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上村達男氏のNHKガバナンス論の真贋                ~赤旗編集局への書簡(6/7)

20161019


視聴者目線が欠落した上村氏のNHKガバナンス論

1)経営委員会の職責をわきまえない上村氏の余剰資金活用論

   
NHKの次期3ヶ年経営計画が審議された20141014日の経営委員会で、籾井会長と上村氏(経営委員長職務代行/当時)が次のようなやりとりをしています。

 
 「(籾井会長)この3か年間での増収の合計1,000億円を何に使うのだということですね。これは明確に、何に使うというのか予定があります。ご承知のとおり、今、2つの大きなプロジェクトを抱えております。一つは東京オリンピック・パラリンピック、一つは新センターの建て替えでございます。やはり巨額のお金が要るものについては、そのときになってぱっとやるわけにはいかず、例えばオリンピックの場合は数百億円規模の放送権料をNHKは支払う必要があり、これを準備していかなければなりません。新センターの場合は、建設に要する経費も場所もまだ決まっておりません。そういう中で、今の建設費の高騰などを考えると、3,400億円で高いと言われていたものが、これでも足りないかもしれないということもあるわけです。結局、建てた後に急激な資金不足を来すことになり、損益が赤字になるということは、受信料収入で成り立っているNHKは、受信料を値上げしなければなりません。それを回避するためにも、今のうちから積み立てていき、余裕が出てきたら受信料を下げて還元することは、宿命的なものだと思います。私流に表現しますとそういうことですが、この2つの大プロジェクトを抱えているがゆえに、今の段階で値下げをすることは、必ず後に急激な値上げをする必要がでてきますので、今の計画のまま進め、この間にオリンピックの償却をしていくというのが一つです。やはり一番大きいのは、新センターの建て替え用の積み立てです。積み立てにより、将来の急激な受信料の値上げを回避する。NHKは収支を全部オープンにしていますので、そのときの収支の状況を見て、値下げなどについて検討させていただければと思います。」

   「(上村代行)これは感想ですが、余剰資金がある場合は、NHKがやりたいことを、あるいは国民が望んでいることがこんなにできるということを、NHKの側が言うのは当然だと思います。もう使い道はありませんといったら返すしかないということになる。日本の企業で、余ったお金があれば配当するように言われ、怪しげなファンドにただ金を移しているような風潮に非常に違和感を持っています。何となく戻すというものではなく、これだけの余剰資金で、こんなことができるということを是非おっしゃっていただきたい。」

  籾井会長の発言を受けた上村氏のこのような発言を知ると、NHK執行部とどのように向き合うのが経営委員会の職責なのか、考えさせられます。東京オリンピックや築地市場の豊洲移転をめぐって、当事者が立案した予算や事業計画のずさんさ、時間が経つにつれ、予算が膨らんでいく実態を市民、都民は厳しいまなざしで見つめています。

  NHKの放送センターについてもNHK執行部は第1期、第2期に分けた建設・財政計画を公表していますが、第1期計画でさえ、目下の予定で、今後の変更がありうることを断っています。いわんや第2期計画の予算は金額こそ公表していますが、概算にすぎません。
 
であれば、受信料の「公金意識」を徹底するよう謳っているNHKを監督する経営委員会の第一次的職責は、執行部が提案した建設・予算案を精査し、無駄を排除した上で必要な施設を建設するものになっているか、華美、不要不急の計画はないかをチェックすることであるのは明確です。

 
 (議事録を読む限り)そのような精査を行わないまま、「余剰資金がある場合は、NHKがやりたいことを、あるいは国民が望んでいることがこんなにできるということを、NHKの側が言うのは当然だ」、「もう使い道はありませんといったら返すしかないということになる」などと発言するのでは、上村氏が経営委員会の職責をいかに理解できていないかを示すものです。「国民が望むこと」を上村氏はどのように確かめたのでしょうか?
  しかも、そうした「感想」を営利企業の配当に例えて説明するのは、上村氏の「ガバナンス論」が営利企業版の引き写しで、公共放送には通用しない、有害なものでさえある言ってもよいでしょう。
 
 上村氏は放送法を引いて、健全な民主主義や公共を語っています。しかし、実践的な問題に直面した場面での発言を確かめると、上村氏の言う「公共」の真相は荘宏氏が語った放送法の原点、立法精神とは似て非なるものと言わなければなりません。
 ちなみに、上記の上村発言の後で、美馬委員、室伏委員は、次のように発言しています。

