NHK政治部・原聖樹記者宛てに質問書~611名の連名で~(2)

2017726

                         2017725
NHK
政治部
原 聖樹 様

      「クローズアップ現代+」(619日放送)における
         貴職の発言についての質問書(続)

                   NHK視聴者有志611名(有志名簿は同封別紙)

ご発言②について

 d613日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、
 「平成2811月の特区諮問会議決定で『広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り』との限定を付したのは、これは誰がどのように起案して、どのように話し合いがされて、ここで限定が付されたのでしょうか。」

という記者の質問に対し、八田達夫氏は、

「これは基本的には3大臣の中で決められたわけです。最後、諮問会議に出されたこの案を提示されたのは、山本大臣だったと理解しています。山本大臣はその前にワーキンググループのサジェスチョンを聞いて下さいました。」

と答えています。

 e)しかし、諮問会議の有識者議員が山本幸三特命担当大臣に対して、いつ、どこで、どのようなサジェスチョンをしたのか、それに対して山本大臣はどのような応答をしたのかについて、諮問会議の議事要旨にも配布資料にも一切、記録はありません。
 また、山本大臣が有識者議員のサジェスチョンを踏まえて「広域的」という文言を追加することを諮問会議で提案した事実も、諮問会議で「広域的」とか、平成304月を開学予定とするとかいった重要な条件をめぐって議論が交わされた事実を証する記録も、議事要旨に一切、見当たりません。
 結局、京都産業大の申請を不可能にし、加計学園だけが残る結果になった「広域」条件、「平成304月開学」といった条件が、いつ、どのような議論を経て決まったのか、その経緯はブラックボックスになっています。

 f)諮問会議の有識者議員が適正な手続きの一つとして挙げた「三大臣合意」について、山本特命担当大臣は今年の66日に開かれた参議院内閣委員会で、この「三大臣合意」が交わされた経緯の説明、「三大臣合意」文書そのものの提出を再三、求められたのに対し、次のように答弁しています。

 「この三大臣合意というのは、これは大臣として確認した事項であります。公式の文書として作ったものではありません。
 そもそも行政文書というのは、国家公務員がその職務を遂行するに当たり法令等に基づき適正に作成、保存しているものであり、これに違反した場合には懲戒処分等、さらには公文書偽造罪に該当することになるなど、その真正性については制度的に担保されているところであります。
 ただ、二十八年の十二月二十二日に作成されたこと、これはもう私ども三大臣として確認しているわけであります。したがって、その真正性を証明するために、これ以上役所が保有する個別の電子ファイルについて逐一プロパティーデータ等に遡って確認することまで求められるとすれば今後の行政遂行に著しい支障を生じることになるために、行政サイドとして到底対応できるものではないと考えております。」
 
 g)しかし、上記の三大臣合意は国家戦略特区として新設の獣医学部を選定する際の重要な条件を定めた文書であり、「内閣府本府行政文書管理規則」の「別表第1 行政文書の保存期間基準」の分類に従えば、「6 関係行政機関の長で構成される会議(これに準ずるものを含む)の決定又は了解の立案の検討及び他の行政機関への協議その他の重要な経緯」を証する行政文書に該当し、10年の保存を義務付けられるものです。
 となりますと、山本大臣の上記の国会答弁は内閣府が「公文書管理法」の次の定めに違反する行為を行った公算が強いことを意味します。

 「第4条 行政機関の職員は、第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
 一 省略
 二 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
 三~五 省略」

 質問2-1
 獣医学部新設をめぐる最大の疑惑は「加計ありきの選定ではなかったか」という  点ですが、原様は、特区選定の手続きは適正に行われ、違法性はない、という諮問
会議有識者議員の主張をなぞる解説をされました。
 しかし、原様がなぞられた諮問会議有識者議員の主張には、事実に反する点、重
要な事実を無視した点があります。
 この意味で、原様の解説の③④の箇所は「正確な取材に基づいて真実や問題の本質
に迫る」姿勢、「虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢」を欠くものだったと私たちは考えます。
 この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-2
 原様は解説③④の箇所で、「違法性はなかった」という諮問会議の有識者議員の発言
を紹介されました。しかし、619日の「クローズアップ現代+」の主題は 「特区選定の過程で公平性や透明性は保たれていたのか」ということでした。
 このような番組の主題、ねらいに照らせば、問題を「違法性」に絞る諮問会議有
識者メンバーの主張をそのままなぞった原様の解説は番組の主題、ねらいにそぐわず、「問題の本質に迫る」姿勢に欠けるものだったと思われます。
 この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-3
 上記のような山本特命担当大臣の国会答弁は「公文書管理法」第4条に抵触する
可能性が強いと私たちは考えます。この点で、今回の特区選定過程には 「違法性」の面から見ても、重大な問題があると考えられます。
  原様はこの点をどのようにお考えか、お聞かせください。

