メディアの今とこれから(2)~NHK問題大阪連絡会のインタビューに応えて~
NHK問題大阪連絡会「サテライト」No.4 別冊 (2011・4・1発行)
醍醐 聡氏 インタビュー
メディアの今とこれからを熱く発信!!(Part.2)
●視聴者をテレビ漬けにさせない
醍醐 以下は5年ほど前のシンポジウムで発言したことです。NHKも朝から深夜まで放送をやっていますが、例えば、週のうちまずは試行的に何曜日でもいいと思うのですが、「この時間帯はお休み」という、そういう時間帯を設定してみたらどうかと思うのです。その間、「みなさんテレビ漬けにならないで家庭でいろんな団らんを過ごす時間にしてください」とか、「もっといろんなところに出かけてください」「ご近所の方とお茶の時間を」というふうに、テレビから解放された時間を作ってみてはどうでしょうか?それによってとかく人間関係が希薄になりがちな「巣篭もり」人間を改造する一助になるのではと思うのです。そしてNHKにしても、受信料がこれだけあるからどう使おうかという発想から、少し減った受信料でいかに中身の濃い番組を作るのかという発想に変わっていく契機にならないかと思うのですが、どうでしょうか?そういう広い意味での受信料制度、受信料が高い、安いだけではなくて、受信料の使途・配分まで含めて徹底討論をする場が必要だと痛感しています。NHK・OBの津田道夫さんなどは、早くから民放ではなくて市民メディアに受信料の一部を配分するよう訴えておられます。私は市民メディアももちろんいいのですが、NHKに全部まわしてしまう必然性はないという考えはある程度共通したところです。
●一部でいい番組があるからと悪質番組の免罪符にするな
醍醐 最近、NHKには優れたドキュメンタリー番組が少なくありません。そのような番組に激励の声を送ることは非常に大切です。しかし、それをあたかも免罪符のようにしてその他の公共放送の理念をおざなりにしたような番組づくりをしています。私たちの周辺でも、優れた番組を激励しようとするあまりに、NHKの、「意見が対立したテーマを忌避する姿勢」、「少数意見を軽くあしらう姿勢」、「民放で売れたタレントを無節操に起用して視聴者接触率を稼ごうという姿勢」を毅然と批判する態度が弱まっているのではないかと危惧しています。
また受信料制度にしても、いまの制度をただひたすら守るだけで本当によいのか。私たちはNHKを受信料で支えないといけないという原理原則を反復するだけで本当にいいのか。そのあたりは若い世代のテレビ離れも考えながら、もっと大胆に改革をしていく必要があるのではないかと感じています。先ほど、民放のほうはどうですか?というお話がありましたが、民放を民放としてだけいまの枠でどうだと言われると、なかなか私も「こういう改革が」というのは思い浮かばないのですが、NHKを含めて受信料制度と絡めてもう少し大きな枠組みで考えられないかと思っています。
●放送法「改正」で政府の権限を強めようとしている
河野 貴重なご意見をお聞かせいただいてありがとうございます。
昨年秋、民主党政権が充分な審議を得ずして放送法を「改定」いたしましたね。これに対してどのような点で指摘ができるのでしょうか。
醍醐 まとめて言えばいい見直しではなかった。改悪の面のほうが主だったというのが、市民運動のなかでは共通した見方だと思います。私もその見方自身は大体同じです。ただ、最初の原案から見ると、審議のなかで電波監理審議会の監督権限が削られ、NHK会長が経営委員を兼ねるという条項も削られた。そういう意味では、改悪の方向への変化を食い止めたという点があったことも記憶しておきたいと思います。とはいえ、前回の改定の時もそうでしたが、総務省の権限をなんとかして広げたいという、行政当局者の思惑が基調となった改定で、視聴者の目線から変えようという視点が非常に乏しいという点は共通しています。