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国策放送へ急旋回するNHK ~ ニュース7と全国紙の報道比較調査を手掛かりに ~

2014623

 621日、大阪中之島の中央公会堂で開かれた「どうする!公共放送の危機」6.21関西集会に、リレートークの一人として参加した。
 リレートークは、池田恵理子さん(アクティブ・ミュージアム『女たちの戦争と平和資料館』館長/元NHKディレクタ―)、永田浩三さん(武蔵大学教授・元NHKチーフプロデュ―サー)、阪口徳雄さん(弁護士/「NHKを考える弁護士・研究者の会」共同代表)と私の4人。ラジオパーソナリティの小山乃理子さんが司会を務められた。

 6.21関西集会チラシ
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/20140621kansaishukai_chirasi.pdf

 
会場に入り、大阪市の中央公会堂の重厚な建物、内装に感銘したが、それについては後の記事で触れることにして、私の読み上げ原稿の前半部分(国策放送に急旋回しつつあるNHK――新聞報道との対比で――)を転載したい。参加者に配布してもらった資料は次の2種類。

 NHK国策放送への瀬戸際 ~NHKを視聴者の手に取り戻す運動のために~
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/20140621_hokoku_shiryo.pdf

 <資料1><資料2> 最近の報道機関のニュース報道の比較
 
          ――201456月を中心に――
 
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/20140621_shiryo1_2.pdf

        会場の模様(湯山哲守氏撮影・提供)
2014621_2_40
2014621_1_40_2
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 6.21
関西集会読み上げ原稿
(【 】内は時間の関係から読み上げを省略した部分)
                                                                                   醍醐 聰

NHK
:問われるその影響力
 
今日、私がお話しするテーマは、政府が右といったらNHKは左とは言えないというような人物がNHKの会長に選ばれないようにするにはどうしたらよいか、【護憲派は大バカ者と叫ぶ百田尚樹さんや、王様の首を切り、住民を虐殺する時の錦の御旗になったのが国民主権だと憲法の国民主権を蔑視する長谷川三千子さんのような人がNHKの経営委員に選ばれたりしない、】自主自立の公共放送の担い手にふさわしい人物がNHKの会長や経営委員に選ばれるよう制度をどのように改める必要があるのかを考えることです。
 しかし、そうした人事の問題も、NHKの放送番組が世論に及ぼす影響力を見極めながら議論する必要があると思います。【とりわけ、安倍政権が集団的自衛権、特定秘密保護法の制度整備、原発再稼働、医療・介護制度、法人税減税、労働時間制度など、広い分野で戦後民主主義の転覆させる政治を強行しようとしているこの時期に、世論に強大な影響力を持つNHKがこれらの問題をどのように伝えるのかは、憲法体制の擁護、充実を願う私たちにとって死活の問題です。】

 そこで、NHKの報道番組の視聴動向と視聴者の番組評価の状況を調べた資料を探しますと、NHK放送文化研究所が刊行している『放送研究と調査』という月刊誌の去年の2月号に「テレビ番組に対する意識・評価の現況」というレポートが掲載されていました。NHK総合と民放5局の定時番組を対象に、関東1都6県の1,550人にアンケート調査をした結果の解説です。
 これを見ますと、「視聴経験率」が一番高かったのは過去3年間どの年度もNHKの夜7時のニュース(ニュース7)で5758%と断トツです。NHKの「首都圏ニュース845」が3位、「ニュースウオッチ9」が8位、「クローズアップ現代」が10位と続いています。(以下、上記配布資料の中の<資料1><資料2>を参照しながら発言)

 では、実際に見た番組に関する視聴者の印象・評価はどうだったでしょうか? 「正確な情報を迅速に伝えている」という項目で最も高い評価を得たのは「首都圏ニュース」で、「NHKニュース7」は68.6%で2位、3位は「ニュースウオッチ9」でした。やはり、一般の通念どおり、NHKは「正確な」報道という点で多くの視聴者から信頼を得ているといえそうです。
 しかし、問題は、NHKが伝えた「事実」とはどういう事実だったのかということです。政府が発表した「憲法解釈」や「骨太の方針」も発表された「事実」には違いありません。しかし、それを伝えるだけなら「政府広報」と同じです
 そうではなくて、時の政権の動きを自主自律の立場で取材し編集して、国民が主体的に参政権を行使できる判断のよりどころを提供するのがNHKに限らず、すべてのメディアの使命のはずです。
 また、「正確な」事実の報道という時、その裏側には「伝えられなかった事実」があることも忘れてはなりません。限られた放送時間のなかで、数ある一日の出来事のから何を選び、それぞれにどれだけの時間を当て、どのように伝えるのかは、ニュース番組の価値を左右する最も重要な点です。かりにも、その取捨選択が恣意的であったり、バイアスが働いていたりするなら、「正確な」報道はうわべのことで、実態は「問題隠し」「世論誘導」の報道と言わなければなりません。

