2008年6月30日 (月)

日本簿記学会関東部会で研究発表

628日、東京理科大学で日本簿記学会第24回関東部会が開催された。統一論題は「税効果会計の現代的課題」だった。私は同学会の会員ではないが準備委員会から報告依頼を受け、「法人税等調整額の性格の再検討」という論題で研究発表をした。

 以下は、その報告要旨と報告用に使ったパワーポイントの原稿である。未定稿なので引用・転載等は固くお断りする
  なお、会場で補足資料と参照事例資料を配布したが、ここでは掲載を省略する。

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   法人税等調整額の性格の再検討(報告要旨)

                      醍醐 聰

 税効果会計の目的は法人税等調整額を介して法人税等を適切に期間配分することにより、税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させることにあるといわれている。しかし、わが国の銀行業では税効果会計適用後の法人税等の負担率が法定実効税率から乖離している例が少なくない。しかも、その乖離の主たる原因は永久差異にではなく評価性引当額にあることがわかる。しかし、評価性引当額は仕訳上、法人税等調整額の相手科目であり、税効果会計を構成する勘定科目である。とすると、税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させるために採用された現行の税効果会計の体系の中に、この目的達成を阻害する要因が混在しているのではないかと想定される。本報告は法人税等調整額の性格に焦点を当てて、このような想定を理論、実証の両面から検討することを主眼としている。

 わが国の「税効果会計に係る会計基準」によると、法人税等調整額は、①一時差異の発生または解消に伴って繰延税金資産または繰延税金負債が変動した場合、②過年度の繰延税金資産または繰延税金負債の回収(決済)可能性を見直した結果、修正差額が生じた場合、に増減変動する。このうち、①の場合、法人税等調整額は当年度中に一時差異が発生または解消したことに伴う法人税等の増減変動を調整し、企業会計から誘導された税引前当期純利益に対応する法人税等を導くための調節弁としての役割を果たす。これが語の本来の意味での税効果会計の姿といえる。しかし、②の場合の法人税等調整額は繰延税金資産の評価の見直しに起因する過年度損益修正額に対応する法人税等を意味するが、現行の税効果会計基準ではこの場合の過年度損益修正は税引前当期純利益計算に反映されない。これが、税効果会計適用後の法人税等の負担率を法定実効税率から乖離させる要因になっていると考えられる。本報告では、このような原因分析にもとづいて税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させるための方法を探るとともに、企業会計と課税所得計算の関係はどうあるべきかについても考察することにしたい。

報告用パワーポイント原稿
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/boki_gakkai_houkokuyo_pp.pdf

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2008年5月18日 (日)

日本の医療費抑制政策は正当か? ~医薬品製造業の高収益構造が問いかけるもの~

 さる59日付けで拙書『会計学講義』第4版、東京大学出版会、を刊行した。このブログにアクセスされる方々は会計学に関心を持たれた方ばかりではないと思うが、自分の専攻分野での仕事の一端をお伝えできればと思い、以下、東京大学出版会のHPに掲載された拙書の紹介記事(目次と担当編集者のコメント)を同会の許可を得て、PDF版で転載することにした。

醍醐聰『会計学講義』第4版、20085月、東京大学出版会、目次
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/kaikeigakukougi4ed_mokuzi_UP.pdf


同上書、表紙カバ-(絵は衣川史さんの作品「浸透」である。衣川さんの了解を得て、このブログに転載することにした。)
4_2


















 









 

  この記事では、日本の医療費抑制政策の正当性を検討する一助になると思われる医薬品製造業の高収益構造を示すデータ(拙書の第
3章の冒頭に掲載したTopix3)をこのブログにアクセスしていただいた方々にも参照いただければと思い、一部割愛のうえ、転載することにした。なお、Topix3は損益計算書の読みこなし方を学ぶ事例として掲載したものである。

【Topix 3】医薬品製造業の損益計算書の特異性

下の表は製造業、医薬品製造業ならびに医薬品製造業に属する2社の2004年度の百分比損益計算書(売上高を100とした場合の主な収益・費用項目、各種利益の割合)の一部である。

   図表31 医薬品製造企業の百分比損益計算書(2004年度)
          製造業    医薬品   小野薬   武田薬
                 製造業   品工業   品工業
売上高       
100.0                100.0             100.0              100.0
売上原価
                       78.5                  34.1              14.5                 25.4
 売上総利益
                21.5                 65.9               85.5                 74.6
販売費及び
一般管理費      15.8                 44.7               44.3                30.7
  うち研究開発費               4.3                                     21.2                18.9

