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特別会計の余剰金は持続的で大規模な一般財源となりうるー―埋蔵金論争の正しい決着のために(3)――

 これまで2回の記事から、偶発債務に備える保険特別会計の剰余金・不用額を除外しても、①多額の不用額なり剰余金を計上している事業特別会計に対する一般会計からこれら特別会計への繰り入れを停止するか、②これら特別会計の剰余金を一般会計へ繰り入れることによって、たとえば、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるために要する約2.3兆円程度の財源を確保するのはたやすいことがわかる。

 しかし、それでもなお、政府部内はもとより財政学者の間でも、特別会計の埋蔵金は財政赤字の解消にとっては1回限りの財源に過ぎないとか、「埋蔵金論争は早く終止符を打って、もうないというけじめをつけていただきたいと思っていて、まだ埋蔵金があるのだかないのだかということは、全く社会保障等の財源を安定的に確保するということとは、非常にノイジーなもの」(財政制度等審議会財政制度分科会財政構造改革部会(2008530日開催)議事録より(発言者:土居丈朗)であるとかいった論調が見受けられる。そこで、特別会計の現在の余剰金(積立金に限らないことに再度注意!)ははたして一過性の財源にすぎないのかどうかを具体的事実に照らして検証しておきたい。

特別会計の余剰金が持続可能な一般財源といえる根拠(その1
――不用額に見合う剰余金の一般財源化、国債費への充当――

 このシリーズの1回目の記事に掲載した表2からわかるように、各年度の不用額(偶発債務に備える保険事業特別会計を除く)に見合う剰余金を一般会計に繰り入れるか、不用額に相当する一般会計からの繰り入れを停止したなら、過去5年間(20022006年度)で一般会計に対し総額で37.7兆円(年平均7.5兆円)の増収効果をもたらしたことになる。そして、この増収額を国債整理基金特別会計に繰り入れ、国債の繰上償還に当てるか、毎年度の国債の元利償還費に充当することによって生じる一般会計の歳出削減効果は一過性ではなく、国債の残存償還期間全体に及ぶことになる。ちなみに、同じ5年間の一般会計の年平均歳入額は87.0兆円、国債費の年平均額は17.1兆円だったから、この間に特別会計で生じていた不用額を上のいずれかの処理で一般会計に還元していたら、一般財源は8.6%増加したことになり、不用額の全額をかりに国債費に充てたとしたら、国債費に要する歳入の44%が節減でき、他の財源に充てられたことになる。

特別会計の余剰金が持続可能な一般財源といえる根拠 (その2
――特定財源を環境税に転換――

 毎年度2兆円前後の特定財源(揮発油税の4分の3と石油ガス税及び自動車重量税)が一般会計を経由して道路整備特別会計に繰り入れられてきた。これらは道路整備に使途が特定された財源であるという受益と負担の関係に着目した処理であった。しかし、自動車の走行による受益と道路の維持補修という受益者負担の原則ではなく、自動車の走行による混雑・社会的費用の増加、環境への負荷という外部不経済に着目し、原因者負担の原則にもとづいて道路特定財源を恒久的な環境税と捉え直し、一般財源として活用することも十分考えられる(このような考え方の詳細は、中里透「道路特定財源制度の今後のあり方に関する論点整理」『会計検査研究』34号、20069月、を参照されたい)。

特別会計の関連法人に隠れた余剰金
 特別会計に一般財源化が可能な余剰金がどれだけあるかを査定するにあたっては、各特別会計が受け入れた一般会計からの繰入金や特定財源がその特別会計で最終消費されるのではなく、かなりの金額が、
   
   特別会計 → 関連独立行政法人 →  関連公益法人

という経路で関連法人へ流れている実態を注視する必要がある。2006年度末現在でいうと、特別会計の資産総額のうち253千億円が出資や融資などの形で特殊法人から衣替えした独立行政法人など関連法人へ流れている。そして、これら独立行政法人の中には毎期研究委託費、業務委託費等の形でかなりの金額を関連公益法人(主に財団法人)に支出している例が珍しくない。となると、資金の経路の末端での使途まで追跡し、特別会計に一般財源化が可能な余剰金がどれだけあるのかを広い視野で査定することが不可欠である(注)。

 (注)フランス人権宣言は前文で「人の権利に対する無知、忘却または軽視が、公の不幸と政府の腐敗の唯一の原因であることを考慮し、人の譲りわたすことのできない神聖な自然的権利を、厳粛な宣言において提示することを決意した」(樋口陽一・吉田善明編『解説 世界憲法集』第4版、2001年、三省堂、284285ページ)と謳った後に第14条で次のように記している。
  「第14条〔租税に関する市民の権利〕 すべての市民は、みずから、またはその代表者によって、公の租税の必要性を確認し、それを自由に承認し、その使途を追跡し、かつその数額、基礎、取立て、および期間を決定する権利を持つ。」


 そこで、一例として、旧電源開発促進対策特別会計2007年度に石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計と統合され、「エネルギー対策特別会計」に衣替え。ただし、新特別会計の下で「電源開発促進勘定」として存続)を取り上げてみよう。2006年度末現在の資産総額は6,799億円であったが、そのうちの4,464億円(65.7%)は出資金の形で2つの独立行政法人(新エネルギー・産業技術総合開発機能と日本原子力研究開発機構)に流れている。このうち、資産規模が圧倒的に大きい日本原子力研究開発機構2006年度の財務諸表を調べると、関連公益法人(財団法人)7つが事業収入総額の19.2%にあたる18.2億円を機構から委託費等として受け入れていることがわかる。ここでは、その中の(財)原子力安全技術センターと(財)原子力共済会を取り上げてみたい。以上の資金の流れを図で示すと次のとおりである。

