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メディアが伝えなかった警察の不作為―ヤミ金自殺事件の報道に思うこと―

5回も相談を受けながら、動かなかった警察

去る7日、大阪府警など合同捜査本部は、20036月、大阪府八尾市で夫婦ら3人が、ヤミ金融業者の脅迫的な取り立てに悩んだ末、JR線路上にしゃがみ込み、心中した事件に関係したヤミ金グル-プの6人を(再)逮捕した。

38日の各紙朝刊はこの事件を社会面で大きく報道したが、それを見て、私は釈然としない思いがした。というのも、この夫婦は心中に至る前に八尾警察に2回、大阪府警に3回、相談していたにもかかわらず、警察は脅迫的な取り立てから夫婦を守る有効な手立てを講じなかった。警察のこうした不作為が3人を心中に追いやる一因であったと考えられるのに、今回の犯人グル-プ逮捕の報道は、そうした背景事情に一切触れていないのである。

私が、いまでもこの八尾市の事件に強く関心を持つ、もう一つの理由は、ちょうど事件当時、委員の一人として参加していた長野県外郭団体見直し専門委員会での経験からである。当時、私たち専門委員会が「長野県暴力追放県民センタ-」の廃止方針を打ち出した時、県警ばかりか、日本弁護士会や長野県弁護士会・民事介入暴力被害追放センタ-が、この八尾市心中事件も例に挙げ、暴追センタ-の存続を執拗に訴えてきた。そこで、専門委員会は20031222日、日弁連ならびに長野県弁護士会・民事介入暴力被害追放センタ-代表と、警察の「民事不介入」の評価をめぐって、報道関係者が傍聴する中、激しい論争を繰り広げた。

(専門委員会と弁護士会とのやりとりの概要は次の文書を参照いただきたい。)
 http://www.pref.nagano.jp/soumu/gyoukaku/s23/minutes23.pdfpp.27~)
 http://www.pref.nagano.jp/soumu/gyoukaku/boutsui.htm

民事不介入を盾にした警察の不作為をかばう弁護士会の怪

 私たち専門委員会は暴追センターや県警から提供された同センターの資料やヒアリングを通じて、
 ①センタ-の事業費の96.7%は県からの補助金・委託費で賄われている。
 ②人的な面でも、プロパ-職員は1名、管理職も1名(県警OB)のみで、センタ-に寄せられた相談の大部分は県警や弁護士会に回送され、センタ-自身で完結した案件はほとんどない、

という実態(数字は2002年度)を把握した。そこで、専門委員会は暴追センタ-には団体としての実体は希薄で、自立した業務といえるものがほとんどない以上、これを存続させる必要性はなく、暴追関係の相談業務は県警あるいは弁護士会が担当すれば支障はないと考えたのである。

 県警がこうした委員会の提言に抵抗したのは予想されたことだった。私たちにとって予想外だったのは、なぜか、長野県弁護士会・民事介入暴力被害追放センタ-、さらには日弁連までが、警察の「民事不介入」を持ち出して、執拗に暴追センターの存続を訴えてきたことだった。彼らが専門委員会に提出した意見書の中で次のように記していることを、私は多くの人々に知らせたいと思う(下線は醍醐追加)。

  「そもそも警察は犯罪の捜査と治安の維持を任務とし、民暴被害の救済を任務としておらず、一般的に民事・商事の法律知識も持ち合わせていません。したがいまして、警察に民暴被害の救済を期待すること自体に無理があります。」(長野県弁護士会・民事介入暴力被害救済センタ-、意見書、20031216日)

  「最近、大阪府八尾市の老夫婦が早くから警察署に相談していたものの支援を受けることができずに命を絶った痛ましい事件があったが、仮に、暴力追放センタ-など然るべき相談機関に相談していれば、このような悲劇は防げたかもしれない。」(日弁連意見書、20031218日)

 しかし、民暴事件とは文字通り、民事に暴力(刑事)が絡んだ事案であり、民事か刑事かと線引きをして済まないところに特徴がある。弁護士会は百もそうしたことは承知のうえで、民暴を警察の守備範囲から外し、それを暴追センターの独自業務として描くことによって、なりふり構わず、同センターを存続させる必要性を訴えようとした底意が透けて見えた。

 「暴力追放センタ-など然るべき相談機関に相談していれば、このような悲劇は防げたかもしれない」という日弁連の意見は、夫婦が相談を行く先を間違えたと言いたげであるが、亡くなった夫婦を冒涜する発言である。日弁連が強調すべきは民事不介入を盾に夫婦の悲痛な訴えを受け止めなかった警察の不作為であって、この事件を引き合いに出して実体のない暴追センタ-の存続を正当化することではない。

 それにしても、長野県弁護士会・民事介入暴力被害追放センタ-があれほど暴追センタ-の存続に執心した理由は何だったのだろうか? 警察は身の危険を感じて駆けつけた市民の訴えを聞き流してでも優先しなければならない、どのような用務を抱えているのだろうか?

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