「遷延性意識障害への理不尽な現実」(『毎日新聞』記者の目記事)を読んで
5月19日『毎日新聞』朝刊の「記者の目」欄に掲載された「遷延性意識障害への理不尽な現実」(赤間清広稿)を読んで日本の社会福祉の現状を考えさせられた。そこで、今日、この欄の末尾に記された係宛にE・メールで次のような感想を送った。記事の全文は下記。
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/kishanome/archive/news/2006/05/20060519ddm004070060000c.html
なお、「遷延性意識障害」とは交通事故や病気で脳に重い障害が生じ、寝たきりとなった状態を指す。従来、「植物状態」呼ばれてきた。自力で食事が取れず、自分の意思を言葉や表情で伝えられないため、24時間の介護が必要とされる。
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毎日新聞「記者の目」係 御中
政治の光、メディアの光が当てられない社会の谷間に放置された人々の苦難に寄り添う「記者の目」の一連の記事を日頃から注意深く読んでいます。
特に目下、「社会福祉における小さな政府論」をテーマにした原稿を書いているのと、実家で一人暮らしをしてきた身内の高齢者が道路拡張工事で立ち退きを迫られ、住み替えの計画を立てたところ、行く先々のマンション、空家で高齢者の単身入居を拒まれ、日本の社会福祉の虚弱さを考えさせられているところです。
そうした最中に、5月19日付け貴欄に掲載された赤間清広記者の「遷延性意識障害への理不尽な現実」を読み大変啓発され、筆を取りました。なお、同じ赤間記者が執筆された「声が聞きたい:遷延性意識障害 現状と課題 県ゆずり葉の会・沼田会長に聞く/宮城」(2006年3月4日)も読みました。以下は記事を読んだ私の感想です。
1.障害の認定業務を名実ともに行政から独立した専門家から成る第三者機関で行う仕組みを確立する。「認定」業務と福祉「行政」が一体化すると、行政の不作為がまかり通る結果になりがちです。
2.実態調査が先決ですが、これについても行政は予算化に責任を負い、調査自体は企画の段階から報告書をまとめる作業まで独立した第三者機関に委ねることが重要と思います。
3.支援策は記事にあるとおり、専門施設の充実が喫緊の課題と思います。
4.施設さがし、費用の工面、介護者自身の健康管理などをワン・ストップで担当するマネ-ジャ-の養成が急務だと思います。
目下、わが国では「民にできることは民に」をスロ-ガンに、社会福祉を標的にした「小さな政府」路線が強行されようとしています。しかし、OECDの国際比較統計(添付-ここでは省略)をみても、日本は社会保障の分野でとっくに「小さすぎる」政府になっています。
遷延性意識障害者をたらいまわしする民間医療機関の実態を知るにつけても、今、日本で力説されなければならないのは、「民にできないことは公が」です。
追伸:
「水俣病公式確認から50年」(2006年5月9日、平野美紀記者稿)にも大変啓発されました。特に、「政府代表の小池百合子環境相は『悲劇を二度と繰り返さない』と述べたが、『一度目』の悲劇は今も続いている」という指摘が胸に迫ってきました。
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