参議院財政金融委員会で財源論について意見陳述と質疑
昨日(3月25日)に開かれた参議院財政金融委員会(委員長・円より子氏)に土居丈朗氏(慶応義塾大学経済学部准教授)、浅羽隆史氏(白鷗大学法学部准教授)とともに参考人として出席し、「今後の財政運営に必要な財源の確保に関する意見」を述べる機会を得た。
最初に3人の参考人が各自15分程度、意見陳述をし、その後、峰崎直樹氏(民主党)、鶴保庸介氏(自由民主党)、荒木清寛氏(公明党)、大門実紀史氏(日本共産党)と、それぞれ20分ずつ質疑を交わした。
その模様が参議院のホームページのビデオライブラリに掲載されているので紹介させていただく。
参議院財政金融委員会(2009年3月25日開催)録画
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/library/result_consider.php?page=2&tx_mode=consider&sel_kaigi_code=0&dt_singi_date_s=2009-01-05&dt_singi_date_e=2009-03-26&tx_speaker=&sel_speaker_join=AND&tx_anken=&sel_anken_join=AND&absdate=no&sel_pageline=10&dt_calendarpoint=2009-02-26&abskaigi=6
私の意見の要旨は次の2点である。
1.特別会計における余剰金(特に毎年6~9兆円に達している不用額と、使途未定のまま繰り越されている決算剰余金)を的確に把握し、一般財源として活用すべきである。
2.「初めに消費税ありき」の予断を交えず、すべての税目、増税なき増収財源(特に毎期発生している上記の特別会計余剰金)を視野に入れた検討をすべきである。
全体で午後1時05分から3時19分ごろまでと2時間余りなので、すべてをご覧いただくのは大変かと思う。ビデオの時間帯でいうと、私の意見陳述は、06:30~24:00である。お忙しい方はその中で消費税について意見を述べた部分(20:50~24:00)をご覧いただけるとありがたい。3分ほどの非常に限られた時間であったが日頃の私の考えを話すことはできたと思っている。
また、もう少し、時間を割いていただける方には、あるべき税制をめぐって土居氏と交わしたやりとり(01:32:00~01:36:55)をご覧いただくと、消費税増税をめぐる争点の概要を知っていただけるのではないかと思う。
なお、当日、意見陳述用に提出した資料(本体と別紙資料)も掲載しておきたい。
本体ペーパー
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/zaigen_ikenchinzyutu20090325.pdf
別紙資料
別紙1 特別会計における予算と決算の関係(概念図)
(会計検査院「特別会計の状況に関する会計検査の結果について」 平成18年10月、13ページの図を引用したもの)
別紙2 特別会計分析の3つのポイント
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/besshi2_3point.pdf
別紙3 各特別会計の不用額の推移
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/besshi3_fuyogaku.pdf
別紙4 各特別会計の予備費不用額の推移
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/besshi4_yobihi_fuyogaku.pdf
別紙5 特別会計の分類別の繰越額・不用額(16年度)
(会計検査院、前記資料37ページより引用)
別紙6 決算剰余金のうち翌年度歳入繰入額の見合い財源の内容(16 年度)
(会計検査院、前記資料63~64ページより引用)
別紙7 平成16年度決算で使途未定のまま100億円以上の歳計剰余金を 繰り越した特別会計・勘定のその後の決算状況
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/besshi7_sitomitei_kurikosikin_no_tuiseki.pdf
(別紙1、5、6はファイル・ベースの資料でないため掲載していない。)
補足 経済学の「定説」にたじろがないために
一点、質疑の場で触れられなかったことについて、この場で補足しておきたい。土居氏は質疑の中で数回、「所得税の引き上げを検討するにあたっては、すでに社会保険料において所得に比例した負担がされていることを考慮しなければならない」という趣旨の発言をした。
しかし、周知のはずと思うが、社会保険料における所得比例の負担は受給の時点で所得比例の年金部分として自分に還元されるものであって、社会的に再分配されるものではない。この意味で所得税負担の限度を議論する際に社会保険料の所得比例負担を持ち出すのは失当である。
昨日の意見陳述や質疑の中での土居氏の発言にも見られたが、経済学者の間で「経済学では~~となっている」という論法で特定の見解が経済学上の自明の定説であるかのような論法をしばしば見受ける。しかし、本当に定説なのか疑問に思えることが少なくない。上の社会保険料をめぐる見解などはその好例である。
また、かりに定説だとしても、それ自体の社会的合理性を問わなければならない場合が少なくない。社会保障負担と経済成長を二律背反かのように捉える見解などはその代表例といえる。
最近のコメント