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受信料支払い義務が放送法ではなく受信規約で定められている理由を説明できないNHK

2014827

「受信料支払いのお願い文書」が届いたので
 
 受信料支払いを凍結している視聴者の人たちから、ここ数日来、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」に、「受信料Q&A」という文書が入った支払い督促がNHKから送られてきた、どう対応したらよいか、という問い合わせが届くようになった。拙宅にも一昨日(825日)、届いた。
 開封すると、「ここが知りたい! 受信料Q&A」という説明書が入っていた。中身はNHKのホームページに掲載されているものとほぼ同じで、特段、目新しいものではなかったが、「Q3 ずっと支払わないとどうなるの?」という項を初めて読まれた方は心穏やかでないと思う。
 そこで、じかにNHKに、このQ&Aをめぐる論点を確かめようと、昨日、この文書に記載された問い合わせ先(NHKふれあいセンター 0570-077-077)に電話した。途中から代って電話口に出た責任者と名乗るN氏とやりとりを始めたが、話題が「Q2 受信料の支払いは法律で決まっているの?」に及ぶと、「私はNHKの者ではないので、その件は答えられない。NHKに直接聞いてほしい」という応答の繰り返し。
 問い合わせ先と明記されたところへ電話して、このような応対とは不可解だったが、押問答を続けても実りがないので、ではといって教えられたNHK千葉放送局営業部(043-203-0700)へかけなおした。最初に電話口に出たのはOという女性。まず、一昨日、前記のような文書が届いたこと、しかし、自分は籾井勝人氏が会長を辞めるまで、当面、向う半年間、受信料の支払いを凍結中と告げた。その上で、あらかじめ用意していた以下の3つの質問を伝えた。

私がNHKに投げた3つの質問
 
 1Q21つ目の項で、放送法(第64条第1項)により受信設備を設置した者にはNHKと受信契約を締結する義務が課されていると記され、2つ目の項で、NHK受信規約(第5条)において、放送受信契約者には放送受信料を支払う義務があると記されている。
 このように、受信契約締結義務と受信料支払い義務が分離され、受信料支払い義務が放送法でではなく、受信規約で定められている理由をNHKはどのように理解しているか?

 2.受信料は税金ではないという前提で。法で定められた納税義務は原則、無条件の国の債権、国民の債務と考えられるが、受信規約はNHKと視聴者(受信契約締結者)の間の双務契約であり、NHKの受信料請求権と視聴者の受信料支払い義務は、視聴者に対するNHKの一方通行的な、無条件の権利・義務ではないと私は考えている。NHKはこの点をどう理解しているか?
 言い換えると、受信規約とは、他の民法上の契約と同様、契約当事者であるNHKと視聴者(受信契約締結者)が双方向的に権利と義務を分かち合うものだと私は解釈しているが、NHKはどう考えているか?

 3. 私は以上のような理解のもとに、受信料の支払い義務自体を否定するか、あいまいにする不払いをするつもりはなく、条件を付けた支払い凍結(一時的な支払い留保)をしているつもりでいる。
 しかし、双務契約というなら、NHKには受信料請求権だけでなく、受信料を請求するに足る放送を視聴者に提供する義務も課されているはず。この場合の義務を定めたのが放送法(注:第1条通則、第4条放送番組の編集に関する通則)や「放送ガイドライン」などである。
 NHKは視聴者に受信料の支払いを請求するにあたって、自らに課されたこれらの義務を履行(遵守)できているかどうかを省みる必要があると思うがどうか?
 例えば、籾井氏は会長就任記者会見で、「領土問題については明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と発言したが、これは明確に放送法(注1)および「NHK放送ガイドライン」(注2)に違反している。これは公共放送の信頼の根幹をなす政治からの自主自立の立場を放棄するに等しい。
 NHKは視聴者に対して受信料の支払いを請求するにあたって、このような異常な状態を解消することが求められると私は考えているが、NHKはどう考えているか?

