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人格権を蹂躙する日勤教育を放免してきた司法と行政(1)

早くから告発されていた日勤教育の実態
 
425日でJR西日本の福知山線列車脱線事故から1年が経過した。その2日後の27日、同社の「日勤教育」によって人格権を侵害されたとしてJR西日本労働組合(JR西労)に所属する運転士と車掌264人が大阪地裁に総額で2億6,400万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。多くの人は今回の事故で始めて「日勤教育」という言葉を知ったと思われる。私もその一人である。しかし、調べていくと、日勤教育は福知山線事故以前から、運転士(の遺族)らによっていくたびか違法性が提訴され、判決でも部分的にせよ訴えが認められていたことがわかった。ここでは判決文を入手できた2件の要旨を紹介しておく(下線は醍醐が追加)。

区長の権限濫用、差別処遇を違法とした大阪地裁判決(平成10年(ワ)第4622号、損害賠償請求事件、2000927日判決
 
*「日勤期間が長期に及ぶことによる賃金の不利益は大きいのであるから、いかに指導教育のためとはいえ、・・・・客観的な根拠もなく長期の日勤勤務を命じることは違法というべきである。」
 *「・・・・客観的な根拠を有する場合はやむを得ないとしても、同被告が述べるところでは、主として区長面談の際の態度や応答、提出レポ-トにわずか数行しか記載がなく、また、記載内容も真摯なものと認められないことから意欲や反省が不十分と判断したなどというものであり、主観的な判断が主たる理由となっているのであって、かかる主観的な理由を根拠に実質1か月以上に及ぶ日勤勤務を合理化することはできず、少なくとも、右
26日以上の13事例の日勤勤務はいずれも違法であったというほかない。」
 *「右のとおり違法と考えられる長期の日勤勤務が著しく原告組合所属の組合員に偏っていることを併せ考えると、原告組合所属の組合員に対して命じられた右違法な日勤勤務は、被告
Fが、原告組合らを嫌悪しその弱体化を企図して原告組合所属を理由になしたものであり、不当労働行為意思に基づくものと推認することができるというべきである。」

69日に及んだ日勤教育の一部を不当労働行為、業務命令権の濫用と判断した広島地裁判決(平成14年(ワ)第991号損害賠償等請求事件、20041222日判決
 
*「原告Bには就業規則上の指揮命令系統に反したとの非違行為が認められるが、その具体的態様は・・・・ヒヤリハットなどといった過失に基づくものではなく、上司の指導に対して反発・反抗したという故意に基づくもので、態様が過失行為に比して悪質であるといわざるを得ない。・・・・また、旅客運輸鉄道を業とする被告会社では、経営理念として客本位のサービス提供を掲げ、旅客の信頼確保を行動規範としているところ、・・・・本件における原告Bの言動は一般乗客からの苦情を招来するなど、その信頼を裏切りかねないものであった。これからからすれば、原告B勤務種別を変更するについての業務上の必要性を認めることができるから、本件日勤教育は必要性を欠いており違法であるという原告らの主張は採用できない。」
 *「部長面談において、被告
Aは、原告Bに対して、渡り鳥をしてどの組合が1番かを確かめればわかるという趣旨の発言をしたことが認められるが、これは原告組合に所属する原告Bが同組合を脱退して他の組合に加入することを慫慂する発言と解することができる。そして、・・・・この被告Aの発言は支社からの叱責と組合の変更とを関連づけてなされたものといえる。これらを考慮すると、被告Aの発言は、被告会社として原告Bに原告組合から脱退するよう勧奨するものといえるから、労組法7条3号が禁止する原告ら組合活動に対する支配介入として、不当労働行為に該当するというべきである。」
 *「・・・・同月〔平成
142月のこと〕6日を経過する段階においては、本件日勤教育を継続する理由及び必要性は既に実質的にはほとんど消滅していたものといわなければならない。このことは、同月7日以降の日勤教育では、教育の成果を確認するための部長面談が1度も行われず、ただ自責ノ-トの作成が続けられたに過ぎないことによっても裏づけられる。 したがって、・・・・同月7日以降同年34日までに実施された本件日勤教育は不当労働行為意思に基づくものであって違法であるといわなければならない。そして、上記不当労働行為に該当する行為は、被告らの業務命令権を逸脱濫用するものとして、その意味でも違法である。」

日勤教育を苦に自殺したとする損害賠償の訴訟も
 
このほか、
200196日、運転中の通勤電車に警告灯がついたことから安全点検を行ったため、列車に約50秒の遅れが出たことを理由に日勤教育を命じられた服部匡起さん(JR西労所属)がそれから3日後に自宅で電気コードで首を吊って自殺するという事件が起こった。それから1年後の200292日、匡起さんの父親であり、元国鉄職員でもあった服部栄さんが自殺は日勤教育による精神的苦痛に起因するうつ病によるものであるとして損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしている。今現在、この裁判の経過を把握できていないが、訴状は日勤教育の実態について次のように記している。
 *日勤教育の中心的な作業は業務命令にしたがって
1時間1テーマのレポートを作成することであるが、そこでのテーマは「同業他社を凌ぐ強い体制づくりについて」とか、「指示に対してあなたは社員としてどうあるべきか」など、列車遅延とは無関係なものが多かった。
 *「水平展開」と称して、各駅のプラットホームに立って、自分が起こしたミスを見せしめ的に読み上げさせられた。
 *日勤教育期間中は同僚と話をすることもお茶を飲むことも禁止され、トイレに行くのも管理者の許可が必要だった。また、日勤教育期間中、管理者から様々な罵詈雑言を浴びせられた。
 *日勤教育中は乗務手当(月額
10万円前後)等の支給がなくなるにもかかわらず、日勤教育の期間が定められておらず、終了の基準となる教育効果の評価は区長の主観的判断に委ねられていた。
  イギリス紙『サンデータイムズ』は同年10月21日号でこの事件を「1分の遅れの代償を命で支払った列車運転士」(Train driver pays for one-minute delay with his life)という見出しで報道した。

(上記の判決に関する論評は次の記事で)
 

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コメント

日勤「教育」とは名ばかり。
その実態は、虐めによる、
なぶり殺しです。

http://blog.goo.ne.jp/rebirth-free/d/20060428

投稿: Rebirth-Free | 2006年4月30日 (日) 12時03分

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