私はむしろこの間の放送法改定では、何が変えられたか、その改定点はいいことだったか、悪いことだったかという、現になされたことについての評価もさることながら、変えられなかった点、不作為の方に注目する必要があると思っています。放送法を見直すのだったらこういうところを見直すべきなのに、それをまったく議論にもならなかったという、その不作為のことのほうを私は問題にするべきだと思うのです。こういう点はもっと改められるべきではなかったかと、私たちの側から積極的に提案して、要望をどんどん出していって、改正を求めていくという、能動的な運動が必要だと痛感しています。放送法だけではないと思うのですが、戦後の日本の市民運動では抵抗運動はある程度あった。しかし抵抗運動をやっても現状維持です。その現状がいい現状だったらいいとして、例えば、憲法というのは現状がすぐれた憲法だからそれを守るという点でそれ自体大きな価値があると思うのですが、いまの放送法というのは守ればそれでいいのか、守らないといけないところはあるけども、むしろ変えないといけないところのほうが私は多いと思っているのです。特に視聴者の権利という点では。そういうことがなかなか国会の話題や改正の作業に乗せられないというのが常ですね。このような現状を打ち破る視聴者運動をこれからの私たちは目指すべきではないかと考えています。
河野 われわれも放送法というのが充分に周知ができていないので、どの点をどういうふうに変えるということを、この場ですべて先生にお答えいただくことはできませんが、例えば、なされていない主な点はどういう点があるのでしょうか。
醍醐 今回の会長選のことがまた話題になると思いますが、それに絡む放送法の問題はちょっとあとにして、それ以外のことで言えば、私たちの運動のなかで視野に入ってきていないこととして、放送番組審議会というのがありますね。番審、番審と言っていますが、あれについて、私たちはこれまで公選制とか、そもそもどんな議論がされているのかということは何も話題になっていないわけです。放送法の世界では「法律に基づく場合を除いて番組に干渉してはならならい」となっています。
●プレイヤー(NHK)がアンパイアー(放送番組審議委員)を人選している?
醍醐 「法律に基づく場合を除いて」という法律のなかには、放送法で定めた番組審議会(番審)が入っています。視聴者がいろいろモノを申すのは別にして、そういう公の機関が個別の番組について意見を述べるというのは数少ない組織なんです。ところが現行の放送法では、その審議会の委員を、NHKが推薦して決めることになっています。もちろん経営委員会に「任期がきた方の後任にこの方を選びたい」と諮っていますが、人選は全部NHKがやっている。自分がつくった番組を審査してもらう人を、番組をつくる人が同時に決めている、プレイヤーがアンパイアーまで決めているというのはおかしなことです。
1年ほど前、番審の委員をやっておられた森まゆみさんという方が、委員を辞めたあと書かれたエッセーの中で、NHKの人たちは番組をほめてあげた時はニコニコ笑顔満面だけれど、ちょっと苦言めいたことを言ったとたんに顔が曇って渋い顔をする。そういう苦言は何度言っても聞き入れてもらえなかった、と書いておられます。NHKは自分をほめて、喜ばせてくれる委員を選ぶケースが多いですね。
番組制作に関して視聴者はNHKとのチャンネルが非常に細いわけです。私たちが言っても言いっぱなしということが多いですよね。そのチャンネルをどうやって広げていくのか。番組に対する監視・激励という日常日々の私たちの声を届けるということがもちろん基本ですが、それで終わらず、公式のチャンネルをしっかりと持つことも大事ですね。
●視聴者運動は、放送法にのっとって行えるよう規定されるべき
醍醐 その公式のチャンネルづくりとなるとどうしても放送法の裏づけを持たないとできないことです。ひと言で言えば視聴者が自分たちの声をNHKに届けるルート(チャンネル)を制度としてつくっていく。そういう放送法の手だてです。審議会の委員についてもっと開かれた選び方をするような選考方法を放送法のなかで定めることが必要です。
