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大学生の学業機会を侵害する企業の横柄な採用活動

大学3団体が全国の企業に早期採用活動の自粛を申し入れ
 79日午後7時のNHKニュースで、企業が大学生の採用選考と内定を出す時期が早くなりすぎて学生が就職活動に追われ学業に支障が出ているとして、国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会の3つの団体が全国の企業に対して、大学4年生になる前には採用の働きかけを行わないよう要請した、というニュースが放送された。

 このニュースによると、この10年ほど企業が大学生の採用を決める時期が年々早まり、大学生の多くが3年生の早い段階で就職活動を始めているのが実態だという。そこで、上記の大学3団体は「学生が就職活動に追われて十分に学べないまま社会に出ている憂慮すべき現状にある」として、全国の企業や業界に対して、早い時期からの働きかけを控えるよう要請したのだそうだ。具体的には、大学4年生になる前の学生を対象にした採用の働きかけは行わないことや、就職セミナーや面接などは大学の授業がない休日や夏休みに行うよう求めたという。

目に余る企業の学業妨害行為
 このニュースを私は、「何を今頃」という思いで聞いた。大学教員なら大なり小なり、こういう状況は先刻承知のことである。私自身、学期の途中で、担当した講義科目について小テストを数回行っている。私の大学生時代はというと、試験といえば、学期末1回が当たり前で、試験開始時刻の数分前に事務職員が試験教室に現れ、封筒から問題文が書かれた用紙を取り出して、「産業革命の特徴を論ぜよ」などと大味の問題を板書する科目が多かった。中には、答案用紙の右肩に「希望する点数を記入せよ」と書いて「記入欄」が用意されていた科目もあった。それならと不遜にも「95点」と記入した。後日、成績簿を見たら、95点だったか98点だったかの点数が付いていて驚いた。そんな自分自身の牧歌的というか、自由放任の学生時代を振り返ると、今の大学教育はずいぶんと細やかになったものだと思う。

 話が横にそれたが、春先に1回目の小テストの事前アナウンスをすると、「その日は就職活動で受けられません。何とかしてもらえませんか?」と言いに来る学生が必ず数名いる。当然、「何ともならないね」と答えるが、割り切れなさを感じるのも確かである。中には、「就職活動で授業に出られなかったので、今まで教室で配布されたプリント資料をもらえませんか?」と言ってくる学生もいる。最近は講義用ブログを開設しているので、そこに掲載した資料を自分で印刷するようにいうことにしている。

 
会計士試験(2次試験)に合格したゼミ生が正規のゼミの時間帯に新合格者向けに行われる実習に出なければならないのでと、ゼミの欠席や早退を申し出てくることがある。そのときは、「君が就職する監査法人の上司の名前は? 手紙を書くから持っていきなさい」というと、「それだけは勘弁してください」という返事が返ってきた。

 本来、こういう状況を諦観している大学教員はふがいないのだが、企業が一斉に青田買いに動き、どの大学の学生もそれに対応せざるを得ない状況では、個々の教員が自分の周辺の大学生に学業専念を諭してもどうにかなるものではない。だからこそ、全国の大学当局が共同で経済団体に対し、大学の威信をかけて、学生の学業を妨害する行為を自粛するよう毅然と迫るのが当然である。NHKニュースが伝えたように10年ほど前から、このような企業による学業妨害行為が横行していることを承知しながら、今まで放置してきた大学当局の無責任さは深刻である。と同時に、大学のカリキュラム、大学生の学業の機会を侵害して意に介さない企業の横柄な行動を社会に訴え、強く自制を求めたい。

レジャーランド 今は昔
 かつて、大学はレジャーランドと嘲笑されたが、昨今は大学生の間に学びの姿勢が広がっていると実感している。この春、私が担当するゼミに入った新3年生一人一人に夏学期中(東大では4~9月の学期をこう呼んでいる)順次、自分でテーマを探し発表するよう指示した。例年であれば、発表前に個別にミーティングをして、論点や参考文献のアドバイスをしたものだが、今年度は候補になるテーマのリストを配布し、発表の順番を決めただけで、後は各自が独学をしてかなりの質量の発表用原稿をまとめた(この程度の勉学は当たり前と言えば、それまでだが)。発表したテーマは次のとおりだった。
 *排出権取引
 *株式会社アイ・エックス・アイの粉飾決算
 *粉飾決算について(ミサワホーム九州の粉飾決算の研究――醍醐補    注)
 *ストックオプション
 *サブプライムローン問題 
 *ハイブリッド金融商品の貸借対照表上の分類について
 *ポイント・マイレージの会計
 *企業結合とのれん
 *新銀行東京について
 *粉飾~その実態と背景~(日興コ-ディアルグループ、ライブドア、    カネボウ、サンビシの粉飾事例の研究――醍醐補注)
 *ブルドックソース株式会社の新株予約権無償割当てについて

 どの発表も大学3年生にしてはなかなか充実しており、毎回、発表の後の議論も例年以上に活発だった。定年まで残り少なくなった私にとっても、この夏学期は充実感を味わえた。それだけに、求人側のスケジュールに受け身にならざるを得ない大学生の事情を見透かして彼らの学業の機会を侵害する企業の横柄な行動に強く自制を求めたいのである。求人活動は土・日か夏休み中に限るということを事細かにルールで縛ったり、大学側から申し入れをされたりしなければ、やりたい放題というのでは嘆かわしい。

道路に面したわが家のフェンスにからむてっせん
(季節はずれになったが)
20080717_2   

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コメント

「失われた10年」とその後の小泉カイカクの間に、多くの日本企業は採用後の人材教育・育成を行わずに使い捨てをするようになった印象があります。
1企業に使い捨ての駒にされないためにも大学での学業を大事にして欲しいと思っているのですが、経済界の横柄さは昔以上なんですね。

投稿: 43歳 | 2008年7月18日 (金) 05時56分

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