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著作権強化で「青空文庫」がピンチに~私たちの身辺に及ぶTPP交渉の行方

2013713
著作権強化で「青空文庫」がピンチに
 ~私たちの身辺に及ぶTPP交渉の行方~
 
 以下は、2013712日付の「全国農業新聞」の<農声>欄に掲載された筆者の小論である。同紙の編集部の了解を得たので、このブログに転載する。

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           売国条約から即時撤退を               
                        醍醐 聰

  この7月末マレーシアで開かれるTPP参加国協議に日本も加わることになった。その参加国協議で議論の焦点になっているのは知的財産権の分野だと言われている。こういうと多くの国民には他人事のように聞こえるが、実は私たちの身辺にも及ぶ問題が潜んでいる。その一つはインターネットの電子図書館「青空文庫」である。ご存じの方も多いと思うが、50年の著作権保護期間が過ぎた名作の原文をボランティアが入力し、インターネット上の電子図書館に載せて多くの国民が無料で閲覧できるようにしている市民版文庫である。今年の1月1日には50年が経過した柳田国男や吉川英治、室生犀星など著名な作家の作品を一斉に公開した。
 ところが、アメリカはTPP協議の場で著作権の強化を唱え、保護期間を自国の国内法にあわせて70年とするよう主張している。かりに、この要求が通ると青空文庫による名作の公開は20年遅れることになる。同様に、全国各地の公共図書館などが取り組んでいる名作上映会や名作鑑賞会でも上映できるまでさらに20年待たなければならない作品が続出することになる。
 さらに、医薬品の特許の分野でアメリカは先発薬への投資を保護するためとして、現状の薬価を高止まりさせる新薬創出等加算制度(現在試行中)を恒久化させることをわが国に要求している。この要求を受け入れると、医療保険財政を改善する決め手として安い後発薬の普及率の向上を図ろうとしているわが国の医療政策はアメリカの横やりで行き詰まることになる。と同時に、高い薬価を負担できない経済的弱者の間で受診抑制が広がり、健康と命の格差がさらに拡大する一方、海外の富裕層をターゲットにした高額の医療ツーリズムが広がり、医療の営利事業化が進行することになる。
 このように考えると、TPPは農業の問題といって傍観しているわけにはいかない。わが国の国民益を投げ捨て、アメリカ企業や多国籍企業に営利の機会を広げる売国的なTPP交渉から即時脱退することこそ日本の国民益を守る唯一の道なのである。

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