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「あるはずだ」ではなく、現にある文書の調査・活用を~森友交渉記録の廃棄は「脱法」:(第3回)

20174月9

森友学園関連の文書を突き止めるために
 この連載を始める時は、第3回目の記事で、森友学園問題に関連した行政文書と類似の文書の取り扱いの実態を調べ、それを参照して、「森友学園の案件は売買契約の締結を以て終了したので、保存期間を1年未満とした交渉記録は廃棄した」という佐川理財局長の答弁の信憑性、合規性を検証する予定だった。
 しかし、各省庁が公開している「行政文書ファイル管理簿」を、さまざまな条件を設定して検索していくなかで、近畿財務局、さらに局内で国有財産を所管した管財部が管理者となっている行政文書を検索すると、森友学園にどんぴしゃりの文書は出てこなかったが、森友学園関連の情報が含まれている可能性があるカテゴリーの文書にたどり着いた。
 そこで、この記事では、予定を変更して、私が試みた行政文書ファイルの調査の方法と調査の結果を説明することにした。

行政文書ファイル検索の試み
 具体的には、次のような条件を設定して行政文書ファイル管理簿を検索した。なお、以下で検索対象の文書作成・取得の期間を201241日からとしたのは、この時期から「公文書管理法」が施行されたからである。(法施行後に作成・取得された文書の管理簿を「新管理簿」と呼んでいる。)
 と同時に、2016620日に森友学園への国有地売却に至る次のような経緯があったことが知られている。こうした年譜を突き合わせると、上で設定した文書作成・取得の期間は本件国有地をめぐって、近畿財務局が大阪航空局、大阪府私学課、森友学園とさまざまなやりとりをした時期とちょうど重なることがわかる。

森友学園への国有地売却に至る経過 
  2012年  7月頃   森友学園とは別の学校法人が7億円前後で本件国有地を
         購入したいと近畿財務局に申し出た。しかし、金額をめ
         ぐって交渉が折り合わず、売却に至らなかった。

  2013   6 3日 近畿財務局、公用・公共用に本件土地の取得要望を受け
         付け

       9 2日 森友学園が近畿財務局に取得要望書を提出
       913日 近畿財務局職員、大阪府庁を訪問し、森友学園の小学校
         認可の見通しを聴き取り

    10 2日 籠池夫妻、鴻池議員に陳情 
 20141031 森友学園、小学校設置認可申請書を提出
      1218日 大阪府私学審議会、同上申請について認可保留
 この間、森友学園と近畿財務局の交渉継続
20151月   近畿財務局、大阪府私学課を訪問。再度、上記申請の認
         可の見通しを質問。「私学課事務局がある程度まで審
         議
会をコントロールできるのではないか」と発言

201746

     127日 私学審議会、上記申請を条件付きで認可
     210日 国有財産近畿地方審議会、大阪府の私学審議会が付けた
        条件が満たされることを前提として、本件土地を森友学
        園に
10年の定期借地とすることを了承
    529日 近畿財務局、森友学園に本件土地を、買受特約を付けて
        定借

2016 311日 森友学園、定借中の土地から新たに地下埋蔵物が発見さ
        れたと近畿財務局に連絡

    324日 森友学園、本件土地を購入したいと近畿財務局に申し出
    330日 近畿財務局、大阪航空局に対し、地下埋蔵物の撤去費用
        の見積もりを依頼

   414日 大阪航空局、撤去費用の見積もりを81900万円と近畿
        財務局に報告

   531日 不動産鑑定士、本件土地の鑑定評価額を95600万円と
        報告

   620日 近畿財務局、森友学園と本件土地の売買契約を締結。
        売買価格は
13400万円

試行錯誤の文書ファイル検索
<検索条件Ⅰ>
 *キーワード: <国有財産>&<売払い>
 *文書作成・取得の期間:201241日~201749
 *文書管理者:近畿財務局
<検索結果>
 *ヒット件数:0件 キーワードの「売払い」を「売却」、「売買」と置き換えても、ヒット件数はゼロだった。

 そこで、キーワードの条件を緩め、次のような条件で検索した。

<検索条件Ⅱ>
 *キーワード: <国有財産>
 *文書作成・取得の期間:201241日~201749
 *文書管理者:近畿財務局
<検索結果>
 *ヒット件数:711

 今度はヒット件数が多くなったので、ヒット件数を減らすため、文書管理者を国有財産担当の管財部に限定して検索すると結果は次のとおりだった。

<検索条件Ⅲ>
 *キーワード: <国有財産>
 *文書作成・取得の期間:201241日~201749
 *文書管理者:近畿財務局管財部
<検索結果>
 *ヒット件数:229

