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JA(全中)、全漁連、日本医師会は緊急に共同行動を

今朝方(2月28日)、全国農業協同組合中央会、全国漁業協同組合連合会、日本医師会の各会長ほか宛てに、次のような要望書を発信した。

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TPP交渉参加をストップさせるための共同行動の要望

全国農業協同組合中央会 会長 萬歳 章 様 
全国漁業協同組合連合会 代表理事会長 服部郁弘 様 
日本医師会 会長 横倉義武 様 
(以下、省略)

突然、不躾なメールをお送りする失礼をご容赦ください。
私は東京大学名誉教授の醍醐聰と申します。ただの一研究者に過ぎない者が大変、僭越とは承知のうえで、目下のTPP問題について、思いあまって要望をさせていただきます。
安倍首相は3月中にも正式の参加表明をすると伝えられていますが、本来、一体のものであった6つの公約をあくまでも守るよう政府に要請される点では、皆様の見解は一致していると拝見しています。
今の状況を打開するためには、皆様が大同団結して、緊急の共同行動を起こしていただくことが、唯一の道と考えます。

JA
(全中)が2月23日に発表されました会長声明の結びで、「我々は、今後とも広範な国民各層と連携を深め、日本の食と暮らし、いのちを守るため、組織の総力を挙げて徹底して運動していく所存である」と記しておられます。
全国漁業協同組合連合会が2月25日に発表されました会長談話の結びでも、「今後とも政府の動きを注視し、農林、消費者、医療等の組織と連携しつつ強力に運動を展開していく所存である」と記しておられます。

ぜひ、早急に、こうした貴重な決意を実らせていただくことを強く要望する次第です。皆様の一日も早い大規模な共同行動が亡国のTPPに日本が参加するのを食い止める唯一の道だと確信します。
僭越な要望ではありますが、ぜひとも、ご一考をお願いいたします。

                             醍醐 聰
              (住所、電話番号等、転載にあたって削除)

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このような緊急の共同行動の要望に賛同下さる方は、皆様からも、各団体宛てに、さらに皆様の関わりのある団体・個人に、要望を発信していただくよう、お願いします。
各団体宛ての発信方法は、それぞれの団体のHPに掲載されていますが、それらを以下に紹介しておきます。

JA(全中)広報部:
  電話:03-6665-6010  FAX:03-3217-5072
  Email:kouho.s@zenchu-ja.ore.jp 
全国漁業協同組合連合会:
  電話(漁政部):03-3294-9617
            
(広 報):03-3294-9629
  FAX(広 報):03-3294-9664 
  Emailは、次のHPに発信フォームがある。
  http://www.zengyoren.or.jp/ 
日本医師会:
  電話:03-3946-2121(代)
  FAX:03-3946-6295
  Email:wwwinfo@po.med.or.jp

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3
5日に次のような官邸前アクション行動が予定されている。

STOP TPP !! 官邸前アクション」緊急拡大行動
午後5時~8時まで
呼びかけ人
 山根香織(主婦連合会会長)
 笠井貴美代(新日本婦人の会会長)
 河添誠(首都圏ユニオン)
 山浦康明(日本消費者連盟共同代表)
 野田克巳(大地を守る会管理本部長)
 堀田澤義人(パルシステム連合会広報部長)
 小田川義和(全労連事務局長)
 白石淳一(農民連会長)
 岡崎民人(全商連事務局長)
 長瀬文雄(全日本民医連事務局長)
 伴香葉(同上事務局次長)
 ほか

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非関税分野の障壁撤廃の危険性を伝えないまやかし~TPP参加論の5つのまやかし(第2回)~

「例外」が認められたという偽りの広報への大政翼賛
 先日夜7時のNHKニュースは、高値を付けた株価のボードを映しながら、TPP参加への弾みがつき、日銀総裁も内定し、アベノミックスを歓迎しつつ、景気の上向きを期待する「街の声」を拾っていた。昨夜9時のNHKニュースは、岸田外相を生出演させて安倍訪米の成果を得々と語らせていた。
 消費税増税に続き、TPP参加の後押しをする大手メディアの論調を見て、経済問題からメディアの大政翼賛体制が急速に進んでいると感じる。
 歴史が示すように、自省力の乏しいメディアはひとたび、そういう危険な道に進み始めると、立ち止り、後もどりするのは至難のことである。むしろ、今後、大政翼賛があらゆる分野に広がっていく恐れがある。
 しかし、政治に対しても、メディアの世論誘導の動きにも、国民の自覚と懐疑心は非常に乏しい。

 TPPを調べて行くと、果てしなく問題が広がっていくが、遠からず、アメリカから、日本語が「非関税障壁」とみなされ、公用語を英語に統一するよう求められるのではないか、というネット上での危惧は杞憂とは思えない。自由な通商の障害になっているとアメリカがみなしたら、障壁撤廃の要求はなんでもありだからだ。

TPPに関するメディアの報道の2つのまやかし
一つは、TPPを今もって関税問題に矮小化している点である。そこから、訪米直前の国会で安倍首相が野党の質問に答え、選挙の時の6つの公約はセットと言っていたのをすっかり忘れたことにして、「例外」が認められたという政府広報の拡散にのめり込んでいる。安倍政権、自民党の「公約隠し」の共犯者といって過言でない。
 もう一つは、今もって、TPPをめぐる日本の利害を農業はマイナス、輸出産業・消費者はプラスという図式で解説している点である。

「TPP・参加のメリットとデメリットは」(NHKニュース223日:1621分)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130223/k10015731221000.html
 

TPPが農業にとって大打撃であることは明らかであるが、輸出産業、たとえば、自動車産業にとってメリットか、大変疑問である。TPPに参加しても、アメリカが輸入乗用車に課す関税は、上のニュースにあるように2.5%に過ぎない。それも5年間でだから、年あたり、0.5%。これが撤廃されたからといって(オバマ大統領はこれさえ撤廃しないと言っているが)どれほど輸出の伸びにつながるのか? そもそも、海外生産比率が高い自動車産業では、関税撤廃のメリットは乏しい。

佐藤ゆかり議員が質したISD条項の危険な役割
 
 消費者にとってメリットかどうかを判断するには、非関税分野―――医療、金融、保険、労働、食品表示などーーに広げた検討が必要である。
 20111111日の参議院予算委員会で佐藤ゆかり議員(自民党)はISD条項の広範囲に及ぶ危険性を次のように質している。
 1つ目は、医療の分野での薬価の値上がりを誘発するおそれ、医療方法まで国内の方法について障壁とみなされ、撤廃・緩和を求められる恐れを質している。