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コメント
消費税増税法案をめぐり、自民党との「修正」協議をめざす野田佳彦首相は4日、5閣僚を交代させる第2次内閣改造を行いました。参院で問責決議を受けた2閣僚を退任させたのをはじめ、自民党から追及されてきた農水相と法相を更迭させたもの。同日、記者会見した首相は「『社会保障と税の一体改革』を含む諸懸案を前進させる環境整備」とあけすけに語りました。国会会期末の重要法案審議中に、内閣改造を断行するのは異例です。首相は会見のなかで消費税増税法案をめぐって「自民党を中心とする野党のみなさんとの政党間協議をあらためてお願いさせていただきたい」と強調。「今国会中に『一体改革』法案は成立をさせる。そのために最大限の努力をするのが政府・与党の務めだ」と語りました。
改造では、参院で問責を受けた田中直紀防衛相の後任に、防衛庁時代も含めて初めての民間人となる森本敏・拓殖大大学院教授を起用。同じく問責閣僚の前田武志国交相に代え、民主党の羽田雄一郎参院国対委員長を充てました。鹿野道彦農水相の後任には郡司彰元農水副大臣、小川敏夫法相の後任に滝実法務副大臣、自見庄三郎金融・郵政改革担当相(国民新党代表)に代え、同党の松下忠洋復興副大臣を起用しました。同日の内閣改造を受けて、日本経団連の米倉弘昌会長は「政策を果断に実行に移していくことを強く期待する」とのコメントを発表。経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事も、消費税増税を柱とする「一体改革」法案成立に向けた「英断と実行を評価したい」と歓迎しました。
民主党が2009年総選挙で公約した後期高齢者医療制度の廃止について、野田佳彦首相が「どのように現実的に対応するか判断したい」とのべ、廃止を棚上げする姿勢を鮮明にしました。衆院「社会保障と税の一体改革」特別委員会で、自民党議員から「廃止撤回」を求められ、答えたものです。高齢者の医療を年齢で差別すると批判が集中した制度の廃止を公約しながら、存続させるのは、国民への裏切りそのものです。
NHK日曜討論
6月10日(日)の番組では、皆さんのご意見や疑問の声をご紹介し、政治家に直接投げかけます。
▼“消費増税”に賛成ですか?反対ですか?(理由も教えてください)
▼増税の場合、低所得者対策はどうすべきだと思いますか?
▼年金・医療・介護、そして子育て支援など社会保障改革に何を期待しますか?
▼いま政治家に言いたいことは?
安住財務相、民主 前原政調会長、自民 茂木政調会長 ほか、各党の政策責任者
安住財務大臣は出演を拒否してもらいたいです。視聴者を鵜呑みして不愉快にするばかりだ。「全額社会保障」はまやかしだ。今こんな不況なのに消費税増税するなんてとんでもないぞ。
投稿: 梅田 繁 | 2012年6月 5日 (火) 20時57分
「大阪維新の会」が狙う 橋下「改革」の危険
再生どころか破壊!国政の青写真は"弱者切り捨て"敬老パス有料化、黒字地下鉄は売却へ
橋下徹大阪市長(前府知事)が率いる「大阪維新の会」。国政進出を狙っていますが、どんな国づくりをしようとしているのか。「維新の会」が示す「維新八策」(原案)と、府と市政の「実績」から見えてくるものとは―。
今回の試案は、それらを「ぜいたく」と決めつけ、軒並み廃止または大改悪しようというものです。
敬老パス大改悪、水道料減免廃止は、苦しいなかでもこれらを頼りに暮らしておられる方たちにとっては、命綱を奪われるようなものです。市長が「重点投資する」と繰り返している若い世代にも、学童保育への補助金廃止、保育所保育料の値上げ、新婚家賃補助制度の廃止など、子育て支援どころか、大きな負担増が襲いかかります。老人福祉センターの削減、障害者スポーツセンターの廃止などによって、行き場を失う人たちはどうすればいいのでしょうか。さらに、1区1館ある区民センター・屋内プールを市内で9館にすることなどは、大阪市を8~9の特別自治区に分ける「大阪都」を前提にしたものとしか思えず、まさに、大阪市の“こわし屋”として乗り込んできた橋下市長の意を受けて、大阪市解体の道を進むものです。
