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旧敵国条項を持ち出して国連憲章を排斥した古森経営委員長の時代錯誤の歴史認識

国連憲章の敵国条項を持ち出した古森氏の意図は?

 さる3月11日に開催されたNHK経営委員会で次のような議論が交わされた。

今井副会長)第1章(一般基準)第1項で、「国際連合憲章の精神を尊重し、自由と正義とを基調とする」としたところを、「日本国憲法および国際連合憲章の精神を尊重し、自由と民主主義とを基調とする」と変更します。この基準ができたのが昭和34年です。昭和32年に日本が国連に加盟しており、その時の国内の考え方を反映したものと理解しています。それを今日的に、日本国憲法と民主主義という言葉を使って表現したいと思います。
古森委員長)第1章第1項で、日本国憲法および国際連合憲章の精神を尊重とありますが、国際連合憲章はよく吟味されましたか。これには確か今でも日本などを対象とした敵国条項が入っているのではないでしょうか。
今井副会長)日本についての敵国条項については、日本国政府もかねてから改正の要請を出し、そのうえで、国際連合憲章に基づく外交を進めています。
古森委員長)要請を出してはいますが、敵国条項がまだ消えていません。
今井副会長)国際連合憲章の精神を尊重するということです。


 このやりとりで問題になっている「敵国条項」とは、
2次世界大戦における連合国の対戦国だった日本・ドイツ・ルーマニア・ブルガリア・ハンガリー・フィンランドらが国連憲章に違反する軍事行動を起こした場合、国連憲章第53条に定められた安保理の許可なしに軍事制裁を課す事が出来ると定めた国連憲章第107条のことをいう。

 しかし、今日、こうした条項は時勢に合わないとして、
1995年の国連総会において、同条項の削除を求める決議が圧倒的多数で採択されている。ただ、安保理改組問題が難航したため、国連憲章の改正作業が遅れ、同条項の削除はまだ実現していない。これについて、1990611日の安全保障特別委員会で外務省条約局長(当時)の福田博は次のように答弁している(下線は醍醐の追加)。

日本政府も実効性を否定

 福田(博)政府委員
 ・・・・我が国は旧敵国条項はもはや我が国に適用される余地はないという解釈を従来とっておりまして、一貫して国会でもその旨お答えをしておるところでございます。その理由を法的に申し上げますと、国連憲章の旧敵国条項というのは、先ほども説明がありましたが、第二次大戦後の経過的な規定として挿入されているものでありますが、我が国は国連憲章第四条に言う平和愛好国として国連に加盟を認められております。したがいまして、国連加盟国としての権利義務を持つことになるわけですが、その国連加盟国、ほかの国と我が国との関係というのはいろいろな条文がございますが、例えば憲章第二条、なかんずく主権平等の原則によって規律されることとなっております。したがいまして、法的にももはや我が国に対しては適用がないという考えでございまして、これは非常に多くの国がそういう考えを持っているということが言えると思います。」

 また、2005年6月3日、国連総会のビン議長は日本などが長年要求していた国連憲章から「旧敵国条項」を削除することなどを盛り込んだ「結論文書」の草案を公表した。これはビン議長が敵国条項を削除することについて加盟各国の合意が得られる見通しが立ったと判断したことによるものだった。このニュースを伝えた『産経新聞』2005年6月4日付の記事は、これで「同条項が既に『時代錯誤』であることが国連加盟国の共通の認識となったことを確認したといえる」と記している。

 国連憲章にも問題点がないわけではない。また、旧態の「敵国条項」はすみやか削除される必要がある。しかし、上の資料からも明らかなように、旧敵国条項は今日、国際政治の世界では死文とみなされ、日本政府自身も、もはや、わが国に適用される余地はないと断言している。にもかかわらず、古森氏はこうした歴史的経緯を知ってか知らずか、敵国条項をことさら持ち出して、国連憲章の精神の尊重をNHKの国際番組基準に明記することに異議を差し挟んだのである。

 このことは、古森氏が、2度にわたる世界大戦の惨害の反省に立って、「基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し」(前文)て、平和的手段による紛争の解決を訴えた国連憲章の精神を理解する知性を持ち合わせていないことを告白したに等しい。かくも一知半解で時代錯誤の歴史認識の持ち主が公共放送NHKを監督する機関(経営委員会)の委員に選ばれた不幸を改めて感じないわけにはいかない。

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コメント

タイトル : 早く、日本は独立を取り戻そう!

