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政権与党を特別扱いする不公平な進行、日米基軸論の脅威を問わない与党外交追随的なテーマ設定~NHK「日曜討論」を視て~

「日曜討論」専用サイトへ意見を投稿
 
 去る1125日にNHK総合テレビ(9:0011:00)の「日曜討論」で衆議院総選挙に臨む各党政党討論が行われた。これを見た感想をこのブログの一つ前の記事で書いたが、それに多少加筆した次のような意見を今日、番組専用サイトに設けられている意見受け付け窓口へ送信した。

 「1125日に放送された日曜討論の途中で新党大地・真民主の鈴木宗男氏が「発言の3分の1が民主・自民2党というように偏っている」と苦言を呈し、討論の進め方の見直しを求める発言をしました。私も同じ感想でした。というのも、あるテーマをめぐって各党代表者の発言が一巡しないうちに2度、3度、司会者が、「いままで出た発言について細野さんはどう思うか」と発言を求める場面があったからです。同様に、各党出席者が順次発言している途中で司会者が「世耕さんはどうですか」と自民党議員に発言を求める場面がありました。録画で確かめたところ、合計発言回数(118回)のうち、細野氏の発言が20回、世耕氏が16回、その他の出席者は97回でした。ここで明記すべきことは、細野氏は政府を代表する立場で出席したわけではなく、民主党という、あくまでも1政党の政策担当者という立場で出席したという点です。世耕氏も同様です。日常の政治討論会なら、政府を代表して出席した人物が適宜、政府の見解を説明するために発言回数が多くなるのは自然なことですが、来るべき総選挙を各党がどのような政策を掲げて有権者の審判を仰ぐかを討論する政党討論会の場で、司会者が1政党を代表して出席した人物に、あたかも政府の見解を質すかのような意識で他の党の出席者と比べて別格扱いで発言の機会を多く与えるのは極めて不公平な司会進行であり、「放送の不偏不党」(放送法第1条の二)にもとる運営です。今後の善処を要望します。」

政権与党を特別扱いする不公平な進行
 
 文中、録画(早送りで)で発言回数を調べたと書いたが、詳細は次のとおりだった(敬称略)。
 
 民主党(細野豪志)   20回   減税日本etc(山田正彦)  7回
   自民党(世耕弘成)    16      社民党(服部良一氏)  
  7回
   
生活が第一(松崎哲久)   9    みどりの風(亀井亜紀子) 7回
  維新の会(片山虎之助)  9回  国民新党(浜田和幸)     7回
   公明党(石井啓一)        8回   新党大地(鈴木宗男)   7回
   共産党(小池晃)      7回     新党改革(舛添要一)     7回
  みんなの党(浅尾慶一郎)7回     合 計         118


 
みんなの党以下の政党の発言回数が7回と揃ったのは偶然か、予定調和か、裏方の振り付けかはわからないが、多党化選挙の中での司会者(島田敏男NHK解説委員)の苦労は察せられる。また、討論全体を通じて各党の外交・憲法見直し問題などに関するスタンスの違いが相当に明らかになった点など、収穫があったことは確かである。他方、脱原発、TPPへの参加問題に関してはいくつかの政党の基本政策が不明確な点は素通りで終わった。
 
 しかし、討論の中身以前に、討論の進め方として、細野氏の発言回数が他の多くの政党代表者の発言回数の3倍に近かったこと、世耕氏の発言も2倍近かったことは、各党の総選挙に臨む政策論争の場の運営としては公平を欠いた事実は拭えない。こうした討論進行では来るべき総選挙(特に比例区)の枠組みを民主・自民2党の選択選挙かのように誘導するバイアスをはらむものであって、有権者に公正公平な判断材料を提供するというメディアの役割をわきまえない誤りである。
  
 
日米基軸論がもたらした現実的脅威を不問にしたテーマ設定
 
 字数の制約から投稿意見では触れられなかったが、「日曜討論」の後半の外交のところで、司会者は真っ先に尖閣の問題を話題にした。その後の討論の中では、自衛隊の性格付けや憲法見直し問題などに話題が及んだが、普天間基地問題、オスプレイの配備問題など、日本各地に存在する米軍基地が現在、日本国民にとって現実的な脅威となっている実態を直視したテーマは最後まで取り上げられなかった。
 
 こうした討論テーマの設定は、日米安保、日米地位協定を軸に据えた日本の外交政策が沖縄のみならず、わが国の平和と安全にとって脅威となっている実態を正面切って議論することさえタブー視する一方で、日・中、日・韓間の外交摩擦をまるで一触即発の軍事的緊張かのように誇張してきたわが国歴代政府の外交姿勢に追随するわが国メディアの姿勢の一端を表すものといえよう。こうした時の政権の外交姿勢に追随するメディアの自立性の欠如を国民の側から厳しく問い質す必要性を痛感させられた。

