おいしい生ゆばパンを食べて石巻のパン工房の復興を応援しよう

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 日和山から見渡した石巻の今
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26日、盛岡市内でTPPに関する講演を終えたあと、27日には同行した連れ合いのたっての希望もあり、北上市にある「現代詩歌文学館」に立ち寄った。その後、石巻市に向かい、駅近くのホテルで2泊。28日は、あいにく終日、きつい雨風だったが、前もって申し込んでいた市の観光協会のガイドさんの案内で被災地の今を見て回った。津波で市内が覆われたあの日、ガイドさんは消防署員として首まで水に浸かりながら、必死の思いで市民を救出する活動をされたとのこと。

 日和山の高台に上り、夫婦で説明を聴きながら、石巻市街の現況を見渡した。石ノ森漫画館がある中瀬が眼下中央に細長く伸びる。展望台の掲示板にある震災前の市街地の写真と見比べると、眼下の街並みはさみしく、緑も少ないのは覆うべくもない。災害公営住宅が市内各所に建てられているが、眼下に見える旧北上川周辺に建設中の災害公営住宅の場合は、申し込みがあったのは定員のまだ3割程度だと言う。その訳は河岸の堤防工事が未完成な場所では人々は入居を敬遠するからだそうだ。では、なぜ河岸の堤防工事は進まないのか? ガイドさんによると海岸沿いと違って、河岸沿いは私有地がほとんどで、買い上げが思うように進まないからだという。なるほどと納得した。

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「がんばろう! 石巻」の看板のそばで
 
 日和山を下って、門脇・南浜地区へ案内してもらった。ここは死者・行方不明者が非常に多かった地区で、跡地は「災害復興祈念公園」とすることが決まっている。車が近づくと全国ニュースでも伝えられた「がんばろう! 石巻」の大きな看板が見えてきた。車を降りて近づくと、看板の近くに献花台があり、そのそばに野立ちのガス灯のような低い背丈の建造物があった。石巻の被災地に残った木片を集め、それを種火にして亡くなった人々を追悼するものだという。

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 「災害復興祈念公園」予定地を発って、最後に新装なった石巻魚市場を案内してもらった。全長876m、東洋一長い魚市場だそうだ。鳥や猫が入り込まないよう、建物はすべてドア付き。セリはもう終わり、閑散としていた。私たちが案内された2階は見学者用のデッキだった。漁獲量は震災前の95%にまで回復しており、魚市場の復興は石巻の復興にとって、一番の明るい話題だとガイドさんは話した。

 
昼食は、別れ際にガイドさんに勧められた地元の小さな魚の加工・販売ショップ「プロショップまるか」の中にある食堂へ出かけた。食堂と言っても無造作にテーブルが置かれただけ。それでも、金華山で獲れたてのいわし、くじら、あじ、さよ、赤貝などが並ぶ。そのなかから好きなものをトッピングしてカウンターに持っていき、ごはん、味噌汁を付けてもらうと盛りだくさんの食事となる。

偶然に立ち寄ったパン工房パオ
 
 昼食を終えると、後の予定は特に決めていなかった。傘をさして近くの寿福寺をのぞき、駅に向かって歩くうちに、そう言えば、このあたりに「復興商店街」があったはずだと思い出した。道すがら、通りかかった人に尋ねながら歩くとすぐにたどり着いた。七十七銀行石巻支店の近くで、正式の名前は「石巻復興ふれあい商店街」。全部で8つほどの商店が並んでいた。閉まった店もあったが、23のぞいた後、最後に入ったのが「パン工房パオ」だった。
 他に客はなく、すぐに店主から声を掛けられた。千葉から夫婦で来たというと大変歓迎され、まあどうぞと腰掛を差し出された。手際よくコーヒーまでいただいた。パオの人気商品は「生ゆばパン」。生地に50%のゆばを練り込んだ食パンだ。原料はすべて国産の天然素材。帰宅して少しトースターで温めて賞味すると、なるほど店主の自慢のとおり、もちもちとした一味違う食感がした。ゆばを原料にした食パンがあるとは知らなかった。
 詳しくはネットにアップされている店のHPをご覧いただくのがよいと思う。
 http://ishinomakiya.com/pao/
 

 
 話が弾み、店のご主人・谷地田けい子さんは、市内にあった元の店が津波に流されて押し寄せた漁船で押しつぶされ、全壊したこと、しばらく途方に暮れ、営業再開を諦めかけていたところ、元の得意先から再開を望む声が届き、営業再開を決心。ちょうどこの「復興ふれあい商店街」に入れたそうだ。再開後は元のファンや復興支援で石巻にやってきたボランティアがインターネットで県外に広報したところ、注文が増えたという。その影響もあってか、今では、店の売り上げは来客よりも地方発送の方が多いそうだ。そんな経過もあってか、谷地田さんは私たちに何度も、支援者への感謝の言葉を語った。 

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おいしいパンを食べてパン工房パオの営業継続を応援しよう
 
 しかし、「石巻復興ふれあい商店街」はプレハブ製の仮設店舗。しかも2年という期限付き。当初、市は去年の12月で閉鎖の予定だったが、今年の10月まで延長となった。その期限まであと半年足らずだ。話の終り頃、谷地田さんは工房の将来を話し終えたところで、「銀行が融資に応じてくれるといいんだけどね」と話した。店主の今の気持ちを物語る一言と思えた。生ゆばパン、天然酵母パン(オレンジ)、ガーリックトーストを買って外へ出て、宿へ向かった。
 生ゆばパンは22,100円。食パンとしては決して安いとはいえない。が、それでも愛好家からの注文は多いという。実際に味わうと、納得する人が多いからだろう。おいしいパンを食べて、震災に負けず、パン工房の再起にかけるパオの営業継続のため、たくさんの方が応援していただくことを願っている。

 手造りパン工房 パオ
住所 宮城県石巻市立町2-6-23 【石巻立町復興ふれあい商店街】No.11
電話番号 0225-96-4770   FAX番号 0225-22-8696
営業時間 10001700 定休日 第1、第3日曜日
 注文はファックスで。(FAX番号 0225-22-8696)詳しくは下記。

(下の画面をクリックすると拡大します。その画面を右クリックして「画像を印刷する」を選択すると、注文用紙をプリントできます。それに注文内容を記入してFAXで送れます。FAX番号は下記。)

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なぜマイナンバー制度から離脱できないのか~内閣府担当室に質問書を提出~

2016114

 このブログにも書いたが、私は昨年1029日、地元市長宛にマイナンバー法に基づく個人情報の相互利用等の事務の停止を求める申し立て書を提出した。

  個人番号の利用事務等の停止を求める申し立て書を提出
  
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-f4f5.html


 これについて、昨年1120日付で市長から回答が届いた。結論は、「申し立てに関しては対応いたしかねる」というものだったが、その前段で、内閣府番号制度担当室によれば、として同室に照会した模様が紹介されていた。その中で、「個人番号を利用するかどうかを個別の自治体の裁量に委ねるということではなく・・・・」というくだりがあった。自治体への法定委任事務である以上、当然ではある。
 そこで、昨年124日、事前に予約をした上で赤坂にある内閣府願望制度担当室を訪ね、応対した同室の参事官補佐ならびに主査とやりとりをした。その模様は同行取材された『週刊金曜日』の記者の稿(同誌、20151211日号)でまとめられている。
 しかし、筆者としては、地元市町からの回答に記された内閣府担当室の見解について持った疑問がいっこうに解けないばかりか、応対した二人の職員の説明の中に
、疑問に輪をかけるような内容があった。要約すると、それは、①行政の効率性を個人のプライバシー権よりも優先させる思考、②行政の効率性を公共の福祉に置き換え、それを、個人の意思にかかわりなく、すべての住民を一律にマイナンバー制度に参加させる根拠にした、ことである。
 この点はマイナンバー制度の根幹にかかわる問題であり、見過ごすわけにはいかないと考え、内閣府担当室に書面で質問書を提出して回答を求めることにし、今日、発送した。以下がその全文である。 