                               以上


(醍醐補注)文書で実在を確認できない三大臣合意

~参議院農林水産委員会会議録(201746 日)より~ 

櫻井充君)・・・・さてそこで、私は三月の十七日に改めて、医学部の場合には三
省合意のある文書がありました、これはホームページにも掲載されております。これについて、三月十七日にうちの事務所から内閣府地 方創生推進事務局企画調整官の方にお願いしたところ、メールが返ってまいりまして、それは何かと いうと、十一月九日の一枚紙、十一月九日の一枚紙しかないと言われました。
 この十一月九日の一枚紙しかなかったので、翌日、再度確認をいたしました。
省合意に当てはま るようなものはないんですかと聞いたところ、ありませんと明確に答えております。それが、いつの 間にか十二月二十二日なる文書、三大臣合意の文書が出てきていること自体、本当におかしなことだ と思います。これはちゃんと明確にしていただきたいんですよ。事務方要らないから。ここは明確にしていただきたいんです。副大臣がだまされているかもしれないんですからね、副大臣。う一度申し上げておきますが、その時点でなかったものが、なぜ急に、突然出すか

  副大臣 松本洋平君))・・・・その上で、その十二月二十二日の文書の取り扱い いうことでありますけれども、そもそもその十二 月二十二日の文書というものはあくまでも内部的な三大臣の確認でありまして、これを正式に外に、 対外的に表している文書というのはまさに諮問会議の取りまとめというような位置付けの下で我 としては処理をさせていただいているところであります。実際に、その取りまとめの中にはこの一校 に限るということが明確に記述をされているわけでありまして、これをもちましてしっかりと皆様 方には提示をさせていただいているという認識であります。

 櫻井充君) そうすると、内部にはあったけれど公表しなかったということでよろしいですね。  

 副大臣 松本洋平君) あくまでも内部の文書であったというような、そういう理解であります。

櫻井充君そうすると、これは稟議書回してちゃんと決裁されているということですよね 

 (副大臣 松本洋平君) 各省庁においてどういう取扱いをされているかというの私の方でお答えを する立場にないと思いますけれども、少なくとも内閣府におきましは、稟議書は回っておりませ ん。しかしながら、先ほど来答弁をさせていただいているとおり、現にその文書は存在をし、そして山本幸三大臣の指示の下に事務方が作成をし、そして山本大臣が確認の下に各省、文科省、農水省に対 してお渡しをしている文書であるということであります。  

櫻井充君) 稟議書が回らないで大臣の名前使うということ、あり得るんですか少なくとも私が内 閣の一員でいたときには、政府の一員でいたときには、そういう決裁の仕方はなかったと思います が、文部科学省と農水省も稟議書はないんでょうか。 

政府参考人 今城健晴君) お答えいたします。十二月二十二日の日に私から山本農林水産大臣に御説明をし御確認をいただいたという行為はございますが、稟議書はございません

  政府参考人 松尾泰樹君) 文科省におきましても、十二月二十二日に内閣府からだいた文書につきまして、松野大臣の御了解をいただき、内閣府に回答したところでざごいまして、稟議書はございません。」

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NHK政治部・原聖樹記者宛てに質問書~611名の連名で~(1)

2017726日 

  6月19日に放映された「クローズアップ現代」は、「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」などと記された新文書をスクープ報道した。番組には匿名で現役の文科省職員も登場した。これは社会部が独自取材で得た資料、証言だった。番組では社会部の記者と並んで政治部の官邸キャップ・原聖樹記者がスタジオ出演した。
  その中で、原記者は、この番組がスクープ報道した文書で示された不公平で不透明な特区選定の実態をことごとく否定し、手続きは全て「議事録」で公開され、一点の曇りもないと胸を張る山本幸三大臣や特区諮問会議民間議員の言い分をなぞり、代弁した。NHKの政治報道を政府広報に貶める元凶は何かを雄弁に物語る解説だった。
  そこで、私たち視聴者有志は特区選定のプロセスについて必要なファクト・チェックを行った上で、昨日、7月25日、611名の連名で原記者宛てに質問書を提出し、8月2日までに文書で回答を求めた。
 質問の骨子は次の2つである。

 ①国家戦略特区諮問会議や同会議による関係者ヒアリングの議事要旨を精査すると、原記者が紹介した山本幸三大臣や諮問会議民間議員の言い分は、特区選定の真相を著しく歪めたものであることが判明する。
 原氏の解説はこうした資料を主体的に吟味することなく、内閣府や「公正・中立」とは到底思えない「民間議員」の言い分を喧伝したものではないか?

 ②「NHK放送ガイドライン 2015」には次のような規定がある。
   「報道番組やドキュメンタリィー番組、情報番組などでは、正確な取材に基づ いて真実や問題の本質に迫ることが大切である。虚構や真実でない事柄が含まれ ていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢が求められる。」 
 原氏の解説は、「NHK放送ガ イドライン 2015」のこうした規定に反するものではないか?

