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NHK政治部・原聖樹記者宛てに質問書~611名の連名で~(2)

2017726

                         2017725
NHK
政治部
原 聖樹 様

      「クローズアップ現代+」(619日放送)における
         貴職の発言についての質問書(続)

                   NHK視聴者有志611名(有志名簿は同封別紙)

ご発言②について

 d613日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、
 「平成2811月の特区諮問会議決定で『広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り』との限定を付したのは、これは誰がどのように起案して、どのように話し合いがされて、ここで限定が付されたのでしょうか。」

という記者の質問に対し、八田達夫氏は、

「これは基本的には3大臣の中で決められたわけです。最後、諮問会議に出されたこの案を提示されたのは、山本大臣だったと理解しています。山本大臣はその前にワーキンググループのサジェスチョンを聞いて下さいました。」

と答えています。

 e)しかし、諮問会議の有識者議員が山本幸三特命担当大臣に対して、いつ、どこで、どのようなサジェスチョンをしたのか、それに対して山本大臣はどのような応答をしたのかについて、諮問会議の議事要旨にも配布資料にも一切、記録はありません。
 また、山本大臣が有識者議員のサジェスチョンを踏まえて「広域的」という文言を追加することを諮問会議で提案した事実も、諮問会議で「広域的」とか、平成304月を開学予定とするとかいった重要な条件をめぐって議論が交わされた事実を証する記録も、議事要旨に一切、見当たりません。
 結局、京都産業大の申請を不可能にし、加計学園だけが残る結果になった「広域」条件、「平成304月開学」といった条件が、いつ、どのような議論を経て決まったのか、その経緯はブラックボックスになっています。

 f)諮問会議の有識者議員が適正な手続きの一つとして挙げた「三大臣合意」について、山本特命担当大臣は今年の66日に開かれた参議院内閣委員会で、この「三大臣合意」が交わされた経緯の説明、「三大臣合意」文書そのものの提出を再三、求められたのに対し、次のように答弁しています。

 「この三大臣合意というのは、これは大臣として確認した事項であります。公式の文書として作ったものではありません。
 そもそも行政文書というのは、国家公務員がその職務を遂行するに当たり法令等に基づき適正に作成、保存しているものであり、これに違反した場合には懲戒処分等、さらには公文書偽造罪に該当することになるなど、その真正性については制度的に担保されているところであります。
 ただ、二十八年の十二月二十二日に作成されたこと、これはもう私ども三大臣として確認しているわけであります。したがって、その真正性を証明するために、これ以上役所が保有する個別の電子ファイルについて逐一プロパティーデータ等に遡って確認することまで求められるとすれば今後の行政遂行に著しい支障を生じることになるために、行政サイドとして到底対応できるものではないと考えております。」
 
 g)しかし、上記の三大臣合意は国家戦略特区として新設の獣医学部を選定する際の重要な条件を定めた文書であり、「内閣府本府行政文書管理規則」の「別表第1 行政文書の保存期間基準」の分類に従えば、「6 関係行政機関の長で構成される会議(これに準ずるものを含む)の決定又は了解の立案の検討及び他の行政機関への協議その他の重要な経緯」を証する行政文書に該当し、10年の保存を義務付けられるものです。
 となりますと、山本大臣の上記の国会答弁は内閣府が「公文書管理法」の次の定めに違反する行為を行った公算が強いことを意味します。

 「第4条 行政機関の職員は、第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
 一 省略
 二 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
 三~五 省略」