 「例えば医療や医薬品、もう多くのお話出ております。社会保障分野でさえ、医薬品や医療のやり方に特許を付すことによって社会保障分野でのサービス提供すら社会政策として自由にできなくなるおそれがある、これがTPPの知財条項であります。薬価上昇のおそれ、例えばアメリカの製薬会社が特許を取れば、日本の国産品のジェネリック製品の薬品の生産が滞ってくる。そうすると、中には高価な薬価で薬を買えない患者さんが出てくるわけですね。抗がん剤やC型肝炎治療薬などは薬価が上がって、ジェネリック医薬品が入らないと薬を買えない人たちが出てくる。
 そして、もう一つ非常に驚く点は、医療の治療方法の特許なわけであります。日本の場合には、大学病院があって医局があって、それぞれ病院、医局によって患者さんを治療する方法というのは違う場合があるんです。ところが、このTPPの知財条項の米国案によりますと、それぞれの患者さんの治療方法というトータルな方法のパッケージについて特許を付すると、そういう条項が付いているわけであります。これは今交渉中のニュージーランドで極めて激論になっているテーマでありまして、こうしたことで人命が救えるのかどうかと、そういう問題になるわけであります。こうした知財条項を含むTPPについて、ニュージーランドで激論になっている例も踏まえて、小宮山厚労大臣、いかがお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。」

 次は投資の分野である。

 「次にもう一つ、この紛争解決手段、ISD条項ですけれども、これが極めて不評であります。配付資料を御覧いただきますと、まず配付資料の一ページ目になりますが、自由貿易協定の名称とISD条項の有無というのがありまして、WTOには投資協定におけるISD条項、すなわち一企業、投資家がその参入先の相手国を、国を相手取って訴訟できるという条項でありまして、WTOにこういう条項は存在しておりません。そして、米豪、オーストラリアとのEPAでは、オーストラリアがこれに断固として反対をして削除をした経緯があります。そして、米韓FTAではISD条項が入ってしまいましたが、韓国側がこれで激論で今もめていて、議会で承認できない状況になっていると、そういうことであります。
 日本の各国のバイのEPAはこれはあるんですが、ISD条項はありますけれども、実際に発動事例がないから大丈夫だろうと、そういう答弁を役所はするわけでありますが、実際これは相手国が違うんですね。今度アメリカが相手になってくれば、当然我々が見なければいけないのは、かつてNAFTAで何が起きたかと、こういうことを事例にしながら我々は戦略を練っていかなければいけない、そういうことであります。
 そこで、実際にNAFTAの事例を御覧いただきます。資料のページ二でありまして、NAFTAにおいてこのISD条項で一企業、投資家が国を訴えた紛争解決事例、一番最後の行で、サンベルトウオーター対カナダ、一九九九年の事例を御覧いただきたいと思います。これは、カリフォルニア州の企業、サンベルトウオーターがカナダ政府をNAFTA条約の第十一条に基づいて提訴をした案件でありまして、この損害賠償請求の金額は当時百五億ドルという非常に膨大なものであります。
 一体これは何がどうしたかといいますと、実は、カナダの州政府でありますブリティッシュ・コロンビア州政府がこのサンベルトウオーターと契約を結んで、数億万ガロンの水の輸出の契約をしたと。それをブリティッシュ・コロンビア州政府があるとき停止をしたために、利益が損なわれたということでサンベルトウオーターがカナダ政府を訴え、賠償請求として百五億ドルを請求したという案件であります。このほかにもたくさんこういう訴訟が実際にISD条項で起きているんですね。
 それで、やはりこういう水のビジネスというのは、我が国日本も既に海外に水ビジネスを推進しています。そして、国内的には、海外の外国企業が日本の北海道や長野県の水資源の近隣の土地を買収に入ってきているという問題があるわけでありますよ。
 そういう中で、NAFTAで実際に水ビジネスで訴訟が起きているという事例があるんですね。これはいかがお考えかということを農水大臣、鹿野大臣にお伺いしたいと思います。水の安全保障では、北海道や長野県で土地買収が行われております。そういう絡みから、このISD条項がもしTPPで入るとすると、我が国としてどうやって守ることができるのか。農水大臣の御見解をお願いします。」

 3つ目は、公共調達の分野。

 「そうすると、この水ビジネスの例にもありますように、これから地方自治体が我が国日本では、まあ復興予算も付けます、企業立地もこれからやっていかなければいけない、円高で空洞化対策もやっていかなければいけない、いろいろ地方自治体が受けた予算や税制を駆使して企業誘致をしていかなければいけないんですね。
 そのときに、様々な安全性の角度から規制強化をするような自治体もあれば、あるいは企業誘致で様々な行政で企業、外国企業も引っ張ってくる事例というのも出てくるわけでありますが、その中で特に空洞化対策でいえば、やはり政府発注、公共事業の発注などにおいても地元の業者を優先的に発注するような事例というのはどうしても出てくると思うんですね。
 そうした中で、このISD条項というのがかかわってきますと、当然ながら、外国企業は、この地元優先の事業、政府調達が不公平じゃないか、我々の利益が損なわれたといって、まず日本の国が訴えられますよ。そして、こういう地方自治体でやる様々な地方行政措置について、国が一つ一つそれをモニターしてリスク管理することはできないんです。でも、実行するのは地方自治体ですよ。でも、訴訟を受けるリスク管理をするのは国なんです。これをどうマネージをしていくとお考えか、総務大臣、お答えいただきたいと思います。」

もっとストレートに声を
 ところが、こうした非関税分野でのTPPの危険な実態をメディアはほとんど伝えていない。結局、農業を保護するのか、消費者利益を図るのかという、国民を分断させる図式に行き着くのである。貿易自体でさしてメリットがあると思えない日本の経済界がTPP推進派になっているのは、障壁(規制)に対する海外からの圧力に乗じて、国内の規制を緩和撤廃させる機会にしたいからではないか。

 日本人はもっとストレートに声を挙げるべきではないか。政治家に対して、亡国の財界首脳に対して、大政翼賛の道へのめり込むメディアに対して。

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「聖域あり」が確認できたという喧伝のまやかし~TPP交渉参加論の5つのまやかし(第1回)~

追記(2013年2月24日、1時27分): 緊急のお知らせ~この記事にアクセスいただいた皆様へ~

 「時事通信」(2月23日、23時9分)によると、政府関係者の発言として、安部首相は28日にも開かれる衆参両院本会議での施政方針演説でTPP交渉への参加を正式表明する方向で調整に入ったとのことです

 関税分野で、以下の記事に書きましたように疑問点・危惧が山積していることに加え、自民党が昨年12月の総選挙の時に発表した公約で謳った5つの非関税分野に存在する重要な懸念事項(食の安全基準が引き下げられることにならないのか、国民皆保険を本当に守れるのか、ISD条項が入れられないのか)が全く払しょくされない状況で、わずか5日後に参加表明をするなど論外の暴挙です。

 こうした意見に賛同くださる個人、団体の皆様に、次のことを呼びかけます。

 TPPと深い関わりのあるJA全中(全国農業協同組合中央会)、日本医師会、そして日本弁護士連合会が共同で緊急の国会内集会を開き、全国会議員に参加を呼びかけるという企画です。日弁連を挙げたのは、ISD条項や知的財産権保護条項の意味、それらと国内法との関係を国民に分かりやすく解説してもらうためです。もちろん、市民、市民団体にも参加してもらえるよう、別の大きな集会を持つことも検討していただけたらと思います。
 もっと効果的なアイデアがありましたら、ぜひ、至急、上記の団体のほか、政党、政治家に対して意見・提案を発信していただくよう、希望します。