  今回の質問書提出には各地の視聴者のほか、元NHKプロデューサーなどNHK・OBやメディア論専攻の研究者、現・元大学教員、弁護士なども連名に加わっている。質問書は長文なので、2回に分けて転載することにする。 

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                       2017
725日 

NHK
政治部
原 聖樹 様 

 「クローズアップ現代+」(619日放送)における貴職の
         発言についての質問書
 

 NHK視聴者有志611名(有志名簿は同封別紙)

  原様におかれましてはNHK政治部の官邸担当キャップという重責を担われ、ご多忙の毎日をお過ごしのことと存じます。
 去る619日にNHK「クローズアップ現代+」は<波紋広がる“特区選定“~独占入手 加計学園”新文書“>というタイトルの番組を放送し、その中で、「国家戦略特区」として獣医学部の新設が決定される過程で行政の公平性、透明性が確保されたのかどうかを、NHKが独自に入手した文書をもとに検証しました。この番組の内容は国会でも取り上げられ、市民の間でも活発な議論を喚起しました。

 原様はこの番組の後半で、大河内直人・社会部記者とともにスタジオ出演され、「諮問会議のメンバーからは、選定のプロセスについて一点の曇りもないという発言が出ているが、これはどういうことか?」という武田真一キャスターの問いに対して次のように発言されました。

 「すべての決定の過程が議事録が残っている上に、オープンにインターネット上でされていると。すべての場所に必要な人が出席して、意思決定をしている中において、間違いが起きるはずがないということなんですね。
 さらに先ほど『広域的』という文言もありましたが、有識者の方々は記者会見で、われわれが獣医師会や、規制を緩和したくない文科省に譲歩してなんとか認めてもらうために入れた文言であって、なんらかの変な形で入ったわけではなく、われわれのサジェスチョンで山本大臣が決定したのだと。ですからそこに違法性はない、政府もこうしたプロセスを踏んでることから、手続きが適正に行われていて違法性もないと強調しているわけなんです。」(下線と番号①~④は質問者が追加)

 このような原様の解説は、武田キャスターが紹介した諮問会議メンバーの主張を補充する形でなされたものですが、ファクト・チェックが必要と思われる箇所、NHKの報道番組に求められる自立した論点設定という観点に照らして疑問点があります。下線を付した①~④がそれです。
 そこで、ご多忙のところとは存じますが、以下の私たちの質問について、82日(水)までに、別紙に記載しました宛先へ、文書でご回答をくださるよう、お願いいたします。

 ご発言①について

 a)私たちは国家戦略特区諮問会議、国家戦略特別区域会議、国家戦略特区ワーキンググループがそれぞれ公表した議事要旨、ヒアリング議事要旨(議事録は諮問会議運営規則第8条により、会議開催後4年を経過した後に公表するとなっています)を調査しましたが、獣医学部の新設申請が加計学園1校となる大きな理由になった「広域的に」、「開校時期を平成304月とする」といった条件を設けることをめぐって議論が交わされた記録はどこにも見当たりませんでした。

 b) 逆に、613日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、今治市から諮問会議に提出された申請資料、今治市へのヒアリングの議事要旨が申請者の希望で公表されなかった事実が明らかになっています。

 c) また、同上記者ブリーフィングにおける質疑の中で、諮問会議ワーキンググループ座長の八田達夫氏は、京都についても公平性を保つためにヒアリングの議事要旨を公表しなかったと発言したのに対し、記者から、京都府と京都産業大に取材したところ、ヒアリングの最初に記録をすみやかに公表することに同意していたという回答を得たことが指摘 され、京都側は諮問会議の非公表の理由を否定しています。(醍醐注:後掲)

 質問1―1 
 上記a~cのようなファクト・チェックに照らせば、「すべての決定の過程が議事録が残っている」という原様の解説とは裏腹に、重要な意思決定の過程が議事録(正確には議事要旨)に残されておらず、原様の解説は事実に反する関係者の主張を主体的に検証することなく紹介されたと思われますが、いかがですか?
 私たちの判断が間違いとお考えであれば、相応の反証事実をお示しください。

 質問Ⅰ-2
 「NHK放送ガイドライン2015」に収められた「4 取材・制作の基本ルール」の①企画・制作の3項目に次のような規定があります。
 「報道番組やドキュメンタリィー番組、情報番組などでは、正確な取材に基づいて真実や問題の本質に迫ることが大切である。虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢が求められる。」
 原様の解説の中の①は、諮問会議有識者議員の真実でない発言を冷静に見極めることなく、そのままなぞる解説といえるものであり、私たちは「NHK放送ガイドライン2015」の上記の規定に反するものと考えます。
 原様の見解をお聞かせください。 (質問書の後半は次の記事に続く)

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補足資料:「一点の曇りもない」どころか「曇りだらけ」の特区選定手続き

*国家戦略特区諮問会議・有識者議員 記者ブリーフィング(要旨)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/briefing.html 
 → この資料の1920ページで、記者が京都府に対する独自取材にもとづいて、「関係者の要請により」という八田達夫座長の説明に疑問を投げ掛けている。

*この件は国会でも森ゆう子議院、櫻井充議員が取り上げ、内閣府を追及している。衆参国会会議録で検索し、次のように関係する部分の抄録を作成した。
 国家戦略特区ワーキンググループによる関係者ヒアリングの公表をめぐる国会質疑抄録
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/tokku_wg_gizi.pdf

 これについて、内閣府は、京都府と京都産業大のヒアリングが行われたのは20161017日で、公表したのは2017326と答弁している(上記抄録の2ページ)。
 しかし、「国家戦略特区諮問会議運営規則」の第7条には、「2 前項に規定する議事要旨は、会議の開催された日から起算して3日以内に公表するよう努めなければならない」と定められている。 
 「国家戦略特区諮問会議運営規則」 
 