 
 「(美馬委員)語る会などに出席していると、年金生活者の方とか高齢者の方々からいろいろご意見をいただきます。特に受信料がかなり負担になっているというお話を伺います。そのような状況において、オリンピックがあるからという理由で、そういう方々に説明ができるのかということです。受益者負担ということをもし言うならば、その方々がオリンピックを見られるかどうか、そのために今新放送センター分を出しておくことについて、理解が得られるのかということ。それから、函館という地域に生活していますと、経済格差というのはかなり拡大している地域の状況を実感しています。例えば、この冬から北海道電力が20%値上げする。それはかなり問題になって、結局16%台に落ち着きましたけれども、生活がかなり厳しい方々が出てきている中で、NHKの今回のこういう話が出てくるとなると、全国、地域の人たちに対してきちんと説明ができるのかということですね。ぜひ考えていただきたい。・・・・
 
例えば、先ほどはそういうことで立ち行かなくなると、放送サービスの削減につながるというご説明がありましたが、それもいたし方ないのではないかとも思います。BBCはこれから1つチャンネルを減らすようですね。日本では人口があるところまで減少するというのが予測されているわけですし、労働人口が少なくなって、NHKも国内だけでは人材を確保できないということもあります。新放送センターも巨大な頑丈なものということですが、例えば今の技術を利用すれば、小さな組織で分散化するということだって考えられると思います。東京という、いろいろな課題があるところで、巨大な頑強なものを建てるということが、本当にそれが唯一絶対の最適の解決なのかということも踏まえてお考えいただければと思います。」

   「(室伏委員)建物について概算でこういう金額を出した。そして、それに設備費などをつけた3,400億円は既に公表している値だというご説明でした。私が危惧するのは、計算した根拠やNHKとしての方針などが明確ではないうちに、この数字を公表したことで、NHKの建て替えに、何とか参入しようとしている業者の方がたくさんいらっしゃるわけですから、数字が独り歩きしてしまうことで、いろいろな意味で課題が生まれてくる可能性です。皆さまがとてもご心配になっている数字の根拠については、こういう言い方をしては失礼ですが、NHKはやはり多少厳しくないという感じがします。私は別の企業で社外取締役をしていますが、やはり数字に関しては非常に厳しく詰めて、そしてこれでという確実な線を出していらっしゃるので、やはりNHKとしてもう少し考えていただかなければならないという気がします。世間で、NHKは受信料頼みで、のんびりしているということをおっしゃる方がいますが、そういう話を聞くたびに、いや、そうではありませんと申し上げていますが、今のやりとりを聞いていますと、やはり多少心配になります。ですから、こういう数字が公表される前に、もっと厳密な計算なども必要だったと思いますし、渡邉委員や石原委員がおっしゃったように、民放の建物の値段と比べてはるかに高いので、もう少し見直しをという話が以前にあったことを思い出しました。そういったことが、議論が進み、時間が経つと忘れられてしまうことがありますので、今後はしっかりと経営委員会での議論を生かしていただきたいと思っています。」

  ところが、上村氏は2人の委員の発言の後で、例によって自己流の「ガバナンス論」を持ち出し、次のような発言をして、議論を拡散させてしまっています。

 
 「(上村代行)今、各委員の方がおっしゃったことはそのとおりだと思います。ただ、当時はガバナンスと申しますか、経営委員会制度という監視監督機関がきちんと機能していなかった時代であって、そう言い切れるかどうかは別として、今のシステムでは大分違います。ですから、少なくとも当時は、今のような経営委員会制度、監査委員会制度のシステムはなかったわけです。総務省という役所があまり介入しない、これだけ公益性の高い組織で、会長に全部権限がある。そうすると、よりどころは経営委員会しかないです。その経営委員会のよりどころは監査委員会しかない私は思っています。・・・・」

  経営委員会のよりどころは監査委員会しかない、監査委員会をどうにかしなければ経営委員会はなかなか職責をまっとうできないというのが、上村氏の「NHKガバナンス論」の一貫した「専門的」見解のようです。
  しかし、大きな権限と責務を負った監査委員会がNHKの経営・財務に関して厳正な監査をするのは当然としても、経営委員会自身、放送法291項でNHKの事業計画、収支予算、資金計画など、NHKの経営全般に対する議決権を付与されています。こうした放送法の定めに照らせば、監査委員会の職務がどうという以前に経営委員会自身の職責、その遂行状況が問われるのは当然です。
 この意味で、上村氏が得意げに語る「NHKガバナンス論」は専門用語をちりばめた一知半解の机上の議論と言っても過言でないと私は考えています。
 その上で指摘しなければならないのは、上村氏の議論には、他の経営委員の発言と対比しても、視聴者目線が終始、欠落しているという事実です。それは上村氏の受信料収納目標に対する考え方にもよく表れています。

