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安保法案 : あれでどうして 「可決」 なのか?

2015918

3つの案件は採決されたといえるのか?
 昨日の午後、安保法案の参院特別委の模様を中継したNHKの番組を視た。1625分頃、鴻池委員長の不信任動議が否決されたところまでは画面と音声で確認できた。しかし、その後、1630分頃までの間に3つの案件(注)が「可決された」と、NHK164219秒にニュースで流したのを知って驚いた(時刻はNHKふれあいセンターに電話で問い合わせて確認。その後、更新されている)。  http://www.nhk.or.jp/news/html/20150917/k10010238871000.html 
 (注)質疑打ち切り動議、安保法案、与党と野党3党が共同提出した付帯決議の3つ

 テレビの画面を視る限り、この5分間は与野党委員が委員長席に殺到し、もみ合う状況が続いたとしか見えなかった。むろん、その間、自民党筆頭理事・佐藤正久氏が委員席に向かって送ったサインに応じて与党委員が自席近くで起立する光景が何度か映った。あれが起立多数で可決の挙動だったのだろうか?
 しかし、その模様を伝えたNHKの高瀬耕造アナウンサーは、「委員長の声は全く聞こえません」と2度繰り返した。視ていた私も同様だった。

  実際、未定稿の速記録によると、不信任案が否決され、鴻池委員長が委員長席に戻って以降は、「議場騒然 聴取不能」と記された後、「委員長退席 16時36分」と記され、その間は何も記載がない。
 ここから判断して、鴻池委員長が議事に関して何かを発言し、採決がされたことを裏付ける記録はないことになる。

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野党議員は口をそろえて「何があったのかわからない」
 
 委員会閉会後、廊下でインビューを受けた福山哲郎委員(民主党理事)はスタジオからの質問を遮るように、「可決はされていません。あの審議をご覧になっていたらわかるように、可決は認められません。委員長が何を言ったかわからない。いつ動議を出したのか、採決されたのかわからない」と強い口調で語った。

 民主党の枝野幹事長も国会内の記者団に対し、「採決がなされたと言える代物ではない。これをもって、委員会で可決されたとするならば、到底許されない暴挙だ」と語っている(上記、NHKニュース記事参照)。

 共産党の井上哲士議員は、「(安全保障法案の採決で)いったい何がおきたのか、そもそも動議が出たのかどうかも、委員長が何を発言したのかも誰もわからない。そして、私は自民党席の前にいたが、彼らも何もわからないまま立っていただけですよ。だからこれは全く無効」と語っている。(「朝日デジタル」20159171928分) 
http://www.asahi.com/articles/ASH9K652JH9KUTFK010.html?iref=com_alist_6_04


 生活の党と山本太郎となかまたち代表の山本太郎議員は、「委員長席を与党の議員が取り囲む中で、委員長自身が確認することなく、可決の判断をすることはありえない」と語っている(上記、NHKニュース記事参照)。

 そして、昨夜、野党5党は山崎正昭参院議長に対して、特別委での採決は無効と申し入れた

早々と「法案、可決」と伝えたNHK、その根拠は?
 NHKの中継を視た人たちの多くも、後掲のように、「可決はされてません。認められません」という福山哲郎議員の発言をリツイートしている。また、「あれで可決されたとは思えない」、「NHKもよくあれで可決されたと放送できたものだ」、「騒然として、速記も止まっていた、可決の証拠がない状態のようだけど?メディアが『可決された』と報道すれば、既成事実化されるね」とツイッターに書き込んでいる。

 私も、「採決をした」と与党委員がいう時刻から23分後にNHKの田中泰臣・政治部記者が「可決された模様です」と語り、およそ10分後に「安保法案、可決」という字幕を出したのは、どのような取材または証拠に基づくのか、奇異に思えた。

 委員会室で与党議員が数回、起立したのは確かだ。しかし、「委員長が何を言ったかわからない。いつ動議を出したのか、わからない」という状況の中で、委員長の職務代行でもない自民党の筆頭理事の指図に応じて、与党委員が起立したことを以て可決とみなすのであれば、委員長そっちのけの議事進行であり、委員会室は無法地帯も同然である

