« NHK経営委員会の議事録等の公開請求を発送――視聴者コミュニティ―― | トップページ | 政権交代の虚像をあぶり出した西松献金事件(2) »

政権交代の虚像をあぶり出した西松献金事件(1)

「この時期になぜ」ではなく、「この時期だからこそ」
 今回、東京地検が小沢一郎氏周辺への強制捜査に踏み切った西松建設の政治献金事件をめぐる識者やブロガーの意見を読んで強い違和感を覚えたので、私も西松献金問題について自分の意見を書くことにした。
 かなりの識者やブロガーに共通するのは、政権交代が現実のものとなりかけたこの時期に、次期首相の下馬評が高い小沢氏を狙い打ちしたかのような強制捜査は解せない、というものである。「捜査は自民党には及ばない」という漆間官房副長官のオフレコ会見での発言がこうした観測に輪をかけた。
 これについて先回りしていうと、「この時期になぜ」ではなく、「この時期だからこそ」というのが私の意見である。これに立ち入る前に、小沢氏本人の主張をまとめておこう。
 問題にされた献金は現行の政治資金規正法で適法とされている政治団体からの寄付金であり、なんらやましいものではない。かりに、西松建設からの寄付金であれば政党支部で受領したまでのことである(注:現行の政治治資金規正法では政治家個人やその資金管理団体への企業献金は禁止されているが、政党本部や支部への献金は適法とされている)。
 献金元の政治団体がどういう団体であるかは秘書に任せており個別に把握していない。重要なことは献金の出所を詮索することではなく、政治資金の出入りを公開することである。それが政治家にとっての潔白証明になる。
 かりに政治資金収支報告に不備があったとしても、従来は訂正報告で済まされてきた。それが今回はなぜいきなり強制捜査なのか、国家権力の濫用としか思えない。

大谷昭宏氏の自己撞着の<ガチンコ勝負>論
 今回の西松建設献金事件については、ブログ上でも議論が活況を呈している。その中で、大谷昭宏氏は<政治と司法のガチンコ勝負――怒れる小沢か正念場の検察か>というタイトルで日刊スポーツ・大阪エリア版の平成2139日号に発表した論説を自身のWEBコラムに転載している。その中で大谷氏は次のように述べている。

 「小沢さんは記者会見で辞任をきっぱり否定したが、民主党内でも小沢降ろしの声が高まっている。だが、私は小沢さんがこの捜査を国策捜査と非難するのであれば、絶対に辞任すべきではないと思っている。言うまでもなく、国民の8割が不支持を表明している麻生内閣、選挙をやれば、民主党に政権を持って行かれるのは目に見えている。焦った政権政党は検察、警察をはじめ、あらゆる公安、情報機関を駆使して、民主党のスキャンダル探しをしているという声が聞こえる。小沢さんが国策捜査と非難するのも、この点を指してのことだろう。
 まして秘書が逮捕された容疑は政治資金規正法違反。今回の虚偽記載をはじめ、記載漏れや誤記載はすべての国会議員の収支報告書を精査して行けば数十件はあるだろうといわれている容疑だ。こんな捜査が罷り通ったら、気に入らない党の代表は追い落して国民の意志と関わりなく、検察が政治を支配することになる。だから国策捜査と決めつけるなら、小沢さんは代表を辞任するべきではない。とりあえず代表を降りて裁判で戦うといった手法は検察の筋書き通りということになる。」

 では、検察はどうすればよいのか。大谷氏は、「道はただ一つ、虚偽記載した献金の悪質性を証明するしかない」と述べ、かりにこの献金が胆沢ダムなど公共工事受注に便宜を図ってもらった見返りの金であり、斡旋収賄罪にあたるとなれば小沢氏に代表続行の目はない、と結んでいる。

 虚偽記載した献金の悪質性の立証がポイントになると考える点では誰しも異論はないだろう。事実、ここ数日の報道によると、西松建設以外の大手ゼネコン各社も小沢氏の公設第1秘書で小沢氏の資金管理団体・陸山会の会計責任者である大久保隆則氏から献金やパーティ券購入の依頼を受け下請業者を使ってこれに応じていたという(『毎日新聞』2009314日、夕刊)。また、西松建設ととともに小沢氏側に迂回献金した疑いが持たれている大手ゼネコン3社が200308年にかけて、胆沢ダムの主な工事を受注していたことも判明し、東京地検特捜部は大久保秘書らがこの時の受注に便宜を図った事実がないかどうか、関係者から事情を聴取しているといわれている(『朝日新聞』2009314日)。

 不可解なのは、大谷氏が献金の悪質性の立証がポイントになると言いながら、東京地検がその立証に着手したことを、政権交代の可能性に焦った政府与党が検察などあらゆる公権力を駆使して民主党のスキャンダル探しをしているかの見方があながち、根拠のないものではないかのように述べていることである。立証が必要というなら、それに着手する捜査を「国策捜査」と非難するのは筋違いも甚だしい。それどころか、小沢氏側が献金を見返りに公共工事に「口利き」をした可能性を疑わせる事実が献金元の関係者の証言で浮かび上がっているにもかかわらず、捜査を見合わせるとすれば、それこそ、不公正な捜査の「不作為」である。肝心の献金の原資について、個別のことは秘書に任せており把握していないとうやむやの逃げを打って、「国策捜査」というフレーズで自らに降りかかった疑惑を進んで明かそうとしない小沢氏の姿勢を擁護する理由は全くない。

政権交代の意味を問いかける事件
 <せっかく政権交代が目前に迫ったこの時期になぜ?>といぶかる意見が多い。しかし、私に言わせると、政権交代が現実味を帯びた時期だからこそ、現政権から小沢氏が率いる政権への移行の意味を考えることが重要である。
 なぜなら、今回の事件は、自らに振りかかった政治とカネをめぐる疑惑に空疎な説明しかせず、質問が肝心の献金の出所に及ぶと、<秘書に任せている>、<公開さえすれば、資金の出所は問わない>と居直る政治家に政権を担う資質があるのかどうかを問いかけているからである。「国策捜査」と付和雷同する前に、今回の事件で露見したような資質の政治家が首班に指名されるであろう政府・与党に政権が移行したとして、それが国民にとってどういう意味があるのかを胸に手を当てて考えてみてはどうか――問われているのは有権者の理性なのである。

|

« NHK経営委員会の議事録等の公開請求を発送――視聴者コミュニティ―― | トップページ | 政権交代の虚像をあぶり出した西松献金事件(2) »

「メディア」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« NHK経営委員会の議事録等の公開請求を発送――視聴者コミュニティ―― | トップページ | 政権交代の虚像をあぶり出した西松献金事件(2) »