NHK視聴者コミュニティ、日放労に質問書を送付~ETV2001番組改編問題をめぐって~
「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、6月5日付けで日本放送労働組合(以下、「日放労」と略す)に宛てて、標記のような質問書を発送した。趣旨は、さる4月28日に放送倫理・番組向上機構(BPO)内の放送倫理検証委員会がETV2001番組改編問題に関して発表した意見を踏まえて、視聴者とNHK職員が共同してNHKの政治からの自主自立を確立するために連携する上で検討しなければならないと考えられる問題について、質問したものである。
これについて、6月19日までに文書による回答を要請している。
質問書の全文は以下のとおりである。PDF版のURLも貼り付けておく。
ETV2001番組改編問題に関するBPO意見書を踏まえた質問書
~視聴者とNHK職員の共同による公共放送の充実・発展を願って~
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/nipporo_heno_situmonsho20090605.pdf
2009年6月5日
日本放送労働組合 御中
ETV2001番組改編問題に関するBPO意見書を踏まえた質問書案
~視聴者とNHK職員の共同による公共放送の充実・発展を願って~
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
NHKの職場で日々、公共放送の担い手として奮闘されている貴組合に敬意を表します。去る4月28日、「放送倫理・番組向上機構」の放送倫理検証委員会(以下、「BPO委員会」と略します)は、NHKのETV2001シリーズ、第2回「問われる戦時性暴力」の番組改編問題について意見を発表しました。私たちはこの意見書が、NHKの政治からの自主自律を強固なものとし、それによってNHKに対する視聴者の信頼を回復・向上させる上で極めて重要な意味を持つ文書であると受け止めています。
その意味から私たちはNHK執行部がこの意見書を真摯に受け止めるよう求める別紙のような文書を福地会長宛に提出しました。これに対して、去る5月22日にNHK編成局計画管理部長・掛川治男氏名で別紙のような回答が届きました。
ところで、前記のBPO委員会の意見書はNHK執行部に対して厳しい反省を促すと同時に、NHK職員に対しても開かれた自由な討論を呼びかけています。
そこで、この機会に私たちは視聴者とNHK職員の共同による公共放送の充実・発展を願って、以下のとおり質問をさせていただくことにしました。ご多忙のところとは思いますが、これらをご検討のうえ、6月19日までに別紙宛に文書でご回答をくださるようお願いいたします。
質問1 貴組合は今回のBPO委員会の意見書、及びそれに対するNHK執行部の見解をどのよう に受け止めておられるか、お聞かせください。その際、BPO委員会はNHKが放送・制作部門と国会対策部門を分離するなどの措置を講じなければ今後も同様の問題は起こると警告していますが、こうした指摘を貴組合はどのように受け止めておられますか?
質問2 貴組合は、「この裁判を通じて明らかになった多くの課題から目を背けることはできませんし、今回の判決でそうした課題が解決したわけでもありません。これまでの経緯を踏まえつつ、私たちに課せられた役割と責任の重さをあらためて噛みしめ、日々の業務の中で公共放送としての役割と責任を着実に果たし続けていきたいと考えています」(http://nipporo.com メッセージ「『ETV2001』判決を受けて」)と記しておられますが、こうした考えのもとに公共放送としての役割と責任を着実に果たしていくため、具体的にどのような取り組みをされるのか、お聞かせ下さい。
質問3 当会はETV番組改編問題について視聴者代表やジャーナリストらも参加する検証番組を企画・放送するようNHKに申し入れていますが、この要望について貴組合はどのようにお考えか、お聞かせください。
質問4 BPO委員会が強調したNHKにおける内部的自由は放送の自由を強固なものにする上で不可欠と私たちも考えています。こうした内部的自由を確立するにはNHKの職場でNHK執行部と緊張関係を保ちながら協働する主体が存在することが不可欠だと考えます。私たちは貴組合がそうした主体としての役割を果たされるよう強く期待しています。
しかし、その一方で貴組合はETV2001番組改編問題をめぐる最高裁判決について、「最高裁判決は『期待権』を原則として法的保護の対象として認めないものであり、表現の自由を尊重した判断として評価したいと思います」と論評しておられることに私たちは同意できません。
もともと、放送事業者に認められた編集の自由は自足的なものではなく、視聴者の知る権利に応えるためのものです。この点でETV2001番組改編事件の本質は、NHK執行部が戦時性暴力の事実に関する視聴者の知る権利に背を向け、一部政治家の圧力・干渉の前に編集の自由を自ら放棄した点にあったと私たちは認識しています。こうした私たちの見解について貴組合はどうお考えか、お聞かせ下さい。
質問5 NHKがBPO委員会の指摘を真摯に受け止め、自主自律を堅持しつつ市民の知る権利に応え、言論の広場としての役割を果たすためには、放送現場の職員の内部的自由とNHKの番組や経営(受信料の使い方など)について視聴者が発言し参加する権利を連繋させることが重要だと私たちは考えています。
そのために当会ほかいくつかの視聴者・市民団体は従来から貴組合に対し、シンポジウム等の共催を呼びかけたり、視聴者・市民団体が企画した集会等への参加を呼びかけたりしてきました。しかし、これまでのところ、一部の例を除き、貴組合はこうした呼びかけに消極的な姿勢を取り続けてこられました。貴組合がこのように視聴者・市民との連携に消極的な姿勢を取り続けられるのはなぜでしょうか? 理由をお伺いします。
(参考)
貴組合が2006年2月にまとめられた『「公共性」への常なる挑戦』と題する書物の中の<9.“広場”を広げる緊張感と自分との闘い>で次のように記されています。
「放送受信料という負担金の制度は、NHKの事業運営の過程において透明性や適正な競い合いが機能し、負託した受信料を最大の効果をあげて還元してほしいとの期待が強く込められていると解釈するべきだ。そしてそれが実行されているかどうかをチェックすることが、視聴者とNHKの間の、そしてNHK内部においての重要な『緊張関係』である。こうした緊張関係が希薄になり、閉鎖的・隠蔽体質を疑われるようになれば、公共性の持つ理念は簡単に吹き飛んでしまい、NHKに公共の広場を任せられないという主張が勢いづく。」
そして、これに続く同書の<11.常に外に開かれている“運動体”に>の中では次のように記されています。
「・・・・そもそも〔NHKは〕市民の共同出資という特別な存在なのだ。負担をしている立場からすれば、公共の広場でのサービスを楽しむことばかりでなく、直接見聞きはできないが評判を聞いて『負担に値するものなのかどうか』『管理・運営に問題があるのではないか』という声を伝える権利も同時に有するのであり、このことが先述した『緊張関係』の持続と言えるのではないか。」
「それでも、常に未来に開かれた、豊さへの可能性を秘めた、常に外に開かれたある種の“運動体”であり続けているのが『公共放送』だ、と考える。」
私たちも貴組合のこうした公共放送論に共鳴しますが、そうであればなおさら、貴組合自らが「常に外に開かれた運動体」となっていただくことを強く希望します。
以 上
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