了解にはほど遠い――NHKの自主自立を脅かす放送法改定法案――
放送法改定法案審議入り
前国会で継続審議となった「放送法等の一部改正法案」が今日(29日)から衆議院で審議入りすることになった。私が入手した情報によると、衆議院での審議日程は次のとおりである。
11月29日 14:00~17:00 提案理由説明、質疑、参考人招致の
議決
12月 4日 午前中 参考人(NHK会長、経営委員長、民放連会長、
BPO理事長)の意見陳述・参考人に対する質
疑
午 後 質疑
12月 6日 質疑・修正、委員会採決(?)
法案の主な修正点
① 民放に対する行政処分条項の削除
② NHKのガバナンス強化に関しては、経営委員会による番組編集 への関与を禁止する文言を追加
③ 命令放送を「要請放送」とする点は変更せず、実施にあたって付 帯条件を付ける。
④認定放送持株会社への出資上限を原案の「2分の1以下」から、 「3分の1未満」に引き下げる。
⑤BPOの機能を強化する。
総務省焼け太り法案
原案と対比すると、上記の各修正は改善といえることは確かである。特に、①の修正は、民放の放送番組のすべての分野(報道番組も含む)について、何が「虚偽」であり「事実」であるか、何を以て「国民生活への悪影響」ありとみなすかの判定権を総務省に与える条項を削除することを意味するから、重要な改善といえる。
ただし、「引いたふりをして芽を残す」文言のあやとりをするのが官僚の習性であるから、実際の修正案を見届けないうちから、評価を先走るのは危険である。これは、かつて電気通信審議会、情報通信審議会で専門委員、委員として約10年間、官僚の素行を近くで見てきた私の経験から骨身にしみて感じる戒めである。
しかし、上記修正が名実ともに実現するとして、それを以て法案の成立を歓迎できるのだろうか? これについて、11月28日『朝日新聞』朝刊は次のように論評している。
「・・・・・・放送法改正案をめぐる自民・民主両党の修正協議は27日、NHKの経営委員会が個別の番組の編集には介入しないよう新たな文言を入れる方向で最終調整に入った。放送・表現の自由を尊重するよう求める民主に自民が配慮した。・・・・・古森委員長が参院選後の9月、選挙中の放送について『歴史ものなど政治的問題に結びつく可能性もあり、ご注意を』と発言。個別番組を想定した発言とも受け止められ、NHK内外から批判が出ていた。修正では、個別番組については経営委の権限の対象外と明記する方向だ。」
しかし、私は上記の修正点②を以て、「放送・表現の自由を尊重する」ことが担保されたとはとても思えない。なぜなら、こうした修正だけでは、
①新設される監査委員会メンバーとなる一部の経営委員に強大な権限を集中させる結果、合議機関としての経営委員会全体のガバナンス機能がむしろ弱まる恐れがある点、
②強化される経営委員会の権限の運用細則を国会審議を要しない総務省令で定めることになっていることから(注)、経営委員会を通じてNHKに対する総務省の間接介入が強化される仕組みになっている点、
は不変だからである。(注)詳細は、このブログに掲載した次の記事を参照いただきたい。
放送法「改正」法案の実態は「総務大臣の権限拡大」法案
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_dfeb.html
国会の場でこうした点が十分検討され、将来に禍根を残さない審議が尽くされることを要望したい。
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