 そこで、以下では、この229件を検索対象にすることにした。まず、各件の「詳細」を開くと、「作成・取得年度等」、「大分類」、「中分類」、「名称(小分類)」、「作成・取得者」、「起算日」、「保存期間」、「保存期間満了日」、「媒体の種別」(電子/紙の別)、「保存場所」(システム/事務室等)、「管理者」、「保存期間満了時の措置」(移管/廃棄の別)が表示された。
 ここで注意しなければならないのは、全ての件の「作成・取得年度等」が「2015年度」など年度単位になっていることである。これは相互に関連する文書は1件ごとではなく、年度単位で束ねてファイリングされていることを意味する。
 したがって、229件のどの文書を見ても、「森友学園」とか、「豊中市」とか言った文言は見当たらなかった。そのため、「名称(小分類)」で表記されたタイトルから、森友学園の案件を含むと想定できる文書を選び、その文書の年度ごとのファイルを逐一、調べることによってしか、森友学園関連の文書にアクセスする方法はないと思われた。

ファイルをスポット検索すると
 229件といっても、1件ごとの詳細情報を読んでいくと、国有財産地方審議会の委員任命文書、付議文書、議事録のほか、国有財産の台帳整理、行政表彰の選考案、庁舎使用に関する文書など、すでに公表済みの文書や森友学園関連とは無縁のものが少なくなかった。
 そこで、各ファイルの内容をうかがわせる「名称(小分類)」に注目して、森友学園に関わる記録が含まれている可能性があるファイル(未利用国有地の活用・処分に関する現況を記した文書、処分計画を策定した文書、鑑定評価依頼書など)をスポット的に調べた。

 調べ終えて、森友学園にたどり着くのは至難の道と実感した。しかし、「残っているはずだ」、「隠しているのでは?」と言い続けるだけでは真相究明は前へ進まない。
 そこで、以下、私が注目したファイルをリストアップしたい。なお、たとえば、「処分すべき国有地の現況調書」とか、「国有財産1件別情報」とか言っても、文書管理者は京都事務所、神戸事務所、奈良事務所など所在地ごとに細分されている。以下のリストは、地域事務所ではなく、近畿財務局管財部が管理者となっている文書、つまり、大阪府内に所在する国有地に係わるファイルに限っている。また、各文書ファイルの冒頭の文書名は大・中・小の分類階層の内の「小分類」、つまり、最も細分化された分類名である。また、作成・取得年度は、特に断らないかぎり、20122016年度の全ての年度に保有されている。保存期間の起算日は、特に明記しない限り、すべて作成・取得年度の翌年度の41日だった。

調査する価値があると思われる文書ファイルのリスト
「管内における国有財産の現状
  作成・取得者(=管理者。以下、同じ):管財総括第2課長
  保存期間:3
 *文書名だけでは内容を推定するのは難しいが、近畿財務局が保有した国有財産を俯瞰するのに役立つと思われる。

「売払収入収納見込(実績報告)」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:3
 *森友学園に本件土地が買受特約付きで定借される以前から売却されるまでの間、学園に売払った場合の収入見込みがどのように記載されていたか(いなかったのか)、確認できると思われる。

「処分すべき国有財産の現況調書」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:3
 *森友学園に本件土地が買受特約付きで定借される以前から売却されるまでの間の本件土地の現況がどのように記載されていたのか、確認する意味がある。

「国有財産事務担当者連絡会議」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:3
 *簡単な会議録程度かも知れないが、本件土地について、何か触れられていないか、確認してみる意味はある。

「処分計画の策定」
  作成・取得者:管財総括第2課長
  保存期間:5
 *本件土地が森友学園へ売却されるまでの間、別の学校法人からの購入申し込みも含め、処分計画がどのように記載されていたか(何も記載されていなかったか)、確認する意味はある。

「国有財産見込現在額事由別調書」
  作成・取得者:管財総括第3課長
  保存期間:5
 *本件土地が森友学園へ売却されるまでの間、本件土地の現在額が、事由別にどのように記載されていたか、確かめる価値がある。

「国有財産13億円以上増減調書(大分類名:平成○○年度国有財産増減及び現在額報告書)」
  作成・取得者:管財総括第3課長
  保存期間:5
 *物件ごとの面積、金額の情報だけかもしれないが、本件土地の評価額は3億円以上だったので、おそらくこの文書に何らかの記載があると思われる。

「未利用等国有地の総点検」
  作成・取得者:国有財産調整官1
  保存期間:5
 *この文書ファイルで注目したいのは、国有財産調整官が文書作成・取得者となっている点である。近畿財務局のHPに記載された職務分担表によると、国有財産調整官は、普通財産の管理処分に関する企画立案、債権管理、徴収・収納事務、法令・通達適用審査の業務を担当する部署となっている。
 この点から、本文書ファイルには森友学園への本件土地の定借、売却に関する何らかの経緯、方針、法令の適用・解釈等が記載されている可能性がある。

「国有財産一件別情報」
  作成・取得者:国有財産調整官1
  保存期間:3
 *「1件別情報」と言われると、本件土地に関してもそれなりに詳しい情報が記載されているように思えるが、大分類は「平成○○年度国有財産情報公開システム」となっているので、外部公開を前提した情報とみられるので、未確認の情報は含まれないかもしれない。

「未利用国有地の現状把握」
  作成・取得者:国有財産調整官1
  保存期間:5
 *前記の「「未利用等国有地の総点検」と同様、この文書ファイルも作成・取得者は国有財産調整官となっており、管財部の中でも国有財産の管理処分に関する企画立案、法令解釈等の観点からまとめられた文書と思われ、調査する価値がある。

