NHK裁判控訴審判決に関する「停止運動の会」の見解
NHK受信料支払い停止運動の会は昨日、NHK裁判控訴審判決(1月29日判決)に関する見解をまとめ、今日、NHK橋本元一会長宛てに郵送することになった。その全文は以下のとおりである。
なお、この見解は、「NHK受信料支払い停止運動の会」のホームページにも掲載されている。
http://blog.goo.ne.jp/shiharaiteishi/e/468fdb8b2c793e4e2f5d86da64cc690e
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NHK会長
橋本元一 様
2007年1月31日
番組改編の責任を認めて上告を撤回するようNHKに要求する
――NHK裁判の東京高裁判決に関する私たちの見解――
NHK受信料支払い停止運動の会
1.1月29日、東京高等裁判所(南敏文裁判長)は、2001年1月30日に放送されたNHK・ETV番組「問われる戦時性暴力」の改編問題をめぐる控訴審判決において、番組改編に関するNHKほかの不法行為責任を認め、原告VAWW-NET JAPAN に200万円の損害賠償を命じる判決を下した。しかし、NHKはこれを不当判決と称し、最高裁判所へ即日抗告した。
2.本件番組改編事件の内部告発と報道を契機に発足した当会は、政治に弱いNHKの体質を改め、政治から自立した公共放送を確立するよう、訴え続けてきた。この意味で、当会は、NHKの番組改編行為を、憲法で保障された編集の自由を乱用し、自主、独立を内容とする編集の自由を自ら放棄したものと断じた今回の東京高裁判決を高く評価する。NHKはこうした判決の重みを真摯に受け止め、政治におもねる体質をいまこそ清算すべきである。
3.判決はNHKによる上記のような番組改編は番組制作に関わった原告らの期待権、信頼の利益を侵害すものであったこと、NHKが番組改編の経過を原告に説明しなかったことは番組からの離脱を含めた原告の自己決定権を侵害するものであったこと、を認めた。
こうした「期待権」の乱用が許されないことはいうまでもないが、もともと、メディアの編集の自由は、自己充足的なものではなく、視聴者の知る権利に奉仕する意味で尊重されるべきものである。この意味で今回の判決が、NHKの編集の自由を絶対視せず、「編集の自由」の名のもとに、政治家との関係で編集の自由を放棄したNHKを断罪したことは極めて全うな判断と評価できる。
4.他方、判決は、問題の番組改編の過程で、国会議員らの関与があった事実は認定しながらも、番組改編の主因はこれらの言動をNHKが「必要以上に」忖度した結果生じたものであるとし、番組制作への政治家の直接の介入を否認した。そして、干渉の疑惑を受けた安倍晋三氏はこの判決により、政治介入がなかったことが証明されたとコメントしている。
しかし、番組放送日の前日にNHK幹部と面会した際、安倍氏(当時、官房副長官)が番組の主題であった「従軍慰安婦」問題について持論を語ったうえで、「公平公正にやるよう」発言すること自体、番組制作への牽制・干渉にあたることは動かせない事実である。まして、安倍氏が「従軍慰安婦」問題に関する日本政府の責任を認めた河野談話に敵愾心を燃やす「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長(当時)として、「従軍慰安婦」問題を学校教科書から削除するよう強硬に主張していたことは周知の事実であった。こうした背景に照らせば、安倍氏との面会の場で同氏から前記のような発言を受けたNHK幹部がその後、あたふたと番組改編に着手したことを「必要以上の」忖度とみなすのは不正確な事実認定と言わなければならない。したがって、当会は今後も安倍氏らの番組干渉発言の違法性(放送番組への干渉を禁じた放送法第3条違反)を厳しく追及しながら、NHKに対して政治からの自立を促す運動を継続していくことが重要と考える。
5.以上から、当会はNHKに対し、上記2~4で指摘した今回の判決の重みを真摯に受け止め、最高裁への上告を撤回するよう、要求する。
以上
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