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筋書きどおりの展開だが

 日本時間の今日(2013223日)未明に行われた安倍首相とオバマ大統領の日米首脳会談終了後、日本側が発表した共同声明の要旨によると、環太平洋経済連携協定(TPP)に関しては、日本がTPP交渉に参加する場合にも「すべての物品が交渉の対象にされる」としたうえで、「一方的にすべての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」という明文が入ったとのことである。これを受けて安倍首相は会談後の記者会見で、「オバマ大統領との会談で、『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」と述べ、帰国後、自民、公明両党から一任を取り付けたうえで、政府の専権事項として交渉参加を早期に判断する考えを示した
 
すべて、事前に予想された筋書きどおりであるが、こうした筋書きには5つのまやかしがある。

  第1 「聖域あり」が確認できたという喧伝のまやかし
  第2 究極の「例外」はないという原則を伏せるまやかし
  第3  TPP参加が自給率向上目標と矛盾する事実を直視しないまやかし
  第4 非関税分野の協定の危険性を周知しないまやかし
  第5 交渉参加は政府の専権事項とみなすまやかし 

 どれも日本の国家・社会の仕組み、国民生活の根幹、政治のガバナンスにかかわる大問題である。以下、5回に分けて、それぞれがなぜまやましなのか、説明していきたい。

共同声明はむしろ「聖域」が存在しないことの証左
 安倍首相はオバマ大統領との会談で、「聖域なき関税撤廃」が前提ではないことが明確になったというが、このような解釈には2つの意味でまやかしがある。
 一つは、いったい何を以て「聖域」の有無を確認したことになるのかという点である。「聖域」という以上、アンタッチャブルという意味でなければ、言葉の本義に適さない。言い換えると、そもそも初めから交渉マタ-にしないという了解がなければ「聖域」と呼ぶのは言葉の誤用である。ところが、上の共同声明の要旨の前段では、「すべての物品が交渉の対象にされ、日本がほかの参加国とともに包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認した」と明記されている。つまり、一切の聖域を設けず、包括的な関税撤廃の交渉を進める、というのが共同声明の趣旨なのである。その上で、「配慮が必要な品目が存在することを認識しつつ、最終的な結果は交渉の中で決まっていく」というのであるから、「例外」扱いされる品目が存在するかしないかは交渉次第、ということなのである。こうした声明を捉えて、「聖域が存在する」ことが確認できたとみなし、TPP交渉への参加のハードルをクリアできたと解釈するのは身勝手かつ極めて危険な予断である。

「聖域」の範囲を定めず、確認云々を喧伝するまやかし
 もう一つのまやかしは、「配慮が必要な品目が存在することを確認できた」というが、肝心の「聖域」の範囲が確認されていないという点である。
 実態をいうと、戦後のGATT加盟、ケネディラウンド、日米農産物交渉、ウルグアイランド合意を経て、日本は19624月の時点では492品目(うち農林水産物は196210月現在で81品目)だった輸入制限品目を1975年段階で27品目(うち農林水産物は22品目)まで縮小した。そして、日米農産物交渉が終わった1988年の時点では農林水産物の非自由化品目は米・麦とその加工品、乳製品、肉及び肉加工品、果実・野菜及びその加工品、でん粉類、地域農産物及び海藻(小豆・そら豆、落花生、こんにゃく等)、その他、計19品目となっている。
 その結果、日本の食料自給率は、品目ベースでは1965年から2011年(概算)にかけて、米は95%→96%であるが、小麦28%→11%、豆類25%→9%、果実90%→38%、肉類90%→54%、牛乳・乳製品86%→65%、魚介類100%→52%となっている。また、供給熱量ベースでみた総合食料自給率は1965年時点では73%だったのが、2011年(概算)には39%へと約半分に下がっている。また、生産額ベースでみた総合食料自給率は1965年時点では86%だったのが、2011年(概算)には66%へと20ポイント下がっている。菅元首相は「平成の開国」を呼号してTPP交渉への参加を訴えたが、日本はとっくに「開国」していたのである。

 食料自給率の推移(農水省公表)
 http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/pdf/23_sankou4.pdf

 戦後の日本の貿易自由化と「重要品目」の輸入制限の経過については次の文献を参考にした。
 清水徹朗・藤野信之・平澤明彦・一瀬裕一郎「貿易自由化と日本の重要品目」『農林金融』201212
 http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1212re2.pdf

 安倍首相がオバマ大統領との会談で、TPP交渉にわが国が参加するかどうかの判断材料を得たいというのであれば、少なくとも関税分野については、――わが国が従来、対外的な貿易交渉で守ってきた重要品目を具体的に示し、これらの輸入制限を堅持できることが交渉への参加の前提条件となる。これは日本の経済自主権を確保する死活の条件だ――と明言し、それに対する了承が得られるかどうかを確かめるのが一国の首相としての責任ある態度だったのである。
 こうした中身の議論、確認を抜きにして、「聖域」が存在することが確認できたと喧伝する政府も、それを受け入りするメディアも、国民に対して重大なまやかしを犯しているのである。

国会審議でも明確化が求められた「重要品目」の範囲
 TPP参加交渉にあたって何が「例外」品目かについて国会審議でも取り上げられ、北海道を選挙区とする自民党議員や農水省幹部は次のような発言をしている(下線は醍醐が追加)。

 「武部委員 私の地元でございます北海道は、専業農家中心の農業経営で、なおかつ非常に食品産業と結びついた、日本でも有数の、最大の食料供給地域であります。特に米、小麦、砂糖、でん粉や乳製品などの重要品目を産出しておりまして、生乳生産は全国の五割を占める生産地であります
 これは北海道の試算になるんですけれども、TPPに参加いたしますと、北海道の影響ですが、経済全体で二兆一千億、それから農業生産高でいいますと五千六百億円程度、農家の戸数でいいますと、今四万五千戸あるんですけれども、これが三万三千戸減少して一万二千戸しか農業をやっていけなくなるというような、本当にTPPにこのまま関税撤廃されてしまって参加するということになれば、非常に大きな打撃を受けます。
 それから、先ほども申し上げましたけれども、特に食品工業が多くて、北海道全製造業の中に占める食品工業は大体四割近くあります。さらに、私の地域でいえば、私の選挙区である宗谷は製造業の九割が食品工業ですし、オホーツクは食品工業が製造業の中で六割を占めているということですから、まさにTPP参加で地域ごとなくなってしまう、地域経済が吹っ飛んでしまうと言っても過言ではない状態になってしまいます。それだけに、北海道の皆様方は、生産者だけではなくて、第一次産業だけではなくて、全ての産業において非常に強い危機感を持っております。」

