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都民を欺く東京都と新銀行東京の二枚舌~新銀行東京の黒字決算はタコ足決算~

 2010124日、東京・御茶の水の明治大学11号館で、「新しい東京 福祉・環境都市を目指して」をテーマに、新東京政策研究会主催のシンポジウムが開かれた。主催者の発表では135名の参加があったとのことである。以下は、シンポジウムの第1部で私が報告用に準備したパワーポイントと読みあげ原稿である。

 報告内容は雑誌『世界』の200911月号に発表した拙稿と重なる部分もあるが、その後に入手した2009年度中間期(20099月期決算)で新銀行東京が開業以来初めて黒字を計上した決算の実態に関する分析を付け加えた。まず、1期前の決算と比較したポイント部分を摘記すると次のとおりである。

    新銀行東京の比較損益計算書(抜粋)        単位:百万円

20089月期

20099月期

業務粗利益  

3,117

1,509

貸倒引当金繰入

6,823

0

貸倒引当金戻入

0

2,073

税引前当期純利益

7,016

1,071

(参考)貸出金残高

163,281

115,230

 新銀行東京「平成223月期中間決算説明資料」より作成

 これを見ると、本業の業績を表す業務粗利益が半減したにもかかわらず、帳尻の税引前当期純損益の黒字化をもたらした増益要因のほほ全ては貸倒引当金の縮小(新規繰入の停止による費用の減少と残高の取り崩しによる利益ねん出)によるものであったことがわかる。
 もともと、金融機関の貸倒引当金は貸出債権の焦げ付きによる損失に備えるものであるから、この間、貸出金が481億円減少した(1,633億円 → 1,152億円)のに対応させて貸倒引当金を取り崩すのは自然なことと思える。しかし、私は分析の結果、次の3点を指摘した。

 (1)貸出金が総額で約480億円減少したとはいえ、不良債権(ここでは金融再生法で開示を義務付けられた債権)比率は17%から20%強へと上昇している。しかも、不良債権の中でも貸倒れの可能性がもっとも高い破産・更生債権は1年前より16億円増えている。もともと、他の金融機関と比べ、割高な調達金利に制約されて、他行と比べ、貸出金利が高めの新銀行東京からの融資に依存するのは信用リスクの高い顧客と考えられ、新銀行東京の融資残高にはこのような顧客層が少なくないとみられる。「『今や、新銀行で借りれば経営が苦しい』というようなもの」(「日本経済新聞」20081229日)といわれるゆえんである。とすれば、貸出金残高の縮小に対応させて貸倒引当金を縮小する(取り崩す)という単純な論法が新銀行東京に当てはまるのか、精査が必要である。

 (2)仮に、新銀行東京が抱えた信用リスクに照らして、上のような貸倒引当金の縮小に問題はなかったとしても、貸倒引当金の縮小(取り崩し益)にもっぱら依存した黒字化がおめでたいことなのか、というのが私の2番目の指摘である。なぜなら、銀行のコア資産というべき貸出金を縮小させ、それに伴って生じる貸倒引当金の縮小(取り崩し益)に頼ってしか、黒字化を達成できないのでは銀行業としての存立の自己否定を意味し、そのようないびつな「増益」要因による黒字化は「タコ足決算」というほかないからである。これでは「再建計画」ではなく、「清算計画」と呼ぶのがふさわしい。

 (3)最後に私が指摘したのは、新銀行東京あるいはそれを主導した東京都の説明の自己矛盾である。東京都は2008年の都議会第1定例会に新銀行東京に対する400億円の追加出資を提案する際、「貸倒引当金ではカバーできないリスク等に対応するために必要な資本の額が280億円でございます」(2008311日開催の予算特別委員会における佐藤産業労働局長の答弁)と説明していた。

 ところが、それとほぼ同じ2008220日付けで新銀行東京が作成した「再建計画」において計画期間中に貸出金を728億円から404億円へと縮小させるのに対応させる形で、収益計画において貸倒引当金戻入益を4年間累計で264億円計上していた。これは本業の業務収益の累計額218億円を超える金額である。この意味で2009年度の中間決算において、貸倒引当金を取り崩して利益を底上げしたのはシナリオ通りの決算といってよい。

 しかし、ほぼ同じ時期に、新銀行東京の資本増強の必要性を議会で訴える時には、貸倒引当金だけでは足りないという一方、決算においては信用リスク対比で貸倒引当金は余るとみなして取り崩すのは議会と都民を欺く二枚舌である


醍醐 聰「新銀行東京に清算以外の道はない」(シンポジウム「新しい東京 福祉・環境都市を目指して」(2010124日、主催:新東京政策研究会、における発表用原稿)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/singinkotokyo_ni_seisanigainomichihanai_20100124.pdf


上記発表の際に使ったパワーポイント原稿

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/singinkotokyo_pp_20100124.pdf

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