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クローズアップ現代に送った意見~「“決める政治”を問う 野田首相に生直撃」を見て~

   昨夜(827日)、NHKクロ-ズアップ現代」で、「“決める政治”を問う 野田首相に生直撃」が放送された。番組専用のサイトの「放送予定」欄には次のような予告が記されていた(下線は醍醐が追加)。
  
野田首相に直撃 決める政治を問う
  
http://www.nhk.or.jp/gendai/yotei/ 

 「国民に“痛み”を強いる消費増税法を自民・公明両党の協力を得て成立させた野田首相。「決断しなければならない時に決断する政治を行うことこそ政治改革だ」として“決める政治”の必要性を訴えているが、評価は二分している。一方、決めたことに対する反発も強まっている。大飯原発3・4号機の運転再開決定に対する抗議活動の参加者からは「国民の声が政治に届いてない」という怒りの声があがる。野田首相は参加者の代表との会談に臨み「国民の様々な声を受け止めながら方向性を定めていきたい」と理解を求めたが、経済界などには原発維持を求める声もあり、エネルギ-政策の見直しに向けては難しい判断を迫られている。“決める政治”で問われる責任について、野田首相に迫る。」


 見終えて、番組専用サイトに設けられている「意見・問い合わせ」コ-ナ-に下記のような意見を送った。書きたい感想はたくさんあったが、600字以内と制限されているので、限られた感想のみ書いた。

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 27日放送された「“決める政治”を問う」を見た感想です。番組を見終えて、放送予定欄に書かれた番組企画の趣旨が空振りに終わったと感じました。その最大の理由は質問する側の準備不足―質問力の低さ―にあったと思えました。野田首相が「安全運転」に徹した応答をすることは予想されたことです。それを承知で、原発再稼働を「決めた責任」を問うのなら、この夏、電力需給がひっ迫した事態は全くなかった事実を首相に投げかけ、原発を再稼働しなければ夏場の電力供給不足が深刻になるといっていた政府・東電の春先の説明の信ぴょう性をなぜ質さなかったのでしょうか。
   放送中、野田首相は「近いうちに」の意味を聴かれ、「いずれにしても来年夏には任期が切れる、それまでの間のどこかということであり、時期を特定したわけではない」と発言しました。これでは「近いうちに」が限りなく無に近い用語であったことを認めたのも同然です。他方の谷垣氏は「解散の確約以外の何物でもない」と語っています。双方でこれほど解釈が食い違う点を「合意」と称して消費税増税法案を成立させた当事者責任をなぜ、切り返しで質さなかったのでしょう? 
 番組の終了間際に国谷さんが「谷垣さんに電話をして問責決議を出すのはやめてほしい」くらいのことをなぜ言わないのかと質問をされましたが、全く趣旨不明の質問でした。
 時の首相に持論広報の場を提供するだけの番組では公共放送の使命放棄です。

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国民生活を直撃する増税法案を弄ぶ談合政治に鉄槌を

「近いうち」は「近い将来」より近い時期?
~玉虫色の言葉を弄ぶ同床異夢の密室合意~

 
 国民の生活そっちのけの、これほど醜い、同床異夢の談合があっただろうか?

民・自・公3党党首は昨夜の党首会談で、「消費税増税法案を早期に成立させ、そののち、近いうちに国民に信を問う」ことで合意したと発表した。
 
 しかし、早くもこの玉虫色の合意発表をめぐって、憶測が飛びかっている。
 
 「党首会談で合意した『近いうち』との表現は、「近い将来」よりはやや早めの時期という印象を与えるものの、解散時期が特定されないことに変わりはない。ただ、40分間に及んだ会談は冒頭の8分を除き、首相と谷垣氏の2人だけで行われた。公表された内容以外に、解散に関して2人の間で突っ込んだやりとりが交わされたのか否か。首相は『(密約は)ない』としているが、民主、自民両党内で疑心暗鬼が広がりそうだ。」(時事通信、2012/08/08-22:49

 否、憶測どころか、合意発表から半日も経たないうちに、当事者の解釈の食い違いが表面化している。

 「首相は会談後、記者団に『首相として解散時期を明示することは控えなければならない。その立場はご理解いただいた』と説明した。・・・・〔しかし〕 谷垣氏は記者会見で『近いうちに信を問う』との合意に関し『重い言葉と受け止めている。解散の確約でなくて何なのか。(首相が)信頼に応える行動をすると思っている』と強調した。
 
 一方、民主党の輿石東幹事長は8日夜、『近いうちに信を問う』との3党合意について、今国会中の解散を意味しないとの認識を示した。」(「中国新聞」201289日)