⑪「取得協議等審査」大分類「平成○○年度国有財産の評価に関する事項」、中分類「鑑定評価」)
  作成・取得者:首席国有財産鑑定官
  保存期間:5
  *「首席国有財産鑑定官」が文書作成・取得者となっている数少ない文書ファイルである。前記のように、森友学園は201392日に本件土地の取得要望書を近畿財務局に提出している。したがって、2013年度から2016年度にかけてのこの文書ファイルに森友学園からの取得要望に関する審査・検討の状況が、本件土地の鑑定評価も含め、何らかの形で記載されている可能性が高い。それだけに必見の文書ファイルと言える。

 の文書ファイルはファイルのタイトルを見る限りでは、「交渉記録」、それも8億円もの値引きに至る交渉記録を直接伺わせるものは見当たらない。その意味ではこれらの行政文書を「宝物さがし」のように扱うのは禁物である。
 
 48日の『東京新聞』朝刊の<こちら特報>欄に掲載された「森友ファイル 実は温存?」という記事は時宜にかなったもので、興味深く読んだ。ただ、記事は「交渉記録」に焦点を当てて、「どこかにあるはず」というトーンで書かれている。
 私もこの連載の1回目の記事で書いたように、向こう10年の賦払いで、10年間有効の買い戻し特約が付いた売買契約を締結したことを以て、「案件は終了した」などと考える行政職員は、まず、いないから、交渉記録も含めた文書がどこにもないとは到底、思えない。
 しかし、佐川理財局長の国会答弁を、目下、利用可能な資料を活用して反証するには、役人は文書を「特定しないとなかなか出さない」と嘆くだけではらちがあかない。

 この記事でリストアップした行政文書ファイルを国会議員、報道関係者が未入手なら、特にあたりを至急、入手してもらい、精査の上、そこから芋づる式に調査を進めてほしいと思う。私自身、近畿財務局へ出かけ、文書ファイルをめくりながら、調査したい気持ちは山々だ。しかし、そうなると45日は現地に張り付いて調べものをしなければならず、もどかしい気持ちでいる。 

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起算日規則に従えば記録は残っているはず~森友交渉記録の廃棄は「脱法」:(第2回)

201747
 
保存期間1年未満でも即廃棄とはならない
 佐川宣寿理財局長は、森友学園への国有地売却の事案は契約の締結を以て終了したので、省内の規則に従い、保存期間1年未満の文書として廃棄したと答弁している。
 確かに、「保存期間1年未満」となると「即廃棄もあり」かに思える。専門家の中には、これを逆からとらえて、「即廃棄も可能となる『保存期間1年未満』という規則や慣例は不当だ」と指摘する論者もいる。
 しかし、こうした議論には、行政文書の保存期間に「起算日」があることを考慮しない致命的な欠陥がある。

 「財務省行政文書管理規則」の第13条第4項によると、行政文書の保存期間の起算日は原則として行政文書を作成・取得した日の翌年度の41日とする、となっている。
 とすれば、森友学園関連の行政文書の管理者である財務省近畿財務局長が、本規則を順守していたら、かりに保存期間が1年未満だったとしても、保存期間の起算日は201741日となるから、森友学園への国有地売却問題が審議された今年の2月~3月の時点では問題の文書は「あった」はずである。

森友関連の文書に「ただし書き」は当てはまらない
 ただし、上で引用した「財務省行政文書管理規則」の第13条第4項には、上記の文章に続けて、次のような「ただし書き」がある。

 「ただし、文書作成取得日の属する年度から1年以内の日であって41日以外の日を起算日とすることが行政文書の適切な管理に資すると文書管理者が認める場合にあっては、その日とする。」

 ここでいう「行政文書の適切な管理に資する」とは、どういう意味なのか? 近畿財務局はこのくだりを使って、起算日を翌年度(2017年度)の41日より早い日とすることができたのだろうか?
 そこで、この文言の解釈を確かめるため、331日、財務省文書課文書係に電話で問い合わせた。そして、途中で代わって応対したOさんと、概略、次のようなやりとりをした。

 醍醐 「第13条第4項の『ただし書き』を保存期間1年未満とされた森
    友学園関連の行政文書に適用したら、文書を作成した後、今年
    の
41日より早く文書を廃棄することもありとなりますが、そ
    ういう処理は想定できますか? 
 
