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NHK会長選迷走の検証を情報漏えいの調査に矮小化してはならない

迷走の根源にメスを入れる検証と報道を
 
今日の朝刊を見ると、NHK経営委員会は3名の委員からなる監査委員会が、先のNHK会長選の過程で情報の漏えいがなかったかどうかについて、これまでに委員全員から聴き取りを終え、25日にその結果を報告することにしたと伝えられている。
 個人の名誉やプライバシー、人事の円滑な進行のために候補者として選考中の人物や打診中の人物の個人情報が守秘されなければならない場合があることは確かだ。
 しかし、先のNHK会長選考が前任者の任期切れ間際まで迷走し、最終的にはわずか1日で、候補者と面談もせず、2名の経営委員が提供した限られた情報だけに頼って、「鉄道も放送も公共性においては同じ」という牽強付会の理由で、会長人事を即日議決するという杜撰な選考を招いた根本的原因を究明することなく、「情報漏えい」の有無を調査するだけで終わるなら、問題の矮小化に他ならない。
 この点では、メディアも「情報の漏えい」といった話題性に関心を偏向させず、現在の会長選考制度が公共放送の長を選ぶのにふさわしい仕組みになっているのかどうかという焦眉の問題に論点を引きもどす見識ある報道が求められている。

 昨日(222日)、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」がNHK経営委員会・監査委員会、安田経営委員長代行、井原監査委員に宛てて提出した質問書も、会長選考が迷走した根源的な原因の究明を求めるという趣旨に基づくものであった。ただ、なにぶん、3通の要望・質問書をまとめて提出したことから分量が多くなり、全文を読みとっていただくのは難儀かもしれない。

 そこで、この記事では、3通の文書のエッセンスと思われる箇所を私なりに抽出して再掲することにしたい。NHK会長の選考基準、選考方法はどうあるべきかについての今後の議論の一助となれば幸いである。

 
迷走の根源的理由は経営委員の狭い人脈に頼り、組織を動かす資質に偏向した選考方法にある
 
経営委員会・監査委員会宛の要望・質問書の全文
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/keieiiinka_kansaiinkai_ate_yobo_situmonsho_20110222.pdf

 11 「情報漏えい」についていえば、服務準則が順守されるべきは当然ですが、委員会内で漏えいの「犯人捜し」のような調査が行われ、マスコミ取材も含め、視聴者の知る権利を阻害するような行き過ぎた調査、委員の自由な言論を委縮させるような調査にならないよう、充分に留意されることを要望します。

 12 「経営委員会が組織として決定した手順から外れた行動がなかったかどうか」の調査についてですが、それが、「新会長の選考にあたって経営委は昨年1221日、複数の候補者に優先順位をつけて打診していく方針を決定」したにもかかわらず、「当時委員長の小丸成洋氏は選考方針決定の2日前、安西祐一郎・慶応義塾前塾長に打診していた」という事実を念頭においた調査であるなら、事は経営委員会の合議、ガヴァナンスが有効に機能したかどうかに関わるだけに、当時の関係者を例外なく対象者として厳正に行われる必要があると考えます。

鉄道と放送の公共性をひとくくりにした牽強付会な適格性審議
 とはいえ、私たちは上記の2点を調査することで、会長選考が迷走した原因の根本的な検証になるとは到底考えません。
 むしろ、会長選考が任期切れ間際までもつれ、迷走した最大の原因は、貴委員会が経営委員の限られた知己や人脈に頼って候補者を探そうとされたこと、そのため、顔と人脈が広い経済界に限定された分野から候補者を選考するという流れになり、公共放送の長にふさわしい資質(豊かなジャ-ナリズム精神、放送文化に対する深い理解など)を二の次にして、大きな組織を牽引した経験、手腕が殊のほか、評価されるという歪み・偏向がまかり通る結果になったといえます
 このような歪み・偏向を正当化するために、「鉄道も放送も公共性において同じ」という牽強付会な説明をするのは、自らの選考の行き詰まりを取り繕う不条理な強弁に他なりません

