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拙書『会計学講義』第4版の重版を出版

 書きたいことはいっぱいあるのに公私の用事にかまけてブログの更新がだいぶ滞ってしまった。そんな後で自分の本のことを書くのは気か引けるが・・・・と言い訳をしながら、自分の新刊本(といっても重版)をPRさせていただく。(表紙のカバーの絵「浸透」は第3版に続き、衣川史さんの作品を使わせていただいたものである。)

 このたび、昨年5月に第4版を出版した拙書『会計学講義』の重版(第2刷り)を刊行する機会を得た。「堅い」大学の教科書の版を重ねられるのは著者としてうれしいことである。といっても、重版といえば、旧刷への加筆は原則なしで誤字・誤植の訂正を除けば増刷あるのみということである。しかし、第1刷を脱稿後も国際会計基準への調整(コンバージェンス)を理由とした会計基準の改廃が相次ぎ、それを取り込むのに苦労するのが最近の会計学教科書の書き手の共通の悩みの種になっている。
 そこで今回の重版にあたっては、編集担当者に要望して本文の末尾と索引の間(352355ページ)に、第1刷を脱稿後にわが国でなされた会計基準の改訂、および目下、見直しが進行している事項のうちから以下の主要な5項目を選んで簡潔な解説とコメントを追加した。

 1.財務諸表の表示に関する見直しの動き(その他包括損益の区分を設けて、従来の当期純損益と併記しようとする提案)
 2.後入先出法の廃止
 3.金融商品の測定区分の見直し(保有目的別に有価証券の会計処理基準を定めた従来の基準を見直し、区分を廃止または簡素化しようとする動き)
 4.退職給付債務の測定方法の見直し(将来の昇給を織り込んだ給付債務(PBO)を計上することにしている現行の会計基準の可否、給与改訂等に伴って生じる過去勤務債務を繰り延べ処理することを認めた現行の会計基準の可否等を再検討する動き)
 5.資本連結方法の改訂(部分時価評価法の廃止、全面時価評価法への一元化等)

 なお、この本の編集を担当してもらった東京大学出版会のOさんが出版会のHPで本書の紹介をしておられるので紹介をさせてもらう。本書の目次も掲載してもらったので参照していただけるとありがたい。
 http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-042128-7.html

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 ところで、上に挙げた最近の会計基準の見直しの中には、グローバル・スタンダードとして定着したかに見えた基準の見直しが少なくない。保有目的別の有価証券の会計基準の見直し、特に、満期保有目的の債券の目的外運用に対するペナルティを撤廃する動き、保有期間の長短を想定した有価証券の評価基準の区別を撤廃する動き、退職給付債務に将来の昇給を含める点を再検討する動きなどは、その典型例である。
 ここで気になるのは、わが国でのこうした会計基準の見直しがすべて海外発の見直しの動きを契機にした他律的なものだという点である。会計基準の国際的統合に自律も他律もないという主張があるかも知れない。しかし、現在、見直しが進められている会計基準のほとんどは、かつてそれらがグローバル・スタンダードになろうとした時、日本の会計基準設定機関は特段、独自の見解を表明するでもなく受け入れたものである。それが海外発で見直しされかけると、にわかに日本でも見直しの議論が始まる有様は何とも情けない右顧左眄である。この話をし出すと自著のPRからはずれるので、続きは次の記事で書くことにする。

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