 少なくとも、このように与野党で状況認識が真っ向から対立する問題について、また、テレビを視た多くの人々が、「あれで可決とは思えない」と受け止める状況について、NHKはじめ、ほとんどのマスコミが、与党の主張通りに「可決ありき」と報道したことに強い異議を感じる。

 せめて、「与党議員は、法案は可決されたとして委員会室を出ました」といったように、与党の言い分と距離を置く伝え方をし、「可決」が既成事実化するのを避ける姿勢を貫くべきだ。報道のあり方次第で、不条理が既成事実化し、撤回なり修正なりの協議の可能性がふさがれる怖さをマスコミ自身がもっと厳格に自覚するべきだ。多数派が数の力で強引に決めごとをする場合はなおさらである。

野党は「可決」の既成事実化に抗うべき
 
~「あらゆる手段を駆使して」というのなら~
 政府・与党は安保法案を今夜のうちにも本会議で可決しようと強硬姿勢を見せている。本会議で可決されるとなると、特別委での採決の無効を訴える野党の主張は効力が減衰してしまうというのが常識的な見方だろう。
 しかし、野党各党が「あらゆる手段を使って法案の成立を阻止する」というなら、上で指摘したような参院特別委での安保法案の「可決」の有効性はもとより、「採決」そのものの有効性に関する異議申し立てを、一応の「ポーズ」どまりにせず、毅然と実行すべきだ。
 そのためには、野党は、質疑打ち切り動議が、いつ、誰から出されたのか、3つの案件について、委員長はそれぞれ採決をどのように諮ったのか、について速記録で確認するとともに、起立賛成した与党委員は、鴻池委員長の発言を聴き取って起立したのか、佐藤筆頭理事の合図に促されて起立したのか(後者なら採決は無効)を実地精査して確認すべきである。
 こういう作業をせず、「到底許されない暴挙」とか、「採決は言語道断」とか、「まったく無効」と言っても言葉遊びになる。そのような口先だけの勇ましい言葉なら、国民は見向きもしない。

NHK
政治部・田中泰臣記者が使った「不測の事態」とは?
 916日夕方から17日の夜にかけてNHKは国会とスタジオを結んだ特別委の模様を長時間、放送した。その際、スタジオには高瀬アナウンサーとともに政治部の田中泰臣記者が頻繁に登場し、解説をした。
 ①公聴会直後に法案の採決をしようとする与党の、公述人を冒涜する行為を不問にしたこと、
 ②1日前までやると言っていた締め括り質疑を飛ばし、野党が防衛省等から提出を求めた資料が提出されないままの状態で、採決に移ることへの疑義を一切差し挟むこともなく、政府与党が描く審議日程を得々と説明したこと、
など、田中記者の解説ぶりはNHK政治部の政府広報部ぶり知るうえで「有益」だったが、できれば別の記事でこの点を立ち入って論じたいと思う。

 ただ、一つ、ここで触れておきたいのは田中記者が、高瀬アナから、「なぜ政府与党は採決を急ぐのか」と聞かれて、頻繁に「採決がずれ込むと、国会の外の反対行動が大きくなって不測の事態を招きかねないから」と語ったことである。
 「不測の事態」・・・・・「実用日本語表現辞典」によると、「予測していなかった、思いがけないできごと。ふつう、悪い結果について用いる」とある。
 では、国会の外で連日行われている、安保法案廃案、憲法守れの行動がさらに広がることによって、田中記者は、どのような「予測外の悪い結果」が起こると考えたのだろうか? 予測する事態を「悪い結果」とみなす理由は何なのだろうか?