 「武部委員 ありがとうございます。江藤副大臣おっしゃるとおり、我が国はこれまで、EPAにおいても、いわゆるセンシティブ品目をしっかりと守ってきているわけですね、一〇%ほど守っているというお話がありましたけれども。特に、米ですとか小麦、先ほど言いましたでん粉、砂糖や、脱脂粉乳、バター、加工原料乳を使う乳製品などはしっかりと守ってきているわけであります。今回のTPPは果たしてそのセンシティブ品目を守ることが可能なのか。
 先ほど、参加したことを前提にという話は非常に危険だと。私もそのとおりだと思いますけれども、しかし、やはり生産者の皆様方は、その聖域と言われる部分はどこに当たるんだ、ここまでは入るのかということを非常に心配もしているわけであります。聖域を確保することができるのか、あるいは、できるとすればどこまでを対象範囲とするのかということは、本当に心配の種でもあると思います。同様に、EPAのように、できるのかできないのか、できないんだったら当然参加しないということになると思います。(2013124日、衆議院農林水産委員会会議録より)

政治家としての信義が問われている
 であれば、対象範囲を定めることなく、関税撤廃交渉の「聖域」とか「例外」とかいっても、関係する生産者、ひいてはそうした農林水産業が存在する地域産業、住民にとって、意味は限りなく無に近い。かりに交渉の結果、米など23の品目の例外措置が認められたとしても、それだけでは「例外」から外れた生産者・産業ひいては地域全体が致命的な打撃を蒙る。そうしたリスクを抱えた交渉に「まずは参加し、結果は交渉次第」などと唱えるのは無責任極まりない政治判断である。

 特に、TPPの場合、加盟9カ国および加盟交渉参加国(カナダ、メキシコ)は、これまで日本が協定を交わしてきた相手国と違い、食料自給率が高く、日本に対する輸出の伸びに強い利害を持っている国が多い。中でもアメリカ(2009年現在)は小麦189%、豆類175%、肉類112%、牛乳・乳製品101%と、のきなみ輸出国である。オーストラリアは小麦411%、豆類183%、肉類160%とさらに輸出超である。カナダも小麦367%、いも類290%、豆類290%、肉類133%と極めて高率の輸出国である(農水省「諸外国の品目別自給率(2009年)(試算))。つまり、日本がTPPに参加した場合、日本にとっての重要品目に関して高いレベルの市場開放圧力が加わるのは必至である。それだけに交渉次第などと悠長なことを言っていられる状況でないことは多少とも事情に通じた人間なら周知のことである。こうした事実を国民に知らせず、直視せず、「聖域が存在することが確認された」などと喧伝することがいかに無責任なまやかしか、明らかである。

 ちなみに、上の質疑の中で、江藤農水副大臣は次のように発言している。
 
「〇江藤副大臣 TPPに仮に参加をしたらという話をするのは、ある意味、私は危険だと思っているんですよTPPとは何ぞや、EPAとは何ぞや、FTAとは何ぞや。TPPとEPAをどうも混在されている方がいる。日本の今までの経済連携交渉の歴史を見てみると、EPAを幾つも結んでまいりましたが、それでも大体一〇%ぐらいは守ってきているわけです。
 しかし、TPPということであれば、基本的に全ての関税を、十年後か十五年後かそれはわかりませんけれども、全て撤廃ということでありますから、それは北海道にとってはかなり厳しいことになるという認識は、私も、それから農林水産省も同じように持っております。」

 「江藤副大臣 今委員がおっしゃるように、聖域とはかくかくしかじかでございますということは、これはTPP交渉参加の準備というふうに受け取られかねないのであります
 私たちの今のスタンスとしては、まだ私もこの職について一カ月たっておりませんけれども、アメリカから例外を認めますなんというインフォメーションは一切いただいておりません。原則論は曲がっておりません。ですから、私どもの理解としては、TPPというものは、例外は認めないということであれば、これは林大臣とも私は見解を同じとしているものでありますけれども、いわゆる全ての関税自主権を失い、そしてISDのようなことで、むちゃな、民間から政府へのいわゆる訴訟合戦というようなことにもなれば、それは自治権に対する、いわゆる日本の自主自立に対する毀損にも値するようなことも起こり得るということでありますから、今の段階でこれが聖域だという議論については、私は少し慎重にしておいた方がいいというふうに思います。」(2013124日、衆議院農林水産委員会会議録より)

 江藤農水副大臣、あるいは武部新議員は、「聖域」の範囲すらさだかでない共同声明を以て、日本のTPP交渉参加の前提がクリアできたとみなすのか? それとも不透明な「聖域」云々の議論を通行手形にして交渉参加を判断する政府の方針に反対を貫くのか? ―――国会での自らの発言に対する信義が厳しく問われることになる。

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TPP問題:関税撤廃の「聖域探り」に焦点を当てるメディアの愚かさ(3:完)

非関税分野のTPPの危険性を黙過するメディア
 このブログの214日付けの記事で指摘したが、TPPには文字通りの関税撤廃の問題と非関税障壁撤廃の問題がある。自民党が2012年の衆議院総選挙にあたって、これら両方を含んだ6項目をまとめていた。
 
①政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
 ②自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
 ③国民皆保険制度を守る。
 ④食の安全安心の基準を守る。
 ⑤国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
 ⑥政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

 ところが、政府が212日に、衆議院予算委員会の理事に提出した「TPPの交渉参加に対する基本方針」と題するペーパーで記載されたのは上の①だけで、②以下はすっぽり抜けていた。
 219日の参議院予算員会で紙智子議員(日本共産党)はこの点を取り上げ、自民党の公約は6つがセットではなかったのかと質した。具体的には、④について残留農薬や食品添加物の使用規制などが米国から貿易の障害になると指摘されたらどうするのか、③について混合診療の解禁や株式会社の医療への参入を要求されたらどうするのか、と追及した。

自民のTPP総選挙公約、6項目守るなら参加断念を (しんぶん赤旗、20132.20
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-20/2013022001_01_1.html

国会でなされた核心をつく質疑を伝えないメディア
 これに対して、安倍首相は、「聖域なき関税撤廃以外の5項目も踏まえて交渉参加を判断していく」、「国民皆保険をゆるがす考えは毛頭ない」と答えた。林農相も「6項目に反することが明白な場合は交渉参加は難しい」と答弁した。②以下の公約は抽象的な文言であるため、それに反するかどうかの解釈がもつれることは十分予想される。しかし、オバマ大統領との交渉に先立つ国会審議の場で、安倍首相ほか関係閣僚からこうした答弁がなされた意味は大きい。

