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工事に支障のない地中埋設物は瑕疵ではない~森友問題で会計検査院へ2度目の意見送信~

20171116

 今朝がた、森友学園への国有地売却問題を検査中の会計検査院(の意見受付窓口)へ以下のような2度目の意見を送った。

 佐川宣寿理財局長(当時)や近畿財務局は、約8億円のゴミ撤去費用は売却される国有地の地中埋設物に関する瑕疵担保責任を免除させる見返りだと説明してきた。しかし、小学校建設になんら支障がない(佐藤航空局長も工事に支障はないと国会で答弁した)ような地中の生活ゴミまで、どうして国が瑕疵責任を負い、売買価格を大幅に値引きする根拠にするのか、疑問に思ってきた。
 そこで、本件国有地の売買契約書、不動産鑑定書など関連資料と類似の事件(地中埋設物が売主の瑕疵担保責任、賠償責任となるかどうかが争われた事件)の判例を調べた。その結果、国が主張する瑕疵担保責任はたいへん恣意的な解釈で、「ごみ撤去費用」という名目で大幅な値引きをする口実にされたことは間違いないと確信するようになった。そこで、まずはこのことを会計検査院に伝えることにした。

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タイトル
「森友学園問題:工事に支障のない地中埋設物は瑕疵に当たらない。それを売買価格から差し引くのは不当」
                         醍醐 聰 

 (1)近畿財務局は森友学園へ国有地を売却するにあたって、約82000万円を「ごみ撤去費用」として差し引きました。これについて佐川宣寿理財局長(当時)はこの82000万円は本件土地の瑕疵担保責任を免除させるための対価であると繰り返し答弁しました。しかし、かりに本件土地の地中に埋設物が存在したとしても、それが土地の瑕疵に該当し、土地の売却価格の形成要因となるのかどうかは別途、検討が必要です。

 (2)そこで類似の問題が争点となった判例を調査したところ、①地中埋設物を瑕疵とみなし、売主の瑕疵担保責任、撤去費用相当額の損害賠償責任を認めた判決(類型A)と、認めなかった判決(類型B)に分かれていること、⓶類型AとBに属する判決に共通するのは、買主が当該土地を買受の目的に供するために工事を行うにあたって、当該地中埋設物が障害となると認定された場合に「瑕疵」と判断したこと、がわかりました。
 こうした判断のリーディング・ケースといえる2つの判決の要点のみを記しておきます。

 (事例1)「宅地の売買において、その地中に、大量の材木等の産業廃棄物、コンクリートの土間や基礎が埋設されていたことが、土地の隠れた瑕疵になるとされた事例」(東京地裁、平41028判決、『判例タイムズ』No,831,199421日、159頁)
 
その理由として東京地裁は、「本件の場合、大量の材木片等の産業廃棄物、広い範囲にわたる厚さ約15センチメートルのコンクリート土間及び最長2メートルのコンクリート基礎10個が地中に存在し、これらを除去するために相当の費用を要する特別の工事をしなければならなかったのであるから、これらの存在は土地の瑕疵にあたるものというべきである」と指摘しています。つまり、地中埋設物が存在したこと自体ではなく、買主が土地を買受の目的に充てる工事を遂行する上で、埋設物が障害になったという事実にもとづいて「瑕疵」に当たると判断し、当該地中埋設物の撤去に要した費用を売主が賠償すべき損害と認定したのです。

 
(事例2)「鉄筋三階建ての分譲マンションを建築する目的で買い受けた造成地の地下にビニール片等の廃棄物が混入していたとしても、杭打工法により予定どおりのマンションを新築して買受目的を達している場合には、右造成宅地に瑕疵があるとはいえないとされた事例(神戸地裁、昭59920判決、『判例タイムズ』No.541, 198521日、180頁)
 その理由として神戸地裁は、本件土地にはビニール片等の廃棄物が混入していたため、当初予定していたベタ基礎工法を杭打工法に変更を余儀なくされたにせよ、現にこれを新築することができてその買受目的を達していたこと、工法の変更が必要不可欠なものであったという確証はないことを挙げています。

 (3)近畿財務局と森友学園が交わした「国有財産売買契約書」で本件土地に存在すると確認された埋設物は「陶器片、ガラス片、木くず、ビニール等のごみ」(第4条第1項)であり、前掲(事例1)に見られたようなコンクリート土間・基礎といった杭打工事に支障をきたすと思えるものは発見されていません。佐藤善信国土交通省航空局長(当時)も、こうした廃材、生活ごみが存在していても「工事の施工には問題はございません」(参議院予算委員会、2017228日)と答弁しています。現に、森友学園は本年4月の小学校開校に向けて校舎の建設工事を支障なく続けました。
 さらに、本件国有地の「不動産鑑定評価書」を近畿財務局総務部次長宛てに提出した不動産鑑定士も評価書の中で「最有効使用である住宅分譲に係る事業採算性の観点からは地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難く、正常価格の観点から逸脱すると考えられる」と指摘しています。

 (4)以上から、本件土地の地中埋設物が「瑕疵」に当たらないことは明らかです。近畿財務局が森友学園側との価格交渉の中で「土地の瑕疵を見つけて価値を下げていきたい」などと発言していた事実(「新たなメモ見つかる」『報道ステーション』201783日)に照らせば、近畿財務局は正常な売買交渉ではないことを十分認識しながら、森友学園に利益を得させるため、瑕疵担保責任を故意に拡大解釈し、異常な廉価での売却を実行する背任を犯したと言わなければなりません。貴院の検査報告において、この点を徹底究明されるよう強く要望いたします。

Photo       (2017年8月3日、「報道ステーション」より)


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