(注1)「国際放送の実施の要請等」に関する放送法(第65条)の定め

「総務大臣は、協会に対し、放送区域、放送事項(邦人の生命、身体及び財産の保護に係る事項、国の重要な政策に係る事項、国の文化、伝統及び社会経済に係る重要事項その他の国の重要事項に係るものに限る。)その他必要な事項を指定して国際放送又は協会国際衛星放送を行うことを要請することができる。 2 総務大臣は、前項の要請をする場合には、協会の放送番組の編集の自由に配慮しなければならない。」
(注2)「国際報道の基本姿勢」についての「NHK放送ガイドライン」の定め

 「各国の利害が対立する問題については、一方に偏ることなく、関係国の主張や国情、背景などを公平かつ客観的に伝える。」

NHKと視聴者の関係を視聴者間の関係にすり替えるNHK
  以上3つの質問を伝えると、応対していたOさんは、「少し時間をいただいてからお答えします」とのこと。10分後にこちらから改めて電話することにしていったん切る。
 約15分後に再度、NHK千葉放送局営業課に電話。応対した職員によるとOさんは今、別の電話の応対中とのこと。そこで、先ほどの電話の用件をかいつまんで話すと、「お待ちください」。間もなくして、別のOと名乗る男性が電話口に。上の3つの質問は伝わっていたらしく、1つ目の質問に対する回答らしきことを話し始めた。

O: 私どもはお支払いをいただける視聴者の方には、公平負担という意味から受信料の支払いをお願いしているということです。」

「醍: あのう、それは私の質問とは外れていますよ。今、お話になったのは視聴者と視聴者の相対的な関係のことですが、私が尋ねたのは受信規約をめぐるNHKと視聴者の関係です。受信料支払い義務が放送法でではなく、受信規約で定められている理由をNHKはどのように理解しておられるのですか?」

受信料支払い義務が放送法ではなく受信規約で定められている理由は?
O: 受信規約も放送法の定め(注:第64条第3項)に従って、総務大臣の認可を受けています。放送法で細かなことまで書けないので受信規約で定めることにしたのだと思っています。」 

「醍: 総務大臣の認可が必要ということは、受信料支払い義務を放送法で定めたということとイコールですか? それなら、戦後3回、受信料の支払い義務を放送法に盛り込もうとした放送法改正案が国会に提出されたり(19663月、19803月)、改正の是非が国会で審議されたりした(19993月)のに、いずれも廃案になったり、法案提出にいたらなかったりしたのは、なぜだとお考えですか? 受信料の支払いを放送法改正で義務化しようという動きが幾度かあったということは上の2つがイコールではないからではないですか?」

O: そういう経緯があったことは承知しています。いずれにしても受信契約をしていただいた方には受信料をお支払いいただくことになっています。」

「醍: 私が尋ねているのは、言い方を変えると、受信料の支払い義務は無条件で一方的なものなのかということです。もしそうなら、受信料は税金と同じということになり、NHKの受信料請求は『取り立て』となりますが、そう理解されてよいのですか?」

O: 受信料は税金ではありません。」

「醍: そうですよね。視聴者の受信料支払い義務は、公共放送らしい放送を提供するというNHKの義務と相互依存的なものだと思っています。
 かつて、海老沢会長が国会で、NHKの受信料は、罰則付きのBBCの場合とは違って国民との信頼関係の上に成り立つ、世界に例のない理想的な制度だ、と発言されたのもそういう趣旨からではないですか?」

O: 信頼関係ということはそうだと思います。そのためにも公平負担の趣旨から支払いをお願いしています。」

「醍: 理由もなく支払い義務を免れようと不払いをする人に対してなら、そういう議論も成り立つと思います。しかし、『籾井会長が居座ったままでは受信料を払う気になれない』という視聴者には、そういう議論は問題のすり替えです。支払いを請求するなら、公共放送の意味を理解しない人物がNHKのトップにいるという今の異常な事態を解消する必要があるとお考えになりませんか? そうなったら、私は滞納分も含めて支払いを再開すると通知しています。」

O: ・・・・・・」

今のNHKには威嚇めいた文面で支払いを督促する資格はない
 
「醍: Q&Aの最後に、『受信契約がお済みでない方やお支払いが滞っている方への取り組み』として、<受信料制度についての理解促進活動 → 電話・訪問・文書などによるお支払いのお願い → 裁判所を通じた法的手続きの実施>という流れが書かれています。私のような者に対して、今後、NHKはどういう対応をされるつもりですか?」