O 「・・・・」
 醍醐 「『ただし書き』で言われる『行政文書の適切な管理に資する』
    という文言を使って、森友学園関連の交渉記録を売買契約締結の
    あと、すぐに廃棄するのは無理な解釈だと思いますが。」
 
 O氏 「・・・・」 
 醍醐 「私の言っていることは法規の解釈として明らかにおかしいです
    か?」
 
O氏 「ご意見としてうかがっておきます。」

 この時、私は起算日以外のこともいくつかOさんに尋ねた。情報公開請求をしなければ入手できない「細則」について、一部を口頭で読み上げて教えてもらったりした。そして、「規則」や「細則」に関する質問には明快にYesNoで答えてもらった。しかし、起算日については、日頃あまり出ない質問だったためか、はっきりした答えが返ってこなかった。そこで、私は自分の解釈は、あながち見当外れではないのではと思ったりした。

 というのも、1つ前の記事で書いたように、起算日を翌年度の41日としない事例の大半は、訴訟関係資料(特定日以降10年保存)、告示・訓令・通達等(通知日を起算日としている模様)、休暇簿、出勤簿など(暦年を用いて11日を起算日としている)、確かに行政事務に資すると思える理由がある場合ばかりだった。森友学園関連の文書に、これに類するような行政事務上の便宜は想定できないのである。

類似の行政文書はどう扱われたか?
~国有財産の売却に関連した行政文書ファイル管理簿の調査より~
 しかし、それは「心証」だと言われたら、それまでだ。そこで、各省庁所管の「行政文書ファイル管理簿」をネットで検索して、森友学園関連の行政文書と類似の文書はどのように管理されたか――具体的には、類似の文書の保存期間の起算日はどのように決められたか、保存期間はどのようになっていたか――を調べてみた。私の調査はまだまだ限られた範囲であるが、これまでに次のような条件で検索した。その結果を書き留めておく。

〔検索の方法〕
 キーワード:<国有財産>&<売却>
 文書作成・取得日の期間:201341日~201746
 文書管理者:全省庁

〔検索の結果の概要〕
 ヒット件数:45件 うち、森友学園案件に類似した文書31
  (注:その他14件のうち13件は「処分すべき国有財産調査票及び売却
    予定表」、
1件は「国有財産用途廃止」に関わる文書)
  *保存期間の起算日(45件すべて)
    文書作成・取得日の翌年度の41日(原則通り) 43
    文書作成・取得日の年度末(331日) 1
    文書作成・取得日の翌年11日(この文書の保存期間は10年)
         1
  *保存期間(森友学園案件に類似した文書31件の場合)
    3年:5件  5年:21件  10年:3件  30年:2

〔コメント〕
  起算日は、45件全体の96%に当たる43件で原則どおり、文書作成・取
  得日の翌年度の
41日となっていた。
 残りの2件のうち1件は文書作成・取得日の年度末(331日)で、原
  則を採用した場合と
1日違い、もう1件は原則日より3ヶ月早い、文書
  作成・取得日の翌年の
11日だった。しかし、この場合も文書の保存
  期間は
10年だったから、文書が作成・取得された年度内に廃棄される
  ことはなかった。

  森友学園案件に類似した文書31件の保存期間はすべて3年以上で、68
  %は5年だった。しかし、そうはいっても、保存期間1年未満とされ、
  保存期間が満了したため、すでに廃棄された文書があった可能性は
  ある。

  以上から、今回調査を行った国有財産の売却に関連した行政文書を見
  る限り、文書の保存期間の起算日を、文書が作成・取得された年度内
  の恣意的な月日と決めて、
1年未満で文書を廃棄した(できた)と考
  えられる事例は見当たらなかった。


佐川理財局長の答弁のジレンマ
~違法行為? それとも虚偽答弁?~

 このような調査と「財務省行政文書管理規則」の条文解釈を踏まえると、森友学園関連の行政文書を今年の41日よりも前倒しで廃棄することは事実上、不可能だったといって間違いない。
 とすれば、森友学園関連の行政文書は、超最短でも今年の41日までは保存されていたはずだ。にもかかわらず、佐川理財局長は今年の224日に開かれた衆議院予算委員会で、森友学園への国有地売却の事案は2016620日の契約締結を以て終了したので、省内の規則に従い、保存期間1年未満の文書として廃棄し、もはや残っていないと答弁した。その後、3月中に開かれた委員会でも同様の答弁を繰り返した。
 そうなると、佐川理財局長の答弁は次のABのどちらかを意味すると考えるほかない。

  A:近畿財務局は「財務省行政文書管理規則」第13条第4項に反
   して、今年の
41日以降、所定の保存期間満了日まで保存し
   なければならなかった行政文書を、それ以前に廃棄するとい
   う違法行為を行った。

  B:今年の23月の時点では実際には「あった」文書を「ない」
   と虚偽の答弁をした。


 現在の私には、AB以外の第3の可能性は想定できない。と同時に、「起算日」規則を知らないはずがない行政事務、法令解釈に精通した財務省役職者が、違法を承知で、今年の41日以前に森友学園関連の行政文書を廃棄するとは考えられないから、Bが真相ではないか? そう考えて、「残っているはず」というタイトルを付けた。
 実際はABのどちらなのか? 国会議員各位は簡単にいなされる質問ではなく、入念な調査のうえ、ギリギリ詰めた質問で、真実を究明してほしい。



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森友交渉記録廃棄は「脱法」:その法的根拠は幾重もある(第1回 総論)