 実は、野党時代の自民党議員も医療分野におけるTPP、具体的にはISD条項の危険性をどこまで認識しているかについて民主党政府を追及したことがある。

佐藤ゆかり議員質問(20111111日、参議院予算委員会)

http://www.youtube.com/watch?v=XJtWmYBNKck


 質疑の中で佐藤議員は、まず(ビデオの00:30以降)、TPPは通商条約を超えて国家・社会全体を網羅する話だと指摘、その後(550頃から)アメリカが各国とかわした協定の中に、知的財産権保護条項やISD条項(他国の民間企業が協定参加国の規制によって、特許権を侵害されたという訴訟を起こすことを認める条項)が含まれていたため、ジェネリック医薬品の開発が滞ったこと、薬価を押し上げ、低所得層が使えなくなる恐れが生まれたことなどを紹介し、TPPとは単なる関税問題ではなく、国家・社会の仕組みを揺るがす大きな問題だとして、当時の野田首相や小宮山厚労相に見解を質している。


 話を今月19日の参議院予算委員会での質疑に戻すと、翌日(2013220日)の全国紙を見ても、紙議員と政府との上記の質疑の模様はほとんど伝えられていない。
 「朝日新聞」は5面で19日の参議院予算員会の「焦点採録」を掲載したが、紙議員と安倍首相のやりとりについて、
 紙智子氏「日米首脳会談でオバマ大統領に聖域を確認するか。」
 首相「聖域があるかないかを確認する。」
という質疑を記しただけで非関税分野のやりとりは全く伝えていない。
 「読売新聞」は、「TPP、例外設けられるかどうかだ首相」という見出しを付けた記事の中で、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉には参加しないとの選挙公約を前提にして国益を確保するよう全力を尽くすとした安倍首相の公式的答弁を伝えただけだった。非関税分野の規制撤廃については、自民党外交・経済連携調査会が国民皆保険や食の安全などに関する6項目の基本方針をまとめたことについて「重く受け止めている」と述べた、と伝えるにとどまった。
 「毎日新聞」も、「TPP踏み込めるか 関税撤廃『例外』焦点に」という見出しで、山田俊男議員(自民党)が「個別の事情に配慮すると言われて、(参加を)判断すれば間違いになる」と懸念し、慎重に「感触」を分析するよう要求したこと、医療保険の分野について、安倍首相が国民皆保険は交渉で揺るがす考えは毛頭ないと答弁したことを伝えたにとどまり、「例外」をめぐる「感触」に大半の紙面を割いている。

経済分野の報道で進行するメディアの大政翼賛体制
 TPP交渉への早期参加を政府に促す社説を次々と掲げた全国紙には、この程度の報道しか望めないのか。
  「TPP交渉参加を決断し成長戦略の柱に」(「日本経済新聞」25日)
  「首相はTPP参加へカジを切れ(「読売新聞」28日)
  「TPP交渉 参加を決断する時だ」(「毎日新聞」215日)
  「TPP交渉/主体的に関わってこそ」(「朝日新聞」215日)


 消費税増税の場合と同様、全国紙が国民に問題の核心に迫る情報を伝える使命をおざなりにしたまま、熟議に程遠い重要テーマについて、歩調をあわせて時の政府に「決断」を迫る構図を見ると、経済分野からメディアの「大政翼賛体制」が進行していると思える。この点を早い機会に詳しく論じたいと思っている。

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TPP問題:関税撤廃の「聖域探り」に焦点を当てるメディアの愚かさ(2)

「例外」は過渡的措置、数年後に完全撤廃が原則
 
 さらに重要なことは、かりに関税撤廃につき「例外扱い」が認められる場合でも、それは経過的な措置にすぎず、いずれ全面撤廃することが前提になっているということである。この点を知る上で、201231日付けで内閣官房、外務省、財務省、農水省、経産省がまとめた「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果(米国以外の8カ国)」が有益である。

内閣官房、外務省、財務省、農水省、経産省「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果」(平成2431日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp01_13.pdf
 

 この報告書の中の「関税撤廃」の項では、まず冒頭で「交渉対象については、全てを自由化交渉の対象としてデーブルにのせなければいけないことは、各国とも認識を共有していた」と記したうえで、関税撤廃の原則について、以下のような発言があったと記している。
 ・長期の関税撤廃などを通じて、いつかは関税をゼロにするというのが基本的な考え方である。
 ・全品目の関税撤廃が原則、他方、全品目をテーブルにのせることは全品目の関税撤廃と同義ではない。
 ・90から95%を即時撤廃し、残る関税についても7年以内に段階的に撤廃すべしとの考え方を支持している国が多数ある。・・・・
 ・包括的自由化がTPPの原則であり、全品目の関税撤廃を目指して交渉を行っている。
 ・「包括的自由化」の解釈は国よって異なる。

 さらに、センシティブ(重要)品目の扱いについて、以下のように各国で内容が異なる意見があったとまとめている。そこでは、「センシティブ品目の扱いは合意しておらず、最終的には交渉次第である」とする国があった一方で、「関税撤廃について特定品目を除外してもいいという合意はない」と解釈する国もあった。さらに、注目すべきなのは、次の発言にみられるように、例外扱いといっても当面のことで、センシティブ品目は段階的撤廃で対応すると受け取られているということである。
 ・種々のセンシティブ品目への対応として7年から10年の段階的撤廃により対応することが、基本的な原則としてすべての交渉参加国で合意されているが、本当にセンシティブ品目の扱いについては今後の交渉を見極める必要がある。
 ・センシティブ品目への配慮は段階的関税撤廃で対応すべき。
 ・現在の議論の対象は関税撤廃をどれだけの時間をかけて行うかである。
また、こうした意見に続けて、
 ・除外については議論していない。
 ・除外はTPPの目標と一致しない。
といった原則論を確認する発言をした国もあったという。

 では実際はどうなのか? 石川幸一氏(亜細亜大学教授)が『季刊国際貿易と関税』Autumn 2010,に発表した論文「環太平洋戦略経済連携協定(TPP)の概要と意義」の中で、TPPにおける「物品の貿易は段階的であるが例外なく自由化されている」としてブルネイ、チリ、ニュ-ジーランド、シンガポールにおける関税撤廃の経過を紹介している。

石川幸一「環太平洋戦略経済連携協定(TPP)の概要と意義」
http://www.iti.or.jp/kikan81/81ishikawa.pdf

 これを見ると、ブルネイでは2010年の時点では関税撤廃率は1.7%に過ぎなかったが、協定発効時には92%となっている。同じくチリ、ニュージーランドでも、2008年あるいは2009年の時点では撤廃率は1%未満だったが、発効時には、チリは89.39%に、ニュージーランドでは96.5%になっている。また、シンガポールは発効時に100%となっている。

いつまでも関税が残るという例外はない~国会でも確認された原則~

 219日に開かれた参議院予算委員会で質問に立った紙智子議員(日本共産党)は、201111月の衆議院予算委員会で林芳正議員(現農水相)が、例外措置は何年でゼロにするかという例外はあっても、関税が残るという例外はないのではないか、と野田首相(当時)追及したことを紹介し、これに対して野田氏が例外を認めさせても510年で関税がゼロになると答弁したことを明らかにした。