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/kisoku.pdf  
 結局、今年の3月に平成304月開校、1校のみに絞られるまで加計学園と京都産業大の学部新設企画を比べる資料は公表されなかったのである。
 ちなみに、森ゆう子議員は昨日725日に開かれた参議院予算委員会(閉会中審査)において、再度、こうした情報公開の大幅で不可解な遅れを質している。
 この点をみても、「一点の曇りもない」どころか、「曇りがたくさんある」選定手続きだったことは明らかである。





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NHKはネット配信に執心する前にやるべきことがある

2017711

〔追記〕記事のタイトルを改めました。(2017年7月12日、12:20)
 (旧)NHKはネット配信に執心する場合か?
 (新)NHKはネット配信に執心する前にやるべきことがある

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 NHKが年来、検討してきた常時同時のネット配信の可否、課金のあり方を検討してきたNHK受信料制度等検討委員会はこの627日に「常時同時配信の負担のあり方について」と題する答申(案)を公表し、今日711日まで意見募集をしてきた。答申(案)の概要は次のとおりである。
 http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/

 

 締め切り間際になったが先ほど、インターネットで意見を提出した。以下はその全文である。

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「常時同時配信の負担のあり方について」答申(案)に対する意見

                         醍醐 聰

 (1)答申(案)は視聴環境設定型の負担方式を推奨しているが、答申(案)が例示しているアプリケーションのダウンロードを課金の契機にするとなれば、従量制の「有料対価型」に酷似したものとなり、現行の〔定額制の〕受信料制度との接合性は到底成り立たない。また、IDの取得を前提する場合、各種の受信端末を保有する世帯の中で、テレビ受信機を持たない世帯を識別するのは容易でない。答申(案)は、認証の具体的なあり方は今後さらに検討していくことが必要としているが、今後ではなく、実行可能な課金の方法を示さなければ、有償の常時同時配信は机上の空論で終わる。

 (2)答申(案)は「インターネットの特性上、自分に都合の良い情報だけを見るようになる傾向がある」、「事業者側が個人の嗜好に沿ってレコメンド(推薦)することによって発生するいわゆる『フィルターバブル』という現象が起きうる」と指摘しながら、結論では、各種の認証、特にアプリケーションのダウンロードを前提にした課金付きのネット配信を容認している。しかし、上記のとおり、アプリケーションのダウンロードを前提にした受信方式は自分に都合の良い情報だけを見る視聴傾向を助長し、「多様な価値観への思いがけない接触や多くの人々の間の共有体験」を保障できないことは明らかである。
 検討委員会が、NHKの常時同時配信を是とするというなら、こうしたネット配信の負の機能にどのように対応するのか、対応できるのか、見解を示すべきである。それなしにネット常時同時配信を是認するのは支離滅裂である。

(3)昨年6月にNHK放送文化研究所の世論調査部が行った「テレビ・ラジオ視聴の現況」(木村義子・山本佳代・吉藤昌代・林田将来共著『放送研究と調査』20169月)によると、NHKの代表的な報道番組の年代別視聴率は次のとおりである。

 〔NHKニュース7〕 
      20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上
   男   1%   4    4     7    16    33
   女   1%      2      5     8       16       27
 〔NHKニュースウオッチ9
      20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上

          男   1%    1        4     6    13    17

   女   1%   1              4     5     7      13

 

〔クローズアップ現代+〕
     20代  30代  40代  50代  60代  70歳以上
  男   0%   2       4     4        6 
  女   0           0             1              1             3     5 

2040代に見られる極端に低いテレビ視聴率はインターネットによる視聴に流れたからなのか? 常時同時配信をしたら上昇する見通しがあるのか? NHKはネット配信に労力を傾注するより、このような発問を真剣に検討し、本来業務の現状を再考するのが先決である。ちなみに、木村義子・関根智江・行木麻衣「テレビ視聴とメディア利用の現在」(『放送研究と調査』20158月)は201523月に実施された「日本人とテレビ・2015」の世論調査で行われた「いくつかの目的に一番役立つのはどのようなメディアか」という質問への回答結果を次のようにレポートしている。

                      テレビ  インターネット
  A.世の中の出来事や動きを知るうえで     64.5%                16.5
  B.教養を身に着けるうえで                        28.5%                  9.3% 
  C.政治や社会の問題を考えるうえで         54.8      9.3% 

 つまり、インターネットが普及した中でも、熟議民主主義の基礎となる多様な価値観との接触、共有体験の保障、民主主義社会における言論・報道機関としての役割という点では、多くの市民が、インターネットよりも、テレビの存在価値を認め、期待を寄せているのである。であれば、今、NHKに求められるのは、ネット配信への業務拡大ではなく、テレビ番組を通じて、市民に有意な知見を提供し、さまざまな考え方の出会いの場を作るという本来業務をいかに充実させるかということである。政府広報機関に成り下がっている、国政の重要課題が審議される国会の模様を中継しない、などという視聴者の不評に木で鼻をくくったような対応しかしないまま、有料のネット配信に傾注するのは本末転倒である。

 

 

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北朝鮮関連は手厚く、森友学園関連は足早に伝えるNHK

201738

NHKと民放の違い、くっきり

  森友学園問題をめぐって参議院予算委員会で集中審議が行われた36日の夜の報道番組で、この件がどう伝えられたかについて、NHKニュース7、同ニュース・ウオッチ9、報道ステーション、TBSニュース234つを比較したシートを作った。