 質問2-1
 獣医学部新設をめぐる最大の疑惑は「加計ありきの選定ではなかったか」という  点ですが、原様は、特区選定の手続きは適正に行われ、違法性はない、という諮問
会議有識者議員の主張をなぞる解説をされました。
 しかし、原様がなぞられた諮問会議有識者議員の主張には、事実に反する点、重
要な事実を無視した点があります。
 この意味で、原様の解説の③④の箇所は「正確な取材に基づいて真実や問題の本質
に迫る」姿勢、「虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢」を欠くものだったと私たちは考えます。
 この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-2
 原様は解説③④の箇所で、「違法性はなかった」という諮問会議の有識者議員の発言
を紹介されました。しかし、619日の「クローズアップ現代+」の主題は 「特区選定の過程で公平性や透明性は保たれていたのか」ということでした。
 このような番組の主題、ねらいに照らせば、問題を「違法性」に絞る諮問会議有
識者メンバーの主張をそのままなぞった原様の解説は番組の主題、ねらいにそぐわず、「問題の本質に迫る」姿勢に欠けるものだったと思われます。
 この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-3
 上記のような山本特命担当大臣の国会答弁は「公文書管理法」第4条に抵触する
可能性が強いと私たちは考えます。この点で、今回の特区選定過程には 「違法性」の面から見ても、重大な問題があると考えられます。
  原様はこの点をどのようにお考えか、お聞かせください。

                               以上


(醍醐補注)文書で実在を確認できない三大臣合意

~参議院農林水産委員会会議録(201746 日)より~ 

櫻井充君)・・・・さてそこで、私は三月の十七日に改めて、医学部の場合には三
省合意のある文書がありました、これはホームページにも掲載されております。これについて、三月十七日にうちの事務所から内閣府地 方創生推進事務局企画調整官の方にお願いしたところ、メールが返ってまいりまして、それは何かと いうと、十一月九日の一枚紙、十一月九日の一枚紙しかないと言われました。
 この十一月九日の一枚紙しかなかったので、翌日、再度確認をいたしました。
省合意に当てはま るようなものはないんですかと聞いたところ、ありませんと明確に答えております。それが、いつの 間にか十二月二十二日なる文書、三大臣合意の文書が出てきていること自体、本当におかしなことだ と思います。これはちゃんと明確にしていただきたいんですよ。事務方要らないから。ここは明確にしていただきたいんです。副大臣がだまされているかもしれないんですからね、副大臣。う一度申し上げておきますが、その時点でなかったものが、なぜ急に、突然出すか

  副大臣 松本洋平君))・・・・その上で、その十二月二十二日の文書の取り扱い いうことでありますけれども、そもそもその十二 月二十二日の文書というものはあくまでも内部的な三大臣の確認でありまして、これを正式に外に、 対外的に表している文書というのはまさに諮問会議の取りまとめというような位置付けの下で我 としては処理をさせていただいているところであります。実際に、その取りまとめの中にはこの一校 に限るということが明確に記述をされているわけでありまして、これをもちましてしっかりと皆様 方には提示をさせていただいているという認識であります。

 櫻井充君) そうすると、内部にはあったけれど公表しなかったということでよろしいですね。  

 副大臣 松本洋平君) あくまでも内部の文書であったというような、そういう理解であります。

櫻井充君そうすると、これは稟議書回してちゃんと決裁されているということですよね 

 (副大臣 松本洋平君) 各省庁においてどういう取扱いをされているかというの私の方でお答えを する立場にないと思いますけれども、少なくとも内閣府におきましは、稟議書は回っておりませ ん。しかしながら、先ほど来答弁をさせていただいているとおり、現にその文書は存在をし、そして山本幸三大臣の指示の下に事務方が作成をし、そして山本大臣が確認の下に各省、文科省、農水省に対 してお渡しをしている文書であるということであります。  

櫻井充君) 稟議書が回らないで大臣の名前使うということ、あり得るんですか少なくとも私が内 閣の一員でいたときには、政府の一員でいたときには、そういう決裁の仕方はなかったと思います が、文部科学省と農水省も稟議書はないんでょうか。 

政府参考人 今城健晴君) お答えいたします。十二月二十二日の日に私から山本農林水産大臣に御説明をし御確認をいただいたという行為はございますが、稟議書はございません

  政府参考人 松尾泰樹君) 文科省におきましても、十二月二十二日に内閣府からだいた文書につきまして、松野大臣の御了解をいただき、内閣府に回答したところでざごいまして、稟議書はございません。」

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NHK政治部・原聖樹記者宛てに質問書~611名の連名で~(1)

