大相撲賭博の調査委員会の拙速な判断と不可解な行動

「初めに場所開催ありき」の拙速決定
 力士、付け人、床山に限らず、親方にまで広がっていたことが発覚した日本相撲協会の野球賭博問題について「外部」有識者からなる特別調査委員会は予定を繰り上げて、627日、相撲協会の理事会に対して処分案を勧告し、それを受け入れることを条件に名古屋場所の開催を容認するとの判断を示した。相撲協会理事会はこれに素早く対応し、勧告案を受け入れる方向で74日の理事会に諮るとし、名古屋場所の開催を先行決定した。
 ところで、調査委が理事会に勧告した処分案は「予想以上に厳しいもの」と報道されているが、いままで百年一日のように言われてきた「ウミを出し切る」ことができる内容とは程遠いと思える。
 ①そもそも、621日に発足した特別委がわずか1週間の期間、2回の会合でどこまで賭博汚染の実態を解明できたのか、疑問である。ここで実態というのは、賭博汚染の範囲と暴力団とのかかわりである。現に名前が挙がった協会員からさえ、一週間でどこまで丹念な調査ができたのか、疑問視されて当然である。
 ②賭博汚染の範囲についていうと、調査委は今週末までに約1000人の協会員全員に調査票を届け、回答を求めることにしている。その調査結果を待たず、現時点で判明したという状況にもとづく条件を付けて名古屋場所の開催にゴーサインを出したのでは「初めに場所開催ありき」と言われてもやむを得ない。もし、今後の調査で賭博汚染の新たな広がりが発覚した場合、場所開催はどうなるのか、拙速の感は否めない。
 ③暴力団との関わりについていうと、調査委は調査したどの協会員もつながりはなかったと断定したが、賭博には表か裏かは別にして胴元が存在し、掛け金の一部が暴力団に流れることが多いとされている。現に、勝ち金の支払いを求めた琴光喜が逆に恫喝を受け、口止め料の支払いを迫られた場には相撲関係者以外の人物が同席していたと言われている。調査委は賭博を申告した親方、力士以外のこれら関係者からどこまで事情を聴取したのだろうか? また、今回の野球賭博行為が発覚する直前に明るみに出た「維持員」席を協会員が暴力団関係者に横流ししていた問題を調査委は究明したのだろうか? さらに、スポーツ評論家の中には、賭博は野球だけにとどまらないのではないかと指摘する論者もいる。こうした疑問を積み残したまま、場所開催を先行決定した調査委と相撲協会理事会の関係について、厳しい監視が必要である。


調査委は相撲協会の代役者なのか?
 もうひとつ、不可解なのは調査委が、相撲協会理事会が行うはずのNHKとの協議を買って出ようとしている点である。私がこの件を知ったのは次のような報道ニュースからである(下線は引用にあたって追加)。

 
NHK相撲中継、4日夜にも結論(20106290134  読売新聞)
 
日本相撲協会の緊急理事会の決定を受け、NHKは28日、今後の視聴者意見の動向と4日に開かれる理事会での結論を踏まえた上で、早ければ同日夜にも中継するかどうか決める方針を固めた。NHK幹部によると、今回の理事会の決定に対し、「NHKとしてある程度納得できる部分はあるにしても、放送する側としてまだ最終結論を出す必要はない」と判断。特に、「将来的な抜本的な改革」を同協会が十分に示していない点を問題視。「4日の時点で、協会側がどこまでそこに踏み込めるか注視したい」としている。今回の件については、他の幹部以上に福地茂雄会長が重大視。「中継を行うことを前提としないで検討するように」と関係職員に指示を出している。また、同協会の特別調査委員会が28日までにNHKに対して事情説明を申し出たが、NHK側がこれを拒否していたことも明らかになった。幹部によると「今はまだそれを受け入れる段階ではないため」という。

名古屋場所中継、NHKなお慎重姿勢 協会側の接触断る(asahi com  201062931分)
 
名古屋場所を中継するかどうかについて、NHKは慎重な構えを崩していない。「勧告について説明したい」と特別調査委員会が接触を求めてきたが、「まだ話を聞く段階ではない」と断ったという。 調査委の勧告が27日に出たのちも、NHKには視聴者からの意見が相次いでいる。28日は午前中だけで電話やメールが約170件寄せられ、約6割が名古屋場所の中継に反対する声だった。賛成は1割ほどしかないという。相撲協会が処分を決める7月4日の臨時理事会を待ち、組織の自浄能力や視聴者の反応などを見極めた上で、結論を出す方針だ。

 調査委は文部科学省の意向を受けて、相撲協会理事会が委嘱して設置された「外部」調査委
員会のはずである。調査委は調査の結果とそれを踏まえた勧告を相撲協会に提出するのが務めであって、その勧告を受けてNHKと間で名古屋場所の開催の如何、開催した場合の中継の如何等について協議するとしたら、それは相撲協会理事会の任務であって、NHKから勧告について説明を求められたわけでもない調査委の出る幕ではない。これでは調査委は相撲協会理事会に外向けには厳しい対応を迫っているかにみえて、水面下では、「謹慎中」の相撲協会理事会になり代わって、NHKが中継をできる環境づくりに動いていると受け取られてもやむを得ないのではないか? 調査委ははたして相撲協会から本当に自立した第三者機関といえるのか、注意深いウオッチが必要である。
 (注:もともと、調査委委員長の伊藤滋氏、委員の村山弘義氏は相撲協会の外部理事であり、同じく調査委の委員の吉野準氏は協会理事会の監事であることから考えると、調査委を「外部委員会」と呼べるかどうか、疑問である。)

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