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JAL客室乗務員解雇撤回裁判: 「管財人が右と言ったら左と言わない」裁判官でよいのか(上)

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判決を前に

 昨日は整理解雇撤回を求めるJAL客室乗務員の控訴審判決日だった。1320分ころ、東京高裁に到着すると詰めかけた支援団体の旗がなびき、開廷前の宣伝行動が始まろうとしていた。
 初夏の陽ざしがそそぐ高裁前、客乗原告団の表情は明るく、ともに裁判を進めてきたパイロット原告団が勢ぞろいする中、トランペットの演奏で宣伝行動が始まった。急きょ、私も宣伝カーに上がってひとことスピーチをと頼まれ、「利益あってのJAL再生という稲盛路線ではなく、空の安全と働く者の尊厳を携えるJAL再生のために勝訴を願い、判決を見守りたい」と訴えた。
 1420分頃から始まった傍聴券の抽選には定員40名に対し約380名が並んだ。あいにく私は外れたが原告団の計らいで101号法廷に入ることができた。
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 控訴棄却を告げ、そそくさと席を立った裁判官
 予定どおり、15時開廷。2分間のカメラ取りの後、東京高裁第5民事部の大竹たかし裁判長は、「本件控訴はいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする」という判決主文を読み上げた。その後、「控訴代理人(弁護団)から判決の要旨を読み上げてほしいという要望があったので」と断って、会社更生手続き下の整理解雇であっても解雇の正当性を判断するための4要件は適用される、会社の存続のために不可欠な融資を得るために必要不可欠な解雇であったかどうかなど、「判断の枠組み」を読み上げた後、「要旨を読み上げると長くなるので、のちほど渡す判決全文を読んでほしい」と言い終わるや立ち上がって後方のドアを開き、そそくさと退室した。
 法廷は一緒、静まりかえったが、思い直したかのように傍聴席からは、裁判官の背中に向かって抗議の声が飛んだ。この間、わずか5分足らずの出来事だった。

 350人が詰めかけた報告集会
 閉廷後、高裁前でしばらく抗議の宣伝行動。その後、虎の門スクエアに移動して判決報告集会が行われた。私が着いた時にはもう満席。通路に座り込む人もいた。弁護団が判決文を手に入れ、検討した後、記者会見を行った。それを待つ間、報告集会では傍聴者の感想が紹介された。
 待つこと約30分、記者会見を終えた原告代表と弁護士が会場に着き、弁護団から判決要旨の説明がされた。それによると、今日の東京高裁判決は東京地裁の1審判決よりさらに悪質、更生計画絶対論、管財人善玉論とのこと。
 弁護団の説明を参考にして、私も発言させてもらった。また、集会の途中で近くに着席しておられた弁護士から判決全文のコピーをもらったので、それを素読してもう一度、私が東京高裁に提出した意見書に関わる判決の箇所についてコメントをした上で、「今日の判決は『管財人が右と言ったら裁判官は左と言わない』と宣言したに等しい」と発言した。

集会の最後に客室乗務員原告団長・内田妙子さんのあいさつと決意表明があった。「このままでは引き下がれない、記者会見の場で最高裁へ上告すると表明した」とのこと。「これ以上、何を立証せよというのか」という内田さんの怒りを押し殺した言葉には、私も胸を締め付けられる思いがした。

 84名の解雇の傍らで稼働時間引き上げ、1年余後に650名を中途採用とは

帰宅して判決全文を精読すると、1審地裁判決との対比で高裁判決には次のような特徴があることがわかった。それは裁判の大きな争点の一つになっていた、「整理解雇当時、会社更生計画で定められた人員数4120名に達していたのかどうか」をめぐる立証の問題である。
 控訴人は独自の調査に基づき、整理解雇当時、4120名の目標数を下回る4042名になっていたから、本件解雇は更生計画に照らしても必要ないものだったと主張した。その根拠は、整理解雇が通告された2010年大みそかの翌年20111月~3月に一般退職等で218名だけ在籍者数が減少することを会社は知っていたはずだというもの。また、更生計画上の人員削減目標の到達期限だった20113月末時点で目標の達成状況を把握したなら、解雇をしなくても一般退職(自然減)で目標が達成された事実は歴然としたはずだからである。
 しかも、JAL84名の客室乗務員を整理解雇する一方で、翌2011年後からは1人当たりの稼働時間を約5時間増やすことで人手不足を乗り切ろうとした。2012年度にはさらに5時間、稼働時間を引き上げたが、それでも人手不足は足りず、解雇からわずか1年余りで650名もの中途採用を行ったのである(以上、2013912日、原告小栗純子さんの証言より)。
 こうした事実を直視すれば、84名の整理解雇が必要のないものであったこと、その1年余後に解雇者数の8倍もの中途採用を実施しながら、解雇者の復帰は一切、顧みられなかったところに、本件解雇の異常性、不条理を物語ると同時に、人員削減外の意図―――会社が辞めさせたい乗務員を会社更生に乗じて排除する意図―――があったことを窺わせるのである。

 
立証責任の主従を逆立ちさせた高裁判決
 ところが高裁判決は上記のような原告(控訴人)の立証から目をそらし、4042名と4120名の人員数の比較に多大の疑問があるという説明に多くの紙面を割いた。たとえば、原告が試算の途中で用いた平成23331日時点の人員計画数5,557名には管理職発令者数が含まれているのに対して、同年11日時点の在籍者数からは管理職発令者数が除かれているなどと指摘し、原告の試算の正確性に疑問を投げることに注力している。

 それなら、裁判官は、
 1.客室乗務員について、希望退職以外の一般退職者が何人であったか、その人数を差し引いたら整理解雇通告当時、客室乗務員の在籍者はいくらになっていたのかについて、正確な人数を知る立場にある会社になぜ質さないのか? 
 2. 整理解雇直後から在籍人員の稼働時間が引き上げられた(事実上の人手不足状態だった)という原告の主張についてなぜ事実の認否をしないのか?
 在籍人員数といい、各種事由による退職者数といい、それを正確に把握している(情報優位者)のは言うまでもなく会社である。この会社に対する立証責任を不問にして、情報劣位者の客室乗務員(原告)に過剰な立証責任を負わせる判決は不公正、不条理この上ないものである。

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