                        2016114
内閣府大臣官房番号制度担当室 御中

個人番号に基づく利用事務の停止の求めを拒む根拠等についての質問書

                   住所 (ここでは削除)
                           醍醐 聰

 私は昨年1029日に居住地の千葉県佐倉市長宛に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づく個人番号利用事務等の停止を求める申し立て書」を提出したところ、1120日付で佐倉市長より回答が届きました。その回答文書に、

 「内閣府番号制度担当室によれば、『番号法第9条第1項において、自治体は別表第1に掲げる事務について「個人番号を利用できる」と規定されているが、番号法の趣旨に鑑みれば、これは個人番号を利用するかどうかを個別の自治体の裁量に委ねるということではあく、別表第1やその委任に基づき制定された主務省令に規定された事務については、すべての自治体において個人番号を利用すべきであると解される。』とされています。」

として、貴室の解釈が敷衍されていました。
 この点について、理解が困難な点があり、昨年124日に貴室を訪ね、応対された本間貴明・参事官補佐、ならびに安倍健一・主査と1時間あまり質疑をさせていただきました。その折、以下のようなやりとりがありました。

 醍 醐 91項の解釈を読んだが、個人として求めた利用事務の停止
    を行政が拒む根拠が見当たらなかった。マイナンバー制度から
    離脱したいという個人の選択の自由を認めないのは個人の権利
    を侵害するものではないか?
 内閣府 住民個々人の承諾を得なければならないという定めはない。
    番号法は、国の代表である国会議員が可決したもの。行政はそ
    れを施行していく責任がある。逆にお聞きするが、共通番号で
    情報連携すれば行政の効率化が図られるというメリットをどう
    考えるか?
 醍 醐 私は、自分の個人情報が漏えいしたり、不正使用されたりす
    るリスクを避けるためなら、これまでどおり、年に1度あるか
    ないかの書類提出のために市役所へ足を運ぶ手間暇は何ら厭わ
    ない。行政の効率化を個人のプライバシー権、個人情報の自己
    コントロール権よりも優位に置く理由は何か?
 内閣府 公共の福祉による制限だと思う。
 醍 醐 行政の効率性を公共の福祉と呼ぶことはできない。
 内閣府 そんなことはない。この制度によって国がよくなると考える
    から、われわれはこうして制度導入の仕事をしている。

 以上のような経緯を踏まえ、以下、質問をいたします。質問項目ごとに、ご回答を本年126日(火)までに文書でお送りくださるよう、お願いいたします。

                質問事項

【質問1】 憲法論の学説上、公共の福祉による人権の制約は人権と人権の衝突を調整する原理として有効とされ、表現の自由や個人のプライバシー権など精神的自由権を制約する原理としては厳格に適用すべきものとされています。この点を踏まえて、お尋ねします。
 昨年124日の上記の質疑の中で、共通番号(マイナンバー)制度からの個人の離脱(利用事務の停止の求め)を不可と解釈される理由として貴室担当者は「公共の福祉」を挙げられました。では、上記の憲法学の定説に反して、貴室が個人のプライバシー権よりも行政の効率性が優先すると解釈される根拠は何なのかをお示し下さい。

【質問2】 貴室は、共通番号(マイナンバー)制度を採用することによってどの程度、行政の効率性を達成できると見込んでおられるのか、①その定性的定量的根拠を、②制度の導入・運営に要するコストの見積もりとの対比で、お示し下さい。

【質問3】 国および地方の行政職員が個人番号の利用を促進するための施策を実施する責務を負っていることは確かですが(番号法第4条、第5条)、番号法には個人が一律にこの行政事務に協力・応諾することを義務付けた条項はなく、共通番号(マイナンバー)制度への参加を一律に義務付けた条項もありまません。
 にもかかわらず、貴室が、個人番号をキーにした個人情報の利用事務の停止の申し出を拒む根拠をご説明ください。

                             以上


(参考1)市役所でのやり取りの模様をまとめた『週刊金曜日』(2015年10月23日号)の記事(同誌の許可を得て転載)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/siyakushode_kinyubi_20151023.pdf

(参考2)市長から届いた回答

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(参考3)内閣府でのやり取りの模様をまとめた『週刊金曜日』(2015年12月11日号)の記事(同誌の許可を得て転載)
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互いの老いを見つめ合ったウメとの別れ

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 最期は痛ましい姿だったが
 718日、深夜の140分過ぎにウメが息を引きとった。
 前日の夜10時ごろから、いつもと違う吠え方が続くので気になり、連れ合いがあやしたり、スポイトで水分を飲ませようとしたりしたが受け付けず、日付が替わる頃、突然、嘔吐し始めた。
 最初は、これまでにも時々あった食物を戻す症状かなと思ったが、やがてドバっと、どす黒いものを吐いたことから、吐血とわかった。
 驚いて、深夜だったが、かかりつけの動物病院に電話、運よく居合わせた医師によると肺か胃からの出血ではないかとのこと。しかし、動かすこともできないので、吠え疲れて寝入るのを見守るしか、なかった。

 それから約1時間後、静まり返ったかと思った矢先、横たわったままの姿勢で突然、どっと吐血して、間もなく息を引き取った。呼吸が止まってからも、しばらく口から血があふれ、顔に当てたタオルを何度も取り替える有様だった。

 夫婦立ち合いで火葬
 思いもよらない急変に茫然としたが、ウメを寝かせた布団をエアコンの近くへ移動し、夜が明けるまで私たちもうたた寝。

 7時過ぎ、携帯メールで娘に連絡。その後、電話帳で近くの何か所かの霊園に電話したところ、わが家から近い「ペット霊園」とつながった。その主によると、この暑さなので、なるべく早く、出来れば今日のうちにも、火葬にした方がよいとのこと。
 ただ、この日は2限が某大学での非常勤の講義の日。その後、NHKへ出向いて4つの団体の共同で申し入れ書を提出するとともに、私が関わっている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」単独で3つの文書をNHKに提出することになっていた。
 これらの用務は外せないので、連れ合いと相談の結果、この日の午後3時半ごろに、霊園から車で迎えに来てもらい、連れ合いが同乗して霊園に出向き、私はNHKでの用件を中座して最寄りの駅まで戻り、そこから車で霊園に直行、4時半ごろから火葬をしてもらうことにした。

 予定より少し早く霊園に着くと、火葬の準備は整っていた。一足先に着いていた連れ合いと一緒にウメと最後の対面、焼香をしてウメは火葬場へと向かった。

 火葬の間、控室で待機。その間2度、霊園の主が現われ、火葬の仕方を説明してくれた。話によると、この霊園では、1体ごとに骨の状況を確かめながら、なるべくお骨がきれいに残るよう、火葬の仕方を工夫しているとか。
 これまで人間の火葬に何度か立ち会ったが、そういう話を聞くのは初めてだった。そういえば、人間の火葬は1時間前後で終わるのが通例だが、ウメの場合、440分ごろから始まった火葬が終わったのは6時半ごろだった。
 まだ、様子がよくわからないまま、霊園主の案内でお骨になったウメのそばに近づくと、尾骶骨、歯、足、頭と小骨がきれいに整とんされていた。人間でもこのような形でお骨を壺に収めるのを見たことはなかった。

 仏壇で再会した姉妹犬
 霊園主に車で送ってもらって帰宅したのは7時だった。急いで仏壇を整理し、7年前にお骨で帰ってきた姉犬・チビの骨壺と並べて、焼香。好物だった牛乳のお湯割りを供えた。

 引っ越しをした隣家に居たウメを引き取った時、わが家には姉犬がいた。ウメが来てしばらくは、ちょっとしたきっかけで3度、双方が血を流す喧嘩をした。一度は止めようとした連れ合いにも歯が当たって血が出る騒ぎになった。特に、姉犬は自分が先住民と言わんばかりの態度で、容易にウメを受け入れようとしなかった。
 そのせいか、わが家に来てしばらくの間、ウメは家人が外から戻るのを見届けるや、玄関先にあった靴やサンダルをさっと咥え、これ見よがしにそれを差し出す仕草で近寄ってくるのが日課だった。あの愛らしい光景はウメと過ごした16年間で一番の思い出である。

