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御巣鷹の誓いはどこへ―日本航空の安全性問題を考える(1)―

安全性問題を正視して

 日本航空の内紛騒動をめぐってワイドショ-ばりの報道があふれている。私のところへも、同社と機長組合の裁判にかかわったというだけで、この一週間、週刊誌や某テレビ・ニュース番組から取材の仲介依頼が来た。しかし、問題の発端が、同社の航空機の相次ぐトラブル、それに起因すると見られる乗客離れだったことを正視して、問題の核心を掘り下げることが求められる。この記事では、日本航空の航空機の安全性に直結する機体整備の実態について、私が確かめた知見を記すことにしたい。

風化する安全の誓い

 1985812日、日航ジャンボ機ボーイング747SR100が群馬県御巣鷹の尾根に墜落して520名の犠牲者を出した。墜落の原因は特定されなかったが、この惨事を機に日航は機材の安全性確保のためにいくつかの改善策を講じた。なかでも、日航は事故までの約20年間、ボーイング社が推奨した信頼性整備方式(定期的な分解手入れをせず、定期的な点検・試験ないしは実際に発生じた不具合に関する情報の解析によって随時、部品の交換や修理等、必要な処置を行う方式)を採用していたが、御巣鷹山事故を機に747機について定例整備(45年間隔で行われる大規模な機体の構造検査・改修など。重整備とも言われる)を導入し、整備の自社主義を謳った。

 しかし、事故から10年経った頃から、機材整備に関する政府の規制緩和政策もあいまって、日航の整備に関する考え方は大きく転換してきた。その象徴ともいえるのは、次回、やや詳しく説明する重整備の海外委託である。しかし、それ以外にも、コスト削減を図るための整備の「簡素化」が次々と打ち出された。例えば、

 1. 御巣鷹山事故の後、日航は当時の最高経営会議の方針として、機材の安全性を高めるために航空機ごとに担当整備士を配置する機付整備士制度を導入した。しかし、2003年、日航経営者は限られた人員と部品を有効に使うと称してこの制度を廃止した。

 2. JALグル-プが昨年3月に発表した向こう3年間の中期経営計画では、これまでそれぞれの専門性の違いにもとづいて、機体整備部門と運航整備部門が分れていたのを、両方の整備ができるよう改めることにした。

 3. このほか、御巣鷹山事故以後も、海外メーカーの検査指針を鵜呑みにした定期検査がなお続いている。例えば、昨年8月に日航の子会社、JALウェイズのDC10型機が福岡空港を離陸直後にエンジンの異常燃焼が発生し、大量の金属片が落下するという事故が起こった。このエンジンの製造元の米国プラット・アンド・ホイットニー社は2500時間に1回の割合で定期検査を指示していた。しかし、このトラブルが前回検査から2292時間後に起きたものだったことから考ええると、ホイットニー社の指針には安全性に問題があったことになる。なお、日航は国交省の指導もあって、昨年8月以降は検査期間を1250時間間隔に、今年の2月からは1000時間間隔に短縮している。

整備の現場の声

 2004223日付で発行された航空労組連絡会の『航空連ニュース』No.169に、「安全アンケートからみた整備現場」というデータが掲載されている。そこで集計された整備ミス・インシデントの分類によると、「人員不足」(121件)、「規程違反」(105件)、「確認不足」(76件)、「時間的制約・定時出発率」(62件)が上位に並んでいる。これらは程度の差はあれ、どれも人為ミスといえるものばかりである。

また、このアンケートには、「発見した故障を、出発に支障がない様に時期をずらして発見したことにしたり、見ぬふりをした」、「交換部品の在庫が無い為ダメなものもOKにせざるを得なかった」、「欠航になってもおかしくない故障を、そのままにして定刻に出したことが賞賛される風潮はおかしい」といった声が寄せられたことも紹介されている。

これでは、御巣鷹山事故で尊い命を奪われた520人の人々とその遺族の無念の思いは報われようがない。

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