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TPPからの離脱を~大学教員の会:緊急声明を発表~

 20161128
 
 TPPの国会承認手続きが緊迫した状況になっている折、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」は17名の呼びかけ人が協議した結果、本日、次のような緊急声明をとりまとめ、報道関係者にリリースするとともに、TPPに関わりが深い団体、個人に広報した。(以下、文中で赤字にしたのは筆者の編集である。)

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                   20161128

緊急声明
  TPPの国会承認手続きを中止し、TPP協定からの離脱
           を要求する

     TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会

 日本政府はトランプ・米次期大統領がTPPからの離脱を明言した今もなお、日本主導でTPPの発効にこぎつけると公言し、国会承認手続きを強行しようとしている。
 当会は、以下の理由から、政府与党のこうした動きに強く抗議し、TPP協定の国内承認手続きを直ちに中止するとともに、日本がTPP協定からすみやかに離脱することを要求する。

 1.目下、国会で承認を求められているTPP協定には、わが国がTPP交渉に参加するにあたって衆参農林水産委員会で決議された事項に反する内容が随所に含まれている。そのような協定文書を国会が承認することは国権の最高機関として自殺行為に等しい。また、TPP反対を公約に掲げて当選した国会議員がTPP協定の承認を強行する「数の力」に加担するのは国民に対する重大な背信行為であり、とうてい許されない。

 2.目下、国会で審議されているTPPのテキストだけでは不明な懸念事項が山積している。
 協定文書には、「物品の貿易に関する小委員会」、「農業貿易に関する小委員会」、「政府調達に関する小委員会」などの設置が明記され、多くの分野で追加協議が行われることになっている。政府は再協議には応じないと語っているが、かりにTPPが発効した場合、これら小委員会の場で日本に対し、目下の最終テキストを上回る市場開放要求ならびに規制・制度の改変・撤廃の要求を突きつけられる公算が大である。
 そのように不透明な要素をはらむTPPを前のめりに承認することは、わが国の国民益をグローバル企業に売り渡す危険を顧みない暴挙であり、許されない。

 3.とはいえ、米国の離脱が確定的になったことから、TPPの発効はもはや不可能となった。そのような死に体のTPP協定をわが国が国会で承認しようとするのは無意味というにとどまらず、危険で愚かな行為である。
 なぜなら、トランプ次期米国大統領はTPPに代えて、今後はアメリカ第一主義の立場に立った二国間協議に注力すると明言している。日本がこの二国間協議の最大のターゲットになることは明らかである。となると、日本が各国の動向を顧みず、協定文書を国内で承認すれば、たとえ、TPPが発効に至らないとしても、各国から「日本はここまで譲歩する覚悟を固めた」という不可逆的な国際公約と受け取られ、日米二国間協議の場で、協議のスタートラインとされる恐れが多分にある。このような懸念は以下の事項で特に大である。
 
 ➀ すでに日本はTPP協定交渉に参加するにあたって「入場料」としてBSEの輸入制限を30か月齢以下まで緩めた。この先、米国は「科学的根拠を示せない輸入制限は撤廃すべき」と迫ってくることは必至である。遺伝子組み換え食品の表示やポスト・ハーベストの規制についても同様の論法で撤廃を迫られる恐れが強い。TPP協定文書では、農業・畜産の分野で関税ゼロに向けた片道切符の市場開放の協議を約束させられている。
 TPPの発効を待たず、「自主的に」米国の理不尽な要求に屈して市場を「開放」してしまった汚点は消えないが、TPP協定の国会承認を思いとどまることは、これ以上、米国の要求を飲まされる「アリ地獄」にはまらないための歯止めとしての意義がある。と同時に、国会決議に反して約束させられた市場開放を無効化し、今後の日米二国間協議で理不尽な市場開放・規制撤廃要求を拒む足場となる。