2017726日 

  6月19日に放映された「クローズアップ現代」は、「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」などと記された新文書をスクープ報道した。番組には匿名で現役の文科省職員も登場した。これは社会部が独自取材で得た資料、証言だった。番組では社会部の記者と並んで政治部の官邸キャップ・原聖樹記者がスタジオ出演した。
  その中で、原記者は、この番組がスクープ報道した文書で示された不公平で不透明な特区選定の実態をことごとく否定し、手続きは全て「議事録」で公開され、一点の曇りもないと胸を張る山本幸三大臣や特区諮問会議民間議員の言い分をなぞり、代弁した。NHKの政治報道を政府広報に貶める元凶は何かを雄弁に物語る解説だった。
  そこで、私たち視聴者有志は特区選定のプロセスについて必要なファクト・チェックを行った上で、昨日、7月25日、611名の連名で原記者宛てに質問書を提出し、8月2日までに文書で回答を求めた。
 質問の骨子は次の2つである。

 ①国家戦略特区諮問会議や同会議による関係者ヒアリングの議事要旨を精査すると、原記者が紹介した山本幸三大臣や諮問会議民間議員の言い分は、特区選定の真相を著しく歪めたものであることが判明する。
 原氏の解説はこうした資料を主体的に吟味することなく、内閣府や「公正・中立」とは到底思えない「民間議員」の言い分を喧伝したものではないか?

 ②「NHK放送ガイドライン 2015」には次のような規定がある。
   「報道番組やドキュメンタリィー番組、情報番組などでは、正確な取材に基づ いて真実や問題の本質に迫ることが大切である。虚構や真実でない事柄が含まれ ていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢が求められる。」 
 原氏の解説は、「NHK放送ガ イドライン 2015」のこうした規定に反するものではないか?

  今回の質問書提出には各地の視聴者のほか、元NHKプロデューサーなどNHK・OBやメディア論専攻の研究者、現・元大学教員、弁護士なども連名に加わっている。質問書は長文なので、2回に分けて転載することにする。 

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                       2017
725日 

NHK
政治部
原 聖樹 様 

 「クローズアップ現代+」(619日放送)における貴職の
         発言についての質問書
 

 NHK視聴者有志611名(有志名簿は同封別紙)

  原様におかれましてはNHK政治部の官邸担当キャップという重責を担われ、ご多忙の毎日をお過ごしのことと存じます。
 去る619日にNHK「クローズアップ現代+」は<波紋広がる“特区選定“~独占入手 加計学園”新文書“>というタイトルの番組を放送し、その中で、「国家戦略特区」として獣医学部の新設が決定される過程で行政の公平性、透明性が確保されたのかどうかを、NHKが独自に入手した文書をもとに検証しました。この番組の内容は国会でも取り上げられ、市民の間でも活発な議論を喚起しました。

 原様はこの番組の後半で、大河内直人・社会部記者とともにスタジオ出演され、「諮問会議のメンバーからは、選定のプロセスについて一点の曇りもないという発言が出ているが、これはどういうことか?」という武田真一キャスターの問いに対して次のように発言されました。

 「すべての決定の過程が議事録が残っている上に、オープンにインターネット上でされていると。すべての場所に必要な人が出席して、意思決定をしている中において、間違いが起きるはずがないということなんですね。
 さらに先ほど『広域的』という文言もありましたが、有識者の方々は記者会見で、われわれが獣医師会や、規制を緩和したくない文科省に譲歩してなんとか認めてもらうために入れた文言であって、なんらかの変な形で入ったわけではなく、われわれのサジェスチョンで山本大臣が決定したのだと。ですからそこに違法性はない、政府もこうしたプロセスを踏んでることから、手続きが適正に行われていて違法性もないと強調しているわけなんです。」(下線と番号①~④は質問者が追加)

 このような原様の解説は、武田キャスターが紹介した諮問会議メンバーの主張を補充する形でなされたものですが、ファクト・チェックが必要と思われる箇所、NHKの報道番組に求められる自立した論点設定という観点に照らして疑問点があります。下線を付した①~④がそれです。
 そこで、ご多忙のところとは存じますが、以下の私たちの質問について、82日(水)までに、別紙に記載しました宛先へ、文書でご回答をくださるよう、お願いいたします。

