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非関税分野の障壁撤廃の危険性を伝えないまやかし~TPP参加論の5つのまやかし(第2回)~

「例外」が認められたという偽りの広報への大政翼賛
 先日夜7時のNHKニュースは、高値を付けた株価のボードを映しながら、TPP参加への弾みがつき、日銀総裁も内定し、アベノミックスを歓迎しつつ、景気の上向きを期待する「街の声」を拾っていた。昨夜9時のNHKニュースは、岸田外相を生出演させて安倍訪米の成果を得々と語らせていた。
 消費税増税に続き、TPP参加の後押しをする大手メディアの論調を見て、経済問題からメディアの大政翼賛体制が急速に進んでいると感じる。
 歴史が示すように、自省力の乏しいメディアはひとたび、そういう危険な道に進み始めると、立ち止り、後もどりするのは至難のことである。むしろ、今後、大政翼賛があらゆる分野に広がっていく恐れがある。
 しかし、政治に対しても、メディアの世論誘導の動きにも、国民の自覚と懐疑心は非常に乏しい。

 TPPを調べて行くと、果てしなく問題が広がっていくが、遠からず、アメリカから、日本語が「非関税障壁」とみなされ、公用語を英語に統一するよう求められるのではないか、というネット上での危惧は杞憂とは思えない。自由な通商の障害になっているとアメリカがみなしたら、障壁撤廃の要求はなんでもありだからだ。

TPPに関するメディアの報道の2つのまやかし
一つは、TPPを今もって関税問題に矮小化している点である。そこから、訪米直前の国会で安倍首相が野党の質問に答え、選挙の時の6つの公約はセットと言っていたのをすっかり忘れたことにして、「例外」が認められたという政府広報の拡散にのめり込んでいる。安倍政権、自民党の「公約隠し」の共犯者といって過言でない。
 もう一つは、今もって、TPPをめぐる日本の利害を農業はマイナス、輸出産業・消費者はプラスという図式で解説している点である。

「TPP・参加のメリットとデメリットは」(NHKニュース223日:1621分)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130223/k10015731221000.html
 

TPPが農業にとって大打撃であることは明らかであるが、輸出産業、たとえば、自動車産業にとってメリットか、大変疑問である。TPPに参加しても、アメリカが輸入乗用車に課す関税は、上のニュースにあるように2.5%に過ぎない。それも5年間でだから、年あたり、0.5%。これが撤廃されたからといって(オバマ大統領はこれさえ撤廃しないと言っているが)どれほど輸出の伸びにつながるのか? そもそも、海外生産比率が高い自動車産業では、関税撤廃のメリットは乏しい。

佐藤ゆかり議員が質したISD条項の危険な役割
 
 消費者にとってメリットかどうかを判断するには、非関税分野―――医療、金融、保険、労働、食品表示などーーに広げた検討が必要である。
 20111111日の参議院予算委員会で佐藤ゆかり議員(自民党)はISD条項の広範囲に及ぶ危険性を次のように質している。
 1つ目は、医療の分野での薬価の値上がりを誘発するおそれ、医療方法まで国内の方法について障壁とみなされ、撤廃・緩和を求められる恐れを質している。

 「例えば医療や医薬品、もう多くのお話出ております。社会保障分野でさえ、医薬品や医療のやり方に特許を付すことによって社会保障分野でのサービス提供すら社会政策として自由にできなくなるおそれがある、これがTPPの知財条項であります。薬価上昇のおそれ、例えばアメリカの製薬会社が特許を取れば、日本の国産品のジェネリック製品の薬品の生産が滞ってくる。そうすると、中には高価な薬価で薬を買えない患者さんが出てくるわけですね。抗がん剤やC型肝炎治療薬などは薬価が上がって、ジェネリック医薬品が入らないと薬を買えない人たちが出てくる。
 そして、もう一つ非常に驚く点は、医療の治療方法の特許なわけであります。日本の場合には、大学病院があって医局があって、それぞれ病院、医局によって患者さんを治療する方法というのは違う場合があるんです。ところが、このTPPの知財条項の米国案によりますと、それぞれの患者さんの治療方法というトータルな方法のパッケージについて特許を付すると、そういう条項が付いているわけであります。これは今交渉中のニュージーランドで極めて激論になっているテーマでありまして、こうしたことで人命が救えるのかどうかと、そういう問題になるわけであります。こうした知財条項を含むTPPについて、ニュージーランドで激論になっている例も踏まえて、小宮山厚労大臣、いかがお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。」