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  大ゲンカをした姉妹犬だったが、数年経つと写真のように、二匹並んで、しゃがんで前足を伸ばし、台所で挽きたてのコーヒー入りの牛乳を作る家人の姿を見つめるようになった。

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 ウメの老いを見つめて

 7年前、姉犬がなくなってからも特に変わった様子はなかったが、2011311日の大震災の体験がウメの生活の大きな転機になった。
 あの日、夫婦そろって都内の催しものを見に出かけ、電車の中で地震に遭遇した。結局、その日は帰宅難民となり、やっとつながった公衆電話で近所の知人にウメの散歩と食事を頼んで、その日は都内泊。
 翌日、昼前に帰宅すると建物に被害はなかったが、家中、書棚などが倒れ、片づけに追われた。
 あの日、ウメは結局、家人不在の家の外で一夜を過ごしたことになる。わが家に来て初めての体験だった。そのせいか、それ以降、昼間は玄関の外で過ごしたが、夕方の散歩を終え、食事を済ませるや、居間に向かって猛突進。さっと自分の定位置となったマットに座るとしばし、そこに陣取るかのように座ったままだった。

 こうして、次第に室内犬になっていくにつれ、散歩の時も遠出を嫌がり、行動範囲が狭くなっていった。また、それからしばらくして、認知症と思える症状が現われ、声を出さなくなるとともに、家の中をよろめきながら徘徊するようになった。といっても、夜鳴きなどは全くなく、うたた寝から目を覚ました時、近くに人の気配がないのを知って鳴いて呼ぶことはよくあったが、穏やかな毎日を過ごしているように思えた。

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 しかし、次第に足が弱り、最後の2年間は歩行や用便も自力ではできなくなって、要介護の状態になった。
 そして、年明けまもないころから、連れ合いと交代で添い寝をするようになった。起き上がろうとして、足をばたつかせるのを放っておくと、息苦しくなって消耗してしまうし、何とか立ち上がってもすぐによろめいて壁などに顔や頭をぶつける心配があったからだ。
 それでも夜中、目を覚まして覗き込むと、いつの間にか、こちらのそばに寄り添い、鼻が顔に触れていたこともあった。

 通学途中の近所の子どもから、よく、「ソックスを履いているみたい」と言われた。他人に吠えかかるでもなく、頭をなでられると前足を挙げて抱きついたウメの穏やかで愛らしい姿は、これからも私の思い出の宝物として生き続けることと思う。
  ウメ、また天国で会いたいね。

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12.3TPP国会決議の実現を求める国民集会で連帯のあいさつ

昨日(2013123日)の12時から日比谷野外音楽堂で「TPP決議の実現を求める国民集会」が開かれた。主催は、全国農業協同組合中央会(JAグループ)、全国農業会議所、全国漁業協同組合、全国森林組合連合会、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、大地を守る会、パルシステム生活協同組合連合会、社団法人中央酪農会議、主婦連合会が参加した「TPPから『食と暮らし・いのち』を守り、『国会決議の実現』を求める実行委員会」。
 年内妥結に向けて、今月7日からシンガポールで開かれる参加国閣僚会合に先立ち、アメリカから相次いで政府要人が来日し、農産品の全面的な関税撤廃を強硬に迫るなかで開かれた集会だけに、重要農産品を関税撤廃の例外扱いとすることなどを日本政府に求めた衆参農林水産委員会の決議を厳守するよう求める声が会場を覆った。集会の後のデモ行進でも「国民との約束を忘れるな」といった気迫のこもった唱和が続けられた。
 私は「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の呼びかけ人として連帯のあいさつをした。また、集会に続くデモ行進(会場から霞が関官庁街→国会→永田町の自民党本部)にも参加した。
 以下は、あいさつの読み上げ原稿である。

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 12.3 TPP決議の実現を求める国民集会での連帯のあいさつ 読み上げ原稿

                                                                                
   醍醐 聰

 

 皆さん、最近よく「TPPはここまで来たら、もう決まりでしょう」と話しかけられます。しかし、「ここまで来たら」と言われますが、どこまで来ているのでしょうか?
 TPP交渉を主導しているアメリカでは、1113日に、与党民主党の議員201名のうちの151名が連名で、貿易促進権限を持っている議会との協議をないがしろにしてTPP交渉を進めているオバマ政権を厳しく批判し、このままでは議会の権限をオバマ大統領に委任するのは難しいと警告する書簡を提出しています(注1
 参加国間の交渉はどうなっているでしょうか? さる1113日、ウイキリークスが公開した知的財産権分野の協定草案によれば、医薬品の特許権を強化しようとするアメリカのいくつかの提案に対して、参加国12か国中、8か国が、項目によっては10か国が反対し、アメリカは孤立した状況になっています(注2)。年内妥結どころではないのです。
 こうした状況にあせったのか、7日から始まる参加国閣僚会合を前にアメリカ通商代表部のフロマン代表が来日し、日本が聖域とする重要品目の関税の完全撤廃を強硬に迫ったと伝えられています。

 しかし、日本の国権の最高機関たる国会の決議を踏みにじってでも重要農産品の関税を撤廃させようとするアメリカの行動は、それ自体がすでに日本の主権を侵害してはばからない傲慢な押し売り商法です。
 その一方で、アメリカは米豪FTAで世界水準よりも1.5倍から2倍も高い国産砂糖を関税で守ることを取り決め、TPP交渉でもこの協定を見直さないと早々と宣言しています3
 とすれば、日本はアメリカから誰が何回来ても理不尽で身勝手な要求をきっぱりと拒否し続けるよう政府に求めます。
 アメリカが強行に主張する先発薬の特許権の強化は、途上国の人々の命綱となっている安価なジェンリック薬の普及を遅らせる非人道的な提案です。と同時にそれは、現在先進国で最低の22%にとどまっているわが国のジェンリック薬の普及率を2018年までに60%以上にするという厚労省が定めたロードマップ(注4にも逆行するものです。
 私たち大学教員の会は、TPPの脅威からわが国の主権と国民益を守り抜くために、さらには途上国の人々と連帯して、人の健康と命よりも企業の利益を優先させる非人道的なTPPの妥結を必ず阻止するために、TPPに反対する弁護士ネットワーク、主婦連合会と共同の呼びかけ団体となって、今月8日、ここ日比谷野外音楽堂でこれまでで最大規模の集会とデモ行進を行う準備を進めています。
 皆さん、今が正念場です。日本の主権と国民益を守り抜くよう、国会決議を実現するために連帯して頑張りましょう!

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(注1151名の民主党議員が連名でオバマ大統領宛に送った書簡の全文は次の記事の中にカラー付きで記載された、The first letter, を開くと閲覧できる。
 http://thediplomat.com/2013/11/congress-may-have-killed-the-trans-pacific-partnership/

(注21113日にウィキリークスが公開したのは8月にブルネイで開催された参加国交渉会合で配布された知的財産権分野の草案とみられる。その全文目次は次のとおりである。  
 https://wikileaks.org/tpp/
 この中で特許権に当たるにはSection E Patentsで、QQ.E16:US:Pharmaceutical Productsが医薬品関連の条項である。

(注3「砂糖、米国でも聖域 TPPよそに手厚い保護」(『朝日新聞』2013324日)は米国の国産砂糖の保護政策とTPP交渉の場での米国の例外なき関税撤廃要求の自己矛盾を次のように指摘している。
 「約15万人が携わり、約100億ドル(約9500億円)の規模をもつ米砂糖産業は、手厚く保護されてきた。現行法では国内消費量の85%程度は国内で生産されるべきだと規定されている。」「これらの結果、米国の砂糖価格は世界水準に比べrと510割増しだ。」
 「2005年に発効した米豪自由貿易協定(FTA)で砂糖は関税自由化から除外されている。TPPでも同様の姿勢で、通商代表部(USTR)のマランティス臨時代表は20日、『すでにTPPメンバー国と結んだFTAの内容は見直さない』と『聖域』にしようとしている。」

