安倍首相と会食し、原発の早期再稼働を求めた行為を悔い改める意思があるのか? ~石原進NHK経営委員長への追加質問を提出~
2016年7月12日
一つ前の記事で書いたように、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は7月8日、NHK経営委員長に就任した石原進に対し、4つの事項の質問を書面で提出し、7月19日までに文書で回答をもらうよう要望した。
政権トップと会食し、経済界の利害を代弁した石原氏
しかし、その後、調査を進めると、2014年7月18日に、当時、NHK経営委員だった石原進氏が、福岡市内で開かれた安倍首相と九州財界人との会食に出席していたことがわかった。その時の模様を「日本経済新聞」は次のように伝えている。
「川内原発の再稼働、首相『何とかする』」(「日本経済新聞」2014年7月18日)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS18024_Y4A710C1EE8000/
「安倍晋三首相は18日夜、福岡市内の日本料理屋で麻生泰九州経済連合会会長、石原進JR九州相談役らと会食した。石原氏らは原子力発電所の早期再稼働を要請。会食後に取材に応じた石原氏によると、首相は原子力規制委員会が新たな規制基準を満たすと認めた九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について「川内(原発)は何とかしますよ」と答えたという。」
これを読むと、石原氏はNHK経営委員に就任していた当時から、九州電力の首脳も出席した安倍首相との会食に同席し、かつ、会食後、まるで九州経済界を代表するスポークスマンかのように、会食の折に川内原発が話題に上ったこと、川内原発の早期再稼働を安倍首相に求めたことを披露していたのである。
そもそも、様々な権力、とりわけ、時の政権からの自主自立を生命線とするNHKの役員であり、監督機関の委員でもある人物が、時の首相と親しく会食を共にし、わが国で世論を二分する政治的アジェンダとなっていた原発再稼働について、経済界の利害を代弁するような国策を首相に要請するのは、あるまじき行為である。現に、「経営委員会委員の服務に関する準則」は第2条で、
「経営委員会委員は、放送が公正、不偏不党な立場に立って国民文化の向上と健全な民主主義の発達に資するとともに、国民に最大の効用と福祉とをもたらすべき使命を負うものであることを自覚して、誠実にその職責を果たさなければならない。」
と定めている。
また、「NHK放送ガイドライン2015」は、
「全役職員は、放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、すべての業務にあたる。日々の取材活動や番組制作はもとより、NHKの予算・事業計画の国会承認を得るなど、放送とは直接関係のない業務にあたっても、この基本的な立場は揺るがない。」
と定めている。ちなみに、「放送法」第49条で明記されているとおり、経営委員もNHKの役員である。
かりに、経営委員としての業務外の場での言動であっても、石原氏の上記の言動はNHKの政治的公平に関する視聴者の信頼を揺るがすのは避けられない。
経営委員としての業務の場でも原発停止に不満をぶつけた石原氏
しかし、石原氏の言動を調べていくと、NHK経営委員としての業務の場でも石原氏は多くの原発の稼働停止が続く状況にいらだちを募らせ、NHKの番組制作方針に不満をぶつけたこともあった。
「日本放送協会第1146回経営委員会議事録」 (平成23年6月28日開催分)
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/g1146.html
を読むと、原発問題を扱った番組が話題になった際、委員の間で次のようなやりとりが交わされている。
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「(安田代行)
先ほどの塚田理事からのご紹介がありましたように、放射能汚染に対する問題が国民の最も大きな関心の1つですので、やはりNHKの役割として、今後もぜひこの問題に焦点を当ててほしいと思います。それを掘り起こすような、えぐるような、言いにくいことにも焦点を当てて、例えば放射能汚染された汚泥処理の問題などは大変重要な問題で、これらを番組で取り上げていただいて、政治を変えていくというぐらいのインパクトを持つ番組を作っていただけるように、切にお願いしたいと思います。」
「(石原委員)
今の話とも関連があるのですが、原子力発電所は、定期検査が終わったにもかかわらず稼働していません。このまま稼働しない場合、来年の3月か4月には日本 の原発54基は全部止まってしまうことになります。もしそうなると日本はエネ ルギーの大危機が来るわけですね。エネルギーの需給は国家の基本ですから、これについてはどういう番組を作っておられるのか、どうしようとしているのかということです。また、外資を中心に産業は日本からどんどん出ていっています。
九州へ移転の話でだめになったものもあります。こういう問題については、扱い方が難しいのですが、ぜひ何か考えていただければと思います。」
<中略>
「(今井理事)
個別の番組、放送の内容については、経営委員の方々から注文を受けるというのはちょっといかがと思いますので、それは別として、放送として、どのようなものが出せるかということをさまざま検討したいと思います。」
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最後の今井理事の発言は放送法第32条を念頭に置いたものと思われる。「委員」とは「経営委員」のことである。
「(委員の権限等)
第三十二条 委員は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない。
2 委員は、個別の放送番組の編集について、第三条の規定に抵触する行為をしてはならない。」
石原氏はNHKの自主自立に背く行為を悔い改める意思があるのか?
そこで、「視聴者コミュニティ」は昨日(7月11日)、全国27の市民団体の連名で、次期NHK会長の選考に関する再度の申し入れ書を提出するため、NHKと面会した折に、8日に提出した「石原経営委員長宛て質問書」に〔質問5〕を追加した差し替え版を今日の経営委員会の場で経営委員に届けてもらうことにした。
追加した〔質問5〕の文章は次のとおりである。
「〔質問5〕 貴職が安倍首相との会食に出席し、世論が分かれている川内原発の再稼働をめぐって議論を交わし、早期の再稼働を要請されたこと、さらに、九州の財界人あるいは安倍首のスポークスマンのようなふるまいをされたことは、政治的公平、政治からの自主・自律を生命線とするNHKの監督機関の委員としてあるまじき行為です。貴職は今、そのようなかつての言動を悔い改める意思を持っておられるかどうか、お聞かせください。」
参考までに、石原進経営委員長宛て質問書の差し替え版全文を掲載しておきたい。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/ishihara_ate_situmon_sasikakehan.pdf
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