2)視聴者目線が欠落した上村氏の受信料徴収論

  今年の524日に開催された経営委員会で、外部法人委託の拡大、民事調停の活用等による受信料の徴収強化策についてNHK担当者から説明がされました。
  これを受けて、石原進委員(当時)は「支払率が76.6%に上がったというのは大変すばらしいと思います。九州では大分が非常に悪かったのが76.1%となったことは、こういった施策をいろいろと行った結果だと思います」とNHKの実績を高く評価する発言をしました。
  他方、美馬委員は、「民事調停の活用についての質問です。受信料をお支払いしていただけるのであれば、なるべく民事調停まではしたくないとお考えだと思います。予告文書は定型の文書をお送りするだけでよいと思いますが、申立文書を作成する際の経費や手間について教えていただけますか」と質問しています。


  さらに、佐藤友美子委員は次のように発言しています。

 
 「(佐藤委員)2つあります。外部法人委託により非常に成績がよくなっている一方で、この前の『視聴者のみなさまと語る会』でも、受信料徴収の対応についてのご意見がかなりありました。法人委託化することで、逆にNHKに対する不信感を抱くような方もいらっしゃるのではないかと思います。その対応策についてお聞かせください。これまでもいろいろと研修はしているということでしたが、なかなかそれでは納得していない方がいらして、NHKとして、きちんと対応しているというメッセージも送っておかないと、ご理解していただくことが難しいと思います。そのときは銀行振り込みについてのお話で、NHKの都合であるにもかかわらず高圧的であったというご意見でした。自分の成績のためにやっているような節があったというご意見でしたので、その対応策がきちんと行われているかどうか不安な気がしました。」

  目下、外部営利法人への集金委託、民事督促の裁判の活用を通じたNHK「対話なき」強引な受信料徴収に対して、各地の多くの視聴者から苦情・批判が出ています。その意味で、佐藤委員や美馬委員の発言は視聴者に目線を向け、NHKの高圧的な受信料徴収をチェックしようとしたものと言えます。
  上村氏は既に経営委員を退任していて、この日の委員会には出席していませんが、在任中の201499日に開かれた経営委員会で、NHKの営業担当理事が、平成27年度から3ヶ年の営業目標(ここでは受信料支払い率の達成目標)を80%とする計画を説明したのを受けて、上村氏は次のように発言しています。

  「(上村代行)それは自己矛盾というか、本来は全員支払う義務がありますね。仕方なく75%でしょう。それなのに目標は80%ということは、それは80%でよいのだというメッセージになりませんか。全員に義務があるのだから裁判をやってでも取ろうと言っているときに80%が目標ですというのは、何か違和感がありますが、だからこれは公表しなくてもいいのではないかと思いました。」

  このような上村氏の発言を聞かされると、上村氏は今のNHKによる外部営利法人への委託を通じた受信料徴収の実態、そこから報告される「収納率改善」の真相をどこまで理解しているのか、理解しようとする問題意識があるのか、疑問に思えます。
  とりわけ、美馬委員が「視聴者と語る会 in 函館」(2016514日開催)で語った次のような発言と対比すると、なおさら、上村氏の受信料制度論の薄っぺらさが際立ちます。

 
 「(美馬委員)受信料制度について『公平負担を徹底するために、税金のように全員から徴収するべきでは』というご意見は、これまでの『視聴者のみなさまと語る会』でも度々出てくるご意見ですが、公共放送の財源をこのような方法で徴収し、80%近い方々にお支払いいただいている国は他になく、イギリスやフランスやドイツの方と話をすると『税金のように徴収せずに、そこまでよく払ってくれますね』と言われます。このことを翻って考えてみると、それだけ皆さまとNHKの間に厚い信頼関係があり、その信頼関係の下に公共放送が成り立っているということを強く感じています。
  税金のように徴収することで徴収にかかる経費は削減できますが、一方で、現在のような形で受信料をお支払いいただいているからこそ、NHKに対して意見を言うことができたり、『視聴者のみなさまと語る会』のような場があり、意見交換ができるのではないか、と考えます。」 (前掲「語る会」実施報告より)

 以上のように受信料収納率目標、徴収方法に関する上村氏と他の経営委員の発言を読み比べると、上村氏の発言には、「対話なき」受信料の「取り立て」についての関心がいかに希薄か、視聴者目線がいかに欠落しているかが浮かび上がってきます。
 こうした視聴者目線の欠落は、上村氏が経営委員は国会で選ばれた、国会と共働でNHKをコントロールする使命を負っているという「国会目線」、政府によって任命された以上、いかに問題のある会長でも罷免しにくいという「政府目線」の強さに災いされたものであると思えます。

  
                    (以下、次回に続く)

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