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視聴者の声がNHKを動かした画期的決定~大相撲の中継中止の判断に思うこと~

視聴者の声を拠り所にしたNHKの良識に適った判断
 NHKの福地茂雄会長ほか役員は今日の午後開いた記者会見で大相撲名古屋場所の中継を行わないことにしたと発表した。その理由として福地会長は、①多くの視聴者から意見が寄せられたが、その6割以上が中継に反対だったこと、②相撲協会が決めた野球賭博関係者への処分は重いものがあるが、今後、反社会的勢力(暴力団)とのつながりをどのように立ち切っていくのか、そのために新たに設置される外部委員会の方向性、メンバー構成がまだ見えてこない、という2点を挙げた。また、NHKは大相撲を楽しみにしているというフアンもいることから、毎日の大相撲が終わった後の午後6時台にその日のダイジェスト版を放送することも併せて発表した。

 (1)私はこうしたNHKの決定は視聴者の意思を拠り所にした、まっとうな判断だと受け止めている。今回、発覚した大相撲の親方、力士らの野球賭博について日本相撲協会は2人の個人に対して相撲界初めての解雇処分としたが、協会の最高責任者である理事長は自身の部屋から野球賭博に手を染めた力士が出た責任をとって3週間の謹慎処分を受けただけというのはどうしたことか? そもそも賭博を自主申告した力士は戒告で済ませる、その際の申告は100万円を超える賭けの場合に限るという内輪の基準を決めたのは理事長自身だった。しかも、理事長は記者会見の場で前列に並ぶカメラマンに向かって暴言を吐いている。昨夜(75)のNHKスペシャルに出演した理事長は「これからは若手の親方、力士に対する教育を徹底していく」と語っていたが、(再)教育が必要なのはまずもって理事長自身ではないか? 問題の原因を他人事のようにいう理事長のもとで改革が進むのか、NHKが慎重な判断をしたのは当然である。

 (2)文科省やマスコミなど多くの関係者は今回、史上初めて外部の人間が理事長代行に就任したことを相撲界改革に向けた重要な出来事かのように語っている。しかし、その理事長は文字通り代行であり、期間も名古屋場所が終わるまでのわずか3週間である。これで何を期待できるというのだろうか? 

 (3)その理事長代行も、文科省にお伺いを立て、そのお墨付きでどうにか代行に決まった。大の大人が理事長代行すら自分たちの手で決められないお粗末な統治能力のもとで、この先、自己改革をやり遂げられるのか、心もとない限りである。強いて、内部からの再生の一歩といえるのは、74日に開かれた親方衆による年寄総会で名古屋場所の中継を辞退してはどうか、あるいは中継するにしてもNHKに対して放映権料を返上してはどうかという意見が出たと伝えられている動きである。親方衆はこうした意見を理事長代行らに伝えたというが、結局は受け入れられなかったようである。大手マスコミはこうした動きを伝えていないが、内部からの改革というなら、相撲界を現場で支えるこうした親方の動きを注視する方がまともである。

放送権料はどうなるのか?~中継中止で浮かび上がる重要な問題~
 しかし、中継中止で一件落着かというとそうではない。5年契約で決められているという本場所中継の放送権料(巷間、一場所4億円とも5億円とも言われているがNHKも相撲協会も公表していない)はどうなるのかという問題が、これを機に鮮明に浮上してくる。
 これについては、私も共同代表の1人になっている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は73日付でNHKの監査委員に対し、厳正な調査を求める要望書を提出した。
 「大相撲の放送権料についての監査要望ならびに質問書」
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/sumo_hosoken_kansayobo_20100703.pdf