(注4厚労省が発表した最新のジェンリック薬の使用促進政策は次の文書に示されている。
 「後発薬のさらなる使用促進のためのロードマップ」(厚労省201345日)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002yu25-att/2r9852000002zb0m_1.pdf#search='%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%8D%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF+%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97'
 これを見ると、ジェネリック薬の普及率(数量ベース)は2009年時点でアメリカ72.0%、イギリス65%、ドイツ63.0%、フランス44.0%、スペイン37.0%に対して日本は22.0%で極端に低い水準になっている。

  壇上からみた集会の光景
 
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デモ行進出発(筆者は2列目)
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10.2 JAグループほか主催のTPP全国代表者集会での連帯あいさつ~読み上げ原稿全文~

2013年10月3日

 昨日(102日)、日比谷野外音楽堂で全国農業協同組合(JA)グループ主催の「TPP交渉から『食と暮らし・いのち』を守り、『国会決議の実現』を求める全国代表者集会」が開かれた。あいにく開会中(11001230)は雨模様だったが、会場は全国から集まった雨合羽の人々で埋め尽くされた。

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      壇上から撮った会場の光景

 JA全中の萬歳章会長のあいさつのあと、各界の9人のリレートーク。その後、出席した各党代表のあいさつと続いた。
 私はリレートークの一人として連帯のスピーチをした。最後の9人目だったが、各スピーカーのあいさつは皆、迫力とリアリティに富んだ熱弁だった。特に、大川原けい子さん(JA全国女性協会会長)の「復興より先にやるべきものはない。食と暮らしを破壊するTPPには絶対反対」という発言、吉田敏恵さん(岩手県生協連専務)「政府は大企業と米国の顔色ばかり見るのではなく、私たちを見るべきだ。私たちは関税が撤廃されたら海外へ逃げるなどと破廉恥なことは言わない」という発言に問題の本質を突く気迫を感じた。
 発言の持ち時間はごく短かったので読み上げ原稿を用意した。今朝の日本農業新聞の2面にリレートークの発言要旨が掲載されたが、以下は私が読み上げた原稿の全文である。

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 皆さん、大学教員の会から連帯のごあいさつをいたします。
 TPPはパートナーシップとは正反対の、弱肉強食の市場強奪ゲームとなっています。TPPがめざしているものは人間の暮らしと命、国家の主権よりも一握りの多国籍資本の利益を優先する投資家国家です。TPPのお手本と言われる米韓FTAを押し付けられた韓国ではFTAに抵触する恐れがある66の法令を見直す作業が進められています。その中には学校給食に地元の食材を使う場合に補助金を交付する規則まで含まれています。

 そもそも、日本はどうしてオバマ政権の選挙対策のために重要農産品の市場を、食の主権と安全を、アメリカに差し出さなければならないのでしょうか?日本はアメリカに貢物をする植民地でも属国でもありません。独立国家です。オバマ政権は日本の公的医療保険や薬価制度に口出しするのではなく、4,600万人にも上るといわれる無保険者を抱える自分の国の医療保険制度の改革にこそ尽力すべきです。

皆さん、今年の4月に衆参農林水産委員会で採択された決議には、重要5品目については10年を超える段階的な関税撤廃も認めないと明記されています。
「一定の農産品以外にも、守り抜くべき国益が存在」するとし、食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと、と明記しています。
ISD
条項に合意しない、と明記されています。
「交渉により収集した情報については、国会にすみやかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること」と明記されています。
 しかし、これらすべてが、今、反故にされる瀬戸際にあります。とりわけ、情報提供については、すでに明白に反故にされています。この状況を一刻も早く改め、このまま交渉を続けてよいのかどうか、国民的議論を興こさなければなりません。

 大学教員の会は11月末から12月初旬に、弁護士ネットワークの皆さん、主婦連の皆さんをはじめ、多くの団体、個人の方々といっしょに全国で数10万人規模の国民大集会を開く準備を進めています。それに向けて、今日も、この集会が始まる直前まで、これまで別々に行動してきた各界・各分野の方々と対等の関係で、一致点で大同団結しようと話し合ってきました。JA全中の皆様、各地のJAの皆様とも、ぜひとも連帯した取り組みをさせていただきたいと願っています。

皆さん、頑張ればTPPはストップできる、大義は私たちの側にあるという思いでいっしょに、粘り強く運動を続けましょう。

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9.14 TPPシンポジウムのご案内

201391

 政府は国内の関係団体や地方自治体、国民の不安、反対に背を向けて、この7月からTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉に参加した。しかし、政府は、守秘協定にサインして交渉への参加が認められたので交渉の中身は話せない、日本がどのような主張をしているかも話せないの一点ばりで交渉を進めている。おまけに、協定が締結されてから4年間は協定の内容を公にしない約束まで交わしているというのですから、異常な交渉というほかない。
 そこで、私も呼びかけ人に加わっている「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」、「TPPに反対する弁護士ネットワ-ク」、「主婦連合会」は、「このまま交渉が進んでいいのか?」と考えている多くの団体、人々がいることを社会的にアピールし、TPPの内容そのものや進め方の問題点を洗い出すため、以下のようなシンポジウムを開催することにした。

 ご覧のとおり、このシンポジウムはTPPに関わりの深い日本最大の団体―――全国農業協同組合(JA全中)と日本医師会がTPPについて初めて同席する企画となった。また、TPPに参加した場合、関税撤廃の影響に直撃される、北海道・十勝地方の代表にもパネリストとして参加してもらうことになった。
 
会場は370席だから、シンポジウムとしては大きい目である。多くの方々にご参加いただくことを願っている。

●シンポジウムの概要●

 1. 名 称: シンポジウム「このまま進めて大丈夫なの?TPP交渉」
 2. 日 時: 2013914日(土)1330分~1630
        (受付:13時より)
 3. 場 所: 文京シビックホ-ル・小ホ-ル  
        東京メトロ 後楽園駅
         丸の内線(4a5番出口)南北線(5番出口)徒歩1
        都営地下鉄 春日駅三田線・大江戸線(文京シビックセンター
         連絡口)徒歩1
 4. 主 催: TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
  
   TPPに反対する弁護士ネットワ-ク
     主婦連合会
   5. <パネリスト>
    小林寛史さん(全国農業協同組合中央会・農政部長)  
    中川俊男さん(日本医師会・副会長) 
    山根香織さん(主婦連合会・会長) 
    杉島幸生さん(TPPに反対する弁護士ネットワ-ク)
        鈴木宣弘さん(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
    東京大学大学院教授)
      高橋正夫さん(TPP問題を考える十勝管内関係団体連絡会議代表
    十勝町村会長・本別町長)
    <特別報告>内田聖子さん(アジア太平洋資料センタ-事務局長) 
    <コ-ディネ-タ->醍醐聰(東京大学名誉教授) 
 6. 参加費:無料(どなたでも参加できます)

●連絡先●
  TPPに反対する弁護士ネットワーク
    千代田区平河町2165
クレール平河町802
   
シンフォニア法律事務所内 中野和子弁護士気付 
    TEL: 0332307435  FAX: 0332307436
        Eメ-ル: kznakano45@gmail.com
 TPP
参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
  
    TEL: 09040218316 
    Eメ-ル:tpp2013@mbr.nifty.com
 主婦連合会
 
  主婦連合会事務局 TEL: 0332658121
 
 Eメ-ル
info@shufuren.net

●チラシ●
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/20130914sinpo_chirashi.pdf

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TPPからの脱退も辞さずを公約を掲げて当選した国会議員は政府に情報公開を求める責務がある~例外扱いがどうなっているかを監視するために~