 ② もう一点は医療の分野での懸念事項である。わが国では超高額医薬品の登場が大きな社会問題(限度を超える患者負担、医療保険財政への過重負担)となっている。過日、市場拡大再算定制度を発動して緊急の値下げが図られた事例があるが、米国は日米経済調和対話の場で、「成功した製品の価値を損なう」として、この薬価再算定ルールの撤廃を要求してきた。
 わが国が「自由貿易主義の旗手」を気取って国民のいのちと健康を守る規制の撤廃を受け入れる意思を表明したり、国内の審議機関への外国資本の参加に道を開いたりすることは、米国第一主義の餌食となる恐れが強い。

 当会は、対等平等、互恵の精神に立った国際的な経済連携の実現を期待する立場から、それとは相容れない、食の安全と自給、国民のいのちと健康、国と地方自治体の経済主権を多国籍資本の営利に明け渡すTPPの国会承認の中止、TPP協定からの離脱を政府と国会に要求する。

                           以上

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なお、大学教員の会の呼びかけ人(17名)は以下のとおりである。
  磯田 宏(九州大学准教授/農業政策論・アメリカ農業論)
  伊藤 誠(東京大学名誉教授/理論経済学)
  大西 広(慶応義塾大学教授/理論経済学)
  岡田知弘(京都大学教授/地域経済学)
  金子 勝(慶応義塾大学教授/財政学・地方財政論)
  楜澤能生(早稲田大学教授/法社会学・農業法学)
  志水紀代子(追手門学院大学名誉教授/哲学)
  白藤博行(専修大学法学部教授/行政法学)
  進藤栄一(筑波大学名誉教授/国際政治学)
  鈴木宣弘(東京大学教授/農業経済学)
  醍醐 聰(東京大学名誉教授/財務会計論)
  田代洋一(横浜国立大学名誉教授/農業政策論)
  萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授/アメリカ経済論)
  日野秀逸(東北大学名誉教授/福祉経済論・医療政策論)
  廣渡清吾(東京大学名誉教授/ドイツ法)
  山口二郎(法政大学教授/行政学)
  渡辺 治(一橋大学名誉教授/政治学・憲法学)




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「国家の干渉からの自由」を超えて「国家への干渉の自由」を

20161110

 私も共同代表の末席に加わっている「東京・教育の自由裁判をすすめる会」から昨日、第12回定期総会の案内状が届いた。その中で出席がかなわない場合はメッセージを、と書かれていたので、欠席の通知と併せ、次のようなメッセージを送った。小見出しはこのブログに転載するにあたって追加したものである。

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                      20161110
東京・教育の自由裁判をすすめる会
12回定期総会へのメッセージ

                      醍醐 聰

「内心の自由」は個人の尊厳を守る最後の砦
 長らく名ばかりの共同代表となっていることを申し訳なく思っています。
 「絶望の裁判所」ともいわれる司法の扉を一歩ずつ開かせ始めた皆様の長期にわたる粘り強い運動に心より敬意を表します。

 私は日の丸、君が代の強制に反対する運動に関わって以来、「内心の自由」は人間の尊厳を守る最後の砦と考えてきました。
 と同時に、私は「内心の自由」とそれを表現する「外的行為の自由」を
切断する論法にも大いなる異議を感じてきました。
 なぜなら、言論の自由が奪われた極限的状況のもとでは「沈黙する自由」は人間としての尊厳を守る最後の砦と言えますが、言論の自由が強権的に封じ込められたわけではない今日、言論・表現の自由とは個人の興味にふける自由でもなければ、「
国家の干渉からの自由」だけでもなく、「国家への自由」、つまり、主権者たる国民に国家を奉仕させる能動的自由でなければならないと考えるからです。

意見の違いは「認め合う」だけでよいのか?
 