201736日夜の報道番組 比較検証シート

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/20170306newswatch.pdf 

 北朝鮮が日本海にミサイルを発射した出来事が重なったこともあって、NHKと民放番組の違いがくっきり表れた形になった。(以下、敬称略)

 *時間配分
   ①北朝鮮関連報道(大使出国、ミサイル発射)に宛てた時間の
    割合
    NHKニュース7          47.1  1408秒/30分  
     NHKニュース9      33.7  2015秒/60
     報道ステーション    12.6    938秒/76
         ニュース23TBS)   12.4%  1030秒/85

  ②森友学園関連に宛てた時間の割合
          NHKニュース7      11.4   325秒/30
     NHKニュース9       8.2   456秒/60
    報道ステーション     22.0%  1642秒/76
    ニュース23TBS)    12.2%  1020秒/85

*報道内容~民放が伝え、NHKが伝えなかったこと~
  ①国会質疑
 NHKニュース7 
     蓮舫の質問(20秒)と安倍首相の答弁(57秒)
    NHKニュース9      
     西田昌司(自民)、蓮舫の質問と安倍首相の答弁
    報道ステーション  
      福山哲郎(民進)、蓮舫、西田、辰巳孝太郎(共産)の質問と
     安倍首相の答弁
 ニュース23TBS 
     福山、森裕子(自由) の質問と安倍の答弁
  ②木造校舎への補助金申請における森友学園の建築費虚偽
    報告
    (NHKは翌日の昼、夜のニュースで後追い報道)
  ③昭恵夫人が森友学園で行った講演の映像
   (すでに民放は何度も放送。HKはこの日も昭恵夫人が講演
    を行ったことを取りあげながら、映像は流さなかった。)
  ④建築地で発見されたゴミを埋め戻すよう近畿理財局が森友
    学園に要請したことを記したメモがあったこと(ニュース23
       報道)

*報道内容~NHKが伝え、民放が伝えなかったこと~

  会計検査院に調査を要請することが全会一致で決まったこと

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政府、安倍夫妻に不都合な事実を伝えないNHK

 森友学園問題について、参考人招致も含めた国会での真相究明を拒み、調査権限に限界があることが分かり切った会計検査院に調査を投げようとするのが今の政府の姿勢である。NHKの報道はそうした政府の意向に焦点を仕向ける空気醸成といってよい。

 また、昭恵夫人が森友学園でどのような講演をしたか、森友学園に対する安倍首相の思いをどう語ったか、夫人の前で園児たちはどんな唱和をしたか、それを目の当たりにして昭恵夫人はどのような感想を持ったか、講演の後、自身のツイッターにどのような書き込みをしたか
―――こうした事実を伝えるなら、安倍夫妻は森友学園に「利用された」のではなく、すすんで協賛した実態が理解できるはずである。

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  安倍夫妻に不都合な事実を「伝えないNHK」は自立した公共放送とはいえない。それは会長がどうのではなく、番組制作スタッフ11人の「意思」の問題である。


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「クローズアップ現代+」 「韓国 過熱する少女像」に質問書提出

2017226

 私が共同代表の1人になっている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、今年の124日に放送された「クローズアップ現代+  韓国 過熱する
少女像問題 初めて語った元慰安婦」の内容を精査した結果、番組の編集方法に多くの重大な疑問点が浮かび上がってきた。
 そこで、疑問点を9項目からなる質問書の形にまとめ、224日、私ともう一人の運営委員が渋谷のNHK放送センターに出向き、これを提出した。310日までに書面で回答を要望している。
 各質問項目には説明文を付け、質問を細分しため、A4サイズで計10枚とやや長い文書になった。初めに全文のURLを張り付けておきたい。
 http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/nhk-799a.html

 以下、ここでも改めて、全文を載せることにする。

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                              2017
224

NHK会長         上田良一 様
NHK放送総局長    木田幸紀 様
 NHK クローズアップ現代+」制作担当 御中
 番組キャスター    鎌倉千秋 様

「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する少女像問題 初めて語った元慰安婦」(2017124日放送)に関する質問書 

 NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
 共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
             http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/ 

 本年1 24 日に放送された「クローズアップ現代+  韓国 過熱する
少女像問題 初めて語った元慰安婦」(以下、「本番組」という)の内容、編集方法には、「放送法」、「NHK放送ガイドライン2015」に照らして種々、重要な疑問点がありますので、以下のとおり質問をします。
 ご回答は、本年310日までに書面で別紙宛てにお願いします。その際は、質問項目ごとに、質問に噛み合う形でご回答をお願いします。なお、以下で引用する韓国紙の論説、記事はすべて日本語版です。

Ⅰ.元「慰安婦」の声はさまざまと言いながら、なぜ、日本の支援金を受け取った3組の元「慰安婦」とその家族の声だけを伝えたのか?