「論戦ハイライト TPP不参加しかない 参院予算委 紙議員が迫る」(しんぶん赤旗、20132.20

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-20/2013022003_01_0.html

紙議員と林農相との質疑の模様は以下。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

(審議カレンダーの219日、予算委員会を選択。画面上の休憩後の映像の残り時間2:29:15あたりから)


 こうした重大な質疑を全く伝えず、安倍首相の個人的「感触」で「例外扱い」を引き出せるかどうかに国民の耳目を引き寄せるメディアの愚鈍、問題の核心を洞察する理知の欠落を質さなければならない。

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TPP問題:関税撤廃の「聖域探り」に焦点を当てるメディアの愚かさ(1)

TPP報道:二重の意味で洞察力の欠如
 22日に予定されている安倍首相とオバマ大統領との首脳会談で俎上に上るTPP交渉参加問題をめぐって、多くのメディアは、安倍首相が「例外なき関税撤廃」という交渉原則に「聖域」ありという感触をオバマ大統領から引き出せるかどうかが焦点であるかのように報道している。今国会の質疑でもこの点だけが取り上げられたかのような報道をしている。

TPP「聖域」あれば交渉参加 首相が3月表明も(2013/2/9 2:01 情報元

日本経済新聞 電子版)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0804O_Y3A200C1MM8000/?dg=1


TPP、例外設けられるかどうかだ首相(2013/2/19/13:26 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130219-OYT1T00533.htm?from=ylist

 
しかし、こうした話題設定には二重の意味で、重大な危うさが潜んでいる。一つは、関税撤廃の「例外探り」に焦点を当てる論調でよいのかということであり、もう一つは、TPPを貿易関税問題に限定する論調でよいのかという点である。この記事では前者を取り上げ、2つ目の論点は次の記事で論じたい。

「感触で」「聖域」を引き出せるかどうかに焦点を当てる愚かさ
 一つは、TPPへの参加交渉にあって焦点は関税撤廃問題だけであるかのようにみなしたうえで、その関税撤廃問題について、安倍首相がオバマ大統領から、「撤廃には例外(聖域)がある」との「感触」を引き出せるかどうかが最大の焦点であるかのように論点を定める点である。
 テレビ朝日は去る28日のニュースで、安倍首相が日米首脳会談で全ての品目で関税を撤廃する必要があるか、直接確認する考えを示したと伝えた上で、確認の意味について安倍氏は、「自分の感触が「極めて重要」」と語ったと報道した。つまり、例外があるかどうかの確認は安倍首相の「感触」次第というのである。

「TPP例外ありか 日米首脳会談で確認」(テレビ朝日2012/2/8
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/mplus/news/post_34991


 
他のメディアも、こうした「感触探り」に焦点を当てている。

アベノミクスのアキレス腱、TPPは「例外」が焦点 自民反対派が会合(産経ニュース 2013/2/7 20:37http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130207/fnc13020720380019-n1.htm

TPP:判断へ、正念場の訪米 首相「例外」引き出せるか(毎日新聞 2013/2/18 東京朝刊)

http://mainichi.jp/select/news/20130218ddm001020091000c.html

独立国としてあまりに卑屈な外交姿勢
 しかし、国家・社会の仕組みを揺るがすほどの(詳しくはこの連載記事の(3)で論じる)TPP交渉に日本が参加するのかどうかの判断材料を得るための日米首脳会談で、オバマ大統領の「感触」にじっと聞き耳を立てるとはどういうことなのか? 独立国の首相として余りに卑屈な態度ではないか?「わが国が重要とみなす品目の関税撤廃が前提条件なのか、そうだとしたら、わが国は交渉に参加できない」と、なぜ堂々と言えないのか?
 たとえば、次の記事にあるように、オバマ大統領から、「日本の個別事情に配慮する」という発言を引き出したら、それを以て「例外品目を作れるとの感触を得た」とみなし、交渉参加の前提条件をクリアしたことになるのか? そんな事前の台本が前もって事務方で準備されていないか? 後で言った、言わない、「マスコミの報道は誤報」などという釈明で幕引きを図り、「国際公約」を盾に国内での議論を抑え込む――何度も繰り返されたこんな愚行で重大問題が強行されたのではたまらない。

「参院予算委:TPP『感触』解釈で賛否」(毎日新聞2013/2/19 23:15
http://mainichi.jp/select/news/20130220k0000m010116000c.html

 そもそもTPPは例外なき関税撤廃を原点にした包括的「自由」貿易協定であり、全品目を交渉のテーブルに乗せることを交渉の前提条件にしている。「日本もまずは交渉に参加して国益に沿わないと判断すれば参加を取りやめればよい」という意見が少なくない。しかし、日本とのTPP交渉に関してアメリカ政府が国内で行った意見募集の結果(20122月、外務省公表)をみると、産業界、労働界などから提出された115件の意見の大半は日本の交渉参加に肯定的だった。しかし、それは無条件でなく、「米国と同レベルの市場アクセスの確保を求める」(全米商工会議所)、「アプリオリの除外をすることのない包括的な合意へのコミット、合意済みの事項についてリオープンしないこと」(全米製造業協会)といった厳しい条件を付けたものだった。
 また、かりに「例外」を求めるとしても何を「聖域」(重要品目)」にするのか、重要品目をすべて「例外扱い」にできるのかについて全く不明であり、安倍首相もその点について「感触を探る」意思さえないのである(「首相、TPP「個別品目交渉せず」日米首脳会談時に」『日本経済新聞com2013/2/19 20:34 )。 

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TPP選挙公約を矮小化する安倍政権~交渉参加へのハードルを下げるため?~

一つ前の記事に寄せられたコメント
 一つ前に書いた記事(「『例外付き関税撤廃』なら交渉参加してよいのか」)に関して、さっそくある方からコメントが寄せられた。そこでは、林芳正農相が、「関税の撤廃に例外が設けられるかどうかに加え、食の安全安心に関する基準や、国民皆保険制度を守ることなど、自民党が先の衆議院選挙で政権公約に掲げたすべての点を確認できなければ、TPP交渉に参加するのは難しいという認識を示した」と伝えたNHKニュース(212日)を紹介していただいた。ライター名に「誤報に騙されているよ」と記載されていることから、私が誤報にはまっていると批判されたように思えた。しかし、この点は私が強調したかったことと深く関わるので、補足の記事を書くことにしたい。

選挙公約を矮小化する安倍政権、それを質さない愚鈍なメディア
 結論から先にいうと、「例外なき関税撤廃」なら、TPP交渉に参加しないというのが先の衆議院選における自民党の選挙公約だったと解説するのが実は重大な歪曲なのである。
 「日本を取り戻す」というタイトルがつけられた「自民党重点政策2012」(政策パンフレット)では、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します」というだけの文言が3回繰り返されている。そして、安倍首相も多くのメディアも、これだけが先の衆議院選での自民党のTPP関連の公約だったかのように語っている。
 しかし、この政策パンフレット(計14ページ)よりもはるかに詳しい、「J-ファイル2012 自民党」と題された総合政策集の中では、自民党としてのTPPに関する判断基準として次の6つが記されている。
 ①政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
 ②自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
 ③国民皆保険制度を守る。
 ④食の安全安心の基準を守る。
 ⑤国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
 ⑥政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