201745

 調査を進めて浮かび上がったこと
 森友学園へ格安で国有地が売却された経緯について、約8割の市民が納得できないと答えている。その大きな理由の一つは、交渉記録は残っていないと財務省理財局が強弁していることにある。佐川宣寿理財局長は、契約の締結を以て事案は終了したので、省内の規則に従い、保存期間1年未満の文書として廃棄したと答弁している。しかし、この説明は到底、納得できない。
 それどころか、公文書管理の関係法令、規則を調べ、内閣府、財務省への問い合わせ、財務省ほかいくつかの省の行政文書ファイル管理簿の調査を進めると、かりに佐川理財局長の答弁通りだとしたら、この件の行政文書管理者である当時の近畿財務局長ないしは本省理財局長は「公文書等の管理に関する法律」第6条に違反する行為を行った疑いが強まる。以下、私がそのように判断するに至った根拠を数回に分けて説明する。

 第1回 「契約締結で事案は終了した」は誤り
 第2回 「保存期間の起算日は翌年度の41日」に違反
 第3回 類似の行政文書に準じると35年間保存が義務
 第4回 他の省の実例に照らしても「廃棄」は不当 

 なお、この連載では、「交渉記録は廃棄した」という佐川理財局長の答弁が事実だと前提して議論をする。しかし、違法性を承知の上で廃棄したとは考えにくいから、前提そのものを改めて、文書は残っていると推論するこを排除していないことを、前もって断っておく。

 まず、この第1回の記事では根拠説明の「総論」を兼ねて、「契約締結で事案は終了したので廃棄した」という佐川理財局長の答弁が誤りであることを論証する。

「契約締結で事案は終了した」とは到底いえない

(理由その1)売買代金の完済は10年先。その完済も赤信号
 まず、佐川局長の答弁とは裏腹に、契約の締結を以て事案は終了したとは到底いえない。2016620日に近畿財務局が森友学園と交わした売買契約書では売買代金13,400万円の支払いは向こう10年の賦払いとされた(第5条)。そのため、契約締結の時点で森友学園が国に即納すべきとされたのは総額の約2割(2,787万円)に過ぎなかった。(実際に森友学園が契約時に即納したのは、売買契約に先立つ定借契約で森友学園が国に納めていた保証金2,730万円を差し引いた57万円だった。)
 
 その先、地下埋蔵物の撤去費用が本当に約8億円だとしたら、森友学園がこの撤去費用の負担はもとより、10年の定期借地の間に小学校用地を買い取る資力があるのか、計画通りに児童と寄付金が集まるのかについて、国有財産近畿審議会でも大阪府の私学審議会でも疑問が続出していた。

近畿財務局が森友学園と国有地の売買予約権付の定期(10年)借地契約を結ぶ案件が審議された「第123国有財産近畿地方審議会」(2015210日開催)の議事録を読むと、会長を含む複数委員から、基本財産が乏しく、寄付に頼る森友学園が定借期間内に土地を買い取れず、定借期間の延長になる恐れはないのかとか、児童が集まらず閉鎖に追い込まれる危険はないのかなど、不安視する意見が相次いでいた(詳しくは末尾の〔付属資料1〕を参照いただきたい。)

 森友学園の小学校開校の可否を審議した大阪府私学審議会でも、20141218日に開かれた会合で、委員から、「基本金がゼロだから計画性がない。かなり赤字になっているのでは」とか「もしうまくいかなかったら迷惑を被った保護者や子供たちに誰が責任をとるのか」といった厳しい意見が出ていた。
 それから2か月後の2015127日に開かれた臨時の審議会でも、委員の中から、「児童・生徒を集めて開校しても計画が頓挫したら、結果的に運営ができない」とか、「こんな絵空事でうまくいくとはとても思えない」といった意見が出ていた。それでも大阪府教育庁の私学課が森友学園の「財務状況を適正なものと判断している」と発言したため、委員のためらいもそこで止まり、「疑念のある点については本審議会が今後も確認を進めるべき」という条件を付けて開校認可となった。

Photo_2

 今になって委員からは匿名を条件にこんな発言も。(329日、「報道ステーション)

         私学審メンバー 「松井知事と維新の報復が怖い」
329
 もともと10年賦払いだったのに加え、上で触れたように森友学園の財務状況が危ういとなれば、売買代金の完済も赤信号となる。であれば、2割ほどの即納金を得た売買契約の段階で事案終了とみなすのは常識的に無理である。

(理由その2)行使される可能性が低くなかった買い戻し特約があった
 2016620日に近畿財務局と森友学園が交わした国有財産売買契約書では、森友学園は、売買物件について2017331日(以下「指定期日」という)までに必要な工事を完了し、指定用途(注:学校用地)に自ら供さなければならない」(第23条第1項)とされ、この指定期日までに土地を指定用途に供さない場合、近畿財務局は売買物件を買い戻すことができるという特約が付けられていた(第26条第1項)。ただし、近畿財務局による、この買戻し権は売買契約の締結日から10年間、有効となっていた(第26条第2項)。

 森友学園が(理由その1)で指摘したように、きわめて不安定な財務状況にあった中では、この買戻し特約が実行される可能性は低くなかった。とすれば、狭く解釈しても、買い戻し特約が実行される日、または買い戻し特約の有効期間が終わる2026619日までは森友学園への国有地売却の事案は終了しないと考えるのが適当である。