 当会は従来から、他の市民団体やメディア研究者と共同で、NHK会長の選出方法を抜本的に開かれた形にするよう、貴委員会に要望してきました。ここで、「開かれた形」というのは、メディアや法曹関連の学会・各種団体などに推薦を募ると同時に、広く視聴者に推薦を募る公募制を採用するということです。詰めた議論で具体的な方法・手順を定める必要がありますが、こうした公募制の採用は放送法の改正を待つことなく、貴委員会の意思一つで可能であることを銘記していただきたいのです。

 翻って考えますと、受信規約は消費者契約法が適用される双務契約(契約当事者であるNHKと視聴者が権利義務を分かち合う契約)であるにもかかわらず、現行の規約では視聴者の義務ばかりを列記し、権利に当たる条項は皆無です。こうした義務条項に偏重した受信規約を放置したまま、貴委員会が受信料の収納率の向上をNHKに促すだけでは視聴者を代表して理事会を監督する任務を果たしているとは言えません。
 そこで、私たちは放送法の改正を待つことなく、実行が可能なNHK会長選考にあたっての公募制の採用を貴委員会が本腰を入れて今から検討されるよう、改めて強く要望するものです


機能不全の経営委員会の合議体制――問われる委員長代行の補佐責任
 安田経営委員長代行宛の質問書の全文
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/yasuda_iin_ate_situmon.pdf


  こうしたやりとりを読みますと、会長候補者に対して、就任要請の「議決をした報告」をしたのか、「議決前の打診」をしたのかをめぐって小丸経営委員長と他の経営委員との間で根深い認識のずれがあったことがわかります。人事のイロハに関わるこうした手順について、委員長と他の委員間で意思の疎通が欠如し、それが原因となって会長就任の要請を受諾した(と認識していた)人物に経営委員会の側から受諾の撤回を要請するという事態に立ち至ったのは、経営委員会の合議体制・意思疎通に重大な欠陥があったことを物語っています。こうした事態を招いた責任を貴職はどのように受け止めておられるか、ご説明下さい。

 当会は経営委員会の社会的信頼を失墜させた責任は経営委員長の辞任だけで済むものではなく、経営委員全員の責任、とりわけ、委員長を補佐する立場にあった貴職の責任は極めて重く、委員長代行を辞任されてしかるべきと考えています。これについて貴職のお考えをご説明下さい。

国威発揚の資質を買って会長を推す底なしの不見識 
 貴職は松本正之氏を会長に選出することに賛同された理由を次のように説明されています(下線は引用にあたって追加)。

 「(安田代行)<中略> これからの放送と通信の融合の時代に、国際戦略として世界に打って出なければいけない極めて高い技術力であると私は考えています。今後、21世紀の日本の世界への国威の発揚という意味においても、松本氏はたいへん大きな役割を果たしてくれるのではないか、と私は思いました。」

 こうした発言は、公共放送NHKに求められる使命をどう理解するかという根源的な問題に照らして、当会は幾重もの疑問を感じていますが、ここでは1点に絞ってお尋ねします。それは下線を付した部分、つまり、国威発揚の役割を期待して松本氏をNHK会長に選任することに賛同された貴職の見識についてです。

 国威・国益とどう向き合うのかは、歴史上、世界の公共放送がしばしば試練にさらされた根源的な問題です。そうした経験から得られた教訓は、国益を背負い、国威の鼓舞に加担することは放送に限らず、メディア一般の自死を意味し、国家と絶えず緊張関係を保ちながら、時々の国家の権力行使を監視するというメディアの使命の放棄、国益を大義名分にした戦争体制に翼賛する道に通じるということです。

 このようにいうと、国威=戦意の鼓舞と捉えるのは飛躍だと反論されるかもしれません。しかし、スポ-ツであれ科学であれ、それらが国家によって「国威発揚」、「世論統合」の手段として利用されがちなこと、それが偏狭なナショナリズムを培養する素地に使われがちなことは今日も変わりはありません。

