全国の大学教員有志:安倍首相宛てにTPP参加交渉からの即時脱退を求める運動を開始
6割以上がTPP交渉への参加を支持したというが
3月15日に安倍首相はTPP交渉への参加を表明した。これについて、全国紙はこぞって「交渉参加」の決断を迫り、参加の意思表明を「歓迎」する社説を掲げた。また、全国紙が行ったどの世論調査でも回答者の6~7割が交渉参加を支持すると答えている。その一方で、全国道府県では「反対」が19、「慎重に」が25、で賛成はゼロだった(「産経ニュース」3月15日、23:06)。また、大半の地方紙も交渉参加に鋭い疑問を投げかけている。なぜ、こういう「ねじれ」が起こるのかを研究することは「世論はどう作られるか」を考える上で重要である。
その際に注目したいのは、地方紙の社説がこぞって、TPPへの参加が地域社会・経済に及ぼす深刻な打撃をリアルに指摘しながら、政府のTPP交渉参加に危惧を表明している。これに対して、全国紙の社説が通商の「世界標準」づくりに日本が主体的に関わるべきだ(『朝日新聞』2013年2月15日社説)とか、交渉参加の「決断が遅れるほどTPPの貿易・投資ルールに日本の意向を反映しにくくなる」(『毎日新聞』2013年2月15日社説)、「自由貿易と投資を拡大し、アジアの活力を取り込むことが、日本の経済成長に欠かせない。〔TPP交渉への参加は〕そのための大きな一歩となるだろう」(『読売新聞』2013年3月16日)といったように、初めに「交渉参加ありき」の跡付けの論調になっているのが特徴といえる。
また、全国紙の世論調査の結果を立ち入って見てみると、日本の農業や健康保険制度を守ると言う発言通りに日本が交渉を進めることができるかと尋ねると、「できる」が39%であったのに対し、「できない」が40%と意見は拮抗している。また、安倍首相の交渉参加表明を「評価する」層でも、31%は「発言通りに交渉できない」と見ている(『朝日新聞』デジタル、2013年3月17日、22時35分)
また、「期待と不安のどちらが大きいか」という質問に、「不安」との回答が48.4%で、「期待」の42%を上回った。また、「政府が国民に十分メリット、デメリットの情報を提供していない」との答えが79.9%、「日本の農業にとって悪い影響の方が大きい」が59.9%、「国民皆保険に悪影響が出る」42.5%、と、TPP参加への懸念も根強いことが示されている(『産経ニュース』2013年3月18日、14:16)
こうした世論の動向を見ると、多くの国民はTPP交渉への日本の参加の是非を判断する情報をいまだ得ていないことが窺える。それだけに、前記のようなTPP交渉への参加に関する支持率が独り歩きすることは好ましくないといえる。
全国の様々な分野の大学教員が共同で
こうした世論、民意の動向を見て、全国各地で、様々な分野の研究に携わる大学教員の有志がそれぞれの研究で培った知見に基づいて、TPPがはらむ危険な内容を国民に伝えるとともに、政府に対してTPP参加交渉からの脱退を求める要望書を提出しようということになった。私もこの運動の発起者の一人として呼びかけ人に加わっている。
呼びかけ人(2013年3月31日現在)の名簿を添えた要望書の全文は次のとおりである。
内閣総理大臣 安倍晋三氏宛て「TPP参加交渉からの即時脱退を求める要望書」(全国大学教員有志)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/TPP_yobosho20130331.pdf
呼びかけ人は3月28日から、全国の大学教員・名誉教授・元教員の方々に向けて、この要望書への賛同を呼びかける運動を始めた。以下は、その呼びかけ文である。私も呼びかけ人の一人として、多くの大学教員の方々から賛同が寄せられることを願っている。
なお、安倍首相宛てにこの要望書を提出した後、呼びかけ人(今のところ6名)が出席して、つぎのとおり、4月10日に記者会見を行うことが決まっている。
4月10日 10時~12時
参議院議員会館 B106 会議室(地下1階)
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全国の大学教員・名誉教授・元教員の皆様
私たちは先日、日本政府が交渉に参加することを表明したTPPの危険な本質を多くの国民に伝えるとともに、この4月上旬に、安倍首相と日本政府に対し、直ちに交渉から脱退することを求める添付のような申し入れをすることにしました。
つきましては、全国の大学教員の皆さまに賛同を呼びかけ、賛同者名簿を添えて安倍首相と政府に申し入れをするとともに、記者会見でこの申し入れを広く国民にアピールしたいと考えています。
この申し入れにご賛同いただける方は下記にご記入の上、4月8日(月)までに、
tpp2013@mbr.nifty.com
へ送信くださるよう、お願いいたします。
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私は安倍首相宛て「TPP参加交渉からの即時脱退を求める要望書」に賛同します。
お名前
所属と専攻(○○大学教授・△△学専攻)
メール・アドレス
メッセージ(100字以内でお願いします。)
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注:①お名前・所属はそのまま公表させていただきます。
②メッセージも原文のまま公表させていただく場合がありますので、ご了承ください。
③このメールをお知り合いの大学教員・名誉教授・元教員に拡散していただけましたら幸いです。
以上
呼びかけ人(2013年3月31日現在)
磯田 宏(九州大学准教授/農業政策論・アメリカ農業論)
伊藤 誠(東京大学名誉教授/理論経済学)
大西 広(慶応義塾大学教授/理論経済学)
岡田知弘(京都大学教授/地域経済学)
金子 勝(慶応義塾大学教授/財政学・地方財政論)
志水紀代子(追手門学院大学名誉教授/哲学)
白藤博行(専修大学法学部教授・行政法学)
鈴木宣弘(東京大学教授/農業国際)
醍醐 聰(東京大学名誉教授/財務会計論)
萩原伸次郎(横浜国立大学教授/アメリカ経済論)
日野秀逸(東北大学名誉教授/福祉経済論・医療政策論)
渡辺 治(一橋大学名誉教授/政治学・憲法学)
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