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公表されたNHK理事会の議事録を読んで

 NHK経営委員、小林英明氏と同姓同名の弁護士に関する続報

 ひとつ前の記事でNHK経営委員の小林英明氏と同姓同名の弁護士が2004年当時、安倍晋三幹事長(当時)が起こした訴訟の弁護人を担当していたことを記した。ただし、そこではNHK経営委員の小林英明氏と安倍氏の訴訟の代理人を務めた小林英明氏が別人か同一人物かの断定は控えた。

 この件について、ブログを読まれた何人かの方から情報をいただいたが、自分自身でも確かめたいと思い、日弁連のHPに掲載されている「弁護士情報検索」で「小林英明」を検索したところ、ヒットしたのは、登録番号18660、第一東京弁護士会所属、小林総合法律事務所の小林英明氏だけだった。ちなみに、現NHK経営委員の小林英明氏は第一東京弁護士会所属、小林総合法律事務所に在籍の弁護士である。

 金田新NHK理事(トヨタ自動車工業出身)がNHK次期経営計画に反対していた

 さる9月25日に開催されたNHK理事会議事録が今日(10月12日)公表された。審議事項の一番目が<「次期経営計画」について>となっていたので、読んで見ると、次のようなくだりがあった。

 (総合企画室) 次期経営計画である「経営計画2008~2012(案)」について、審議をお願いします。この5ヶ年経営計画については、今年4月に設置された経営企画会議などを通じて、約半年間検討してきました。・・・・・・<中略>・・・・・・・経営企画会議などで検討してきましたので、詳細については省略しますが、この内容が了承されれば、本日開催の経営委員会に提出したいと思います。

 (金田理事) これまでの会議でも申し上げてきましたが、この計画は、受信料額の引き下げという“還元”策により、20年度から、しばらく単年度収支が赤字になる見通しになっています。私は、これからの公共放送のあり方を考えたとき、こうした事業収支の見通しに基づく経営計画には賛成することができません。

 (会 長) 5ヶ年の事業収支見通しを立て、その計画を尊重する一方で、当然、各年度の収支予算や事業計画・資金計画を綿密に策定し、そのときどきの財政状況に即して事業をとり進めていきたいと思います。この5ヶ年経営計画については、原案どおりに経営委員会へ提案したいと思います。

 金田理事は、「これまでの会議でも申し上げてきた」と発言しているので、今年4月までさかのぼって理事会議事録を調べたが、それをみる限り、次期経営計画が理事会に付議された形跡はなかった。もっぱら「経営企画会議など」で議論され、その場で金田理事は以前から原案に反対してきたということだろうか? NHKにとって重要な5ヶ年経営計画の審議の経過が視聴者からは全く見えてこないのは、重大な欠陥といわなければならない。

 もっとも、理事の間で意見が分かれること自体を不思議がることはない。しかし、約半年間の審議を経て、経営委員会に付議する直前になってもなお、理事会の中で異論を唱えたメンバーがいたのには、それ相当の理由があってのことだろう。上記の金田理事の発言をそのまま受け取れば、赤字予算を組んでまで受信料の値下げに踏み切ることについて、経済界出身の理事として、了承できないという信念に基づく率直な発言だったのかも知れない。

 しかし、視野を広げて考えると、古森委員長ら経営委員からNHK執行部に対して10%程度の受信料値下げを迫る強硬な意見が出る一方で、NHK理事の中に、それと逆のベクトルの意見を繰り返すメンバーがいて、NHK執行部を挟み撃ちする格好になったのは偶然の結果だろうか? それとも何らかの思惑が働いた筋書きどおりの状況なのだろうか? 

 肝心の事業収支見通しが公表されていないので、この場で立ち入った議論はできないが、事業収支の赤字覚悟の値下げとなれば、前提となる「赤字」の算定根拠を含め、金田理事が指摘したように慎重な検討が必要なことは確かである。これはNHK執行部に対して向けるべき問いかけであると同時に、NHK執行部の提示した値下げ幅をこて先の還元策と一蹴して、さらなる値下げを迫った古森氏らにも向けられてしかるべき問いである。
 
 受信料の値下げ論が視聴者への還元策という表向きの看板とは裏腹に、視聴者・公共放送不在の別の思惑が絡んだ「ためにする議論」でないのか、視聴者・市民の持続的な監視と議事録等の公開要求が必要である。 
 

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