類似の文書の実例に照らすと35年保存すべき文書だった

 次に、「保存期間1年未満の文書として廃棄した」という扱いにも疑問がある。近畿財務局は大阪府教育庁、大阪航空局と学校認可の見通し、土地の鑑定評価、地下埋蔵物の撤去に要する費用の算定などをめぐって、たびたび、協議していた。

「財務省行政文書管理規則」の別表第1によると、他の省庁との協議の経緯を記録した文書の保存期間は10年となっている。また、国有財産の管理・処分に関する重要な経緯を記録した文書の場合も10年となっている。
 ただ、「他の省庁との協議」とか「国有財産の管理・処分に関する重要な経緯」とか言っても、内容はさまざまで重要性をどのように判断するかで保存期間も違ってくると考えられる。

 そこで、財務省あるいは近畿財務局が管理者となっている「行政文書ファイル管理簿」のうち、201441日以降に作成または取得された行政文書で、森友学園への国有地売却の経緯を記した交渉記録に近似する文書名を検索した。すると、近畿財務局内の国有財産関連部署の内部会議の記録文書の保存期間は3年、国有地の管理処分に関する要望、協議の記録文書の保存期間は3年ないしは5年となっていた。
 ここから、今回の森友学園への国有地売却の経緯を記した交渉記録は35年の範囲で保存されるべき行政文書であったと考えられる。にもかかわらず、「保存期間1年未満」とするのは、違法とまでは言えないとしても、不当不適切な処理だったといえる。(詳細は、この連載の3回目の記事で説明する。)

「保存期間の起算日」規則に照らせば、「不存在」はあり得ない

 「財務省行政文書管理規則」の第13条第4項によると、保存期間の起算日は原則として行政文書を作成・取得した日の翌年度の41日とする、となっている。となると、たとえば、2016年6月20日に作成した行政文書の保存期間をかりに5年としたとすると、保存期間の起算日は2017年4月1日となり、保存期間の満了日は2022年3月31日となる。
 現に、全ての「行政文書ファイル管理簿」を公開している厚労省の行政文書のうち、これまでに調査を終えた政策統括官(総合政策担当)、職業安定局雇用開発部、医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部、社会・援護局の
4つの部署が管理する行政文書の約95%は保存期間の起算日を原則どおり、文書作成日の翌年度の41日としていた。

 起算日が、文書を作成・取得した日の翌年度の41日ではないのはどのような場合かというと、作成年度の331日(原則と1日違い)、訴訟関係資料(特定日以降10年保存)、告示・訓令・通達等(通知日を起算日としている模様)、休暇簿、出勤簿など(暦年を用いて11日を起算日)としている場合が多かった。
 「保存期間1年未満」という事例は私が調べた限り(内閣府、厚労省)では皆無で、稀に「保存期間1年」という文書があった。ただし、そのすべては起算日を原則どおり、翌年度の41日としていた。

 以上から、かりに百歩譲って、近畿財務局が森友学園への国有地売却の経緯を記した交渉記録の保存期間を「1年未満」と決めていたたとしても、起算日規則に照らすと、最短でも今年の41日までは保存しておかなければならなかった
 よって、この23月に開かれた衆参両院の予算委員会等で、佐川理財局長が答弁したとおり、それら文書を「保存期間1年未満」とし、国有地売買契約の締結で事案は終了したので交渉記録は廃棄した」とすれば、明らかに違法(「財務省行政文書管理規則」第13条第4項に違反)な行為となる。
 ただ、行政文書管理に精通した行政機関が本当にそのような取り扱いをしたのか、大いに疑問で、文書がなお存在する可能性が高いと思える。(詳細は、この連載の第2回の記事で説明する。)

まとめ

 1.「売買契約の締結を以て事案は終了したので交渉記録は廃棄した」という佐川理財局長の答弁は、それが事実の説明だとすれば「起算日基準」を脱法する違法行為となる。事実の説明でないとすれば、虚偽答弁である。

 2.財務省が作成・取得した類似の行政文書の管理方法を参照すれば、保存期間を3~5年とするのが適当と考えられる。ただし、今回の森友学園の事案では、売買契約に付された買い戻し特約の実行日または失効日の翌年度の4月1日を起算日として、財務省国有財産関連の類似の行政文書の管理に準じ、保存期間を3~5年とするのが適当(だった)と考えられる



〔付属資料 1〕
「第123回国有財産近畿地方審議会」(2015210日開催)議事録からの抜粋

 「H委員 ・・・・この少子化の中で、『私立の小学校を作るのでその運営主体に土地を売却する』ということですが、私学の小学校経営というのは本当に大丈夫なのでしょうか。・・・今後の10年で私立の小学校の経営環境というのはそれほど改善しないと思われますが、いざ、売却する段になって、地価が上がっていて、買い手が『その価格では買えません』と言い出すリスクはないのでしょうか。」

 「立川管財部次長 リスクはあると思いますが、一般的に同様の事案全てにあてはまることだと思うのですけれども、リスクは一定程度あるのだというふうに思っています。・・・・定例的に財務内容、決算書とかそういった財務関係書類を提出していただいて経営状況といいますか、お金の具合といいますか、内部留保の積み上がり方をチェックさせていただくというふうなことを考えておるところでございます。」

