取得された行政文書で、森友学園への国有地売却の経緯を記した交渉記録に近似する文書名を検索した。すると、近畿財務局内の国有財産関連部署の内部会議の記録文書の保存期間は3年、国有地の管理処分に関する要望、協議の記録文書の保存期間は3年ないしは5年となっていた。
 ここから、今回の森友学園への国有地売却の経緯を記した交渉記録は35年の範囲で保存されるべき行政文書であったと考えられる。にもかかわらず、「保存期間1年未満」とするのは、違法とまでは言えないとしても、不当不適切な処理だったといえる。(詳細は、この連載の3回目の記事で説明する。)

「保存期間の起算日」規則に照らせば、「不存在」はあり得ない

 「財務省行政文書管理規則」の第13条第4項によると、保存期間の起算日は原則として行政文書を作成・取得した日の翌年度の41日とする、となっている。となると、たとえば、2016年6月20日に作成した行政文書の保存期間をかりに5年としたとすると、保存期間の起算日は2017年4月1日となり、保存期間の満了日は2022年3月31日となる。
 現に、全ての「行政文書ファイル管理簿」を公開している厚労省の行政文書のうち、これまでに調査を終えた政策統括官(総合政策担当)、職業安定局雇用開発部、医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部、社会・援護局の
4つの部署が管理する行政文書の約95%は保存期間の起算日を原則どおり、文書作成日の翌年度の41日としていた。

 起算日が、文書を作成・取得した日の翌年度の41日ではないのはどのような場合かというと、作成年度の331日(原則と1日違い)、訴訟関係資料(特定日以降10年保存)、告示・訓令・通達等(通知日を起算日としている模様)、休暇簿、出勤簿など(暦年を用いて11日を起算日)としている場合が多かった。
 「保存期間1年未満」という事例は私が調べた限り(内閣府、厚労省)では皆無で、稀に「保存期間1年」という文書があった。ただし、そのすべては起算日を原則どおり、翌年度の41日としていた。

 以上から、かりに百歩譲って、近畿財務局が森友学園への国有地売却の経緯を記した交渉記録の保存期間を「1年未満」と決めていたたとしても、起算日規則に照らすと、最短でも今年の41日までは保存しておかなければならなかった
 よって、この23月に開かれた衆参両院の予算委員会等で、佐川理財局長が答弁したとおり、それら文書を「保存期間1年未満」とし、国有地売買契約の締結で事案は終了したので交渉記録は廃棄した」とすれば、明らかに違法(「財務省行政文書管理規則」第13条第4項に違反)な行為となる。
 ただ、行政文書管理に精通した行政機関が本当にそのような取り扱いをしたのか、大いに疑問で、文書がなお存在する可能性が高いと思える。(詳細は、この連載の第2回の記事で説明する。)

まとめ

 1.「売買契約の締結を以て事案は終了したので交渉記録は廃棄した」という佐川理財局長の答弁は、それが事実の説明だとすれば「起算日基準」を脱法する違法行為となる。事実の説明でないとすれば、虚偽答弁である。

 2.財務省が作成・取得した類似の行政文書の管理方法を参照すれば、保存期間を3~5年とするのが適当と考えられる。ただし、今回の森友学園の事案では、売買契約に付された買い戻し特約の実行日または失効日の翌年度の4月1日を起算日として、財務省国有財産関連の類似の行政文書の管理に準じ、保存期間を3~5年とするのが適当(だった)と考えられる



〔付属資料 1〕
「第123回国有財産近畿地方審議会」(2015210日開催)議事録からの抜粋

 「H委員 ・・・・この少子化の中で、『私立の小学校を作るのでその運営主体に土地を売却する』ということですが、私学の小学校経営というのは本当に大丈夫なのでしょうか。・・・今後の10年で私立の小学校の経営環境というのはそれほど改善しないと思われますが、いざ、売却する段になって、地価が上がっていて、買い手が『その価格では買えません』と言い出すリスクはないのでしょうか。」

 「立川管財部次長 リスクはあると思いますが、一般的に同様の事案全てにあてはまることだと思うのですけれども、リスクは一定程度あるのだというふうに思っています。・・・・定例的に財務内容、決算書とかそういった財務関係書類を提出していただいて経営状況といいますか、お金の具合といいますか、内部留保の積み上がり方をチェックさせていただくというふうなことを考えておるところでございます。」

 「K委員 ・・・・ということで、そこまでの安全はきっと私学審議会でチェックされているとは思いますが、その上で10年経って定借延長します。しかし、さらに経営が改善される見込みがなくて募集停止になりましたというような最悪の際には、こういう土地は定借の期間をあるところで打ち切って国に戻すというような流れになるのでしょうか。」

 「立川管財部次長 ・・・・そういった契約解除するまでにも法律上至らないような場合でも、10年後には確定的に戻ってくるということで、一応最大の担保はそこだというふうに考えておるわけですけれども、そういった事態にできるだけならないように、平素からちゃんとグリップしていこうとは思っていますけれども。」

 「K委員 今おっしゃったのは、10年後には確実に戻ってくるとは言えないのですよね。」

 「中野会長 ・・・・私もこの学校を知りませんけれども、いわゆる基本財産というものが小さくて学校を作る、それでスケジュール表の中で来年4月にもう開校になっているのですね。まず、建てるだけでも1年間で建てられるのかという問題がありますが、募集を始めるということになっているわけですね。小学校開校をね。だから、スケジュール的にものすごく短い。・・・・それから寄附金で建物を作ると。これだけでも10数億円はかかるはずですよね。この坪数から言うと。
 だから、そういう意味では、おっしゃるように継続できるのかと。寄附金でやるからいいんだということになるのでしょうし、それから学校法人法では基本的には所有するという前提になっていますよね。学校法人は、こういう借地をするときですが、こういう国有地の場合は認められるかもしれませんが、一般的には駄目で、非常に異例な形だなという感じの印象を持っています。ですから、貸付けを10年間やって、10年後に買ってもらうという形なので、ちょっと今までの案件とは随分、性格を異にするような案件のように私は思っています。」 

〔付属資料 2〕参考資料
*「公文書の管理に関する法律」
  http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO066.html 

*「財務省行政文書管理規則」
http://www.mof.go.jp/procedure/disclosure_etc/disclosure/kanrikisoku/bkanri20150401.pdf
 

*「第127回国有財産近畿地方審議会の開催結果」(2017323日開催)
  http://kinki.mof.go.jp/content/000166370.pdf
 この中に、
  ・「第123回国有財産近畿地方審議会(2015210日開催)議事録」
  ・「国有財産売買契約書」
 が納められている。

*「厚労省行政文書ファイル管理簿一覧」
  http://www.mhlw.go.jp/shinsei_boshu/gyouseibunsho/



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