今回、お送りいただいた案内封筒に「この国をいろいろな意見の違いを認め合う寛容な社会に」というタイトルが付けられたパンフレットが同封されていました。日の丸、君が代の強制に反対する運動の啓蒙的な文書としてはもっともです。
 ただ、言論、表現の自由のそもそも論から言えば、意見の違いを認め合うことが究極の目的ではないと私は考えています。各々の意見、思想を尊重し合いながら、ぶつけ合うことによって、互いに自省し、啓発し合って、各人の理性を磨き、高め合うことこそ、言論の自由の究極の価値であり、目的であると思うからです。

 上記のパンフレットで使われた例えでいえば、「原発は安全だと主張する自由」も「原発は危ないと主張する自由」も認め合うことが言論、思想の自由の本意ではなく、真理に近づくために不可欠な、「思いの通りに物を言う」自由のことだと思うのです。

 日の丸、君が代にしても、教職員の方々自身の人権、尊厳という面からは別の議論があり得ると思いますが、教育という観点からは、「起立する自由」と「起立しない自由」、「歌う自由」と「歌わない自由」を認め合うことが究極の目標ではないと考えています。そうではなくて、日の丸、君が代の成り立ち、使われ方を共同で考え、討論すること通じて、日本の歴史、とりわけ近・現代史の真実を、世界史の中で、学ぶ機会にするという能動的な位置づけが重要ではないかと感じています。
 両方の自由を認め合うということは、意見の違いを「脇に置く」、「棚に上げる」ことでも、日の丸、君が代を「タブーにする」ことでもないと思うのです。

「日の丸・君が代」強制に対する「攻めの運動」を
 昨今、国家の統治権と人権を逆転させる動きが強まっています。しかし、本来、国家は人権の保障のために形成された機構であり、国家の統治権は人権の保障という目的に沿ってのみ行使されうるものです。

 天皇の生前退位、天皇の「公務」の範囲に関して議論が集まっています。しかし、それ以前に、私は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」という日本国憲法の第1条で言われる「統合」とはいかなる行為、表象的効果を意図するのかに関心を向けています。

 「主権の存する日本国民の総意に基く」と断りながら、天皇の名において意図される「国民統合」とは何を意味するのか、象徴に過ぎない人物、造物が主権者を統合するとは、いかなる意味なのか、日の丸、君が代はそうした「国民統合」のツールとは無縁なのかどうなのか、という疑問です。

 過日のリオ・オリンピックでは、「国威発揚」を掲げ、国家が国旗・国歌というシンボルを用いて国民、世論を束ねようとする動きが顕著でした。東京五輪・パラリンピック組織委会長の森喜朗元首相は「どうしてみんなそろって国歌を歌わないのか。国歌も歌えないような選手は日本の代表ではない」と公言しました。

 机上の理想論と言われることを承知のうえで、私は前記のような問いかけを掲げた「攻めの運動」を皆様に期待したいと思います。
 私も、この十数年、関わっているNHKの報道を正す市民運動の中で、また、ささやかな自分のライフワークの中で、言論、報道の自由を「国家からの干渉を拒む自由」にとどめず、国民の知る権利に応える「国家への自由」に近づける運動に微力ながら、参加したいと考えています。




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3万筆まであと1,000筆~次期NHK会長選考への要望署名~

2016114

〔続報/11月5日、1時34分追記〕 累計3万筆突破
 11月4日24時現在の集約で累計署名数は3万1,503筆となった。
 11月4日の増加署名数: 用紙署名2,379筆 ネット署名96筆
                 計2,475筆

 今日にも3万筆突破
 8
11日以降、全国27の市民団体は連名で次期会長選考に向けた3項目の要望の賛同署名は目下、第三次の呼びかけ中(集約日114日、最終締め切り116日)であるが、昨日(113日)現在で用紙署名到着分とネット署名を合わせ、累計で29千筆を超え、3万筆まであと一歩になった。今日、明日にも3万筆を超える見込みである。

  万単位の署名を積み上げることが、経営委員会に視聴者の声を届ける力の一つになると考えている。それだけに、残る期間内に市民団体の自力と多くの方々のご協力で、ぜひとも3万筆に少しでも上積みする署名を達成したい。