橋下徹大阪市長が発足させた市政改革プロジェクトチームの「改革」試案。市民生活にかかわる施策に大ナタを振るい、市民に痛みを強いる内容が目白押しです。なかでも、「なくさない」と市長選で公約していた70歳以上の高齢者が無料で地下鉄やバスに乗れる敬老パスの有料化(半額負担)に対し、怒りの声が広がっています。(大阪府・生島貞治)
「有料化になったら病院や買い物に出ていくことができない。高齢者の足を奪って孤独死せいということか」「何もかもいっぺんに削りすぎや」「高齢者にもっと優しい政治をしてほしい」。病院前や天王寺駅前で敬老パスの有料化について聞いた街頭インタビュー。30人近くのうち「有料化は仕方がない」との回答は1人だけ。しかも「半額負担は高すぎる」でした。多くの市民は、橋下市長に「裏切られた」。
年金少ないのに「橋下市長に裏切られた」
「週4日、清掃の仕事に行くのに乗っている」と言う女性(75)=大阪市住吉区=は「年金が少なく、生活のために1日3時間働いて、食べるのがやっとです」と話し、「橋下さんは選挙のときは、敬老パスは維持すると言っていたのに、負担を押し付けてくるなんて腹立つわ」と憤ります。大阪市西成区に住む男性(80)は「週2、3回病院に行くのに使っています。有料化には反対です。選挙では橋下さんに入れたけど、高齢者をいじめるなんてがっかりや」。
70歳以上の市民、約35万人に交付されている大阪市敬老パス。昨年の府知事・市長ダブル選挙で、橋下氏らは「だまされないでください」と大書きし、「敬老パスはなくしません。敬老パス制度を維持します」「さらに高齢者にとって便利なものとするために私鉄でも利用できる制度にします」「高齢者・障がい者福祉を充実させます」との「大阪維新の会」選挙ビラを新聞折り込みしました。
■私学助成削減 「いやなら日本から出て行け」
「私学助成を削らないで」と訴える高校生に向かって、進学が公立になるか私立になるかは本人の自己責任だと突き放し、「それがいやなら、日本から出て行くしかない」と暴言を吐いた橋下知事(08年10月当時)。08年度は私学助成の削減、09年度には私立高校生をもつ親に対する授業料軽減措置の縮小を強行しました。ところが、民主党政権になって公立高校の授業料無償化が実施されると、一転、私立高校授業料の無償化に踏み出しました。これは、私立高校生の保護者に年収に応じた支援補助金を給付することにしたもの。一方で、私学助成の総額は大きく減ったまま。私立高校無償化も、公私間の競争促進が狙いだということを橋下氏は隠しません。「学校に切磋琢磨(せっさたくま)してもらい、生徒が集まらない学校は退場してもらう」という橋下流競争主義持ち込みの一環です。橋下氏は、私学への運営補助金を生徒数に応じて出す制度に変更、7対3の公私の受け入れ比率も弾力化しました。これを受け、私学無償化2年目の11年度は生徒が私学に流れ、府立高校(全日制)の4割弱の49校で定員割れとなる事態が発生。3月に制定された府立学校条例で、3年連続定員割れの府立高校は統廃合の対象とされました。ある府立高校では生徒集めのために約50の中学校を年3回訪問するなど、公立私立ともに生徒獲得競争がし烈になっています。
選挙の演説や投票を誰に誘われたかなんてことは個人情報で、こんなことを答える必要はないですね。それを権力が上から聞きだすなんてとんでもない。
私は、選挙では橋下さんに入れなかった理由は、やはり市長に任せることができないと思ったからです。本当に腹が立つぞ。これでは、日本全体が大打撃になるばかりだ。
投稿: 梅田 繁 | 2012年5月 4日 (金) 20時14分