 また、首相官邸は、「解散の時期を確約せず、法案成立への合意を取り付けた総理の粘りがち」といい、谷垣氏は「近いうちは近いうち、それ以上でも以下でもない」と禅問答。

 民・自・公3党の議員は、互いに自分勝手、自党の党内向けに好都合な合意事項を了として、消費税増税法案を可決成立させて良心の呵責はないのか? それでは「国民の生活が第一」ではなく、「自分の、自党の議席が第一」に他ならない。 

バナナのたたき売りの経過のおさらい
 
 書くだけでもうんざりだが、念のため、消費税増税法案をおもちゃにした「バナナのたたき売り」の経過を、自民党の言動の変節ぶりに焦点を当てて、おさらいしておく。

 自民党は1週間前までは、お盆前なら採決に応じるが、お盆の後(20日)ではだめだ、と言っていた。
 
 それが4日前になって、10日採決ではだめだ、8日なら賛成する、と変わり、
 
 それならと民主党が8日の採決を持ちかけると、もう手遅れだと「強硬路線」に転じたと伝えられた。
 
 しかし、一昨日になって、8日の午前中までに解散の時期を確約すれば法案の採決に応じる、だめなら午後に不信任案と問責決議案を出すと言いだした。
 
 あわてた野田首相が、昨日(8日)の午前中に、「3党合意にもとづいて消費税増税法案を成立させた後、近い将来に国民の信を問う」という妥協案を投げたところ、
 
 自民党は、昨日の昼間の内は、「近い将来」ではお話にならず、党首会談に応じられないと返答した。
 
 しかし、夕方の民主党の両院議員総会でも野田首相は、総理大臣の専決事項であり大権である解散の時期について明言することは絶対にできない、と演説した。
 
 それを聞いた自民党は、一転、少なくとも表向きの状況は変わっていないにもかかわらず、党首会談に応じると返答し、1930分過ぎから民・自の党首会談が、途中から、公明党党首も加わった会談が行われ、終了後、上記のとおり、「消費税増税法案を早期に成立させ、そののち、近いうちに国民に信を問う」ことで合意したと発表したのである。

 同じ法案について、 お盆後ならご破算にするがお盆前なら賛成する、8日なら賛成するが10日ではだめだ、今日の午後ではご破算にするが午前中なら成立に協力する―――こんな屁理屈がどこにあるのか。

  また、解散を確約したら増税法案に賛成するが、確約しないなら法案をご破算にする―――。こんな理屈もおよそ成り立たない。過半数の国民は今でも消費税増税に反対し、さらに多くの国民が今国会で増税法案を成立させる必要はないと答えている。それでも、政治家として消費税増税が必要だと考えるなら、法案提出の前に選挙で民意を問うのが有権者に対する道義である。

 


 かたや、解散を確約したとたんに、今、選挙をやると落選必至の自党議員から見放されることが必至の野田首相。そういう事態をなんとしても避けながら、自分が「政治生命をかける」と大見えを切った法案を成立させるため、まるで、命乞いをするかのように、自民党にすがりついて、消費税増税法案の成立への協力を懇願する野田首相の姿に、一国の総理大臣としての風格、見識はみじんも感じられない。

 かたや、解散の確約を取り付けなければ9月の総裁選での再選の目がなくなる谷垣首相と早期の解散で政権への復帰を果たしたい自民党議員たち。
 
バナナのたたき売りを一皮めくると、このような党利党略、私利私略が露出する。


欠陥満載の増税法案は廃案に
 では、野田首相がこうまで成立に執念を燃やす消費増税法案の中味はどんなものか。

 *もともと、税の所得再分配機能の回復にとっても、財源調達機能の回復にとっても微々たる効果しか期待できなかった所得税の最高税率のわずかな引下げや相続税の過大な基礎控除の是正さえも、3党合意を経て、全面的に削除された。

 *逆進性対策についても、軽減税率の適用を主張する公明党と給付付き税額控除を主張する政府・民主党の話し合いがつかず、先送り。

 *中小・零細事業者から強い懸念が出ている転嫁の困難性(「損税」問題)について、政府は「監視を強化する」という空疎な呪文を繰り返すのみで打つ手なしの状況。

 まさに欠陥満載、増税オンリーの法案である。
 

 こうした欠陥を放置したまま、法案を党利党略のための取引材料に使い、玉虫色の言葉を弄して同床異夢のほころびを取り繕う下劣な政治を断罪するのは国民の力をおいて他にない。国民生活を直撃する消費税増税法案を党利・私利の取引材料として弄ぶ談合政治に怒りの鉄槌を加え、ガラス細工の談合合意を突き崩して消費税増税法案を廃案に追い込まなければならない。最後まで、あきらめるわけにはいかないのだ。

