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TPP問題:関税撤廃の「聖域探り」に焦点を当てるメディアの愚かさ(1)

TPP報道:二重の意味で洞察力の欠如
 22日に予定されている安倍首相とオバマ大統領との首脳会談で俎上に上るTPP交渉参加問題をめぐって、多くのメディアは、安倍首相が「例外なき関税撤廃」という交渉原則に「聖域」ありという感触をオバマ大統領から引き出せるかどうかが焦点であるかのように報道している。今国会の質疑でもこの点だけが取り上げられたかのような報道をしている。

TPP「聖域」あれば交渉参加 首相が3月表明も(2013/2/9 2:01 情報元

日本経済新聞 電子版)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0804O_Y3A200C1MM8000/?dg=1


TPP、例外設けられるかどうかだ首相(2013/2/19/13:26 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130219-OYT1T00533.htm?from=ylist

 
しかし、こうした話題設定には二重の意味で、重大な危うさが潜んでいる。一つは、関税撤廃の「例外探り」に焦点を当てる論調でよいのかということであり、もう一つは、TPPを貿易関税問題に限定する論調でよいのかという点である。この記事では前者を取り上げ、2つ目の論点は次の記事で論じたい。

「感触で」「聖域」を引き出せるかどうかに焦点を当てる愚かさ
 一つは、TPPへの参加交渉にあって焦点は関税撤廃問題だけであるかのようにみなしたうえで、その関税撤廃問題について、安倍首相がオバマ大統領から、「撤廃には例外(聖域)がある」との「感触」を引き出せるかどうかが最大の焦点であるかのように論点を定める点である。
 テレビ朝日は去る28日のニュースで、安倍首相が日米首脳会談で全ての品目で関税を撤廃する必要があるか、直接確認する考えを示したと伝えた上で、確認の意味について安倍氏は、「自分の感触が「極めて重要」」と語ったと報道した。つまり、例外があるかどうかの確認は安倍首相の「感触」次第というのである。

「TPP例外ありか 日米首脳会談で確認」(テレビ朝日2012/2/8
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/mplus/news/post_34991


 
他のメディアも、こうした「感触探り」に焦点を当てている。

アベノミクスのアキレス腱、TPPは「例外」が焦点 自民反対派が会合(産経ニュース 2013/2/7 20:37http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130207/fnc13020720380019-n1.htm

TPP:判断へ、正念場の訪米 首相「例外」引き出せるか(毎日新聞 2013/2/18 東京朝刊)

http://mainichi.jp/select/news/20130218ddm001020091000c.html

独立国としてあまりに卑屈な外交姿勢
 しかし、国家・社会の仕組みを揺るがすほどの(詳しくはこの連載記事の(3)で論じる)TPP交渉に日本が参加するのかどうかの判断材料を得るための日米首脳会談で、オバマ大統領の「感触」にじっと聞き耳を立てるとはどういうことなのか? 独立国の首相として余りに卑屈な態度ではないか?「わが国が重要とみなす品目の関税撤廃が前提条件なのか、そうだとしたら、わが国は交渉に参加できない」と、なぜ堂々と言えないのか?
 たとえば、次の記事にあるように、オバマ大統領から、「日本の個別事情に配慮する」という発言を引き出したら、それを以て「例外品目を作れるとの感触を得た」とみなし、交渉参加の前提条件をクリアしたことになるのか? そんな事前の台本が前もって事務方で準備されていないか? 後で言った、言わない、「マスコミの報道は誤報」などという釈明で幕引きを図り、「国際公約」を盾に国内での議論を抑え込む――何度も繰り返されたこんな愚行で重大問題が強行されたのではたまらない。

「参院予算委:TPP『感触』解釈で賛否」(毎日新聞2013/2/19 23:15
http://mainichi.jp/select/news/20130220k0000m010116000c.html

 そもそもTPPは例外なき関税撤廃を原点にした包括的「自由」貿易協定であり、全品目を交渉のテーブルに乗せることを交渉の前提条件にしている。「日本もまずは交渉に参加して国益に沿わないと判断すれば参加を取りやめればよい」という意見が少なくない。しかし、日本とのTPP交渉に関してアメリカ政府が国内で行った意見募集の結果(20122月、外務省公表)をみると、産業界、労働界などから提出された115件の意見の大半は日本の交渉参加に肯定的だった。しかし、それは無条件でなく、「米国と同レベルの市場アクセスの確保を求める」(全米商工会議所)、「アプリオリの除外をすることのない包括的な合意へのコミット、合意済みの事項についてリオープンしないこと」(全米製造業協会)といった厳しい条件を付けたものだった。
 また、かりに「例外」を求めるとしても何を「聖域」(重要品目)」にするのか、重要品目をすべて「例外扱い」にできるのかについて全く不明であり、安倍首相もその点について「感触を探る」意思さえないのである(「首相、TPP「個別品目交渉せず」日米首脳会談時に」『日本経済新聞com2013/2/19 20:34 )。 

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