 今回の日韓合意や日本からの10億円の「支援金」に対する韓国の元「慰安婦」の対応はさまざまです。番組でも、「一人一人の元慰安婦の方々にそれぞれの思いがあって、決して十把一からげにできない」(奥園秀樹・静岡県立大学准教授)とか、「当事者の多様な声があって、それを置き去りにしないことが求められている」(鎌倉キャスター)とか語られました。ところが、番組が伝えたのは、日本からの「支援金」を受け取った3人の元「慰安婦」とその家族の声だけでした。
 しかし、韓国の元「慰安婦」10人は、今回の合意は日本の法的責任を認めた謝罪ではないとして、昨年129日に連名で国連人権機構に対して審査を請願しています(『聯合ニュース』2016128日、1420分)。また、昨年327日には生存する元「慰安婦」29人の遺族と生存者家族など41人が韓国の憲法裁判所に対し、日韓合意は被害者の財産権と人権を侵害するものであるとして違憲の憲法訴願をしています(『聯合ニュース』 2016328日)。
 番組の中で、こうした元「慰安婦」やその家族の声をまったく伝えなかったのは、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにするよう求めた「放送法」第4条第1項第4号の規定に反していませんか? 皆様のお考えを説明ください。

なお、近く別の番組の中で、日韓合意に異議を唱える元「慰安婦」とその家族の意見を伝える予定があるのなら、その予定をお聞かせください。

Ⅱ.番組に登場した3人の元「慰安婦」本人の意思は取材を通じて確認されたのか?

 番組では、生存する元「慰安婦」46人のうち34人が日本からの「支援金」を受け取る意向を示しているが、その事実が韓国内で伝えられていないと解説しました。そして、「7割を超える方々が、この合意を受け入れてくださったということは重く受け止めるべきだ」(奥園氏)という発言を放送しました。つまり、本番組は、日本からの支援金を受け取ったこと、すなわち、日韓合意を受け入れたこと、とみなしたのです。しかし、この番組は元「慰安婦」とその家族の次のような会話も放送しました。

 元慰安婦の家族:「日本から1億ウォンを受け取ったと話したよね?」
 元慰安婦:「誰が1億ウォンをもらったの?」
 同上家族:「このように話していても何が何だか分からないのです」

 さらに、この元「慰安婦」の家族は取材に対して次のように語りました。

「(母は)日本が謝罪して補償してくれるなら、それ以上は望まないと言っていました。しっかりしている時にもらっていれば、本人も気持ちを伝えることができたはずなのに、今は(お金をもらった意味さえ)分かっていません。」

 

 このように90歳を過ぎ、認知症が現れ、受け取ったお金の趣旨はもとより、お金を受け取ったという事実さえ、認識できていない元「慰安婦」が日韓合意の内容を理解できたのか大変疑問です。「日本が謝罪して補償してくれるなら」と本人は話していたと家族は語りましたが、この元「慰安婦」は日韓合意に盛られた安倍首相の「お詫び」は自分が求めていた謝罪になっているのかどうかについて自分の判断を伝えられる状態だったのかも疑問です。
 ちなみに、元「慰安婦」のキム・ボクトゥクさん(100歳)は、最近になって、甥が「和解・癒やし財団」から「支援金」を受け取っていた事実を知らされ、「受け取っていたのなら返してほしい」と語っています(『ハンギョレ新聞』2017123日)。

 以上のような事実を知ると、34人が「支援金」を受け取る意向という報道は、はたして元「慰安婦」の確かな意思と受け取ってよいのか、慎重な裏付け調査・取材が必要です。
 具体的に言えば、「和解・癒やし財団」は元「慰安婦」に「支援金」を支給するにあたって、元「慰安婦」本人が日韓合意に同意することを条件にしていたのでしょうか? そうであれば、「支援金」の受け取りを以て日韓合意に同意したと言えますが、はたしてそのような条件が付されていたのでしょうか? 元「慰安婦」はそうした条件を了承して「支援金」を受け取ったと言ってよいのでしょうか?

 NHK放送ガイドライン2015は、「放送の基本的な姿勢」の項で次のように定めています。

 「NHK のニュースや番組は正確でなければならない。正確であるためには事実を正しく把握することが欠かせない。しかし、何が真実であるかを確かめることは容易ではなく、取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする姿勢が求められる。」

 
本番組に登場した3人の元「慰安婦」とその家族を取材した時、こうした「NHK放送ガイドライン2015」の定めは忠実に貫かれたのでしょうか? 元「慰安婦」の家族の説明が元「慰安婦」本人の意思をどこまで代弁できているのかを慎重に見極められたのでしょうか? ご説明ください。
 なお、昨年1221日に韓国の『聯合ニュース』の記者有志は会社に対し、公正な報道や人事を求める声明を出しました。その中に、「慰安婦問題の日韓合意に好意的な被害者(元慰安婦)が圧倒的に多いという政府の主張を実証する記事を書くよう求める指示もあった」(『朝日新聞DIGITAL201713日、0054分)と記されていることを付け加えておきます。

Ⅲ.「当事者の思いと異なる形で少女像が設置された」という解説はどのような事実に裏付けられたものか? 

 ①番組では、「当事者の声を置き去りにした」というナレーションや発言が幾度か流されました。たとえば、鎌倉キャスターは「まさに、当事者の思いとは異なる形で少女像が設置されている」と発言されましたが、「当事者の思い」とは「誰の」「どういう思い」を指しているのでしょうか?