 署名呼びかけの詳細は次をご覧いただきたい。ネット署名の入力フォーマットも入っていて、そのままで送信できます。署名用紙のダウンロードもできます。ご協力をお願いします。
 署名用紙のダウンロード  
   http://bit.ly/2aVfpfH


 
ネット署名の入力フォーム   
  https://goo.gl/forms/G43HP83SSgPIcFyO2
 
ネット署名に添えられたメッセージはNHK改革の宝の山
 今回の次期NHK会長人事に関する要望署名運動は数を追求するだけの運動ではない。ネット署名に添えられたメッセージを読んでいくと、NHKを視聴者本位の公共放送に改革していくための宝の山という気がしてくる。と同時に、NHK問題に関わってきた自分の感性を洗い直す数多くの材料を得た思いがしている。

 メッセージの中のいくつかを、このブログでこれまでに6回にわたって紹介してきたが、以下では、この6日間に届いたメッセージの中から4つを紹介しておきたい。
 すべてのメッセージは、個人情報を伏せて、次のサイトで公開している。
 https://goo.gl/GWGnYc


以下、冒頭に付けるのは通しの番号である。

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2021

NHK番組でフリーランスとして、時折仕事をします。今のNHK体制だと恥ずかしくて、胸を張って自分の仕事を知人に紹介できません。現状の体制を改善するためにも、籾井現会長の再任に強く反対します。」
 
1029 フリーランス 映像関係)

4038
NHKのニュースと論説などは、ほとんどみません。以前のNHKを思うとまったくの、政権のプロパガンダ機関です。とくに、私たち沖縄に住む者にとっては、最悪の『公共』です。ほとんど、沖縄民衆の敵対者といってもいいものです。職員のなかには良心的で、現状を憂えている者も多数いるはずです。このままではのちのち大変なことになります。」

 (1031日/沖縄県)

4645

「国民の知る権利を奪うNHKの在り方、特にニュース報道に抗議します。私は、1956年生まれ、ちょうど中学生の頃、公害訴訟で負けっぱなしの原告側に物申すNHKの報道(朝ドラが始まる前7:458:15)を毎朝見て、歩いて3分の中学校に通ってました。私にとって国とは弱いもの、国民の見方ではないことをこの時代のNHKの報道から学び、憲法を教えたく教員の道を歩んできました。中立とは、日本国憲法が基準ではないのですか?」

111日/東京都)

4682
「偏向報道にうんざりしています。事実関係を淡々と伝えてほしいと思います。ささやかな、私なりの抗議として受信料契約を拒否し続けてきましたが勧誘員玄関ドアを激しく叩くという脅しについに屈し、今年になって契約してしまいました。大男が大声で呼びながらドアをたたくので恐怖を覚えました。所謂お笑い芸人が相方をひっぱたくような番組制作にも受信料が使われているのだと思うと怒りを覚えます。情けないことに、もっぱら衛星放送で映画を視聴して、元を取ったと思い込もうと努力しております『安倍放送局』は早急にやめていただきたいです。」

111日/岐阜県)

4886
「政府が隠し続ける事実を隠す手伝いをするのが、公共放送の役割ではないはずです。

国民の不利益を報じないのは報道機関としての役割放棄です。報道機関自らの報道規制は、先の戦前と変わらぬ事態です。国民に誤った歴史認識を植え付けたりしないで!

国民の目となり耳となり、事実を報道する勇気を持ち続けてください。権力に迎合するのは、容易いことですが、国民の立場に立つことは生半可ではできないこと。しかし、どんな困難な時代でも人間的であり続ける勇気を持ってください。報道の果たすべき役割はとてつもなく大きく、時代を変える力を持っています。それだけに、責任も重大です。報道機関としての誇りをどうかかなぐり捨てないでください。権力に自分を売り飛ばすな!人間であり続けて!」

113日/埼玉県)

 

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