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参議院中央公聴会で一体改革関連法案について意見を陳述

 昨日(86日)午後、参議院「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」が開催した中央公聴会に公述人の1人として出席し、意見を述べるとともに、その後、同委員会に所属する8会派の議員との間で質疑を交わした。公述人と公述人に対する質疑者は次のとおり。
 
 公述人(敬称略。115分ずつ意見陳述)
 
  中村豊明(日経連税制委員会企画部会長)
 
  飯田泰之(駒澤大学准教授)
 
  長谷川聰哲(中央大学経済学部教授)
 
  植草一秀(スリ-ネ-ションズリサ-チ株式会社代表取締役)
 
  醍醐 聰(東京大学名誉教授)

 公述人に対する質疑者(115分)
 
  梅村 聡(民主党)
 
  塚田一郎(自民党)
 
  竹谷とし子(公明党)
 
  中村哲治(生活が第一)
 
  中西健治(みんなの党)
 
  紙 智子(共産党)
 
  吉田忠智(社民党)
 
  亀井亜紀子(みどりの風)

 意見陳述にあたっては、次のような資料を用意した。
 
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/kochokai_ikenchinzyutu_siryo_20120806.pdf
 
 

3つの論点に絞って意見を陳述
 しかし、15分の時間枠ではすべてを話すことができないのはわかっていた。そこで、次の3点に絞って意見を述べることにした。

 13党合意を経て、法案(修正案)に追加された附則第18条の2は、消費税増収分を社会保障以外の経費、特に公共事業に投入する途を開くものであり、「消費税収はすべて社会保障に充てる」と説明してきた政府の見解と相容れない。

 23党合意を経て、もともとわずかな改革にすぎなかった所得税、相続税の課税強化案がすべて削除されたなかで、政府も累進性の低下につながると認めた消費税増税だけを強行するのは、税の所得再分配機能のみならず、財源調達機能も劣化させるものである。

 3.昨年、中小商工4団体が行ったアンケート調査によると、消費税率が引き上げられた場合、ほとんど転嫁できないと答えた事業者が、売上高2,000万円以下では40%を超えている。それでも事業者に納税を迫る「損税」(消費税を価格に転嫁できず、事業者が自腹を切って納税を余儀なくされること)について手の打ちようがない状況のまま、消費税を増税することは担税力のない者への課税を意味し、不条理な増税である。

 公述人に対して、立場が異なる8つの会派の議員が次々と質問に立ち、多角的な議論が交わされた。私にも6人の議員から質問があった。

「肩車型」社会論は共助の理念に水を差す、さもしい喧伝
  その中で、冒頭の意見陳述では時間の制約から触れられなかった問題のうち、紙智子議員の質問に答えて、男性の非正規労働者の58.1%が年収200万円以下、女性の非正規労働者の47.8%が年収100万円以下であること、男性の非正規労働者の43.6%が「家計の足し」にではなく、「主たる稼ぎ手」として働いている実態を説明した。そのうえで、消費税が10%に引き上げられた場合、2人以上の世帯のうちの年収200万円以下の世帯では家計における消費税負担額は年収の7.5%を占め、単身世帯のうちの年収100万円以下の世帯では、その割合が11.6%と、尋常でない水準に達するという私の試算を述べた。
 そして、このような非正規雇用の増加と低所得の状況をよそに、野田首相が喧伝する「肩車型」社会論には、統計数値のまやかしの使い方があることを、資料に載せた統計数値を示しながら、説明した。そのうえで、将来世代へのつけを回さないためと称して消費税増税を迫るのは、政府自らが世代間の対立をあおり、「共助」の理念に水をさす、さもしい喧伝であると厳しく批判した。

 また、吉田忠智議員の質問に答えて、消費税増税に代わる私の財源構想(資料の
2729ページ)を説明した。

社会保障の財源を消費税に限定する危険性を指摘

 さらに、亀井亜紀子議員の質問に答えて、社会保障制度改革推進法案の第24項で、「社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとする」としている点について、このように社会保障給付の財源を「主たる」とはいえ、消費税に限定すると、社会保障の給付の充実は消費税増税がない限り不可能とする解釈につながるもので、将来にわたり、極めて危険な条文であると答えた。
 
 亀井議員は、社会保障以外の使途に消費税が使われないようにするには、消費税の目的の限定、あるいは何らかの区分経理が必要という意見のようであったが、私の上のような意見を受け、「確かにこの条文には今言われたような危険性があると私も思う」という発言があった。
 

 なお、公聴会の模様は、参議院のHPの次のページ(ビデオ・ライブラリ-)を開いて、カレンダーの86日を、会議名の中の「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会」を選択していただくと録画にアクセスできる。

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

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