« 鉄線が咲く季節 | トップページ | 教育の本旨に背理する最高裁の君が代命令合憲判決 »

日本ペンクラブの「不明朗会計」問題でコメント

 521日『毎日新聞』朝刊のメディア欄(20ページ)に日本ペンクラブが昨年9月に開いた国際ペン東京大会をめぐる会計処理に不適切な点が見られることを解説した記事が掲載された。その中で私の談話も掲載された。この談話は『毎日新聞』のホームページに掲載されたので、それを紹介させていただく。

日本ペンクラブ:「不適切会計」問題、もう一度考える 東京大名誉教授・醍醐聡氏の話
 ◇公益法人の認識低い--東京大名誉教授・醍醐聡氏(会計学)

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110521ddm012040066000c.html


 取引の日付や相手方、使途などの明細がないものは領収書とは言えず、その金額は本来なら使途不明金に該当するし、そういった領収書を添付していても「不正に使っていない」という証明にはならない。顧問会計士が「法人としての態様をなしていない」などと指摘したのは当然だろう。また、本体の会計と一本化処理して「どんぶり勘定」になった帳簿では、国際ペン大会に使ったという証明ができない。特別なイベントは本体と収支を分離することが望ましい。背景には、予算を超えた支出がいかに問題なのかという意識が執行部にまるでないことがある。5000万円を超す超過があれば、それが見込まれた時点で理事会の承認を得て進めなければおかしい。ところが09年度決算も同様だが、年度途中で予算枠を超えて支出される項目がおびただしいなど、考えられない処理をしている。執行部には公益法人としての許可を得て活動しているという認識が低いのではないか。
(毎日新聞 2011521日 東京朝刊)

 この問題の経緯については、同じ紙面で次のとおり詳しく解説されているが、それに先立つ記事も紹介しておきたい。ただし、『朝日新聞』、『中日新聞』の428日付記事はネット上ではすでに更新されて閲覧できない。

日本ペンクラブ:不適切な会計処理 簿外口座など存在(毎日新聞 2011428日 1500分)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110428k0000e040075000c.html

日本ペンクラブ不適切な会計処理 国際大会の支出巡り
朝日新聞 -
2011428日)

国際ペン大会で不適切会計 日本ペンクラブ
日新聞  2011年4月28日

日本ペンクラブ:「不適切会計」問題、もう一度考える 25日に総会(毎日新聞 2011年5月21日)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110521ddm012040058000c.html


 私が談話の中で、「背景には、予算を超えた支出がいかに問題なのかという意識が執行部にまるでないことがある」、「年度途中で予算枠を超えて支出される項目がおびただしい」と指摘したが、その理由を理解していただけるよう、日本ペンクラブのホームページに掲載されている2009年度の収支決算書を掲載しておきたい。なお、2010年度決算はホームページには未公表である。

日本ペンクラブ、2009年度収支計算書
http://www.japanpen.or.jp/8%20syuushi.PDF


 これをみると、収入の部では、予算では7,030,000円となっていた「国際ペン活動基金からの繰入金収入」が決算では140,391,585円と予算の約20倍となっている。また、予算では計上されていなかった「平和基金からの繰入金収入」が決算に計上されている。これは予算編成では承認されていなかった同基金の取り崩しが年度中に13,563,839円なされたことを意味する。
 また、支出の部では、予算に計上されていた「会館修繕預金取得支出」(会館修繕に備える預金への新規の預け入れ)2,000,000円が決算ではゼロ(新規の預け入れ見送り)となっている。その一方で、予算では計上されていなかった「国際ペン活動基金取得支出」(国際ペン活動基金への新規の繰入)が決算では200,391,585円も計上されている。これは予算では見込んでいなかった国際ペン活動基金から引き出しを上記のように年度途中で急きょ行ったために枯渇しかけた基金を補てんするために、予算にはなかった同基金への新規の繰入を行ったことを意味する。

 投資からのリターンを見計らいながら、弾力的に執行される民間企業の予算とは違って、公的セクターの予算は毎年度初めに、理事会等の議決を以て、年度中の財政活動をコントロールするための手段である。決算がそうした予算から大きくかい離した形になるのは予算による財政コントロールが機能していない証左である。

 日本ペンクラブの定款には同クラブの設立趣旨が次のように記されている。
 「日本ペンクラブは、ロンドンに本部をもつ国際ペンの日本センターとして19351126日に創立されました。当時の日本は、満州事変後に国際連盟を脱退して、国際的に孤立に向かう状況に置かれていました。それを憂う動きがリベラルな文学者や外交官の間にあり、ロンドンの国際ペンからの設立の要請を受けて、当時第一線で活躍していた作家、詩人、外国文学者、評論家の有志の賛同を得て、文豪島崎藤村を初代会長として日本ペンクラブが創立され、同時に、国際ペンの日本センターとしての役割を担いました。その後の日中戦争、太平洋戦争下で言論弾圧が厳しくなった時にも、日本ペンクラブはロンドンのセンターと連絡をとって、唯一世界への窓口であることを守り抜きました。

 日本ペンクラブは、その創立と歴史が示すように、平和を希求し、表現の自由に対するあらゆる形の弾圧に反対するとの精神に賛同するP(詩人、俳人、劇作家)、E(エッセイスト、エディター)、N(作家)が集まり、独立自尊をモットーに活動をし続け、日本の言論界をリードしてきました。歴代会長には、その時代を代表する作家が就任しています。」

 私も日本ペンクブのこうした設立の理念が大いに発揮され、実現されることを期待する一人である。そうであればなおさら、日本ペンクラブは自らの活動資金が社会の多くの篤志家によって支えられていることを銘記し、透明で清楚な活動をしている事実を社会に向かって説明できるような会計報告を行う責務がある。金銭には疎いので、といった「文士」気どりがあるとすれば、それは自らの社会的発言のひ弱さにもつながりかねない甘えである。

|

« 鉄線が咲く季節 | トップページ | 教育の本旨に背理する最高裁の君が代命令合憲判決 »

「社会問題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 鉄線が咲く季節 | トップページ | 教育の本旨に背理する最高裁の君が代命令合憲判決 »