 この意味で、林農相の方が自民党の選挙公約を正確に語っており(自民党内でTPP交渉参加に反対する党外交・経済連携調査会も、②、③、④の公約も順守するよう求めている、)、「例外なき関税撤廃」なら交渉に参加しないというのが自民党の選挙公約だったと語るのは6項目中の2番目以下の公約を伏せる点で不正確であり、歪曲なのである。

交渉参加へのハードルを恣意的に下げるためなのか?
 げんに、政府は212日に、衆議院予算委員会の要請に応えて同委員会理事メンバーに「TPPの交渉参加に対する基本方針」と題するペーパーを提示したが、そこで記載されたのは「『聖域なき関税撤廃』」を前提にする限り、交渉には参加しない」という一文だけで(「毎日新聞」2013213日、230分配信)、上記の②以下の公約はすっぽり抜けていた。
 ところが、唯一のといってもよい交渉相手であるアメリカは、事前協議の段階ですでに日本側に対して、「すべての品目を自由化交渉の対象とする用意があるか」と迫り、「牛肉」「自動車」「保険」の3分野で日本市場の閉鎖性を批判してきたと伝えられている(「産経ニュース」201327日、2037分)。
 農業分野での「例外なき関税撤廃」などあり得ず、食糧の自給率向上を掲げた自民党の公約とも矛盾する。しかし、だからといって、非関税障壁に関する問題が二次的でよいわけがない。「上記3分野で一定の譲歩をする代わりに農林水産物の関税維持を求める」(「産経ニュース」201327日、2037分)というのが政府の内々の方針だとしたら、民主党政権に勝るとも劣らない重大な公約違反である。

 伊豆長岡の順天堂大病院に向かってタクシーで雪景色の天城越え(2013年1月15日)2013115
        最近、体が傾き出したウメ(2013.1.29)2013129

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「例外付き関税撤廃」なら交渉に参加してよいのか~国民皆保険を脅かすTPP~

 TPPは単なる貿易自由化協定ではない
 今月末の安倍首相の訪米を前にして、自民党内では、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加について「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対する」とした昨年の衆院選公約を堅持するよう求める意見が広がっている。こういうとTPP交渉参加に慎重な意見と思えるが、政府が、米側から関税撤廃の例外を認める言質を引き出せば、交渉参加に踏み切っても容認する余地を残している(20132131953分 読売新聞)点が重要だ。

 しかし、TPPは関税だけがテーマではなく、アメリカ流の「自由貿易」にとって障壁とみなされる加盟各国内の諸々の制度――農業・自動車・サービス・金融保険・投資・特許・知的財産権・医療といった広範囲な制度――の撤廃を目指す国際協定づくりである。
 また、日本とのTPP交渉に関してアメリカ政府が国内で行った意見募集の結果(20122月、外務省公表)をみると、産業界、労働界などから提出された115件の意見の大半は日本の交渉参加に肯定的だった。しかし、それは無条件でなく、「米国と同レベルの市場アクセスの確保を求める」(全米商工会議所)、「アプリオリの除外をすることのない包括的な合意へのコミット、合意済みの事項についてリオープンしないこと」(全米製造業協会)といった厳しい条件を付ける意見が見受けられた。また、玄葉外務大臣はTPPについて交渉に参加した後に離脱することはあり得るのかという質問に対し、それは論理的にはあり得るが、日本政府が離脱を決めるとなれば、それによって失われる国益、信頼も考えなければならないと答弁し、途中での離脱は容易でないとの認識を示唆している(20111025日、衆議院安全保障委員会)。

 以下、この稿では、TPPが公的医療制度にどのように改変を迫るものかを、これまでにアメリカが豪州・韓国と締結した自由貿易協定(FTA)ならびにEUとインドのFTA交渉の過程で生じた問題を先行例として、検討しておきたい。
 (本稿は、厚生文化連の機関誌『文化連情報』20131月号に掲載した拙稿「TPPは薬価制度をどう変えるか」~連載 医薬品業界の経営動向 最終回~に加筆修正したものである。)


薬価制度を脅かすTPP
 20051月に成立した米豪FTAについて、オーストリアのマーク・ベイル貿易大臣はオーストリア国内の高品質で求めやすい医薬品へのアクセスを国民に保証する医療給付制度(PBS)、特に医薬品の価格・リスト設定は従来のまま維持されたと語ったが、この言葉を信じる同国民は多くない。ホ-カ-・ブリトン社の世論調査では米豪FTAに対する支持率は交渉が開始された2003年はじめは65%だったのが、交渉が妥結した20042月には35%に低下した。
 オーストラリアでは政府の医薬品有支持計画(PBS)の下で、政府からの補助金によって医薬品の価格は米国の3分の1 から10 分の1 の水準に抑えられてきた。また、新薬の価格は、代替療法よりも高価な場合は、それが代替療法を上回る有効性を証明されない限り、新薬として収載しない参照価格制度が採用されてきた(ジェーン・ケルシー編著/環太平洋経済問題研究会他訳『異常な契約――TPPの仮面を剥ぐ――』2011年、農山漁村文化協会、181ページ)。また、製薬会社が、特許切れ間近の医薬品の成分等を部分的に改善して特許期間の延長と価格の引き上げを図るエバーグリーニングは法律で禁止されていた。しかし、国際的にももっともすぐれていると自負していたオーストラリアの薬価制度をアメリカは自国の製薬業界(PhRMA:米国研究製薬工業部会)の販路・権益拡大のため、2つの面から切りやり玉に挙げた。

 一つは、参照価格制に対する攻撃である。USTR(米国通商代表部)はこの制度にもとづく「不当に低い」薬価によって、企業が知的財産権の恩恵を十分に受けることを妨げられていると非難し、参照価格制度を骨抜きにしてしまった。すなわち医薬品を新たに代替性のない革新的な医薬品からなる「F1」と、ほとんどがジェネリック薬である「F2」に分類した上で、従来の価格規制はF2にのみ有効とし、F1は価格規制の対象外としたのである。
 その上で、米豪FTAにもとづいて設置されることになった医薬品作業部会は、厳格な知的財産権の保護を通じて革新的医薬品の価値を尊重する必要性を優先するという原則を採用した。その結果、参照価格制度は存続はしたものの、その機能は大きく毀損され、薬価を押し上げることになった。