 ご発言①について

 a)私たちは国家戦略特区諮問会議、国家戦略特別区域会議、国家戦略特区ワーキンググループがそれぞれ公表した議事要旨、ヒアリング議事要旨(議事録は諮問会議運営規則第8条により、会議開催後4年を経過した後に公表するとなっています)を調査しましたが、獣医学部の新設申請が加計学園1校となる大きな理由になった「広域的に」、「開校時期を平成304月とする」といった条件を設けることをめぐって議論が交わされた記録はどこにも見当たりませんでした。

 b) 逆に、613日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、今治市から諮問会議に提出された申請資料、今治市へのヒアリングの議事要旨が申請者の希望で公表されなかった事実が明らかになっています。

 c) また、同上記者ブリーフィングにおける質疑の中で、諮問会議ワーキンググループ座長の八田達夫氏は、京都についても公平性を保つためにヒアリングの議事要旨を公表しなかったと発言したのに対し、記者から、京都府と京都産業大に取材したところ、ヒアリングの最初に記録をすみやかに公表することに同意していたという回答を得たことが指摘 され、京都側は諮問会議の非公表の理由を否定しています。(醍醐注:後掲)

 質問1―1 
 上記a~cのようなファクト・チェックに照らせば、「すべての決定の過程が議事録が残っている」という原様の解説とは裏腹に、重要な意思決定の過程が議事録(正確には議事要旨)に残されておらず、原様の解説は事実に反する関係者の主張を主体的に検証することなく紹介されたと思われますが、いかがですか?
 私たちの判断が間違いとお考えであれば、相応の反証事実をお示しください。

 質問Ⅰ-2
 「NHK放送ガイドライン2015」に収められた「4 取材・制作の基本ルール」の①企画・制作の3項目に次のような規定があります。
 「報道番組やドキュメンタリィー番組、情報番組などでは、正確な取材に基づいて真実や問題の本質に迫ることが大切である。虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢が求められる。」
 原様の解説の中の①は、諮問会議有識者議員の真実でない発言を冷静に見極めることなく、そのままなぞる解説といえるものであり、私たちは「NHK放送ガイドライン2015」の上記の規定に反するものと考えます。
 原様の見解をお聞かせください。 (質問書の後半は次の記事に続く)

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補足資料:「一点の曇りもない」どころか「曇りだらけ」の特区選定手続き

*国家戦略特区諮問会議・有識者議員 記者ブリーフィング(要旨)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/briefing.html 
 → この資料の1920ページで、記者が京都府に対する独自取材にもとづいて、「関係者の要請により」という八田達夫座長の説明に疑問を投げ掛けている。

*この件は国会でも森ゆう子議院、櫻井充議員が取り上げ、内閣府を追及している。衆参国会会議録で検索し、次のように関係する部分の抄録を作成した。
 国家戦略特区ワーキンググループによる関係者ヒアリングの公表をめぐる国会質疑抄録
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/tokku_wg_gizi.pdf

 これについて、内閣府は、京都府と京都産業大のヒアリングが行われたのは20161017日で、公表したのは2017326と答弁している(上記抄録の2ページ)。
 しかし、「国家戦略特区諮問会議運営規則」の第7条には、「2 前項に規定する議事要旨は、会議の開催された日から起算して3日以内に公表するよう努めなければならない」と定められている。 
 「国家戦略特区諮問会議運営規則」 
 
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/kisoku.pdf  
 結局、今年の3月に平成304月開校、1校のみに絞られるまで加計学園と京都産業大の学部新設企画を比べる資料は公表されなかったのである。
 ちなみに、森ゆう子議員は昨日725日に開かれた参議院予算委員会(閉会中審査)において、再度、こうした情報公開の大幅で不可解な遅れを質している。
 この点をみても、「一点の曇りもない」どころか、「曇りがたくさんある」選定手続きだったことは明らかである。





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NHKはネット配信に執心する前にやるべきことがある

2017711

〔追記〕記事のタイトルを改めました。(2017年7月12日、12:20)
 (旧)NHKはネット配信に執心する場合か?
 (新)NHKはネット配信に執心する前にやるべきことがある