       旧電源開発促進対策特別会計  
                           ↓
      (独)日本原子力研究開発機構
                  ↓
      
(財)原子力安全技術センタ-・原子力弘済会      

 ここで注目すべきは資金の流れの終点にある公益法人での資金の運用実態である。まず、原子力安全技術センター2006年度末現在の貸借対照表を調べると、資産総額の15.0%にあたる5.6億円が現金で、同じく13.9%にあたる5.2億円が投資有価証券として、それぞれ保有されている。また、短期的な資金繰りのゆとりを表す当座比率(=当座資産/流動負債)は144%、正味財産比率(正味財産/資産総額)は70.6%で極めて潤沢な財政状況となっている。次に、投資有価証券の内訳を見ると、総額5.2億円のうち4.2億円は国債、1億円は東京電力社債となっているが、東京電力社債は次の年度に全額処分され国債に再投資されている。しかし、特別会計の関連法人が低利の国債を保有するほか運用対象がないのであれば、一般会計に還元して国債の償還に充てるか、公的資金にふさわしい使途に充てるのが当然であろう。民間企業、それも特別会計を所管する省庁の監督対象である民間企業の社債を特別会計の関連法人が保有するのは不適切である。なお、原子力安全技術センターの役員名簿を見ると、2006年度末現在では会長は元科学技術庁事務次官、理事長は同じく元科学技術庁審議官が就任している。また、理事(非常勤)の一人に元国土庁長官官房審議官が、監事の一人に科学技術庁原子力局立地地域対策課長が就いている。なお、2007年度には上記の役職のほかに常勤理事として元文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室長が就任している。
 
 次に、(独)日本原子力研究開発機構から8,150万円の事業収入(全事業収入の72.7%)を得ている(2006年度)(財)原子力弘済会の財務内容を調べてみよう(以下は2007年度)。寄附行為によると、当財団は①原子力に関する科学技術情報サービスと②(独)日本原子力研究開発機構の職員等の福祉の増進を図ることを目的にしている。しかし、このうちの①の具体的業務はというと、国際原子力情報システムのデータベースからの検索サービス、世界各国の公開された原子力レポート等の複写、入手可能な外部機関からの複製物の取り寄せ、原子力関連の図書の出版と説明されている。一見していえるのは、このような業務なら日本原子力研究開発機構が付帯業務として行えば済む話であり、わざわざ別個に財団法人を設立するには及ばない。むしろ、原子力弘済会の主たる事業は②の福祉事業であり、事業費の60.4%が給付費(慶弔関係給付、退会給付)となっている。また、給付費に職員給与、賃金、法定福利費、退会給付引当金繰入、退職給付引当金繰入を含めた広義の人件費・共済関連費が事業費に占める割合は79.1%に達している。さらに、管理費に占める広義の人件費の割合も81.3%に達している。ストックの面でみると、資産総額(18.0億円)の68.3%(12.3億円)が会員貸付金となっている。
 では、原子力弘済会の資産の使途(運用状況)はどうかというと、資産総額の25.8%にあたる4.6億円を流動資産に分類される預金として保有している。これは1年間の経常費用(引当金への繰入など資金の流出を伴わない費用を除く)の1.5倍にあたる。また、有価証券として1.5億円を保有しているが、そのうちの1億円は国債、0.5億円は大阪府公募公債である。つまり、資産総額の約3分の2は会員貸付金に充てられ、残りの約31は現金、有価証券として保有されていて、対外的事業に充てられている資金は全体の6%ほどに過ぎないのである。このような職員の共済組合といってさしつかえない事業を特別会計の傘下におき、独立行政法人を経由して公的資金が流れる仕組みを温存しておく理由は見当たらない。かりに、存続させるのであれば、退会給付、退職給付に備える引当金に見合う資産は別にして、その他の余剰資産(預金、有価証券等)は日本原子力研究開発機構を経由して一般会計に還元してしかるべきであろう。
 なお、原子力弘済会の貸借対照表を見ると、貸倒引当金として6,139万円が計上されているが、この金額は売掛金、貸付金の5.0%に相当する。比較に難はあるが、同じ時期の大手行の不良債権比率が1.4%、地方銀行では3.7%であったのと対比して異常に高い比率である。実態に見合った引当てだとすると、融資とその後の債権管理のあり方がどうなっているのか精査する必要がある。

 以上みてきた旧電源開発促進対策特別会計の事例は、金額的には一般財源化が可能な億円~十数億円単位の余剰金が存在することを指摘したにとどまる。しかし、特別会計全体に同様の独立行政法人が、そしてその外郭に関連公益法人がそれぞれぶらさがっていること、特別会計からこれら関連法人に総額で25.3兆円の資金が出資や融資の形で流れていること、それ以外でも年々、委託費などの形で支出がされていることを考えると、関連法人にまで視野を広げて特別会計を経由する資金の最終の使途を追跡することが重要な課題といえる。

 ここでは、金額的規模の点で注視すべき旧産業投資特別会計投資勘定2008年度から財政融資資金特別会計に移管され、「財政投融資特別会計」と改称)を例に挙げて検討しておきたい。この特別会計の資産総額は114685億円に達するがその99.0%、113477億円は日本たばこ産業と日本電信電話の株式保有額である(2006年度末現在)。これらは現状では、法律で政府保有が義務付けられているが、民営化の趣旨に照らせば政府がいつまでも株式を保有し続ける根拠はなくなっている。保有額のすべてを一挙に処分することは市場の需給関係からいって不可能に近いが、市場価格への影響を考慮しながら段階的計画的に処分し流動化して、一定期間にわたって一般財源に繰り入れることは不可能でない。

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