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法人税負担率はすでに20%以下 ~法人税減税は中止すべき(2)~

20141123

 政府与党は目下、来年度から数年で国・地方を合わせた法人税の実効税率を現在の約35%から20%台まで引き下げる税制改正の検討を進めている。
 前回の記事では、その根拠の一つに挙げられている「日本の立地競争力の強化」が実態に照らして的外れであることを指摘した。
 しかし、そもそも論を言えば、法人税率引き下げの根拠の適否を議論する前に、わが国の法人税の実効税率の水準を把握する基準を明確にしておく必要がある。
 いうまでもなく、納税者にとっての税負担額は税率×課税ベース(課税対象額)で決まるのであって、税率だけで負担の軽重が測れるわけではない。そして、法人税負担率と言う場合、

 法人税の納税額
 ------------------
  課税対象額 

で測るのが常識である。
 ところが、過年度に欠損を計上した企業の場合、当期の課税対象額は欠損金の繰越控除制度によって過年度の欠損金で相殺された金額、さらにその他種々の所得控除分だけ圧縮されている。同様に、分子は租税特別措置による研究開発費の税額控除等を受けている医薬品業等では当該税額控除分だけ納税額が圧縮されている。
 そこで、これら諸控除を分母、分子に戻し加えた時の法人税負担率(これが企業の実質的な税負担率とみなされる)を財務省自身が示している。次の資料がそれである。

 実際の税負担率
 
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/zei_futanritu.pdf
 (財務省説明資料「法人税課税の在り方」2013122日より作成)

 これを見ると、2011年度の時点で全法人の平均税負担率は21.3%となっている。これは法人税の標準税率30%から欠損金の当期控除分として6%だけ圧縮され、さらに租税特別措置による税額控除の影響で0.8%だけ税負担が引き下げられたことなどによるものである。その結果、電気機械器具(18.2%)、輸送用機械器具(19.7%)は2011年度時点で、すでに実質的な税負担率は20%以下になっている。

 以上は2011年度時点の状況であるが、時系列でみるとどうか?
 次の棒グラフは利益計上法人の益金処分の内訳(百分比)を時系列で表わしたものである。用いた資料は2011年度分までは前記の財務省説明資料であるが、2012年度分は国税庁「会社標本調査」をもとに財務省が採用したのと同じ方法で筆者が計算したものである。

 利益計上法人の益金処分の内訳(推移)
 
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/ekikinshobun_uchiwake.pdf
 
 この場合の益金はおおむね、課税対象所得と一致するから、そのうちの法人税額の割合は上で示した毎年度の法人税の実質的な税負担率を表している。例えば、このグラフで示された2011年度の21.3%は前掲の表で示された2011年度の全法人の実質的な税負担率の平均値と一致している。
 このグラフから読み取れるポイントは、
 ①2000年度に法人税率が37.5%から34.5%に引き下げられて以降、税負担率が30%台から25%以下に急減する一方、社内留保の割合が40%台後半へ急増したこと、
 ②2012年度には税負担率が17.5%まで下がったこと、
である。
 つまり、全法人の平均値で見ると、わが国企業の実質的な法人税負担率は2012年度には30%を割り込むどころか、漸次の税率引き下げと種々の特別措置の適用によって、20%台を下回る水準まで下がっているのである。
 こうした実態を無視して税率だけに着目して法人税の税負担率がまだ下げ足りないかのような議論をするのは重大な錯誤と言わなければならない。
 さらに、わが国企業は過去20年間の法人税率の引き下げで増加した可処分利益を増配に充てる以外は内部留保に回してきたこと、これが次の記事で取り上げるわが国企業の留保利益の増加につながったことを確認しておく必要がある。
 加えていえば、政府の税率の高低に偏重した税制論議を鵜呑みにして報道するメディアに対しても、調査報道の貧困、それに起因する政府広報化に猛省を促さなければならない。

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