 ②「当事者」とは元「慰安婦」のことだとしたら、「当事者の思いとは異なる形で少女像が設置されている」という鎌倉キャスターの解説を裏付けるのは、番組に登場した1人の元「慰安婦」の家族が語った、「(お金を)受け取ったのだから(少女像は)撤去しなければならないと思います」という言葉だけです。しかし、この元「慰安婦」は寝たきりの90代の女性です。家族のこうした発言は、はたして元「慰安婦」本人の気持ちを代弁したものと言えるのでしょうか?

 ③また、取材を通じて、少女像は撤去すべきだと語った元「慰安婦」は他に何人もいたのでしょうか? 「当事者の思い」と一括できるほど、多くの元「慰安婦」が「少女像は撤去すべきだ」と語ったのでしょうか? 取材で得られた事実に基づいてご説明ください。

 ④当会が確かめたところでは、たとえば、元「慰安婦」と名乗り出ている金福童(キム・ボクドン)さんは2015424日、東京有楽町の外国特派員協会で会見し、日本政府による公的な謝罪と賠償を求めるとともに、少女像は「過去に何が起こったかを表す一つの方法」、「自らの体験を伝える助けになる」と語り、像の設置を歓迎する意思を表明しています。(このニュースのソースは、
http://www.j-cast.com/2015/04/24233948.html?p=all
  

 また、日韓合意発表後の2016126日、来日した元「慰安婦」の李玉善(イオクソン)さんと姜日出(カンイルチュル)さんは「私たちを無視した日韓合意は受け入れられない。」「私たちがこうやって生きているのに<少女像>を撤去するなんて・・・私たちを殺すことと同じです」と語っています(岡本有佳・金 富子責任編集『<平和の少女像>はなぜ座り続けるのか』増補改訂版、2016年、世織書房、77ページ)。
 番組制作にあたって、こうした元「慰安婦」の<少女像>に対する思いは取材されたのでしょうか? 番組では、「少女像は撤去すべき」という1人の元慰安婦の家族の声を伝えましたが、少女像は自分たちの苦難の歴史の証しとして設置を歓迎する元「慰安婦」の声が全く伝えられなかったのはなぜなのか、ご説明ください。

 ⑤元「慰安婦」あるいはその家族の「思い」は重要ですが、韓国の各地に設置された「少女像」はその地の多くの若者、市民の募金で、痛ましい過去を記憶し、同じ過ちを繰り返さないという思いを込めた「平和の碑」として建てられたものです。
 たとえば、釜山の日本総領事館そばに少女像が設置されるにあたっては、「未来世代が建てる少女像推進委員会」が1年間にわたって呼びかけた製作支援の募金に市民から8,500ウオン(約823万円)が寄せられています。そして番組にも登場したマ・ヒジン推進委代表(釜山大学航空宇宙工学科3年生)は、「釜山の少女像は国民が建てた少女像という意味で『国民少女像』というニックネームもついた。誤った歴史を立ち直らせるまで、若者や青少年は国民と一緒に行動して闘う」と語っています(『ハンギョレ新聞』201719日)。
 「少女像」が設置されたこのような背景、経過を知れば、少女像をめぐる「当事者」とは元「慰安婦」にとどまらず、少女像の設置を企画した人々、設置に協力した人々だと考えてもおかしくありません。
 とすれば、日本政府が執拗に像の撤去を要請していることをこれらの人々がどう受け止めているかが問題ですが、昨年8月末に行われた世論調査では、ソウルの日本大使館前にある少女像について、76%が「日本政府が合意を履行したかどうかにかかわりなく、移転に反対」と答えています(『ソウル時事』201692日、1445分)。
 また、この21416日に韓国ギャラップが全国の成人1003人を対象に行った世論調査によると、釜山の少女像について、78%が「そのまま置いておくべきだ」と回答し、「撤去または移転すべきだ」と答えたのは16%にとどまっています(「
ソウル聯合ニュース」2017217日、1211分)。
 こうした事実に照らせば、「まさに、当事者の思いとは異なる形で少女像が設置されている」という鎌倉キャスターの解説は根拠不詳の発言、あるいは事実と食い違った発言だといえます。この点を皆様はどうお考えか、ご説明ください。

Ⅳ.多様な論説を掲げた韓国メディアの中で、韓国に非があるとする1紙の論説だけを伝えたのはなぜか?

 番組では、「過熱する」世論に対して「冷静さを呼びかける論調も広がっている」として、『韓国経済新聞』主筆のチョン・ギュジュ氏へのインタビューの模様が放送され、「韓国だけが、日本との関係において、過去から一歩も抜け出せないでいる」という同紙の論説が字幕に映されました。