世界のすべての弱小国が独立を果たしているのも拘らず、戦後70年を経過しても、まだ 日本は米国の支配から独立していない。 独立できないのではなく、独立しようと していないというのが確かな言い方です。 先進国でありながら、しかも戦前は米英と比肩する国力を有し、一等国であった日本なのに。
 
世界の常識からは有り得ないことなのですが、何故なのでしょうか。 アメリカの戦略でこのような状況下にあることは確かなことだが、実は日本国内に(反日の日本人、反日のメディア・野党)が、日本の独立を妨げているからです。 彼等は個人主義者であり、古来からの日本の歴史を大切にしません。 国内は勿論のこと、対外的にも(天皇)が日本にとって、如何に大切な存在なのかを全く理解していない人達です。 日教組は天皇制を大切にし 君が代・日の丸を尊ぶべきなのですが、それとは真逆の 反日活動をしています。

国連憲章の旧敵国条項は 敗戦国の立場を不利にするもので、日本とドイツが旧敵国条項の削除を求め国連に提出して議決されたものの、批准国数が3分の2には至っていないので 未だに削除できません。
 
本来あるべき日本の心と姿を取り戻すためにも、現在の占領憲法(日本人洗脳化憲法)は破棄し、一日も早く日本人が自らの手で、尊厳ある日本国の憲法を成立させなければなりません。

●憲法改正に全力を注ぎましょう!

投稿: | 2016年1月 4日 (月) 15時39分

私は古森という人が時代錯誤の歴史認識をしていると思わない。
国連がこの条項を吊すなら、日本は国連拠出金の削減をすべきだ。国連も人を敵だと言っておきながら、金だけはもらうなどという非礼は狡猾に過ぎる。
常任理事会の改革と一緒にやるから待って、あるいは死文化しているから良いじゃないか等は、まやかし、奇弁に過ぎない。
日本がみんなに分かるようにいわないからこうした事態がいつまでも続く。
いかにも物わかりのよい知識人ぶるのはやめた方がよい。
こういう事を正そうとせず、また正す流れに竿をさすようなことをいうのはよそう。
子供達の為にならない。日本人よ、凛として立て。

投稿: | 2009年1月31日 (土) 14時49分

こんにちは。

日本ジャーナリスト会議神奈川支部のブログです。
このエントリーを紹介して、以下の2つのパラグラフを引用したいと思います。

 「国連憲章にも問題点がないわけではない。・・・」
 
 「このことは、古森氏が、・・・ 」

 ところで、古森氏は、東京裁判についてはどういう意見なのか。なにか発言はしているでしょうか。

 安倍内閣ができたときに、「ネットウヨク内閣」という感を持ちましたが、NHKの経営委員長までネットウヨクになったように思います。

投稿: JCJ神奈川支部ブログ | 2008年4月27日 (日) 14時53分

 難しいことと聞き過ごしてしまうか、あるいは「旧敵国条項」と聞いて古森氏の言に納得してしまいそうな事柄について、正確な情報を示しての記事を書いていただき、とても勉強になりました。
 毎年日本弁護士連合会では人権擁護大会という催しを行っていますが今年は10月2,3日に富山で開かれます。この中で第一分科会が憲法問題を扱いますが、憲法制定史や国際憲章など国際法規の理解の重要性を改めて感じています。
 そんな中で、醍醐さんのこのブログの記事はとても参考になりました。

投稿: 杉浦ひとみ | 2008年4月11日 (金) 07時32分

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