2013724日 

 TPP交渉への日本の正式参加の日に合わせた抗議のリレートーク

 昨日723日、日本はマレーシアで開催されているTPP交渉に正式に参加した。これに対し、抗議の意思を示そうと、「国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)」と「STP  TPP!!官邸アクション実行委員会」の共同主催で、昨日夕方、新宿西口駅前で「TPP交渉参加大抗議 宣伝とリレートーク」が開かれた。リレートークには全国保険医団体連合会の住江憲勇会長、主婦連の山根香織会長、国公労連の宮垣忠委員長、農民運動全国連絡会の笹渡義夫事務局長、TPPに反対する弁護士ネットワークの宇都宮健児氏、福島県南相馬市で農業を営む亀田俊英さんらが参加された。私も「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の呼びかけ人としてこのリレートークに参加した。
 なお、リレートークの途中で、マレーシアの参加国交渉会議の取材に出かけているアジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子さんの現地レポートも流された。
 時間が16分と限られていたので、前もって原稿を用意し、それを読み上げる形でスピーチをした。その読み上げ原稿をこのブログに掲載することにした。
 なお、リレートークの模様は現場取材をしたIWJが次のとおり録画で配信している。生のスピーチをご覧いただけると臨場感があるのでぜひ、各スピーカーの肉声を聴いていただきたい。

 Part1 主催者あいさつ / 全国保団連会長 住江さんのスピーチ
http://www.ustream.tv/channel/iwakamiyasumi4?utm_campaign=ustre-am&utm_source=6876846&utm_medium=social#/recorded/36240699

 Part2 主婦連会長
・山根香織さん/ 弁護士・宇都宮健児さん / 内田聖子さんの現地レポート(回線不良)/ 醍醐 / 国公労連・宮垣忠さん / ニャントマーさん / 福島県農民連会長・亀田俊英さん
http://www.ustream.tv/recorded/36241053

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私のリレートーク スピーチ原稿
(下線部分は時間の関係でスピーチを割愛した箇所)
 
 大学教員の会の呼びかけ人の醍醐聰です。
 私たち大学教員の会は328日に17人の呼びかけ人で会を立ち上げ、49日には安倍首相宛てにTPP参加交渉からの即位脱退を求める要望書を提出しました。これには全国の様々な専攻分野にまたがる大学教員870名の賛同署名を添えました。現在賛同者は約900名となっています。

 TPP推進を公約に掲げて当選したのは121人中わずか16
 皆さん、21日投票の参議院選挙で121人が当選しましたが、その中でTPP交渉推進を公約に掲げたのは2つの政党に属する16人だけです。大勝した自民党も重要品目を関税撤廃の例外とすることができなければ、交渉からの撤退も辞さずという公約を掲げて当選したのです。民主党の海江田代表も選挙戦の中で同様の主張を繰り返しました。
 しかし、フロマン米国通商代表部代表は、718日に下院歳入委員会が開催した公聴会で、「日本は5品目を交渉の対象外にするよう求めているがどうなのか」という質問に対して、「日本の農業に関し、〔特定の品目について〕前もって除外することに同意したことはない」と発言しています。また、今朝のNHKニュースでも、アメリカは日本の参加により交渉全体に遅れが生じないよう、関税撤廃などで日本に強く妥協を迫る意向と伝えています。

 であれば、聖域が守られなければ脱退も辞さずという決議をした衆参農林水産委員会の委員はもとより、例外扱いができないなら脱退も辞さずを公約を掲げて当選した自民党議員は、例外扱いがどうなっているのかをチェックできるよう、交渉の途上での情報公開を政府に求める責務があると考えるのが当然です。
 かりにも、参加国間の協定により交渉途中での情報公開はできないと言われたと称してすごすごと、引き下がるのであれば、脱退も辞さずという公約は実行できるあてもない空約束だったということになります。

 そもそも、1国の主権を揺るがすような国際協定の交渉過程に国会議員さえ関与できないというなら、そうしたTPPはわが国の立憲民主主義、議会制民主主義と全く相容れない異常な協定交渉というほかなく、この一事を以てしても交渉から即時脱退すべき十分な理由になると私は考えます。

さまざまな交渉テーマを天秤にかけるバーター取引は売国の言い訳作りに過ぎない
 皆さん、日本政府はTPP交渉に臨むにあたり、農業分野での関税撤廃交渉と非関税分野でのルール撤廃交渉にブリッジをかけ、ある分野で譲歩するのと引き換えに別の分野で日本の要求を認めさせるバーター交渉をもくろんでいるとも伝えられています。
 しかし、長年にわたって日本国民が培い、定着してきたさまざまなルールや慣習を切り刻き、天秤にかけて取引の材料にすることなど「交渉力」でも何でもありません。それは肝心の分野でアメリカの強硬な要求に屈服するのと引き換えに、ごく限られた分野でおこぼれ的に日本の要求を認めてもらおうとする屈辱交渉以外の何物でもありません。そんなおこぼれを材料に国益を守ったなどというのは詭弁であり、日本の国民益を冒涜するものです

 そもそも、日本の法律や規則を決めるのに、どうしてアメリカや外国企業の指図を受けなければならないのでしょう? 日本の法律や規則は日本の主権者である私たちが決めるのではなかったですか。

数百万の国会請願署名を目標に掲げたTPP阻止の一大国民運動を
 最後にTPP阻止に向けたこれからの運動について提案をさせていただきます。大学教員の会は日本がTPP交渉に参加した今でも交渉からの即時脱退を求める立場は変わりませんが、百歩譲って交渉が進行し、いよいよ国会での批准となった場合も視野に入れ、それに備えて、TPP阻止の国民運動を盛り上げるため、今日、ここにお集まりの各界の団体、個人の方々が中心となって、さらにその輪を広げたTPP阻止の国民運動ネットワークを結成して、数万人規模の大集会や、数百万人の賛同者を目標に掲げた国会請願署名を企画されるよう要望して私のスピーチを終わります。

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大学教員作業チーム:第3次のTPPの影響試算を実施中

2013711

 4月以降、大学教員4人(静岡大学名誉教授/土居英二さん、島根大学准教授/関耕平さん、桜美林大学専任講師/三好ゆうさん)でTPPの影響試算に取り組み、これまでに、第1次、第2次の試算結果をまとめ、記者会見で発表した。第1次は全国レベルの影響(全産業・雇用等への波及効果の試算、及び主要品目別にみた農業所得への影響の試算)であり、第2次は、都道府県レベルの影響ならびに規模別にみた稲作農家の経営収支に及ぼす影響の試算だった。
 これらを引き継いで、現在は、第3次の影響試算に取り組んでいる。
 土居さんは農林水産物を起点とする全産業へのTPP(関税撤廃)のマイナスの経済波及効果の試算、都道府県内所得が減少し、企業所得と並んで家計所得の減少と、それを通じた家計消費の減少額を新たに試算中である。
 私は75日の記者会見で発表した「作付面積規模別にみた稲作農家の経営収支への影響」の試算を受け継ぎ、コメどころ・北陸4県の稲作農家の経営収支に及ぼす影響を試算中である。これに必要な資料(過去3年の平均値を計算するために必要な、目下公表外の2009年の作付面積規模別の稲作農家の経営収支)を北陸農政局に依頼して取り寄せ中。
 この作業と並行して、規模別にみた畜産農家の経営収支に及ぼす影響の試算にも取り掛かっている。ここでは全国レベルの試算だけでなく、日本一の畜産地・北海道を対象にした試算も行う。北陸の稲作農家といい、北海道の畜産農家といい、規模別にみたら、どのような結果が出るのか、自分でも注目している。
 また、関さん、三好さんには畑作農家の経営収支に及ぼす影響を同じく規模別に試算してもらっている。ここでも、お2人は全国レベルの試算と同時に、日本有数の大規模畑作農家が存在する北海道を対象にした試算も手掛けている。
 7月中旬には作業を終え、記者会見を開いて試算の結果を発表することにしている。政府・自民党が農業所得倍増計画を掲げる一方で、TPPに参加したら、農家の所得がどの程度、落ち込むのか、選挙公約にどれほどの実現見通しがあるのかを判断する資料として、試算の結果に注目していただけるとありがたい。

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「朝日新聞」の紙面コメントで言いたかったこと~TPPをめぐって~

