鉄線によせて
だいぶ前のことだが今年もわが家の道路沿いの生垣と庭の隅に色違いの鉄線が咲いた。
鉄線は中国産の落葉つる科植物でヨ-ロッパ産のクレマチスの改良交配種だそうだ。強靭なつるが延びていくことから子孫繁栄の文様とも言われる。以前、犬の歌を選ぶ時に参考にした千勝三喜男編『現代短歌分類集成―20世紀“うた”の万華鏡』(2006年、おうふう)の植物編を見ると、鉄線、鉄線花を詠んだ短歌12首が収録されている。
梅雨の庭おぼおぼしきに鉄線蓮(てっせん)の花見えてゐてまた降り こめぬ
北原白秋
鉄線がするどく天へのぼる夜半わすれがたしも虚仮(こけ)のむらさ き
永井陽子
しかし、この集成に収められた12首にはないが、鉄線を季語にした短歌のなかで好きなのは次の歌である。
鉄線花むらさき沁みる家垣に二人となりし夕餉整ふ
森 淑子
連れ合いに作者のことを尋ねると書棚から『戦後歌人名鑑』(増補改訂版、1993年、短歌新聞社)を出してくれた。それによると森淑子さんは昭和5年生まれ、雙葉高女時代から作歌し、結社「をだまき」に入社、とあった。
最近のコメント