 営業利益
                     5.7                21.2               41.2               43.9
営業外収益
                     1.9                  2.0                  1.5                 3.2
営業外費用
                     1.4                  1.1                  0.3                 1.7
 経常利益
                     6.2                22.1                 42.5               45.4

(注) 製造業、医薬品製造業は資本金100億円以上の企業の総計
(出所)製造業、医薬品製造業は、経済産業省経済産業政策局調査統計部『企
業活動基本調査報告書』平成17年、平成193月。小野薬品工業、武田薬品工業は各社の有価証券報告書より作成

【設問】
  1.売上総利益、営業利益、経常利益はそれぞれどのように異なるのか?
  2.上の百分比損益計算書から、製造業と医薬品製造業では損益計算の構造にどのような違いかあるか、説明せよ。その違いは医薬品製造業の営業活動のどのような特徴を表していると考えられるか?


【Topix 3の解説】
医薬品製造企業の高収益構造から見えてくる日本の医療費抑制政策の歪み


 この章の冒頭に掲げた図表31から次のような特徴を読みとることができる。
 1.企業の定常状態での収益性を表すといわれる経常損益の段階で医薬品製造業は製造業平均の3.6倍の収益率を記録している。また、医薬品製造業の中でも図表31で上げた2社は同業種の平均のさらに約2倍の経常利益率を記録している。

 2.医薬品製造業では営業費用に占める研究開発費の割合が高いが、それを差し引いた営業損益段階でも製造業平均の3.7倍の利益を確保している。

 
3.  このように医薬品製造業が製造業平均と比べて極端に高い利益水準を記録した原因は、異例ともいえるほど高い売上高総利益率(売上総利益/売上高)にある。これは薬価が原価を大きく上回る水準で設定されていることを意味する。
    
 従来、日本では医療機関に納入される医薬品の卸価格が市場の実勢価格を下回る結果、その乖離に相当する「薬価差益」が大きいことが問題にされてきた。なぜなら、このように卸価格と実勢価格が乖理した状態では、医療機関は患者に医薬品を投与すればするほど利鞘を稼ぐことができ、それが薬漬け診療をはびこらせ、医療費を押し上げる要因になっていると考えられたからである。
 このような議論を踏まえて厚生労働省は薬価改定の都度、薬価差の縮小を促してきた。その結果、1991年には23%とされた薬価差益は2006年には8%まで縮小した。しかし、それでも医療費の高騰傾向は止まっていない。そこで、政府は医療費の総合的抑制策を打ち出し、患者負担の引き上げとそれによる受診の抑制を誘導している。

 しかし、上で指摘したデータを見ると、このように需要側をコントロールすることを主眼にした医療費抑制政策には疑問が生じる。なせなら、医療費を管理する上で重要なのは薬価差益というよりは薬価そのもの(供給側の要因)だと考えられるからである。つまり、かりに医療機関への納入価格を市場の実勢価格に近づけたとしても、その市場価格が原価と大きく乖理している限りは国の医療保険費と患者負担の総枠は変らないからである。

 残念ながら、医薬品価格の国際比較をした最近のデータは見当たらないが、旧経済企画庁がまとめた
1996年版の『国民生活白書』で引用された資料(大阪府保険医協会調べ。19931994年当時)によると、日本の主な医薬品の価格はアメリカの1.1倍、ドイツの1.4倍、イギリス、フランスの2.7倍となっている。このように、国際比較で見た日本の薬価の高い水準が日本の医薬品製造業に異例ともいえる高率の利益をもたらしている大きな要因ではないかと考えられる。なかには、薬価を切り下げると医薬品製造業界の生命ともいえる研究開発のインセンティブを損なうとの指摘がある。しかし、図表31を見ると、医薬品製造業は業界に特有な多額の研究開発費を支出したうえで、なお既述のような異例ともいえる高率の利益を確保していることを見過ごすことはできない。


  

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2007年10月25日 (木)

会計理論学会で研究発表

 去る10月19日~21日、東京水道橋の日本大学法学部で第22回会計理論学会が開催された。私は会員ではないが、統一論題「公益性組織の責任と会計規制」の報告者の一人として研究発表の機会を与えられた。そこで、最近関心を持っている国の特別会計を題材にして、「財政運営の規律と監視のインフラとしての公会計」というタイトルで発表を行い、討論にも参加した。

 以下、その折に準備したパワーポイントの配布資料版と討論の中で私の報告に対して3人の参加者から提出された質問ならびにそれに対する私の回答用スライドを掲載しておく。
 なお、以下は未定稿なので無断転載、引用等は堅くお断りする。

報告用パワーポイントの配布資料
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/kaikei_rirongakkai_powerpoint.pdf

報告に対する質問と回答
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/kaikei_rirongakkai_QA.pdf

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