NHK
はどのように国策放送へ傾斜しているか
 
そこで、私は今年の56月にNHKニュース7と新聞が主だった問題をどのように伝えたかを調べました。<資料1>はその結果をまとめたものです。これをもとに私が感じたNHKニュース7の報道の特徴を短い言葉でまとめますと、「政府広報」、「空気づくり」、「注目誘導」、「話題そらし」の4つに整理できました。
 一つ目の「政府広報」とはこういうことです。
 憲法解釈を閣議で変更して集団的自衛権の行使を容認するという安倍政権の動きについて、朝日、毎日のほか、多くの地方紙は、政府が示した解釈や集団的自衛権発動の新要件をそのまま伝えるだけでなく、「1972年の政府見解の曲解」とか「歯止めにならぬ新基準」と言った社説を掲載して鋭い疑問を投げかけました。また、朝日新聞は「安倍首相会見、5つの論点」という見出しで、安倍首相が会見で使った事例のレトリックを解明する大きな記事を掲載しました。
 ところが、ニュース7はどうかというと、自民・公明両党の協議の成り行き報道がほとんどです。また、政府見解についても「一定の歯止め」とか「これこれと明記されました」といった政府発表丸写しの報道です。そこには、独自の取材に基づいて政府が挙げた事例に現実味があるのか、安倍政権の憲法解釈がまっとうなのかどうかを主体的に検証し論評した報道は皆無といってよい状況です。これでは、自公両党さえ合意すれば、一時(いっとき)の政権の判断で憲法解釈を変更することも可能であるかのような土俵づくりにNHKが加担するのも同然ではないでしょうか?

 私が感じたニュース72番目の特徴は「空気づくり」です。この56月のニュース7では、東シナ海での中国とベトナムの船舶の衝突事件、日中両国の領空、領海付近での異常接近など日本周辺で一触即発の緊張状態が続いているといったニュースが連日、多くの時間を割いて報道されました。どれもニュース価値がないというわけではありませんが、その比重があまりに突出していないでしょうか?
 安倍政権は周辺有事を状況証拠にして、憲法改正の手続きをやっている余裕はないと言い募り、集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行しようとしています。そのさなかに、NHKが周辺有事の切迫感を国民の意識に刷り込むような報道を繰り返すのは、集団的自衛権容認もやむなし、閣議での解釈改憲もやむなしの「空気づくり」をしているといって差し支えないと思います。

 ニュース73番目の特徴は「注目誘導」です。

時間がありませんので1つだけ挙げておきます。ニュース7が国会審議の模様を報道する時、質問者の映像も発言も伝えず、安倍首相や閣僚の答弁だけが映し出されるのが恒例のようになっています。質問を省いて答弁だけを伝えたのでは、答弁が的確かどうか、視聴者は判断できません。
 【安倍首相の諸外国訪問を伝えるニュースも念入りでした。G7の模様を伝えたニュースでは「『力による現状変更は許されない』という安倍首相の考えに各国首脳から合意をとりつけたのは外交的な成果だ」と同行記者は持ち上げました。読売新聞も「中国牽制で成果、日本、欧州への働きかけ奏功」と伝えました。しかし、毎日新聞は欧州首脳の関心事はロシアとの対話の模索にあり、「中国『包囲網』への関心薄く」と報道しました。東京新聞も安倍首相の「中国脅威論は空回り」と伝えました。】

 4つ目の特徴は「話題そらし」です。
 ニュース7はサッカーワールドカップまであと何日といった報道をほぼ毎日、流してきました。日本代表が初戦を戦った15日は18分をこれに充てました。といっても試合の模様を伝えたのは数分で大半は「日本、日本」とコールする声援の姿でした。これにもニュース価値がないとは言いませんが、これによって同じ日の昼のニュースでは伝えられた集団的自衛権をめぐる「シーレーンの掃海活動、与党討議の焦点に」というニュースは伝えられませんでした。「地方議員グループ、憲法解釈変更に反対」というニュースもカットされました。NHKは多くの国民が楽しみにしているから、といいます。私もニュース価値がないというつもりはありません。しかし、定時のニュース番組は娯楽番組ではありません。視聴者の好みとは別に、国民に伝えるべき現実を伝え、有権者として持つべき公共的関心を育むのが公共放送たるゆえんではないでしょうか?

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なお、翌22日の「朝日新聞」朝刊(大阪版?)が集会の模様を短い記事で報道した。
 「NHK会長らの罷免を求め集会」(2014622日、朝日新聞)
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/asahi_20140621kizi.pdf

 また、当日、集会の模様を取材したIWJが集会の模様を前半、後半に分けて動画で配信している。また、レーバーネット会員でもある永田浩三さん稿の集会の模様のレポートが同サイトに掲載されている。
 これらは「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」のHPに掲載されているので、ご覧いただけるとありがたい。
 
 http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/621-934e.html

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