2013630
「朝日新聞」の紙面コメントで言いたかったこと~TPPをめぐって~

 今朝(2013630日)の「朝日新聞」3面に、「安倍政治を問う 2013参院選4」として参議院選挙の争点の一つになっているTPPの問題が取り上げられた。その紙面の一部に「識者はどう見る」というコラムが設けられ、TPP推進派の原田泰・早稲田大学教授(経済政策論)の「自由貿易 国の繁栄に必要」という見出しが付けられたコメントと並んで、私のコメント(「農業生産激減、マイナス大」:編集部がつけた見出し)が掲載された。全文は次のとおり。

紙面に掲載された私のコメント
 「農業生産を激減させ、農家の所得を減らすなどマイナス面が大きい。それなのに政府が農業所得倍増をうたうのはごまかしだ。薬価が高くなる可能性も指摘されており、医療の財政負担を減らす政策に逆行し、保険料にもはね返る。農家と消費者は食品表示の徹底や地産地消で食の安全と食料自給率の向上を図るために連携すべきだ。お互いの利益になる。」

 もともと、限られた紙面の中で意を尽くすのは至難のことだ。また、読者に読みやすい平易な文章になるよう編集部が手を入れるのは必要なことだ。しかし、編集部内で種々、手が入るうちに、私の所期の論旨がぼやけた感がある。その点を復元するため、私が担当記者に送ったコメント用原稿(改訂版)を掲載したい。

私のコメント用原稿~所期の論旨を復元するために~
 「農業生産を激減させ、大多数の農家の所得を細らせるTPPへの参加を表明しながら、農業所得倍増を謳うのは欺瞞だ。食料自給率の向上をめざす国の政策にも逆行する。先発医薬品の特許期間の延長を図るTPPに参加するのは、安価な後発医薬品を普及させ、医療財政を改善しようとする薬価政策に逆行する。農業者と消費者の利害は対立するわけではない。生産履歴や食品表示の徹底、地産地消で食の安全と自給率の向上を図るために連帯できる課題は多い。」

農家の不安をリアルに伝えた紙面は一読の価値あり
 
 とはいえ、北海道十勝の芽室町のテンサイづくり農家と山形県南陽市の米・さくらんぼづくり農家の取材にもとづいて書かれた紙面は、政府のTPP参加表明によって不安を募らせる農家の実態をリアルに伝える記事である。特に、芽室町の農業は5月に私たち大学教員2名が視察に出かけた地方でもあり、記事に共感するところ大である。

 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/tpp-a9d1.html
 北海道庁と帯広/十勝へ、TPPの現地調査と意見交換にーー大学教員影響試算作業チームーー

 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/tppiwj-64c3.html
 TPP影響試算作業チームの北海道現地調査の模様~同行取材したIWJの録画で~

 また、記事の中で、政府が掲げる農業所得倍増計画に懐疑的な農家の声を伝えた箇所は私のコメントとも重なり、多くの国民に知ってほしい点である。

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食と地域経済からTPPを考える~山梨県韮崎市で講演~

 616日、午後に開かれた「TPPを考える八ケ岳の会」主催の学習会で「TPPで私たちの生活・未来はどうなるの?」というテーマの講演をした。地元の新日本婦人の会の会員の皆さんが企画された催しで、会場は韮崎駅のすぐそばの韮崎市交流センター・二コリ。
 当日まで主催者は準備と広報に大忙しだったようだ。それでもいったい、どれくらいの参加者があるのか見当がつかず、気をもまれた様子。前日から梅雨空だったが、乗車した「あずさ」が甲府に着くころから青空が広がり、日が差し込む天候になった。

 催しが始まる時刻には会場は満席。最終的には149名とのこと。これには主催者もびっくりされようだ。主催者あいさつのあと、JA梨北組合長の堀川千秋さんのあいさつ。「日本はアメリカの属国になってはいけない」と熱弁を振るわれた。私は用意したレジメ(A4サイズ5枚)と資料(表9枚。A4サイズ5枚)にそって話した。

 あとの懇親会の時に尋ねたら、この日の参加者の過半は主催者と全く面識のない人達だったそうだ。TPPに限らず、最近の原発や憲法などの催しでは参加の顔ぶれが固定しがちだ。そのため、講師の話は「分かった人向け」、質疑も「仲間内の定番のやりとり」になりがちである。TPPでいうと、非関税分野の問題に話題が向きがちだが(これ自体はむろん大変重要だけれど)、足元の農業、そして農業と消費者をつなぐ食の問題は意外と、通り一遍の浅い議論にとどまっている。
 そこで、今回は、関税・農業問題――といっても食と繋がる問題――とTPPが地域経済にどんな影響を及ぼすのかに重点を置いた話をすることにした。

農業と消費者を対立させる図式の標本~反面教師としての朝日新聞・原真人氏の論説~
 
奇しくもというべきか、16日、朝食を取りながら「朝日新聞」をめくっていくと、編集委員・原 真人氏の「農業改革『コメを守る』のは誰のため?」(「朝日新聞」2013616日、<波聞風聞>欄)と題する論説が掲載されていた。
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306150599.html

 これぞ、農業と消費者を対立させる図式の標本といえる内容である。ひととおり目を通して、減反政策の廃止とTPPへの参加で農政の拡大を図るべきというのが、結論とわかった。しかし、減反政策が農業生産の拡大につながるのはわかるが、TPPへの参加は農水省の試算では関税撤廃で影響を受ける農産品全体で生産量は27%減少すると見込まれている。原氏がとりわけ問題視するコメの生産量は32%減少すると見込まれている。この意味で原氏の論説は因果関係がちぐはぐな主張になっている。
 なお、原氏が指摘している農業過保護論、どうしてシャッター通りの商店を助けず、農家だけを助けるのかという議論の援用などは、私がこの日の講演でデータに基づいて触れる予定の論点だった。そこで、講演の冒頭で急きょ、原氏の議論を紹介し、その後の講演の中で逐次、コメントを挟むことにした。

TPPで私たちの生活・未来はどうなるの?」(講演用の本体レジメ)
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/yatsugatake_tpp_paper_20130616.pdf

TPPで私たちの生活・未来はどうなるの?」(講演用の資料編)
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/yatsugatake_tpp_data_20130616.pdf

 
  なお、地元のHさんが講演の動画を撮っていただき、Yu Tube にアップしていただいた。
  http://www.youtube.com/watch?v=h_0Q6UtvlIM

 
 
また、主催者の方から会場の写真を送っていただいた。そのなかの1枚を掲載させていただく。
    Photo
  以下は本体レジメの全文である。

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                     TPPを考える八ケ岳の会
                        2013616

        TPPで私たちの生活・未来はどうなるの?
      ――農業・食料・医療・保険はどう変わる?――

                             醍醐 聰
Ⅰ.TPPとは?
 
 ・環太平洋連携協定(Trans-Pacific Partnership Agreement)の略
 ・現在の交渉参加国:シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チ
      リ、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア、カナダ、
  メキシコ(計11カ国)
 ・交渉の対象分野(計21の分野):
   貿易・投資・政府調達・知的財産・競争・金融サービス・労働・環
   境・原産地規則・衛生食物検疫など
  ・関税については10年以内にすべてを撤廃することを原則とする。

Ⅱ.TPPをめぐる誤解と誤報
 
 1.日本は世界に閉じた国?
  ・菅首相「TPPは平成の開国」
   →日本はすでに十分すぎるほど開いている1参照)
     →世界に例を見ない食料自給率の低さこそ問題3参照)
    米の関税率778%だけをズームアップするのは恣意的
 

 2.日本の農業は過保護?
  ・「農業に対する国際化の黒船はすでに20年前から来ている。日本は
   農産物、特にコメに対する保護水準を引き下げてこなかった。主食
   であるコメに778%、小麦に252%もの関税をかけて保護している。
   国際水準からみて、まさに天文学的な数字だ。」(本間正義「日本
   の農家は保護され過ぎ」『選択』20132月号)

   →国家予算に占める割合でいうと世界の中位、一戸当たりの予算規
    模でいうと世界の下位(2参照)

