映像で知った演劇人のむごたらしい被爆死 ~被爆71年 桜隊原爆忌に参加して~
2016年8月7日
昨日、目黒の五百羅漢寺で開かれた「被爆71年 桜隊原爆忌」に参加した。朝から、この夏一番と思える夏の日射しがきつかった。私は3回目の参加だが、今年は連れ合いと一緒に出掛けた。
被爆71年 桜隊原爆忌 原爆殉難者追悼会
http://www.photo-make.jp/hm_4/sakura_53.html
移動劇団「桜隊」を知っていますか?
「桜隊原爆忌の会」のHPに掲載されている説明文をそのまま引用させてもらう。
「移動演劇隊『桜隊』は、1945年8月6日、広島県内を巡演中に爆心地から750mの宿舎で被爆し、居合わせた9名全員の命を奪われました。
メンバーには、存命であれば戦後の演劇界を大きく変えたであろうといわれる、名優丸山定夫。元宝塚スターで「映画無法松の一生」で全国のファンを魅了した園井恵子。裸体にシーツをまとい避難列車で帰郷し、東大病院へ入院し原爆症一号患者として亡くなった仲みどりなどがいます。・・・・・
戦後、徳川夢声氏の呼びかけで、多くの関係者の協力により目黒の五百羅漢寺に『桜隊原爆殉難碑』が建立され、今日まで毎年8月6日に「移動演劇・桜隊原爆忌」として追悼会を催しております。」
「桜隊原爆忌」の第1回は1975年10月19日。参加者52名。1981年以降、毎年8月6日と定着したという。
9名全員が命を奪われたというが、約半数が宿舎でほぼ即死と見られ、生き延びた人々のその後の消息はバラバラだった。
初めて見た映画「さくら隊散る」
今年の「桜隊原爆忌」の特徴は、碑前祭のあと、桜隊の記録映画「さくら隊散る」(新藤兼人監督、1988年作品)が上映されたことだった。生き延びた丸山定夫、園井恵子、高山象三、仲みどりの被爆後の消息と最期の姿を再現するとともに、彼らにゆかりの人々の生前の証言が随所に織り込まれ、緊迫感がみなぎる作品だった。
丸山定夫の名優ぶりと剛毅な中にも繊細な人柄を語った千田是也、滝沢修ら、園井恵子の魅力を語る宝塚歌劇団の同僚、2ヶ月後に結婚しようという言葉を残して高山象三と別れたという当時の恋人、遠路上京して母の実家に着いた仲みどりを診察した東京帝国大学の医師・医学生などの証言は誠に生々しく、貴重な原爆受難記録にもなっていた。
また、長椅子に横たわった宇野重吉が戦時中、大政翼賛会文化部に呼び出され、国策への忠誠を誓う誓約書に署名をさせられた屈辱を何度も語る姿が痛々しくも、表情に悔しさがにじみ出ていた。と同時に、そうした戦時中の屈辱的体験について、今なお口をつむぐ文化人がいかにおびただしいことかと想像もした。
軽薄で欺瞞的な「未来志向」
それにしても、映画を見終えて脳裏に刻まれたのは、丸山定夫、高山象三、園井恵子、仲みどりの最期の姿の共通性である。日を追うごとに髪の毛がごそっと抜け落ち、布団、ベッドの上で水を求めてのたうちまわる姿、吐血とともに息を引き取る姿・・・・どれも被爆死のむごたらしさを赤裸々に伝えるシーンだった。
こうしたシーンをみて私は、オバマ大統領の広島訪問を実現するための譲歩かのように「広島の被爆者は謝罪を求めない」という物言いが広まったことを思い起こした。しかし、それが被爆者の今となってはの一面の心情ではあっても、本心であろうはずがない、いわんや、無念の死を強制された被爆者の本意を代弁するかのように語り広めるのは死者に対する冒涜であるという思いを再認識した。
核なき世界を求める未来志向? 自らが犯した人道に対する罪と向き合わず、不都合な過去から顔をそむけて何が未来志向か!
むごたらしい被爆死、無念の被爆死のリアルな実態を直視し、そこからこみ上げる恨み、憤怒に突き動かされ、それらを昇華した平和へのエネルギーこそ、この先、1人の被爆者も生まないための運動に向かう本物の未来志向ではないのか? 過去と未来を身勝手に切り分けるな!
貴重な記録映画を残した関係者、桜隊の被爆死を慰霊し、その実相を伝える活動に務めておられる方々の尽力に深い敬意を覚えた。
慰霊忌のあと、連れ合いは、偶然、会場で出会った元職場の友人とお茶を飲みながら話をするというので、私は一足先に帰路についた。余りの暑さに、2時間足らずかけて帰宅すると、すぐに冷えた「プラム」をかじって一息ついた。
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