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通称「3つの極」の選挙公約に大異はあるか? 共通するのは政策の不透明さ

三つどもえの選挙戦というけれど
 明日、衆議院総選挙が告示される。原発・エネルギー政策、TPP(交渉)への参加問題、消費税増税問題、普天間基地・オスプレイ配備問題に象徴される日本の平和と安全をめぐる問題、さらには憲法改定問題―――日本の今後の内政・外交に関わる重要な課題が争点となる選挙である。

 
 メディアは民主・自民2党に新しく登場した第三極が挑む三つ巴の選挙という図式で横並びの報道を続けている。民主党の野田首相も民・自2党の党首討論に執心し、選挙の焦点を2党間対立という図式に据えることを目論んでいるように見える。さらに、つい最近、日本未来の党が出現したことによって、第三極が2分されたという論調も台頭している。

大異を見出せない3つの政党の公約
 1
.原発をめぐる政策の不透明さとふらつき
 
 しかし、以上の政党が掲げる公約なりを吟味すると、日本未来の党は別として、その他の3党の政策の差に大異は見出しにくい。あるいは、上記の争点課題について各党の公約があいまいであったり揺れ動いたりしている点で共通している。
 
 たとえば、原発問題をみると、民主党は2030年代に再稼働ゼロを目指すとしているが、なぜ18年後なのか、その間、代替エネルギー政策の検討も含め、脱原発に向けて何をどのように検討するのか、具体策は示されていない。期間を延ばすだけで慎重な検討をする証しにはならない。
 
 自民党は原子力に依存しなくても良い経済・社会構造の確立を目指すとしているが、石破茂幹事長は121日、埼玉県富士見市で行った街頭演説の中で、党公約との食い違いを見せた日本維新の会の石原慎太郎代表について「石原氏の本音は自民党と同じ。原発ゼロを掲げる維新の代表でいるのはつらいし、苦しいだろう」と述べている(共同通信、121日、1346分)。ということは、自民党は原発存続という点では石原氏(の本心?)と同じと受け取れる。
 
 日本維持の会の原発政策が数日おきに揺れ動いていることは見てのとおりである。

2
TPPをめぐる融通無碍な条件付き公約
 
 TPPをめぐる3党の公約も非常に不透明である。
 
 まず、民主党。野田首相は“アジアの成長を取り込む”をスローガンにTPP交渉推進の立場を再三表明している。他方、党の公約では日中、日韓FTAなどと同時並行的に交渉を進め、参加・不参加の最終的結論は政府が判断するとしている。両者はどのような関係なのか? もっとも分かりにくいのは、「参加・不参加の最終的結論は政府が判断する」というくだりである。対外的に政府の判断が日本の判断となることは自明であるが、自党の公約が問われている場面で「政府が判断する」とはどういう意味か? 仮に今度の選挙で民主党が政権与党の地位を失ったとしたら、TPPに関する同党の公約は宙に浮く。その時、民主党は新しい政権の枠組みの下で成立する政府に下駄を預けるということなのか? それとも、その時点で改めて党としての政策を検討するということなのか? 無定見のそしりを免れない。

 
 自民党は、聖域なき関税撤廃を前提にした交渉への参加には反対するとしている。この点では、主要な農産物などの例外措置化が交渉参加の前提と国会で答弁している玄葉外務大臣の立場と共通している。しかし、そもそも、TPPは加盟国間で2015年までに全ての貿易関税を撤廃するほか、原産地規則、検疫措置、知的財産、政府調達、競争政策などを含む包括的な協定を目指すものである。このうち、検疫措置には牛肉の輸入規制、食品添加物や残留農薬の基準、遺伝子組み換え食品の表示ルールなども含まれる。

 
 こうした包括的協定に条件付きで参加の可否を判断することがはたして可能なのか、参加するとしたら、何が「聖域」かを誰が、どういう基準で判断するのか、条件付きで交渉に参加して、「ここまで来たらもはや後戻りはできない」といった口上でなし崩し的に正式参加に至ることにならないのか? 疑問、懸念が尽きない。
 
 維新の会は「国益に反する場合は反対」としているが、一口に国益といっても解釈いかんでその範囲は様々である。「国益」の中味、判断基準を明示しない限り、意味のある公約とはいえない。

唯一明確なのは消費税増税の推進
 
 このようにあいまいさが共通する民主・自民両党の政策の中で、明確なことは消費増税を推進するという基本線である。民主・自民が3党合意で消費税増税を含む一体改革関連法案を成立させた経緯からいえば、両党の政策が一致しているのは当然のことである。安倍晋三氏はデフレ脱却前の増税には反対と語っているが、これは民主党がいう景気好転を条件とした増税実施と大差ない。
 
 しかし、「デフレ脱却」とか、「景気好転」と口では言えても、その判断には裁量の余地が大きい。現に、消費税増税法は附則18条で税率引き上げの条件として名目で3%、実質で2%程度の経済成長率と明記しているが、消費税増税法が成立後、民主党の藤井裕久税制調査会長は「実質2%成長はあくまで目標であり、条件ではない。実質1%成長なら消費増税は実施できる」と語っている。


 
 そもそも私に言わせると、景気が回復したら、家計ならびに法人の所得は上向き、地価も上昇し、所得税、法人税、相続税とも自然増収となる。その結果、どの程度の増収が見込まれるのかを試算するのが先決である。その際、高額所得層に偏在している金融所得の税率を本則の20%に戻すというが、これでは分離課税が温存されたままである。累進税率にもとづく所得税の財源調達機能と所得再分配機能を回復するというなら、金融所得も損益通算を金融所得の範囲内に抑えたうえで、他の所得と総合した課税に改めることが不可欠である。
 
 こうした税制の根本問題の検討を抜きに消費増税の景気条項だけを議論したのでは木を見て森を見ない議論となる。

 
地方財政の疲弊に拍車をかける維新の会の税財政政策
 維新の会は消費税を地方税化し、地方共有税を創設するとしている点で、民主、自民両党と違いがある。しかし、税収の帰属を変えても、消費の段階での逆進性、中小零細事業者にとっての転嫁の困難性という消費税の宿罪が解消するわけではない。これらの宿罪に有効な解決策を提案しないまま、消費税増税を容認する点では、維新の会の公約は民主、自民両党と共通している。
 ただし、国と地方の税財政関係という点では、維新の会が掲げる政策に、民主・自民両党の政策にはない特徴――‐私に言わせると危険な特徴――‐があることを指摘しておかなければならない。それは維新の会が消費税を11%に引き上げたうえで、そのうちの5%を地方の独自財源とし、6%を自治体ごとの財政力の差を平準化する地方共有税にする、その一方で、地方交付税を廃止する、としている点である。
 
 しかし、13.5兆円と試算されている(実際はこれよりも数兆円少ないが)増税後の消費税収をすべて地方税にするとしても、その代わりに地方交付税(2010年度決算では17.6兆円)を廃止すると、地方全体で差し引きで少なく見積もっても4兆円ほどの財源不足となる。この不足分をどう埋めるのか、そもそも、自治体ごとの財政力の格差を調整するのに、地方交付税ではなく地方共有税なるものの方が望ましいとする根拠は何なのか? 公約の粗雑さは否めない。

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