  3.アジアの成長を取り込む?
  ・アジア諸国のうちのTPP参加国とFTA2国間経済連携協定)参加国
   の経済規模の対比
   →・TPPに参加しているアジア4カ国(日本以外)のGDP合計 736
     US億
ドル
    ・FTA協定を結んだアジア8カ国(日本以外)のGDP合計 4,055
     US
億ドル
    ・GDPベースでいうと、TPPへの参加で広がるアジアの経済圏は、
     日本が既に協定を交わしたアジア諸国の経済圏の5分の1以下
     (4照)
 ・アジアの経済大国、中国・インド・韓国が参加していないTPP
               参加しても「アジアの成長」を取り込めるわけではない。
    ・TPPは「自由貿易」ではなく、中国等を排除し、アジアの経済
     外交に分断を持ちこむ「ブロック貿易」
    ・TPPでベトナムへの出店拡大の商機を窺う日本のコンビニ業界
     (2号店規制の撤廃)
     →進出先の国内の零細企業を守る出店規制をこじ開けて商圏の
      拡大を図るのは「自由貿易」を装った経済侵略 → 強者
      (米国)に屈従し、弱者に攻め込む国家的二重人格

 4.日本は貿易立国?
  「TPPから逃げられない『貿易立国日本』」(硬派ジャーナリスト・
  磯山友幸のブログ)
   →・需要面からみた日本のGDPに最も寄与しているのは「家計の消
     費支出」約57%)。輸出は輸入との差し引き残では約3%、グ
     ロスでも約16%の寄与でしかない。
    ・つまり、日本は「貿易立国」ではなく、「内需立国」。内需の
     回復こそ経済再生のカギ5参照)


 5TPPは貿易の世界標準? 
  ・「自由貿易」論は規制性悪説に立つ競争原理至上主義
   国民の安心・安全、弱者保護のための規制を「業界保護=私益のた
   めの悪習」と攻撃して、「強者の私益追求の自由」を拡張しようと
   するイデオロギー
  ・その原理の発案元からいえば、米国仕様
  ・自国企業の商圏を世界の隅々に広げる上で障壁となる各国の関税や
   規制を蹴散らすためのルール作りを多国間交渉という装いで演出す
   るための場づくりがTPP
  ・米国仕様のTPPは他国の市場はこじ開けようとするが、自国の市場
   は死守する保護主義をブレンドした身勝手な「自由」貿易主義
   (例)①「砂糖、米国でも聖域 TPPよそに手厚い保護」(「朝日
       新聞」2013324日)
       ・85%は国産。生産余剰分を政府が買い上げ、エタノール
        製造会社に払い下げ
       ・米国の砂糖価格は世界水準と比べ5割~10割増し
       ・関税を撤廃すれば、米国消費者は年間35億ドル(約3,300
        
億円)の利益を得る。
       ②「繊維では中国対抗策 原糸・生糸も加盟国限定」(「朝日
       新聞」同上)
       ・2001年にWTOに加盟した中国からの安い衣料品(中国産
        の生糸を使用)の輸入急増で、国内の生糸・繊維業者は大
        打撃(雇用者は15年前の3分の1
       ・さらに、TPP交渉に参加したベトナムからの衣料品(中国
        産の生糸や生地を使用)の輸入増加が予想される。
       ・そこで、米国政府が唱えているのが「原糸原則ルール」:
        関税撤廃の恩恵を受ける条件として、原料の生糸や生地は
        TPP加盟国から調達することを要求
      ③WTO違反と認定されても改めない米国の綿花輸出補助金
       ・20022月、ブラジル政府は、米国が自国の綿花生産者に
        与えている輸出補助金と生産助成金により、不当に低い価
        格で輸出をできるようにしているのは綿花の国際価格を押
        し下げ、ブラジルや開発途上国の綿花生産者に損害をもた
        らしている、これはWTOのルールに違反しているとして
        米国を提訴。アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中
        国、EU、インド、ニュージーランド等13カ国もこれに同
        調
       ・NPO法人・オックスファム(Oxfam)「これら4カ国
        〔注:西アフリカ4ヶ国〕は綿花の生産・出荷が・・・・
        貿易収支の812%を占めており、米国の綿花補助金に
        よって生産される余剰綿花が世界市場にダンピング輸出さ
        れ、国際価格を下げ、その結果としてアフリカの1億人の
        貧しい綿花農家をさらに貧窮させている」と批判。
       ・20049月、WTOはブラジルの訴えを支持し、20057
        
月までに輸出補助金などを廃止するよう勧告
       ・しかし、米国は一部の助成を削除したが、砂糖を担保に
        した特恵的な融資制度や価格変動補償金は変更せず。
     ④日米事前協議で、日本製自動車の輸入関税を撤廃するにあたっ
      て、スナップ・バック条項(国内の自動車産業が大きな打撃を
      蒙ったと判断した時は関税の復活を交渉できるという条項)
      を追加。関税撤廃の期限も25年先とするよう要求

Ⅲ.TPPは私たちの生活とどうかかわるのか?
 
 1.地域経済が壊される

   ~地域経済を支える農業・規制・補助金が「自由貿易」の名の下に壊
   される恐れがある~

  ①農業が壊滅的な打撃を受け、農業に関連した産業・雇用が甚大な損害
   を蒙ることは確実
   ・全産業規模でいうと10.5兆円の生産額が失われ、190万人が雇用の
    場を失う。
   ・北海道は主要8品目の合計で50.5%の生産額、14.7%の農業所得を
    失う。
   ・富山県は米だけで富山県の全農業所得の26.3%を失い、福井県は
    25.6%を失い、石川県は19.8%を失う。
  ②全国にシャッター通りと買い物難民を生み出した大店法改悪の発端は
   日米構造協議
   ・1973年に成立した大店法:中小小売業保護の立場から、一定以上
    の面積(1,500㎡。政令指定都市等では3,000㎡)を有する建物を
    規制の対象。
    通産大臣は、周辺小売業に及ぼす影響が大きいと認めるときは、大
    規模小売店舗審議会の意見をふまえて勧告することができるという
    法律
   ・日米構造協議の場で米国は、
大規模店の出店が規制されているた
    め、アメリカからの輸入品の 販売が阻害されていると主張。通商
    301条(スーパー301)による輸入停止や他の品目にも制裁措置を
    課すクロス・リタリエーションを楯にして日本を攻撃
   ・1991年大店法改悪:規制の対象とする売場面積を従来の2
    (3,000㎡。政令指定都市等では6,000㎡)に引き上げ、商業活動調
    整協議会を廃止
  ③地産地消を進めるための補助金がやり玉に挙げられる可能性がある。
   (9参照)
    ・「岐阜県に米国食品企業が投資をして食材工場を造り、長野県に食
    品を出そうとしたら、『長野県産でないと補助金(奨励金)は出な
    いのでお宅のも のを使わない』と言われ、それを訴えることは考
    えられるかも知れない。」(長野県が照会した「我が国のTPP交渉
    参加に関する疑問点」に対する内閣官房の回答、2013327日、
    11ページ)
   ・山梨県の輸出振興補助金
     県産果実海外販路開拓事業費補助金/輸出向け選果体制確立事
     業費補助金/果樹王国やまなし輸出戦略事業費補助金
  ④漁業地域のインフラ復興を支援する補助金がやり玉に挙げられる可
   能性
   ・WTOでの漁業補助金に関する議論(2007年のルール議長私案の骨
    子)過剰漁獲の抑制・漁業資源の保全のためとして、漁船の獲得・
    建造・修理・近代化のための補助金、漁船の操業経費(燃油費・人
    件費など)・流通加工分野への支援、漁港インフラや関連施設の整
    備、漁業者への所得補償のための補助金の禁止を提案
   ・各国の主張
     ①米国・ニュージーランド、豪州:漁業補助金を幅広く禁止すべ
      き
     ②途上国・中国・インド・ブラジル:小規模漁業向け補助金への
      配慮を要求。その他は禁止  
     ③日本・韓国・EU:過剰漁獲につながる補助金に限って禁止
   ・漁港インフラ補助金の禁止は震災復興の拠点となる漁港の復旧を妨
    げる。
   ・漁業者への所得保障・操業経費補助金が禁止されると原油高騰/燃
    油費高で出漁さえできない漁業者の生活を一層、困窮させる。
   ・「〔漁業補助金が〕実際に原則禁止となれば、漁港・水産加工施設
    整備や創業支援など『現行予算の相当部分が認められない』(水産
    庁)事態が想定され、水産政策の大転換を余儀なくされる可能性が
    ある。」
     「今回の大津波で本県は111漁港のうち108漁港が防波堤や岸壁な
    どのインフラをはじめ、水産加工場などの水産施設が壊滅的な被害
    を受けた。」 「こうした施設の復旧には長い期間が必要な場所も
    あり、仮にインフラ整備への補助金が禁止されると復旧・復興に重
    大な支障が出る。」(『岩手日報』2011119日)