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 NHKが年来、検討してきた常時同時のネット配信の可否、課金のあり方を検討してきたNHK受信料制度等検討委員会はこの627日に「常時同時配信の負担のあり方について」と題する答申(案)を公表し、今日711日まで意見募集をしてきた。答申(案)の概要は次のとおりである。
 http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/

 

 締め切り間際になったが先ほど、インターネットで意見を提出した。以下はその全文である。

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「常時同時配信の負担のあり方について」答申(案)に対する意見

                         醍醐 聰

 (1)答申(案)は視聴環境設定型の負担方式を推奨しているが、答申(案)が例示しているアプリケーションのダウンロードを課金の契機にするとなれば、従量制の「有料対価型」に酷似したものとなり、現行の〔定額制の〕受信料制度との接合性は到底成り立たない。また、IDの取得を前提する場合、各種の受信端末を保有する世帯の中で、テレビ受信機を持たない世帯を識別するのは容易でない。答申(案)は、認証の具体的なあり方は今後さらに検討していくことが必要としているが、今後ではなく、実行可能な課金の方法を示さなければ、有償の常時同時配信は机上の空論で終わる。

 (2)答申(案)は「インターネットの特性上、自分に都合の良い情報だけを見るようになる傾向がある」、「事業者側が個人の嗜好に沿ってレコメンド(推薦)することによって発生するいわゆる『フィルターバブル』という現象が起きうる」と指摘しながら、結論では、各種の認証、特にアプリケーションのダウンロードを前提にした課金付きのネット配信を容認している。しかし、上記のとおり、アプリケーションのダウンロードを前提にした受信方式は自分に都合の良い情報だけを見る視聴傾向を助長し、「多様な価値観への思いがけない接触や多くの人々の間の共有体験」を保障できないことは明らかである。
 検討委員会が、NHKの常時同時配信を是とするというなら、こうしたネット配信の負の機能にどのように対応するのか、対応できるのか、見解を示すべきである。それなしにネット常時同時配信を是認するのは支離滅裂である。

(3)昨年6月にNHK放送文化研究所の世論調査部が行った「テレビ・ラジオ視聴の現況」(木村義子・山本佳代・吉藤昌代・林田将来共著『放送研究と調査』20169月)によると、NHKの代表的な報道番組の年代別視聴率は次のとおりである。

 〔NHKニュース7〕 
      20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上
   男   1%   4    4     7    16    33
   女   1%      2      5     8       16       27
 〔NHKニュースウオッチ9
      20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上

          男   1%    1        4     6    13    17

   女   1%   1              4     5     7      13

 

〔クローズアップ現代+〕
     20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上
  男   0%   2       4     4        6 
  女   0           0             1              1             3     5 

2040代に見られる極端に低いテレビ視聴率はインターネットによる視聴に流れたからなのか? 常時同時配信をしたら上昇する見通しがあるのか? NHKはネット配信に労力を傾注するより、このような発問を真剣に検討し、本来業務の現状を再考するのが先決である。ちなみに、木村義子・関根智江・行木麻衣「テレビ視聴とメディア利用の現在」(『放送研究と調査』20158月)は201523月に実施された「日本人とテレビ・2015」の世論調査で行われた「いくつかの目的に一番役立つのはどのようなメディアか」という質問への回答結果を次のようにレポートしている。

                      テレビ  インターネット
  A.世の中の出来事や動きを知るうえで     64.5%                16.5
  B.教養を身に着けるうえで                        28.5%                  9.3% 
  C.政治や社会の問題を考えるうえで         54.8      9.3% 

 つまり、インターネットが普及した中でも、熟議民主主義の基礎となる多様な価値観との接触、共有体験の保障、民主主義社会における言論・報道機関としての役割という点では、多くの市民が、インターネットよりも、テレビの存在価値を認め、期待を寄せているのである。であれば、今、NHKに求められるのは、ネット配信への業務拡大ではなく、テレビ番組を通じて、市民に有意な知見を提供し、さまざまな考え方の出会いの場を作るという本来業務をいかに充実させるかということである。政府広報機関に成り下がっている、国政の重要課題が審議される国会の模様を中継しない、などという視聴者の不評に木で鼻をくくったような対応しかしないまま、有料のネット配信に傾注するのは本末転倒である。

 

 

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