 「K委員 ・・・・ということで、そこまでの安全はきっと私学審議会でチェックされているとは思いますが、その上で10年経って定借延長します。しかし、さらに経営が改善される見込みがなくて募集停止になりましたというような最悪の際には、こういう土地は定借の期間をあるところで打ち切って国に戻すというような流れになるのでしょうか。」

 「立川管財部次長 ・・・・そういった契約解除するまでにも法律上至らないような場合でも、10年後には確定的に戻ってくるということで、一応最大の担保はそこだというふうに考えておるわけですけれども、そういった事態にできるだけならないように、平素からちゃんとグリップしていこうとは思っていますけれども。」

 「K委員 今おっしゃったのは、10年後には確実に戻ってくるとは言えないのですよね。」

 「中野会長 ・・・・私もこの学校を知りませんけれども、いわゆる基本財産というものが小さくて学校を作る、それでスケジュール表の中で来年4月にもう開校になっているのですね。まず、建てるだけでも1年間で建てられるのかという問題がありますが、募集を始めるということになっているわけですね。小学校開校をね。だから、スケジュール的にものすごく短い。・・・・それから寄附金で建物を作ると。これだけでも10数億円はかかるはずですよね。この坪数から言うと。
 だから、そういう意味では、おっしゃるように継続できるのかと。寄附金でやるからいいんだということになるのでしょうし、それから学校法人法では基本的には所有するという前提になっていますよね。学校法人は、こういう借地をするときですが、こういう国有地の場合は認められるかもしれませんが、一般的には駄目で、非常に異例な形だなという感じの印象を持っています。ですから、貸付けを10年間やって、10年後に買ってもらうという形なので、ちょっと今までの案件とは随分、性格を異にするような案件のように私は思っています。」 

〔付属資料 2〕参考資料
*「公文書の管理に関する法律」
  http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO066.html 

*「財務省行政文書管理規則」
http://www.mof.go.jp/procedure/disclosure_etc/disclosure/kanrikisoku/bkanri20150401.pdf
 

*「第127回国有財産近畿地方審議会の開催結果」(2017323日開催)
  http://kinki.mof.go.jp/content/000166370.pdf
 この中に、
  ・「第123回国有財産近畿地方審議会(2015210日開催)議事録」
  ・「国有財産売買契約書」
 が納められている。

*「厚労省行政文書ファイル管理簿一覧」
  http://www.mhlw.go.jp/shinsei_boshu/gyouseibunsho/



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「避難指示解除」の隠れた現実を伝えないメディア

201743
 
 
331日~41日を中心に、福島県内での原発「避難指示解除」をめぐる報道をモニターした。以下は、私が視た限りではあるが、その番組批評である。

 NHK,民放とも現地からのレポートをまじえて「解除」「帰還」の現実をそれなりに伝えた。しかし、「見えない」、「見せない」現実にどこまで迫ったかとなると、重大な疑問、限界を感じた。

「帰還希望者は16.0%」という数字はミスリーディング

 多くのメディアが伝えた、この「16.0%」という数字は復興庁が去年10月に公表した富岡町の住民意識調査の結果である。しかし、この数字には注意しなければならない点が二つある。

 一つは帰還の時期である。復興庁が公表した「住民意向調査速報版(富岡町)の公表について」(20161025日、記者発表)は次のとおりである

http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/ikoucyousa/20161025_ikouchousa.pdf 

 この元資料を見ると、「戻りたい」と答えた人の中で「避難指示解除後すぐ」と答えたのは36.0%である。つまり、回答者全体の中で「避難指示解除後すぐに帰還」と考えているのは5.8%(=0.16×0.36)に過ぎない。「戻りたい」という人のうちの残りは「解除後310年以内」が25.6%、「時期は決めていない」が37.5%となっている。いろいろネットで調べると、「帰還の時期」も含めて住民の意向調査の結果を伝えたのはインターネット・ニュースチャンネル「Abema Prime」(だけ?)だった。

「『避難指示』帰還困難区域など除き解除 避難生活者『今の状況では帰る選択はない』」(Abema Prime Time, 2017311日)
 https://abematimes.com/posts/2121835 

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  政府による避難者への慰謝料の支払いは来年3月分で打ち切られる。指定区域外からの自主避難者への住居の無償提供もこの3月末で打ち切られ、条件付きの家賃補助に切り替えられた。こうした避難者支援の打ち切りとセットの「避難指示解除」の意味を考える上で、避難指示解除後すぐに帰還する意向の住民が全体の6%に過ぎないという情報は極めて重要である。大手メディアはなぜ、こうした情報を伝えないのか? 