O: あくまでもご理解をいただくよう、訪問、あるいは電話や文書でお願いをします。」

「醍:  必ず、訪問されるのですか?」

O 必ずというわけではありません。文書等でお願いすることもあります。」

「醍:  『ご理解いただけるよう』という言い方ですと、支払いを凍結している視聴者は受信料制度を理解していないと決めてかかっておられるように聞こえます。しかし、先ほどからのやりとりからすると、NHKこそ受信料制度の根幹に関わる問いに答え
ていません。それでも払えというなら、無条件の『取り立て』ではないですか? 今のNHKにそんなことができますか?」

O: あくまでも公平負担をご理解いただけるようにお願いしています。」

「醍: 繰り返しになりますが、私が尋ねているのは視聴者間の負担の公平ではなく、視聴者とNHKの権利と義務の相互関係です。
 QAの最後に、裁判所を通じた法的手続きの実施、と書かれていますが、これはどういうことですか? 私は受信料制度に関する自分の理解は間違っていないと確信して受信料の凍結をしていますので、このような文面を見てもどうとも思いません。しかし、こういう一文を見ますと、受信料を凍結している人を『威嚇』して支払いをせき立てる意図が透けて見えます。
 公共放送の意味が解っていない人が会長に居座っている上に、特定の政党の地方の大会に出て講演をしたり、都知事選で特定の候補者の応援演説をしたりする経営委員、あるいは、『私は安倍首相の応援団』と公言する経営委員を放置したままで、威嚇めいた文面で受信料の支払いを視聴者に迫る資格はNHKにありません。そういう異常な事態を解消してから受信料を請求するのが筋です。」

 なお、以上のやりとりでの私の発言は、かつて、私が呼びかけ人の一人になって受信料支払い停止運動を起こした時にまとめた次の拙稿をもとにしている。できれば、これもお読みいただけるとありがたい。

「受信料支払い停止運動の論理」(200610月、醍醐聰稿)
 
 http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/teisi/teisi_ronnri.PDF
 

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安倍首相の資金管理団体を虚偽記載で告発

2014819

 告発状、提出
 昨日、私を含む4名は、安倍晋三首相の資金管理団体「晋和会」が総務大臣に提出した2011年分、2012年分の政治資金収支報告書に虚偽記載があったと判断し、8名の弁護士を代理人として、晋和会の会計責任者××××氏を政治資金規正法第2513号(政治資金収支報告書の虚偽記載)で、同会代表者の安倍晋三氏を同法同条第2項(会計責任者の選任と監督に係る注意義務違反)で、それぞれ東京地方検察庁に告発した。

 告発に至った経過

 本件の発端は、安倍首相の資金管理団体「晋和会」がNHKの一職員(チーフプロデュ-サ-・小山好晴氏)から2011年、12年に受け取った寄附を、「NHK職員」という身分を隠し、「会社役員」からの寄附と偽って記載をしていた事実を『サンデー毎日』727日号が報道したことにある。
 私は、この件で同誌から取材を受け、問題の所在を知ることになった。同誌にも記載されているが、晋和会は、『サンデー毎日』から小山好晴氏の献金について取材を受けた日(本年7月10日)の翌日、小山氏および同氏の妻・小山麻那氏の職業を「会社役員」から「会社員」に変更済みと回答したという。しかし、小山好晴氏の職業は「NHK職員」または「団体役員」とするのが正しいから、「会社員」と記載することも、なお虚偽記載である。

 ところで、本件を調査していく中で、総務省のHPに掲載されている「晋和会」の2011年分、2012年分の「収支報告書」を閲覧していくと、718日付で寄附者の職業名が多数箇所にわたり、再度、訂正されていることがわかった。
 合計16箇所(2年分につき重複を除くと9名分)に及ぶ寄附者の職業名の訂正の中には、著名な作曲家を当初「会社役員」としていた例や、「会社役員」を「無職」と訂正した例、「会社役員」を「弁護士」と訂正した例などが含まれていた。こうした訂正がなされたこと自体、晋和会の政治資金収支報告書がいかにずさんなものであったかを物語っており、政治資金規正法第27条第2項が定めた重過失による虚偽記載に該当すると判断される。
 また、NHKのチーフプロデュ-サ-の職業を「会社役員」「会社員」と記載したのは寄附者の実の職業を隠蔽する意図を強く推定させるものであり、刑法第38条第1項が定める故意犯に該当する可能性が高い。