 昨日、NHKふれあいセンターに電話して、この点を質問したら、「ここでは、そのようなお尋ねがあったことを担当部署に伝えることしかできない」との返答。代わって電話に出た「上司」を名乗る人物としばらく問答をしたが、返答は変わらず。最後は、「どうしても確かめたいということなら、手紙かメールで田中記者に直接、尋ねてほしい」。近く、そうしたい。


【付録】「あれで可決」(Yahoo! リアルタイムで検索)
 http://realtime.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%81%82%E3%82%8C%E3%81%A7%E5%8F%AF%E6%B1%BA&ei=UTF-8

「民主、福山議員インタビュー。開口一番「可決はされてません。認められません。委員長が何を言ったのかも分からない、誰が何の動議を出したのかも分からない。あれで可決なら我が国の民主主義は死にます」 pic.twitter.com/ADOwjCvXtc gigimaki gigimaki) 803RT

「最終採決の映像ニュースで今見たけどあれ?!あれで可決?!?!よそ見してる間にあんぱん食べちゃって「はいもう食べちゃった〜〜〜はいもうおしまい〜もうあんぱんありませ〜〜ん」とかやってる小学生みたいなやり方でしたが?!」Twitterqmsd_ (ラムしゃぶ)

「あれで『可決された』と言っていいのかな。騒然として、速記も止まっていた、可決の証拠がない状態のようだけど?メディアが『可決された』と報道すれば、既成事実化されるね。」Twittera_uzume (アマノウズメ)

「議事録の有無以前に、ほとんどの人が委員長がいつどのような提案をして採決を求めたか聞こえていないはず。賛成も反対もあり得ない。無効!NHKもよくあれで可決されたと放送できたものだ。」Twitterikarinuma (ぬまちゃん) 4RT

「まったくです!シナリオを持っていないと、あれで可決とは思えない。」
twitter.com/legrandsnes/st… Twittertanjibrico
(たんじふみひこ)

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コメント

醍醐先生の申し入れに賛同します。
最近、テニスの試合でもバレーボールの試合でも、「チャレンジ」というものがあり、ビデオや電子判定で審判の判定を確認するようにあっています。この参議院委員会採決も「チャレンジ」して、くつがえそうではありませんか。しかし、そのジャッジは誰が行うのでしょうか。

投稿: 米田 晴彦 | 2015年9月22日 (火) 21時48分

醍醐先生の「参議院特別委の《採決》は無効との申し入れに全面的に賛同します。実は、私は19日の夕方、朝日新聞「声」欄へ「ビデオ判定で採決の存在の有無を検証せよ」と投稿しました。しかし取り上げられませんでしたが・・・。

投稿: 長谷川長昭 | 2015年9月21日 (月) 22時59分

17日の夜は所用があり、ライブで審議を視聴していませんでした。その日の夜のNHKのNewsWebで、政治部の田中記者が録画(テロップも流れた)を観ながら、「これは何が起こっているのか分かりませんよね」と発言し、その直後に、「でも採決されました」とコメントしていました。

可決のテロップを流したNHKに、その根拠を確認するために18日午前中に電話しました。それに先立ち、参議院のアーカイブを確認しました。

まず、公共放送として受信料を徴収することに関し、何の根拠もなく可決のテロップを流すことはどうなのか、であれば受信料を支払う義務はないと質問したところ、いつものコメント「お客様のご意見として上に伝えます。こちらはそのようなご質問にお応えする部署ではない」。「受信料は放送法でTVの受像器をお持ちのお客様にはお支払い頂くことになっている」の一点張りでした。これでは納得がいかないので、更に抗議したところ、番組製作担当者の電話番号を教えてくれました。当時の映像・音声を基に可決のテロップを流した根拠を訊いてみたところ、始めは答えなかったが、「政府から連絡があった」と返答しました。

これは、ゆゆしき発言です。公共放送の冠を外して貰わなくてはなりません。

醍醐さんをはじめとして、根拠に疑問を抱いておられる方がいて、私は安心しました。

最後に、新聞社にも根拠を確認しましたが、明確な返答はありませんでした。

投稿: 主権在民 | 2015年9月21日 (月) 16時45分

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