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ブリオン調査会委員の恣意的再任―私の体験をダブらせて―

行政の恣意的な委員選別
 
米国産食肉の安全性を評価するブリオン専門調査委員会の委員再任をめぐって委員会事務局を務める行政と委員の間で説明が錯綜している。任期は設けられていなかったそうだが、45日付けの各紙報道によると、事務局は年齢制限にあたる4人を除いて再任を要望したが、半数にあたる6人は研究に専念したいなどの理由で固辞したと発表していた。しかし、結果として委員を辞した6人全員が輸入再開に関する政府の方針に批判的ないしは慎重な意見を唱えていた委員であったと知って、私は3年前の自分の体験を思い起こし、額面どおりに受け取れなかった。
 
実際、その後の報道によると、例えば、座長代理の金子清俊氏の不再任は自分の意思によるものではなく、「新たに設けられた」年齢制限によるものだった。6人の中の別の委員も再任については追って連絡するということだったが、その後通知がないまま、不再任が決まった形になったと話している。
 
ここまで来ると私が総務省の情報通信審議会委員を再任されなかったときの役所の「手法」と酷似している。「任期切れ」の時こそ、行政が自分の意向に沿うかどうかで審議会委員を選別する格好の機会なのである。

再任を拒まれた私の体験
 
私は旧郵政省の電気通信審議会(現情報通信審議会)委員に就任してから通算で63ヶ月が経過した20031月の時点で2年の任期切れとなった。その時、審議会事務局を務めた総務省の課長が訪ねてきて再任を見送るとの通知を受けた。しかし、大学に籍を置く委員の場合、前例では、48年が慣例だった。そこで不再任の理由を聞くと、「今回、先生を再任すると通算で8年を超えるから」という返答だった。では、通算年月が同じ委員は皆不再任なのかと尋ねると、「いえ、任務の継続性を考慮して会長、同代理、分科会会長、同代理は再任の予定」とのことだった。3ヶ月という端数が生じたのは、省庁再編で委員の発令日が以前の101日から16日に変わったからだった。
 
このようにいうと、事務的形式的理由による不再任と受け取る人が多いかも知れない。しかし、私に対する事務局の説明は私が確かめた次の事実からでたらめであったことが判明する。
 
① 省庁再編を挟む時期に私と同じ審議会委員に就いていた大学教員3人(ABC氏)の通算在任年数を調べると、AB2人は83ヶ月で、もう一人のC氏は73ヶ月だった。つまり、C氏もあと2年在任すると通算で8年を超えることを承知の上で再任され、途中で総務審議官に着任したため、任期が73ヶ月となっただけである。
 
② また、A氏は83ヶ月の任期を終えた後も臨時委員として任用され某委員会の座長を務めている。
 
こうした事実を見ただけでも、行政が任期切れ・再任の機会を使っていかに恣意的に委員を選別しているか、おわかりいただけると思う。もっとも、それ以前に私の場合は任期切れの前の年(2002年)の夏に役所の某氏から、「政治家が先生を再任するなと言って来ています。あまり激しくNTTを批判するのは控えた方がいいですよ」と伝えられていた。そういうことから、不再任もありうるとは思っていたが、その可能性は34割と思っていた。
 
いずれにせよ、私の審議会委員不再任のいきさつと、私が体験した行政による審議会の操縦ぶりは、「総務省が審議会委員の私を『解任』した真相」(『エコノミスト』2003121日)で触れている。そのword版原稿をアップするので、一読いただけると幸いである。
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/singikaiiinkainin.pdf

行政によるオピニオン・ショッピング
 
監査論の世界で「オピニオン・ショッピング」という言葉がある。粉飾決算と判断されかねないグレイな会計処理をした企業が、「適正意見」を付けてくれる監査(法)人を探し回ることを指して使う言葉である。総務省(旧郵政省)、大蔵省、内閣府(旧経済企画庁)の審議会、懇談会委員を務めた私の経験から痛感するのは、第三者機関を標榜した審議会等の答申の大筋は審議が始まる時点で、もっと端的にいえば、委員を人選する時点で固まっているということである。
 
そして、答申の趨勢を決める委員の人選は諮問をする役所が采配を握っており、1,2人の一家言ありの委員(といっても穏健な)を混ぜることはあっても、役所に「優しい」委員が大半を占める人選となることに変わりはない。そこから、私は審議会委員の選任、再任は「オピニオン・ショッピング」(意見の買い漁り)と呼ぶことにしている。
 
そして、審議会委員の体験を通して痛感するもう一つのことは、行政の傲慢な審議会操縦の害悪とともに、自らの肩書き作りのためか、それに加担する御用研究者の堕落ということである。
 
今回のブリオン調査会の委員再任の不透明さが、こうした悪弊を世に知らしめ、審議会に対する市民監視を促す契機となることを願っている。

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