 「帰還希望者は16.0%」という数字が持もう一つの限界は、この数字が全年代の平均だということである。37日に放送されたNHK「おはよう日本」は「震災6年 ふるさとへの帰還進めるためには」というタイトルの特集を組んだ。その中で、上と同じ富岡町の「戻りたい」とする住民の意向を年代別に調べたグラフを示した。
 これを見ると、平均は16.0%だが、70代以上で20.8%の一方、30代では8.2%、20代以下では4.9%となっている。

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 331日のNHKニュースウオッチ9は「戻る住民 避難し続ける住民」というテロップを出して避難指示「解除の現実」を伝えた。そのような伝え方をしたのは、帰還した住民と避難先で住み続ける住民の医療をともに担うための医師、職員の配置が予算の制約から難しくなっている実態を伝えるためだったことはわかる。そういう現実にスポットを当てたことも重要だと思う。
 しかし、「戻る住民 避難し続ける住民」という表現では、住民の意向が二分しているかのように伝わる。現実はそうではなく、上記のAbema Prime Timeニュースに登場した避難住民が語ったように、「今の状況では帰る選択はない」ということではないか?「帰還」と言っても多くは昼間の一定時間だけ、というのが現実のようだ。帰還の時期に関する住民の意向の分布はそのことを物語っている。

 6年ぶりに自分の家で食事をし、畑仕事をする家族の喜びはよくわかる。しかし、地域にもよるが、帰還しても隣近所は空家、コンビニも1店だけ、夜は真っ暗、学校の再開も来年度以降では、帰還して元の自宅での生活もままならない。
 41日のNHKニュース7に登場したコメ農家の住民も、自分が先頭に立って米作の再興に取り組まなければと抱負を語っていた。しかし、除染で砂を敷いた田んぼは雨で肥料が流れてしまうと語り、米作の再開と言っても田んぼの除染効果を確認するため、町が行う「実証栽培」に参加するという段階だ。また、帰還といっても、当分はいわき市から片道1時間かけて富岡町に通い農業を続けるという。
 さらに、帰還した住民にとって、勤労/若年世代がどれくらい帰還し、定住するかは町の復旧、復興にとって決定的な意味を持つ。その意味で、「おはよう日本」が伝えた年代別の帰還の意向割合は重要な情報と言える。

「解除の指針20ミリシーベルト」の意味をなぜ問わないのか

 政府が避難指示を解除する指針としたのは「年間放射線量20ミリシーベルト以下」という基準だ。しかし、専門家の間では周知のことだが、もともと、この基準値は国が避難指示を出す基準として用いた年間放射線量である。国際的にも事故やテロなど緊急時の対応を発動する基準として作られたもので、平常の生活を営むことを可とする基準ではない。(自然界にもともと存在する放射線<自然放射線>からうける放射線量は、世界平均で年間約2.4ミリシーベルトと言われている。)

 避難指示解除の指針として「20ミリシーベルト」を使うのは帰還第一主義の国策を正当化し、つじつまを合わせるためのものである。このような背景を伝えない報道は見えない形で棄民の国策に翼賛するものと言っても過言でない。

政府話法に立ち止まらないメディア
 今村雅弘復興相は312日放送のNHK「日曜討論」で、福島原発事故の自主避難者について、「ふるさとを捨てるのは簡単」、「ふるさとに戻って頑張っていくんだという気持ちを持ってもらいたい」と発言した。
 原発避難者ではない私でも、自分の意思でふるさとを捨てたかのようなこの発言は「長靴業界、儲かった」の発言よりも重大と思え、このブログに批判の記事を書きとめた。しかし、世の中もメディアも今村発言に批判はおろか、ほとんど関心を向けなかった。
 
 今村大臣の発言を聞いて、私は2011411日の閣議決定で、東日本大震災復興構想会議を設置するにあたっては「単なる復旧ではなく、未来に向けた創造的復興を目指していくことが重要である」という文言があったのを思い起こした。その時(2011422日)も、

「復旧なくして復興なし~被災地は高邁なロマンの実験場ではない~」

 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-765f.html


という記事を書き、「復旧は『単なる』といえるほど軽い事業なのか?」と憤りを綴った。
メディアは、一見してそれとわかる政治家の暴言は大々的に伝えるが、一見ではわかりにくい政治家の暴言は素通りすることが多い。しかし、「棄民」政治を生む政治家の本性を表す言葉にメディアも市民ももっと敏感でなければならない。いつ何時、自分も「棄民政治」の冷酷さを味わうか、わからないのだから。

「ゼロから」ではなく、「ゼロへの」スタート
 そうしたメディアの状況の中で、救われる思いがしたのは今日(43日)の『朝日新聞』社説が「ゼロへのスタート」という飯館村の菅野典雄村長の含蓄に富んだ言葉を紹介したことだ。避難指示解除はふるさとでの元の生活の再開を待ち望んだ人々にとっては、明るいニュースに違いない。
 しかし、メディア、特にNHKは天皇夫妻や有名人が避難先を訪ね、慰問をする姿を「明るい話題」として大きく報道してきた。慰問の気持ちに背を向けるつもりはないが、天皇夫妻が慰問し、ひざまずいて励ましたからと言って復旧が進むわけではない。
 ふるさとへ戻る人も、今度は廃炉のなりゆきに不安を訴えている。その意味で、帰還は「ゼロから」ではなく、ゴールが見えない「ゼロへの」スタートにほかならないという現実をメディアはリアルに伝えなければならない。

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