ジャーナリズムとしてのNHK――その過去・現在・未来――
さる4月4日夜、NHK問題京都連絡会主催の集会で「ジャ-ナリズムとしてのNHK――その過去・現在・未来――」と題して講演をさせてもらった。ジャ-ナリズムの門外漢の私におこがましいタイトルではあったが、大正15年に社団法人日本放送協会として設立されて以来、NHKが戦中、戦後、どこまでジャ-ナリズムたりえたかをNHK編集の放送史や専門文献を調べて私なりに整理してみた。それは放送史への関心からというよりは、NHKの国際放送を国策広報に変質させる動きがNHKのおひざ元の古森重隆経営委員長の言動として顕在化したというにとどまらず、NHKの外国人向け国際放送を「ソフトパワ-」と称して国家の情報戦略に組み入れ、国家イメ-ジ改善に活用しようとする動きが総務省作の「u-JAPAN」政策として推進されようとしているからである。
そこで、限られた関係者の間でしか知られていない、こうした情報国家戦略を視野に入れてNHKの国際放送、ひいては国内放送も含むNHKの放送全体の将来を展望する参考資料になればと考え、拙い内容ではあるが、京都での講演のレジメ(一部割愛)をこのブログに掲載することにした。以下はそのPDF版である。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/nhk_as_journalism20080404_in_kyoto.pdf
全体の構成を概観していただくために、以下、目次を書き出しておく。
「ジャ-ナリズムとしてのNHK――その過去・現在・未来――」
1.国益を背負う国際放送――ジャ-ナリズムの終わりの始まり――
1-1 古森発言の問題点
1-2 古森発言の背景――国際放送のソフトパワ-論に要注意――
1-3 国益を背負うことはジャ-ナリズムとしての公共放送の死を意味する
(参考)スポーツの自立、国際親善を損なう国益――瀬古利彦と荻村伊智朗の国歌・国旗観――
1-4 「要請」(命令)放送と放送の自主自律は両立しない
2.「国策」にどう向き合うか――ジャ-ナリズムとしてのNHKの分岐点――
2-1 NHKの宿罪としての国益
2-2 国家の命令機関、公示機関としての放送(満州事変以降)
2-3 放送は政府・軍部の意思を伝える通路にすぎなかった
2-4 戦後もなお国策を清算できなかったNHK
3.公共放送の価値を唱導した人々
3-1 戦後放送法の初志を綴った荘宏『放送制度論のために』
3-2 押しかけた自民党議員を一喝した野村秀雄会長
3-3 視聴者に開かれた経営委員会となることを訴えた矢野初代経営委員長
3-4 受信料制度「国営化を防ぐ砦」と言い放った原経営委員長
4.自民党国会議員を励ます会に発起人として出席してスピ-チをした古森経営委員長
6.ジャ-ナリズムとしてのNHKの将来――国家主義的「公共性」と決別して市民的公共性の担い手として――
6-1 2つの公共性のせめぎあい
6-2 表現の自由の原点に立ち返って
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コメント
醍醐先生、はじめまして。
先日、経営委員長罷免の署名をお送りしました。NHKは国民の受信料を元に運営されており、政権や権力から独立していることは必須条件ですよね。政権や権力の意向を汲んだ放送などされたら、これは明らかに受信料を払っている国民に対する背信行為、私は詐欺と言っていいと思います。なぜ、NHKはBBCになれないのでしょうか。経営委員長がこのまま居座るなら、受信料不払いも、当然選択肢に入れてもいいとおもうのですが、どうでしょう?
投稿: 地中海 | 2008年5月 4日 (日) 10時47分
醍醐さん、こんにちは。
新聞に気になる記事でていたので、メールします。
訃報欄に、元NHK解説委員長の緒方彰さんが亡くなったということが載っていました。
私、緒方さんの、あのいかめしい解説スタイル、大好きだったのです。あの方は、権力に媚びない「解説」をやっておられて、本当に尊敬できる解説委員でした。同世代くらいの山室静解説委員がいましたけど、20年くらいのNHK解説委員は、本当に質、高かったと感じています。
しかし、この20年でしょうか、NHKの解説委員は、段々と権力志向になっていったようにみえます。河崎(名前ははっきり覚えていませんが、確か「河」という漢字は確かにあったと思います。)解説委員くらいから、いやに自民党寄りが目立つようになりました。報道記者時代は、本当にきちんと冷静に仕事
しているのに、皆、解説委員になったとたん、権力寄りの「解説」するようになるのです。NHKの解説委員、もっとしっかりしてくれよ、と言いたいです。
貴方たちが、こういう姿勢だから、政府自民党に漬け込まれてしまうのです。政府から少し距離を置きなさい、と言いたいです。
気になる記事、見つけたのでメールしました。
投稿: ウィルヘルミナ | 2008年5月 2日 (金) 16時06分
神戸での講演の際には、終了後、質問にお答えいただき、有難うございました。
総務大臣のNHKへ放送要請とNHKの応諾に対しては、先日、提訴いたしました。
ブログで紹介しておきました。
お時間のあるときに御笑覧いただければ幸いです。
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/50902215.html
投稿: 上脇博之 | 2008年4月27日 (日) 23時07分