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視聴者コミュニティ、NHK番組改編事件判決に関する見解を最高裁裁判官ほかに提出

「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は617日、次のような見解をまとめ、今回の裁判を担当した最高裁第一小法廷の5人の裁判官(横尾和子、甲斐中辰夫、泉徳治、才口千晴、涌井紀夫の各氏)とNHK正副会長以下全理事、NHK経営委員全員に提出(手交または郵送)した。

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                           2008616

    ETV番組改編事件に対する最高裁判決についての当会の見解

             NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                    共同代表 湯山哲守・醍醐聰

 さる612日、最高裁判所第一小法廷(横尾和子裁判長)はETV番組改編事件に対して第1審原告(VAWW-NET JAPAN。以下、「原告」という)の訴えを全面的に退ける判決を言い渡しました。判決の中で最高裁は原審東京高裁判決が挙げた2つの争点のうち、1つ目の番組改編にあたって政治介入があったかどうかにはまったく言及せず、2つ目の争点、すなわち、番組改編が取材に協力した原告の期待権、信頼を侵害するものであったかどうかを検討し、どのように番組を編集するかは放送事業者の自主的判断にゆだねられており、取材対象者の期待や信頼は原則として法的保護の対象にならないとして原告の訴えを退けました。
 しかし、私たちは以下述べる理由により、こうした最高裁判決は本件番組改編の本質から目をそらせた、まれに見る悪質な判断であると考え、最高裁を厳しく批判するものです。

1
. そもそも放送法第3条が定めた番組編集の自由、自律といっても、それは今回の最高裁判決も指摘しているように、「国民の知る権利に奉仕する表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にある」ものです。ところが、本件においてNHKが行った番組改編は、戦時性暴力の実態を被害者である「元従軍慰安婦」や加害者である元日本軍兵士が証言した場面をカットするなど、国民が日本の戦争責任を考える上できわめて重要な意味を持つ証言を切り捨てる改編にほかなりませんでした。このように国民の知る権利に背くことが明白な番組改編まで「表現の自由」を持ち出して免罪した最高裁判決は憲法の番人たる司法の使命を自ら投げ捨てたに等しい、稚拙かつ前後自己矛盾の判断というほかありません。

2
. 最高裁判決は、「放送事業者の制作した番組として放送されるものである以上、番組の編集に当たっては、放送事業者の内部で、様々な立場、様々な観点から検討され、意見が述べられるのは当然のことであり、その結果、最終的な放送の内容が編集の段階で当初企画されたものとは異なるものになったり、企画された番組自体が放送に至らない可能性があることも当然のことと国民一般に認識されているものと考えられる」(下線は引用にあたって追加)と記しています。
 しかし、本件番組改編は純然たるNHK内部での検討の結果ではなく、東京高裁判決も認めたように、安部晋三氏ら政権与党政治家の干渉、圧力を受け、それを忖度したNHK幹部が制作現場の抵抗を押し切って強行したものにほかなりません。また、NHK内部といっても、改編を主導したのは制作現場のスタッフではなく、安部氏らと面会したあと制作現場に戻った野島国会担当役員らでした。こうした異例な一連の経過を見れば、本件番組改編をNHK内部での様々な意見・検討の結果であるなどと一般論に解消して済ませようとした最高裁判決が問題の本質をはぐらかせた皮相な判断であることは明白です。

3
. 今回の最高裁判決は上記のように、本件番組改編にあたって行われた政治家の介入について一切言及しませんでした。しかし、このことを以て、NHKあるいは安倍晋三氏ら関係政治家が無罪放免されたとは到底みなせません。それどころか、本件をめぐる東京高裁法廷で番組制作スタッフが証言した政治家の数々の介入を示す証拠、それらも踏まえて東京高裁が認めた政治家の介入とそれを忖度した当時のNHK幹部の政治におもねる根深い体質は、当事者自らが非を認め、反省の意思を行動で示さない限り、恒久に消えることのないNHKの汚名として視聴者の記憶にとどまることは間違いありません。
 私たちは、この記憶を風化させることなく、今後もNHKの優れた番組には激励を送る一方で、政治におもねるNHKの体質を厳しく監視し、是正を求める行動を起こしていきます。

4
. 最高裁が今回の判決で、国民の知る権利に背く番組改編まで放送事業者の編集の自由の名の下に免罪したことは、今後、NHKが自らの「編集権」を盾に同様の番組改編を繰り返すのではないかという懸念を抱かせます。しかし、国民の知る権利に奉仕するためにこそ、メディアに編集の自由、表現の自由が与えられているという憲法の原点に照らせば、今回の最高裁判決が司法の良識に背くことは明らかです。私たちはこのような憲法の原点を踏まえて、今後も国民の知る権利に奉仕する公共放送としてNHKが再生するよう、視聴者主権の運動を続けていく決意です。

                               以上

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