 そこで、前記4名は晋和会の会計責任者××××氏を政治資金規正法第2513号(政治資金収支報告書の虚偽記載)で、同会代表者の安倍晋三氏を同法同条第2項(会計責任者の選任と監督に係る注意義務違反)で、それぞれ東京地方検察庁に告発するに至ったのである。

「職業」も国民監視のための重要な情報
 「たかが肩書の誤記を何で」という議論がある。しかし、例えば、国政情報センター編著『政治資金規正法違反事例集』(2012年、国政情報センター刊)を調べると、「国交省関係者らから寄附を受け、職業を『会社員』と記述」したことが違反事例の一つとして取り上げられている(82~83ページ)。この事例は参議院議員A氏が代表を務める資金管理団体が2006年の政治資金収支報告書の中で、個人献金をした国交省の現役局長や外郭団体トップらの職業を「会社員」と記載していた事実を違反事例として解説したものである。
 A氏の政治資金報告書では寄附者のほとんどの職業が「会社員」と記載されていたが、その中には、上記の現役国交省局長や同省の外郭団体の理事長のほか、旧建設省OBの市長、元技監なども含まれていたという。また、寄附者の中には、国から出資、補助金を受けていた公益法人などのトップも含まれていた。
 A氏は旧建設省出身で、2007年の参院選で初当選した。個人献金をした人物の多くはA氏と親交が深かった国交省関係者と見られている。
 この事例からもわかるように、寄附者の職業は、寄附者、若しくは個人を装った団体献金者と政治団体との癒着、不明朗な政治過程を国民が監視し批判するうえで重要な情報となりうる場合があるのである。

 今回の晋和会の例でいうと、「プロジェクトX」、「プロフェッショナル」、「ファミリーヒストリー」など人気を博した番組の制作に携わったNHKチーフプロデューサーが時の政権トップの政治団体に献金をした事実は、NHKの放送の政治的公正、不偏不党、自主・自律の原則を定めた「NHK放送ガイドライン」、「職員の服務準則」に反する行為であり、NHKはそうした原則を堅持しているという視聴者の信頼を失墜する行為である。しかも、この「自主・自律の堅持」を定めた「NHK放送ガイドライン」の冒頭の節で定められた「放送の公正、不偏不党」、「信用失墜行為の禁止」、「兼職の禁止」はNHKの「全役職員」が遵守すべき規範として設けられたものである。
 また、NHKが定めた「行動指針」では「私生活でも公共放送の信用を損なう行為をしません」と謳っている。
 以上から、小山好晴氏の「晋和会」に対する献金はこれらガイドライン、服務準則、行動指針のいずれにも反する公算が大である。

 このような文脈でいうと、「晋和会」が小山好晴氏の職業を「会社役員」と偽って記載したのは小山氏の上記のようなコンプライアンス違反行為を隠蔽する故意犯に該当する可能性が高いと言わなければならない。
 さらにいうと、晋和会への寄附者の中にある小山麻那氏は小山好晴氏の妻であり、麻那氏の母は安倍晋三氏の熱烈な支援者として知られる金美齢氏である。このことからすると安倍氏、あるいは主たる事務所が安倍氏の国会事務所となっている「晋和会」の会計責任者・××××氏が小山好晴氏の実の職業を知らなかったとは考えにくい。こうした事情を勘案すると、小山好晴氏の職業を「会社役員」と虚偽の記載をした事実は故意犯に該当する可能性がいっそう強まるのである。

後で訂正しても違法性は消えない
 「すでに当事者が訂正したものを告発するのはいいがかり」という議論が見受けられる。しかし、事後の訂正は虚偽記載の罪責判断において情状酌量の要素になることはあっても、処罰の認否に影響するものではないというのが法曹界の定説であり、政治資金規正法第27条第2項後段でその旨の定めが置かれている。
 前記の政治資金規正法違反事例の解説でも、「処罰対象となるかどうかは行為を行ったときを基準に判断するため、事後に訂正しても処罰対象から逃れるというわけではない。あくまでも行為時(この場合は記載時)に故意、あるいは重過失があるかどうかが問題となる」と記されている(83ページ)。

 告発状全文は次のとおり。
 
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/shinwakai_kokuhatuzyo.pdf

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