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NHK経営委員長選出に関する放送法の解釈について総務大臣ほか3氏宛てに公開質問書を提出

  本日、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は菅義偉総務大臣、鈴木康雄情報通信政策局長、吉田眞人放送政策課長宛に、NHK経営委員および同経営委員長の選出に関する放送法の解釈について公開質問書を発送した。以下に、その全文のURLを掲載する。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/soumusho_ate_situmonsho20070612_kohyoyou.pdf
 ご覧のとおり、6月22日までに文書による回答をもらうよう、要請している。

 なお、6月10日の毎日新聞朝刊の28面に「放送法どう解釈 NHK経営委 新委員長人事」と題する記事がほぼ1ページ全面を使って掲載された。その中に次のような記述がある。

  「政府は表向き〔経営委員長ポストは〕『決まっていない』とする   が、ある与党国体関係者は『政府の意向として聞いている』と明か  し、富士フィルム側も『(政府から)委員長に推薦していただいた』 と認める。」

 これが事実とすれば、経営委員長は委員の互選による、と定めた放送法第15条第2項を政府自らが踏みにじっていることが、さらに裏付けられたことになる。また、こうした政府首脳の行動を報道等で熟知したはずの総務省が、放送法を所管する行政庁として、法令遵守を政府に警告したのかどうか、市民監視のもとで徹底究明する必要がある。

 こうした法令違反を放任する不作為がまかりとおるようでは、総務省・放送政策課は放送法の所管庁として公正な法の運用を怠っていることになる。また、首相の個人的人脈で特定の人物を経営委員長に「内定」し、委員長就任含みで経営委員に任命するといった、公共放送の人事の私物化がまかりとおるようでは、上記の『毎日新聞』記事に掲載された談話で松田浩氏が指摘しているように、経営委員長の人事以前に、経営委員の人選を両議院での承認を前提に内閣総理大臣に委ねている現行の放送法を改め、例えば、放送メディアに関係する各界に一定の枠を割り振って推薦を募るといった抜本的な法改正が必要であろう。

 その際、十分認識する必要があるのは、多様な意見・価値観を反映し、多数意見と少数意見が常に緊張関係を保ちながら、視聴者・市民が異なる意見と触れ合うことで自分の思考様式・習慣の固定化を防ぐのに寄与すべき言論機関のガバナンスを、多数決原理を基本とする国会に委ねること自体が本質的になじまないという点である。この意味で、国会議員を選んだ有権者の意思=放送メディアの視聴者の意思と短絡させ、NHKの経営委員の人選を国会に委ねる現行法は再考の必要性大である

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全国紙4社と菅野俊秀氏に対して公開質問書を発送――NHK経営委員長「内定」報道をめぐって――

 このブログの直近の3つの記事で取り上げたNHK経営委員長の「内定」報道について、本日、NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ、NHK問題を考える会(兵庫)、メディアの危機を訴える市民ネットワーク事務局の三者連名で、朝日新聞社、読売新聞社、毎日新聞社、日本経新聞社の4社と、この問題に関してコラムを執筆した(5月25日の朝日新聞朝刊に掲載。その内容はこのブログの前回の記事に収録)菅野俊秀氏宛に公開質問書を発送した。6月20日までに文書による回答を要請している。

 これら5つの質問書は、引用した記事の原文の表現上の違いを別にすると、ほほ同じ内容なので、ここでは朝日新聞社宛の質問書の全文を掲載することにしたい。その他の質問書はURLを貼り付けることにする。

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                           2007年6月8日
朝日新聞社 御中

  NHK経営委員長の人事をめぐる貴社の報道についての
               公開質問書

 時下、貴社におかれましてはご清祥のことと存じます。
 さる5月18日の貴紙朝刊1面に、「新経営委員長に古森氏 NHK経営委 富士フィルム社長」という見出しの記事が掲載され、その中で次のように記されています。

  「政府は17日、NHK経営委員会の新しい委員長に富士フィルムホールディングスの古森重隆社長(67)を起用する方針を固めた。今国会で経営委員に就くことに同意を得られれば、6月にも正式に就任する。」「17日午後の安倍首相と菅総務相の会談で内定した。」「NHKの経営委員は、国会の同意を得て首相の任命で決まる。委員長は12人の委員が互選する。」

 私たちは、この記事には、NHK経営委員長の選出をめぐる報道のあり方について、さらに、NHK経営委員会と政治の関係をめぐるジャーナリズムの見識について、重大な疑問があると判断し、以下の質問を提出します。これについて貴社の見解を6月20日までに文書で下記宛にお送りくださるよう、お願いいたします。

質問1 この記事について、これまでに、政府あるいは古森重隆氏側から、何らかの訂正の申し入れがあったでしょうか? あったとすれば、どのような申し入れだったのでしょうか?