 もう一つは、反エバーグリーニングの事実上の放任である。それまで、オーストラリアでは効能に無関係な、わずかな成分の変換だけで特許の保護・延長を図ることを認めない反エバーグリーニング法があった。これによって、特許薬の高止まりを阻止し、公的な薬価規制を実効あるものにしてきたのである。しかし、アメリカはこの反エバーグリーニング法は特許付与の原則となる新規性、革新性の解釈を各国の判断に委ねる方式に異議を唱え、薬効の新規性がなくても、既存品に新たな利用方法を付与するだけでも特許の対象とする原則を標準化するよう迫り、これに反する制度を特許権侵害とみなした。目下、オーストラリアでは反エバーグリーニング法は活きているが、アメリカの製薬企業はこうした原則が特許権侵害に当たるとみなせば、「投資家対国家間の紛争解決条項」(通称:ISD条項)を使って、協定締約国政府を相手取って訴訟を起こすこともできる仕組みになっている。これがTPPにも持ち込まれると、TPPは安価なジェネリック医薬品の普及を抑止し、先発薬の薬価の高止まりを誘導して医薬品市場を製薬資本のリゾート地にしてしまうだろう。

ジェネリック医薬品の普及に逆行する知財保護要求
 ジェネリック医薬品の普及に対するFTATPPの脅威は可能性の問題ではなく、現実の問題となって現れている。この点をジェネリック医薬品の世界的供給源であるインドの例を挙げて確かめておきたい。
 世界の紛争地や、感染症がまん延する地域、自然災害の被災地などで緊急医療援助活動を行っている「国境なき医師団」によると、現在、途上国に供給されるHIV治療剤の約80%、小児患者の治療に用いられている薬の約92%がジェネリック薬である。なぜ、これほどジェネリック薬が普及したかというと、HIV治療薬の1人当りの年間費用は2000年には1万ドル(約84万円)だったのが、2011年には約60ドル(約5,000円)まで下がった。そして、このジェネリック薬、例えばHIV治療用のジェネリック薬の約50%、抗生薬、抗がん薬、糖尿薬など世界の複製薬の20%を供給しているのがインドである。
 こうして世界各地の貧しい患者の命綱ともなっている「世界の薬局」インドのジェネリック薬を守れという運動が起こっている。それは、インドのジェネリック薬が、一方ではEUとのFTA交渉を通じて、もう一方では多国籍製薬資本・ノバルティスによる特許権訴訟によって脅威にさらされているからである。

 まず、EUはインドとのFTAに含まれる「海外投資に関する条項」を盾に、欧州企業は自社の利益や投資がインドの安価なジェネリック薬普及政策によって損害を被る恐れがあると判断した場合は、インド政府を提訴することが可能になっている。現に、インドでは2006年にノバルティス社が同社製の抗がん剤メシル酸イマチニブ(商品名:グリベック。この連載の第1回で取り上げた分子標的薬の一種)の特許申請が模倣薬だと判定され、申請を却下されたのを不服としてインド政府を相手取った訴訟を起こしている。ノバルティスは韓国でも2001年にグリベックを上市する際、特許権を盾に1か月に300万ウォン以上の価格を要求した。韓国内の白血病患者はこれに猛然と反対して「薬価の引き下げ」、「保険の適用拡大」を要求し、1年半以上戦ったが、韓国政府福祉部はノバルティスのほぼ要求通り、1か月に270万ウォン以上の価格を決定した。
 これについて、国境なき医師団の必須医薬品キャンペーン政策責任者であるミシェル・チャイルズは次のように語っている (http://www.msf.or.jp/news/2011/04/5170.php) 。

 「インドの裁判所は企業の利益よりも、公衆衛生の保護と医薬品の普及を優先するよう規定しています。しかし、このような規定は、企業が独自に代理機関を通じてインド政府を提訴した場合には、適用されることは難しいでしょう。私たちは、FTAの海外投資に関する条項において、知的所有権の保護を要求することを止めるよう、EUに求めています。」

医療を受ける国民の権利を脅かす多国籍製薬資本
 
 野田前首相はISD条項の危険性を質した国会質問に対し、この条項は相方向的なものであって、日本だけの脅威ではないと繰り返し答弁した。しかし、これはFTAなりTPPなりの内実をみない空疎な形式論である。その証拠に日本の製薬業界はISD条項に何ら異議を唱えていない。それもそのはずで、わが国の薬価を実勢価格以下に抑えている制度――外国平均価格調整制度や市場再算定制度など――がFTAなりTPPなりの締結によって撤廃されれば、アメリカの製薬企業ばかりか日本の製薬企業にとっても願ってもない「朗報」だからで、いまさらアメリカ政府を相手どって訴訟を起こす動機はどこにもないからである。
 現に、自民党は2012年総選挙公約集の中で、次のような医療政策を掲げている。

「製薬産業がイノベーションを通じて付加価値のある薬剤の創造力を強化し、国民医療へさらに貢献していくため、研究開発減税の拡充、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の恒久化を図るとともに、基礎的医薬品の安定供給に資する措置を行います。また、先発品と後発品の役割が適正に反映された市場実勢価格主義に基づく透明性の高い薬価制度を堅持します。さらに、医療の効率化や国民の健康維持の観点から、後発品の普及を図るとともにセルフメディケーションを推進します。」

 新薬加算制度の恒久化といい、先発品と後発品のセグメンテーションといい、国民の医療へのアクセスをさらに狭める一方で、わが国の薬価制度と医薬品市場を多国籍製薬資本の求めを先取りするかのように、改変する政策と見て取れる。
 しかし、こうした医療政策は国民の医療を受ける権利を犠牲にして、国内外の製薬企業に今以上の高利益を保証する仕組みに他ならない。これは国境なき医師団の次のような指摘にもはっきり示されている(前掲サイトより)。

 「医療分野での知的財産権の保護は、薬価を高止まりさせて治療の機会を狭めている。その結果、購買力が弱い途上国の人びとが苦しんでいる。アメリカは、途上国での知的財産権の規制を厳格化・高度化して既得権益を守り、開発費を薬価に反映させる誤ったビジネスモデルを固持している。途上国の事情は考慮されていない。」

 さいわい、インドはグリベックの特許はその後も認められず、ジェネリック薬のビーナットは20分の1の価格で販売されているという。
 韓国でも、前記のように、2001年にグリベックが承認される際、「白血病患者は生き続けたい、ノバルティスは薬価を引き下げろ」という患者たちの行動の成果もあって、グリベックは、通常、自己負担5割のところ白血病患者だけが1割に減額され、その1割はノバルティス社が出資する財団からの補助で賄われることになったという。もっとも、それは、ノバルティス社がたった1割引(1ヶ月あたりの要求額300万ウォンから270万ウォンへの値下げ)で、韓国でグリベックを上市できた上でのことであるが(以上、「〔診察室〕抗がん剤グリベックの問題点」『群馬保険医新聞』20115月号参照)。

 以上見てきたように、TPPは国境を超えて、各国国民の医療を受ける権利を切り刻むとともに、薬価を高値に誘導して医療財政をさらに窮状に追い込む危険な医療政策に道を開くものである。こうしたTPPの実態を知るなら、農業など特定の分野の関税までも例外なく撤廃されるのかどうかだけが交渉参加の分岐点かのように議論の土俵を誘導する論調に惑わされてはならないのである。

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