 次は投資の分野である。

 「次にもう一つ、この紛争解決手段、ISD条項ですけれども、これが極めて不評であります。配付資料を御覧いただきますと、まず配付資料の一ページ目になりますが、自由貿易協定の名称とISD条項の有無というのがありまして、WTOには投資協定におけるISD条項、すなわち一企業、投資家がその参入先の相手国を、国を相手取って訴訟できるという条項でありまして、WTOにこういう条項は存在しておりません。そして、米豪、オーストラリアとのEPAでは、オーストラリアがこれに断固として反対をして削除をした経緯があります。そして、米韓FTAではISD条項が入ってしまいましたが、韓国側がこれで激論で今もめていて、議会で承認できない状況になっていると、そういうことであります。
 日本の各国のバイのEPAはこれはあるんですが、ISD条項はありますけれども、実際に発動事例がないから大丈夫だろうと、そういう答弁を役所はするわけでありますが、実際これは相手国が違うんですね。今度アメリカが相手になってくれば、当然我々が見なければいけないのは、かつてNAFTAで何が起きたかと、こういうことを事例にしながら我々は戦略を練っていかなければいけない、そういうことであります。
 そこで、実際にNAFTAの事例を御覧いただきます。資料のページ二でありまして、NAFTAにおいてこのISD条項で一企業、投資家が国を訴えた紛争解決事例、一番最後の行で、サンベルトウオーター対カナダ、一九九九年の事例を御覧いただきたいと思います。これは、カリフォルニア州の企業、サンベルトウオーターがカナダ政府をNAFTA条約の第十一条に基づいて提訴をした案件でありまして、この損害賠償請求の金額は当時百五億ドルという非常に膨大なものであります。
 一体これは何がどうしたかといいますと、実は、カナダの州政府でありますブリティッシュ・コロンビア州政府がこのサンベルトウオーターと契約を結んで、数億万ガロンの水の輸出の契約をしたと。それをブリティッシュ・コロンビア州政府があるとき停止をしたために、利益が損なわれたということでサンベルトウオーターがカナダ政府を訴え、賠償請求として百五億ドルを請求したという案件であります。このほかにもたくさんこういう訴訟が実際にISD条項で起きているんですね。
 それで、やはりこういう水のビジネスというのは、我が国日本も既に海外に水ビジネスを推進しています。そして、国内的には、海外の外国企業が日本の北海道や長野県の水資源の近隣の土地を買収に入ってきているという問題があるわけでありますよ。
 そういう中で、NAFTAで実際に水ビジネスで訴訟が起きているという事例があるんですね。これはいかがお考えかということを農水大臣、鹿野大臣にお伺いしたいと思います。水の安全保障では、北海道や長野県で土地買収が行われております。そういう絡みから、このISD条項がもしTPPで入るとすると、我が国としてどうやって守ることができるのか。農水大臣の御見解をお願いします。」

 3つ目は、公共調達の分野。

 「そうすると、この水ビジネスの例にもありますように、これから地方自治体が我が国日本では、まあ復興予算も付けます、企業立地もこれからやっていかなければいけない、円高で空洞化対策もやっていかなければいけない、いろいろ地方自治体が受けた予算や税制を駆使して企業誘致をしていかなければいけないんですね。
 そのときに、様々な安全性の角度から規制強化をするような自治体もあれば、あるいは企業誘致で様々な行政で企業、外国企業も引っ張ってくる事例というのも出てくるわけでありますが、その中で特に空洞化対策でいえば、やはり政府発注、公共事業の発注などにおいても地元の業者を優先的に発注するような事例というのはどうしても出てくると思うんですね。
 そうした中で、このISD条項というのがかかわってきますと、当然ながら、外国企業は、この地元優先の事業、政府調達が不公平じゃないか、我々の利益が損なわれたといって、まず日本の国が訴えられますよ。そして、こういう地方自治体でやる様々な地方行政措置について、国が一つ一つそれをモニターしてリスク管理することはできないんです。でも、実行するのは地方自治体ですよ。でも、訴訟を受けるリスク管理をするのは国なんです。これをどうマネージをしていくとお考えか、総務大臣、お答えいただきたいと思います。」

もっとストレートに声を
 ところが、こうした非関税分野でのTPPの危険な実態をメディアはほとんど伝えていない。結局、農業を保護するのか、消費者利益を図るのかという、国民を分断させる図式に行き着くのである。貿易自体でさしてメリットがあると思えない日本の経済界がTPP推進派になっているのは、障壁(規制)に対する海外からの圧力に乗じて、国内の規制を緩和撤廃させる機会にしたいからではないか。

 日本人はもっとストレートに声を挙げるべきではないか。政治家に対して、亡国の財界首脳に対して、大政翼賛の道へのめり込むメディアに対して。

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