質問2 上記の記事にも記されているように、NHKの経営委員長は経営委員の互選で選出することになっています(放送法第15条第2項)。したがって、内閣総理大臣が放送法第16条第1項に従い、両院の同意を得て特定の人物を経営委員に選任することと、その人物が経営委員長に選任されるかどうかはまったく別個の問題です。
 にもかかわらず、上記の記事で安倍首相と菅総務大臣の会談で経営委員長が「内定した」と記された根拠はどこにあったのでしょうか? 理由を明確にご説明ください。

質問3 記事にあるように、政府が個人名まで特定して、経営委員長の人事に介入しているとすれば、それは放送法第15条第2項に反する違法行為に当たることは明白です。にもかかわらず、上の記事がこうした政府の行為の違法性に一切触れず、古森氏の経営委員長就任が既定の事実となったかのように報道しています。これは、経営委員長の選任権を持つ経営委員を冒涜するものであるとともに、政府の違法な人事介入を追認するばかりか、それを喧伝・助長するものであると当会は考えますが、貴社はどのようにお考えか、ご回答ください。

質問4 同じ5月18日の貴紙朝刊の34面で、この件についての解説記事が掲載され、古森氏の起用は「首相との近さが決め手か 独立性に課題も」という見出しが付されています。また、この記事では、政府が目論む経営委員会の「権限強化は放送に対する政治介入の余地を生む恐れもある」と指摘しています。
 しかし、ほかでもなく、今回の経営委員長の人選をめぐる政府の動きは、時の政権トップの人脈・意向でNHKの最高意思決定機関の長を選ぼうとする、権力を笠に着た傲慢な政治介入そのものです。従って、「独立性に課題も」というなら、NHK経営委員会の独立性を侵す政府の介入を質してしかるべきところ、これを不問にした貴紙の記事は権力を監視すべきジャーナリズムの使命を放棄したのも同然と考えられます。これについて貴紙の見解をお聞かせください。

                                   以上

             NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                                        共同代表:湯山哲守・醍醐 聰
          HP:http://space.geocities.jp/shichoshacommunity/
              メールアドレス:shichoshacommunity@yahoo.co.jp
                                              専用電話:048-873-3520

                     NHK問題を考える会(兵庫)
                                                            代表:貫名初子
                                        電話&FAX:078-351-0194

                メディアの危機を訴える市民ネットワーク事務局
                  HP:http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html
              メールアドレス:mekikinet-owner@hayoogroups.jp

 ご回答は文書にて下記へお送りくださるよう、お願いいたします。(以下、省略)

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他の4通の公開質問書は次のとおり。

読売新聞社への公開質問書
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/situmonsho_to_yomiurisinbun20070608.pdf

毎日新聞社への公開質問書
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/situmonsho_to_mainichisinbun20070608.pdf

日本経済新聞社への公開質問書
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/situmonsho_to_nikkeisinbun20070608.pdf

菅野俊秀氏への公開質問書
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/situmonsho_to_sugano20070608.pdf

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NHK経営委員長人事への政府の違法な介入を追認し免罪する報道人の腐食したジャーナリズム精神

  5月25日夜、知人から、今朝の『朝日新聞』にNHK新経営委員長云々の記事が載っている、という連絡をもらった。朝方、あわただしく主要記事に目を通すだけだったので、あわてて紙面を繰ると27面に、「試される経営委員長の手腕」という見出しで菅野俊秀氏筆の囲みの記事が載っていた。
2007_0525_1










そして、読み進むにつれ、知人がいわんとしたことがわかった。

 経営委員長の選出方法をなぜ示さないのか?
 記事は、「NHK経営委員会の新委員長に、富士フィルムホールディングスの古森重隆社長が内定した」という書き出しで始まっている。それに続く文中でも、「新委員長」という表現が2度登場する。記事の趣旨は、見出しの通り、「NHKの新経営委員長に内定した古森氏が課題山積のNHKの職務の執行を監督する経営委員会の長として、いかに手腕を発揮するか」を問うというものである。

 この記事のそもそもの問題は、さりげなく記された次の一節にある。

  「経営委員は国会の同意を得て首相が任命する。同委員会の権限強化は、政府の影響力が増す恐れも指摘されている。」

 放送法を知らない人が読むと、「そんなものか」で終わりそうである。しかし、このブログの直近の2つの記事をお読みいただいた方なら、「あれ」と感じられたのではないだろうか? くどいようだが、NHKの経営委員ならびに経営委員長の選任方法を定めた放送法条文を再掲しておく。

  「第15条2 経営委員会に委員長1人を置き、委員の互選によってこれを定める。」

  「第16条1 〔経営〕委員は・・・・・・両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」

  上の記事で菅野氏が取り上げているのは経営委員の選任ではなく、経営委員長の選任であり、新たに政府が古森重隆氏を委員長に起用する方針を固めたという報道を受けた論説である。とすれば、菅野氏は経営委員の選任方法を定めた放送法第16条1ではなく、経営委員長の選任方法を定めた同法15条2を示すのが道理ではなかったのか? 現に、NHK経営委員会は放送法第15条第2項の定めに従い、新しく選任される経営委員も含めて6月に開催される委員会で、新経営委員長を互選することになっている。

政府の違法な人事介入を追認し免罪するジャーナリズム精神の腐食現象
  いずれにしても、政府あるいは安倍首相が経営委員長就任含みで古森氏を経営委員に選任しようとするのであれば、それは政治権力を笠に着た傲慢かつ違法な政治介入というべきものである。こうした政権中枢の動きを論評抜きに、「新経営委員長内定」と報道するのでは、政府の違法行為を追認し免罪するに等しい。報道関係者から聞くところでは、5月18日に各紙がいっせいに掲載した「新経営委員長内定」の報道は官邸情報に基づく記事であるらしい。

 権力を監視する使命を負い、政治との距離に敏感であるべき報道人が、時の政権トップが公共放送の最高意思決定機関の長を直々に任用しようとする異常な状況を追及しないばかりか、政権中枢からの「おこぼれ」情報を無批判に垂れ流すのでは、政府広報とどこが違うのか? ジャーナリズム精神の腐食現象をまざまざと見せつけらる一齣であった。

 「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、この事態を重く見て、近く、全国紙各紙と菅野氏宛てに公開質問書を出し、文書での回答を求める準備をしている。

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