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NHKの選挙関連放送に異議あり

 湯山哲守さん(元京大教員)と私が共同代表を務めている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は昨日(1127日)、代表が渋谷のNHK放送センターへ出向き、松本正之会長と石田研一放送総局長に宛てた申し入れ文書「総選挙にあたって争点提示型の公平な放送を要望します」を提出した。また、同文書をNHK経営委員会、中央放送番組審議会、NHK内の考査室宛てにも参考資料として一読してもらうよう提出した。
 「総選挙にあたって争点提示型の公平な放送を要望します」
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/senkyohodo_mosiire_nhk_20121127.pdf

 要望事項は次の2つである。
1.政党の離合集散を追う政局報道ではなく、政策本位の争点提示型報道に努めること。
2.既存の大政党の動静に過度に焦点を当てた報道を戒めること。

 このうち、2について補足しておきたい。直近の1週間(1119日~25日)のNHKの選挙関連ニュース78件を調べたところ(詳しくは後掲)、民主・自民両党に関するニュースの件数は、両党相互の応酬に関するニュースの件数も併せると38件あった。これは政党の動向を伝えたニュース(合計62件)総計の61.3%を占めている。また、民主・自民・維新の会の3党に関連するニュースの件数は3党間の応酬に関するニュースの件数もあわせると46件で総計の64.1%を占めている。
 その一方で、他の与野党の動向に関するニュースは、公明党1件、社民党2件、みどりの風1件で、それ以外の野党の動向を伝えたニュースはゼロだった。

 既成の議席分布を与件として報道の取捨選択を判断するのは、現在の大政党の動静に有権者の関心を誘導し、投票行動にバイアスを及ぼす恐れを多分にはらんでいる。また、民主、自民、両党が大政党とはいっても、111718日に朝日新聞が行った世論調査では46%が比例選挙の投票先について「答えない・わからない」と答えている。また、NHKが行った直近の世論調査(1126日のニュースで結果を報道)でも「特に支持する政党なし」(35.3%)がもっとも高い割合を占めている。つまり、既存の支持政党の分布割合からみても、選挙報道の対象を民主、自民両党に傾斜させる根拠はないのである。
 さらに、メディアの原点に戻っていうと、選挙活動の紹介報道に関して、大政党とそれ以外の政党間で報道の頻度を差別することは「放送の不偏不党」を掲げた放送法第1条の二の定めに反するものである


 なお、私の個人的な作業であるが、今述べたように、1119日~25日までの1週間のNHKの選挙関連報道の動向を調査し、その結果を集計するとともにコメントを付けた資料をまとめた。

 「この一週間のNHKの選挙関連ニュースの動向調査とコメント」
 
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/senkyohodo_chosa_comment.pdf

 コメントの4番目に、1125日(9001100)の総合テレビで放送された政党討論会の運営について触れている。ぜひ一読いただきたい問題なので、その部分を引用しておきたい。

 1125日、9時~11時に放送されたNHKの日曜討論「政治決戦へ 政策を問う」は14の党の政策担当者が出席した討論番組だった。討論の中で新党大地・ 真民主代表の鈴木宗男氏が討論の運営に関して司会者に向かって、「発言の3人の1が民主・ 自民2党というように偏っている」と苦言を呈し、進行方法の見直しを求める発言をした。
 

 私も番組を視聴しながら、同じ感想を持った。というのも、あるテーマをめぐって各党代表者の発言が一巡する間に2度、3度、司会者が、「いままで出た〇〇について細野さんはどう思うか」、と発言を求める場面があった。また、細野氏ほどではないが、各党代表者があるテーマについて順次発言している間に司会者が「世耕さんはどうですか」と自民党議員に発言を求める場面が数回あった。
 

 ここで明記すべきことは、細野氏は政府を代表する立場で出席したわけではなく、民主党という、あくまでも1政党の政策担当者という立場で出席したという点である。世耕氏も政府を代表したわけでも政権与党を代表したわけでもなく、自民党という1政党の政策担当者として出席したという事実である。
 

 選挙を意識しない日常の政治討論会なら、政府を代表して出席した大臣なりに時の政府の見解を質す発言を求める回数が多くなるのは自然なことである。しかし、この日は文字通り、来るべき総選挙を各党がどのような政策を掲げて有権者の審判を仰ぐかを討論する政党討論会である。司会者が討論会のこうした趣旨をわきまえず、たとえ政権与党とはいえ、政府を代表してではなく、1政党を代表して出席した人物に、あたかも政府の見解を質すかのような意識で他の党の出席者と比べて別格扱いで発言の機会を多く与えるのは極めて不公平な司会進行であり、「放送の不偏不党」(放送法第1条の二)にもとる運営である。」

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