 今日の記者会見で福地会長は、この件については今後、相撲協会と協議すると発言している。5年契約となれば、1年ごとに支払いをどうするという問題ではないとも取れる。しかし、今回のように、契約の相手当事者(日本相撲協会)の責に帰すべき理由で中継を中止した場合でも受信料を原資として放送権料がそっくり支払われるとなれば、「視聴者目線で中継を中止した」というNHKの見解は完全にと言わないまでも色あせてしまい、視聴者の納得を得るのは至難であろう。むしろ、ここは、一般に契約の末尾で謳われるセイビング・クローズ(契約締結の際に想定できなかった事態が起こった場合は双方誠実に協議の上、解決を図るという条項)に沿って、NHKはダイジェスト放送に相当する対価に放送権料を減額するよう厳正な態度で協議を求めるのが筋である。この点、今後のNHKと相撲協会の協議の成り行きを監視していく必要がある。
 しかし、そもそも論としては、中継をするにせよ、中止するにせよ、日本相撲協会との今度の交渉に支障が出るという不透明な慣れ合いの理由で放送権料の内容の公開を拒んできたNHKの姿勢を質し、放送権料の金額、その算定根拠を公開するよう求めることが極めて重要である。この点で、視聴者コミュニティが提出した上記の監査要望書にNHKの監査委員からどのような回答が届くのか(回答期限7月28日)、注視したい。

受信料の使い道に関心を持つことを通じて
 重要な国政選挙を控えたこの時期に、マスコミが相撲界の野球賭博を大きく報道していてよいのかと思わないではない。しかし、いろいろなサイトやブログ記事を閲覧してみて、公共の電波を使うNHKの社会的使命をまじめに考えている人が多いことがわかった。今回、NHKが反社会的勢力との関係を引きずる日本相撲協会が主催する大相撲名古屋場所の中継を中止すると決定したことは、こうした視聴者の監視の目がNHKを動かしたという意味で、貴重な経験になったと思う。
 今後、NHKが中継を再開するにしても、納税者が税金の使い道に関心を向けることを通じて主権者意識を高めるのと同じように、多くの視聴者が受信料を財源にしてNHKが支払う大相撲の放送権料に関心を向けることを通じて、「NHKの主権者は視聴者」という自覚を確かなものにしていけば、それは大変意義深いことと思う。

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コメント

やまやま様
 いただいたコメントをアップするのが大変遅くなりましたことをお詫びします。
 NHKの視聴者の権利を確かなものにするためには制度の改正が必要とのご意見に同感です。その場合の「制度」ですが、本来はNHKと視聴者の双務契約である受信契約(現行では視聴者の義務のみが定められ、権利に関する条項が皆無です)に視聴者の権利(会長や経営委員の選任への参加権など)が明記されてしかるべきと考えています。
 ただ、そうした受信契約の締結を義務付ける元規定を放送法に明記しないとNHKは視聴者からの権利条項締結要求に応じようとしないだろうと思います。
 そうなりますと、制度要求を求める多数の視聴者の「声」が重要になると思います。その意味で記事に書きましたような受信料の使途をめぐる具体的な問題などを通じて、視聴者の意識・自覚が高まることを私は期待しています。

投稿: 醍醐 聰 | 2010年11月26日 (金) 08時37分

>>「NHKの主権者は視聴者」という自覚を確かなものにしていけば、それは大変意義深いことと思う。

とのことですが、NHKは裁判で視聴者に対していかなる債務を負っておらず、自分たちが良いと思う放送をしていれば、それでよいのだ、という主張をしています。つまりNHKの主権者は視聴者なんて、ちっとも思っていないのですよ。放送法を変えて、明確にすべき問題です。

投稿: やまやまさん | 2010年11月 3日 (水) 04時16分

ここ数年、毎年夏に繰り返し放送される“戦争と平和を考える”特集番組の内容に、違和感を禁じ得なかったのですが、最近その違和感の理由がやっと分かりました。
NHKの特集は“こんな酷い目にあった”を繰り返すばかりで、日本軍の被害を受けた国からの視点、“日本軍は侵攻先で何をしたか”という視点が完全に欠けています。
これではネット右翼の側に立つ“日本無謬”論ばかりになるのもむべなるかな、です。
このような指摘も、声が大きくなればNHKは受け容れるのでしょうか。

投稿: AS | 2010年7月28日 (水) 21時19分

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