 2.食の安全が脅かされる――遺伝子組み換え食品を例にして――
  ~食の安全を守る規制が自由貿易の障壁になるとして撤廃を迫られる~
  *遺伝子組み換え食品の危険性
    ①免疫系への影響(新たなたんぱく質が体内に入り込んでくると、
     病気やアレルギーを誘発させるチャンスを増やす。)
    ②子孫への影響(3世代、4世代後の子どもの体内で外来遺伝子が人
     体の宿主細胞にどのような作用を及ぼすのか不明。健康と生命力
     に意図しない、予期しない影響を及ぼす恐れがある。)
    ③内蔵障害(肝臓や腎臓などの解毒にかかわる器官を損傷させる恐
     れ)
    ④遺伝子組み換え作物は強い薬剤耐性を持つがために、散布薬剤量
     を増やし、農薬残留量を増やす。→ アメリカは同国(モンサント
     社など)から大豆を輸出している世界各国に残留農薬基準の引上
     げを要請 →20004月、厚労省、輸入の際の除草剤ラウンド
     アップ(モンサント社製)の残留農薬基準量を引上げ(大豆6
     ppm
から20ppmへ、トウモロコシ0.1ppmから1.0ppmへ。サト
     ウキビ0.2ppmから2.0ppmへ)
    ・20095月 米国環境学会、遺伝子組み換え作物の開発の一時中
     止を求める声明を発表
  *大豆、トウモロコシの最大の輸入先のアメリカでは遺伝子組み換え作
   物が8割を占めている。( 7参照
  *安全性検査(200141日施行「食品衛生法」)に基づく組み換え
   食品安全審査に関する厚生省告示232号)→ 輸入品にも適用
    ・食品の全部または一部に組み換えDNA技術を含む場合は厚生大臣
     が定めた安全審査の手続を経たものであることの公表を義務付け
    ・輸入品の審査はモニタリング検査(81、表82参照)
  *表示規制
    ・表示義務の対象:大豆・トウモロコシ・ナタネ・ジャガイモ・綿
     実・てん菜・アルファルファの7品種とこれらを原材料とする32
     
種の加工食品(豆腐・納豆・みそ・きな粉・コーンスナック菓
     子・ポップコーンなど)
    ・原材料の重量に占める割合が上位4位以下、あるいは、原材料全
     体の重量に占める割合が5%未満の加工食品は表示義務の対象外
    ・醤油・食用油は検出技術の限界を理由に表示義務なし(任意表示
     は可)
    ・日本の国民は、今でも、遺伝子組み換え作物の最大の栽培国から
     輸入した大量の遺伝子組み換え作物を原材料にした加工食品をそ
     れと知らないまま消費している。
  *TPPへの参加で懸念される影響
    ・大豆、馬鈴しょ、てん菜などの輸入が増加するのに伴い、遺伝子
     組み換え作物を原材料にした加工食品をそれと意識せず食べる機
     会が激増する。
    ・遺伝子組み換えトウモロコシ等を飼料として使った外国産畜産品
     の輸入が増加することにより、遺伝子組み換え作物をそれと意識
     せず、食べる機会が激増する。
    ・経団連会長を務める米倉弘昌氏が会長の職にある住友化学は遺伝
     子組み換え作物の世界最大手のモンサント社の遺伝子組み換え作
     物(ラウンドアップ)の種子を組み合わせた除草剤の販売・普及
     について長期的協力関係を結んでいる(20101020日付け、
     同社プレスリリース)
    ・日本モンサント社は目下、デュポン社やダウ・ケミカル社などと
     ともに、遺伝子組み換えダイズ、除草剤耐性ダイズなど、多くの
     遺伝子組み換え作物及び添加物の安全性の審査を厚労省に申請し
     ている。
    ・遺伝子組み換え作物の最大の栽培国であり、輸出国である米国か
     ら、遺伝子組み換え作物の安全性審査や表示規制、残留農薬規制
     が、「自由貿易の障壁」、内国民待遇違反として撤廃を迫られる
     可能性がある。

 3.米国の知的財産権要求で日本の文化と医療が壊される
   ~流出したTPPでの米国知財条文案にもとづいて~
   (福井健策「TPPの主戦場になった知的財産権と、日本への影響」
   『国際農業・食料レター』JAグループ刊、No.174, 所収)を参考に
   して)

  ①著作権期間の大幅延長
    ・日本の著作権は50年のところを、米国並みに70年に延長するよ
     う要求(コンテンツの輸出増をあてこんだ要求)
    ・名作上映会や「青空文庫」といった文化活動が狭められる。
    ・「孤児著作物」が増えるだけ
  ②法定賠償金の導入
    ・米国並みの高額賠償金(一作品当たりの上限約1,500万円)の
     導入
    ・知財違反を巡る訴訟の増加 → 権利者と連絡が取れない資料の
     復刻や利用がしにくくなる。
  ③遺伝子組み換え種子特許の導入
    ・植物を対象とする特許(生物特許)の導入 → 独占的な種子ビ
     ジネスの出現
  ④医療に関する特許権の強化
    ・日本の現行法では認められていない人間を手術する方法、治療
     の方法、診断する方法を米国並みに特許の対象とするよう要求
    ・先進的医療方法が、それを最初に開発・発明したものに独占さ
     れ、普及が阻害される。
    ・医療が投資の対象とみなされる。
  ⑤先発医薬品の特許期間の延長
    ・新薬開発にかけた投資の回収を確かなものにするためとして、
     現行20年以内を510年、延長するよう要求
    ・安価なジェネリック医薬品の普及が遅れる。
     → 途上国のHIV治療にジェネリック医薬品を使っている国境な
      き医師団の抗議
 

 

Ⅳ.TPPへの参加を阻止する可能性は十分ある
 
  ・政府の対米交渉力という幻想からの離反(時事通信の世論調査)
  ・見えないメリット、見えてくるのはデメリットばかり 
   → TPPは日本の国益を米国と多国籍企業に売り飛ばす「平成の不平
    等条約」
  ・各地で反対運動が広がっている。生産者と消費者・市民団体の連携
  ・あきらめずに運動を広げれば、日本の主権と国益を日本国民の手で
   守るのだという世論を生み出し、政府に交渉からの撤退を促す道は
   必ず開ける。

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 翌17日は八ヶ岳山麓めぐり
  16日は小淵沢泊。翌17日は晴天に恵まれ、主催者の3人の方々に車で長野県にまたがる八ヶ岳山麓~清里、野辺山、小淵沢一帯を案内していただいた。途中、日本一高地の野辺山駅で降りて周りを散策。美しい樹木に囲まれた八ヶ岳高原ロッジホテルのレストランでゆったりとお茶&ケーキで歓談。昼食後は小淵沢駅に近いフィリア美術館に案内していただいた。
 1990年に開館したこの美術館は第二次大戦で廃墟と化したワルシャワ市街の復興を支援する画家たちが描いた絵本原画やアウシュヴィッツ収容所の獄中で制作された作品などが常設されていた。

 八ヶ岳高原ロッジホテルの玄関前に咲いていたサラサドウダン
  Photo
 フィリア美術館の玄関
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