 むしろ、言論報道機関という視点からいえば、メディアには国威・国益の名のもとに画一化を強要されがちな言論・文化の自由と多様性を保証する「広場」の役割が期待されています。
 このように考えますと、貴職がNHK会長に期待する資質として、国際戦略・国威発揚を自明のように挙げられたことに私たちは強い懸念を感じざるを得ません。貴職はこうした懸念をどのように受け止められるか、ご説明下さい。


井原監査委員宛の質問書の全文
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/ihara_iin_ate_situmon20110222.pdf

<公共放送としての使命の理解はこれからのことかも>で片付ける杜撰な選考
 貴職は指名委員会を代表して次期会長の資格要件に照らして松本正之氏の適格性を説明される際、「1番目の『公共放送としての使命の理解』はこれからのことかもしれませんが、『公共的サービス』についての使命は十分わきまえていらっしゃると思います」と発言されています。
 しかし、一口に「公共性」といっても鉄道が担う公共性と放送が担う公共性は異質なものであり、その組織の長に求められる資質もおのずと異なることは議論するまでもないことです。NHK会長に求められる第一義的な資質は放送メディアの長にふさわしいジャ-ナリズム精神(指名委員会の言葉でいえば「公共放送としての使命の理解」)がどの程度かということであったはずです。

 この点を「これからのことかもしれませんが」などとあいまいな説明でお茶を濁し、鉄道と放送の「公共性」をひとくくりにして候補者の適格性を判断するのは極めて杜撰な選考と言うほかありません。この点を貴職はどのようにお考えか、ご説明下さい。


非常勤の経営委員長の3.5倍の報酬に見合う職責を果たしたか?
 経営委員の報酬支給基準によれば、常勤経営委員・監査委員としての貴職の年間報酬総額は2,256万円になります(間違っていればご訂正下さい)。これは先のNHK会長の選考当時、非常勤の経営委員長職にあった小丸成洋氏の年間報酬総額(633.6万円)の約3.5倍に当たります。

 このことは経営委員長の職責に比して、常勤経営委員としての貴職の職責の重さがいかほどかを物語るものといえます。さらに、先のNHK会長選考に貴職が監査委員、指名委員会委員としての重責を担われた事実を考えれば、会長選考にあたって生じた上記のような失態の責任の相当部分が貴職にも帰すことを意味しています。

 かりに、小丸委員長の独断専行が混乱の一因であったとしても、会長選考の審議の中枢のポジションにおられた貴職には、そうした独断専行を抑止して経営委員会内のガヴァナンスを有効に機能させる責任があったはずです。まして、経営委員長一人の責任に帰せられない経営委員会全体の合議に瑕疵があったとすれば、貴職の連帯責任は一層、加重されます。ところが、今回のNHK会長選考の過程で露呈した経営委員会の失態、ガヴァナンスの機能不全について、貴職が何らかの具体的な責任をとられたという情報を私たちは寡聞にして知りません。

 しかし、当会はこれまでに指摘してきた貴職の幾重もの職務懈怠に照らせば、常勤の監査委員を自ら辞されても不思議ではないと考えています。かりに現職にとどまられるとしても、経営委員の報酬はすべて視聴者が支払う受信料で賄われていることに鑑みれば、貴職が受け取られる月額・期末報酬のうちの常勤委員加算分の一部なりともを返上して、視聴者に対する職務懈怠の責任を明確にされるよう要望します。この点について貴職の意思をお聞かせ下さい。


究極の問題は「選ぶ人の資質」、「選ぶ人の選び方」
 NHK会長の選考にかかわった中心的人物の以上のような言動を確かめていくと、公共放送の長にふさわしい人物を選ぶためには、「選ばれる人の資質」もさることながら、それ以前に「選ぶ人の資質」、「選ぶ人の選び方」を改めなければならないという結論に行きつく。

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