しかし、韓国には12 の全国紙、9つの経済紙があり、日韓合意に関する評価は一様ではありません。

 たとえば、全国紙の1つ『東亜日報』は合意を拒否する被害者や団体の意見も、悩んだ末に異なる対応をした被害者らの選択も、どちらも尊重されるべきだとするコラム記事を掲載しています(2017119日)。その上で、この記事は「日本政府が10億円と少女像撤去を結びつけるという本末転倒な主張をするならば、日本政府を批判すべきであり、韓国政府を追及する話ではない」と述べています。
 また、『中央日報』は、過去の清算も重要だが外交関係で究極的な最高ラインは国益だ、そのためには韓日関係も未来志向的に導くのが望ましい(201717日、社説)と主張する一方、「日本の主張のように10億円を出したことで合意を忠実に履行したと見ることはできないというのが専門家らの指摘だ。被害者に日本側の謝罪メッセージを伝える案について安倍首相が『毛頭考えていない』(10月)と述べたのが代表的な例だ」と指摘しています(2017110日、掲載記事)。
 さらに、『朝鮮日報』は「日本が外交問題と歴史問題を分離する原則を捨て、感情的な対応を始めれば、両国の対立はブレーキがかからなくなり誰も望まない方向に進むだろう。そのため全ての関係国が今こそ冷静さを取り戻さなければならない」(2017110日、社説)と述べています。
 また、『ソウル聯合ニュース』201719日に配信した時論の中で、その前日に安倍首相が「日本は10億円をすでに拠出した、韓国にしっかり誠意を示してもらわなければならない」と語ったことに対し、「日本政府が韓国に無礼かつ身勝手な圧力をかけている」と非難しています。そして結びでは、「安倍氏がハワイを訪ね平和のパフォーマンスをする間、日本では閣僚や議員が靖国神社を参拝した。それでいて1枚の合意文書といくらかの金で慰安婦問題を永久に振り払うことができると信じるならば、大きな勘違い、誤算だろう」と痛烈に日本政府を批判しています。
 さらに、『ハンギョレ新聞』のように日韓合意そのものを根本から批判する韓国紙もあります。同紙は20151230日の社説で、日韓合意には、「慰安婦」問題の解決のためには欠かせない、徹底した真相究明、責任者に対する審判、事実に基づく明確な謝罪、被害者に対する賠償、関係資料の公開、教科書記述などを通じた再発防止策などが合意には一切、含まれていないと指摘し、ドイツのホロコーストに対する記憶と反省を例に挙げながら、「重要な歴史的犯罪に終止符などありえない」と断じています。

 このように韓国紙の中で、日韓合意の行き詰まりの原因はもっぱら韓国政府や韓国の市民社会の過熱した運動にあるとみなすのは極めてまれです。そうしたごく一部の経済紙の主筆だけを登場させ、「日韓合意の履行が行き詰っている原因は過熱した韓国社会の極端な主張にある」という論調が韓国のメディアの中で広がっているかのように伝えるのは、著しく事実を歪めると同時に、意見が分かれる問題については多角的に論点を伝えるという「放送法」第4条の規定からも逸脱しています。各位はこの点をどのようにお考えか、ご説明ください。

Ⅴ.釜山に少女像が設置された経過が歪めて伝えられた。

 番組では、釜山に少女像が設置された経過について、「政権のスキャンダルが次々と明らかになる中、国民の怒りが噴出。大統領を職務停止に追い込み、これまでの政策すべてを否定する勢いです。」「こうした政治的な空気の中で、プサンの日本総領事館前に少女像は設置されました」というナレーションを流しました。
 このような解説は、釜山に少女像が設置されたのは2016年秋から起こった朴大統領に対する韓国市民の抗議行動の空気の中からだという印象を視聴者に抱かせます。しかし、事実経過は全く異なります。

 釜山では日韓合意(20151228日)直後の2016年1月6日から日韓合意に反対する大学生や高校生ら若い世代を中心に、「人間少女像ひとりデモ」がはじまり、3月には「未来世代が建てる少女像推進委員会」が発足しました。同委員会は直ちに釜山の大学や市民に呼びかけて少女像建設のための募金活動を続ける一方、69日から823日まで釜山市民を対象にオンライン・アンケート調査を行っています。同月25日に推進委員会が発表した調査結果によると回答した1,168人の市民のうち、92.1%が東(トン)区草梁(チョリャン)洞の日本総領事館前に「平和の少女像」を設置することに賛成したとのことです。このアンケート結果を踏まえて推進委員会は日本総領事館前周辺の道路を管轄する東区と設置の許可を求める協議を進めたのです(以上、『ハンギョレ新聞』2016825日参照)。

 つまり、釜山に少女像を設置する準備は、2016年秋の朴大統領弾劾要求へと続く市民の抗議行動が起こる半年以上前から取り組まれたことは動かせない事実です。
 そうした釜山の若者や市民の運動を、朴大統領に対する抗議行動の「空気」の中から生まれたと解説するのは事実経過を歪めるものです。これについて皆様はどう受け止められるか、ご説明ください。

Ⅵ.日韓合意を批判する韓国の政党・政治家を「世論迎合」、「ポピュリズム」と決めつけるのは事実経過に反し、メディアが担う役割から逸脱している。

 番組では、「大統領選挙を視野に入れる野党各党は、世論に迎合する動きを強めています」というナレーションを流しました。
 また、「与党も野党も今年(2017年)前半にはパク大統領の弾劾が確定して、選挙が前倒しされる可能性があるという読みのもと、日本との関係改善よりも大衆の支持獲得に必死です。その結果、各党・各候補とも慰安婦問題で日本をたたく、ポピュリズムに走ってしまっています。この流れを変えるには、まず、韓国の政治家たちがこうした外交問題を選挙に利用するのを自制することが不可欠だと思います」という池端修平・NHKソウル支局長の現地報告を伝えました。
 さらに、「この慰安婦問題というのが、大統領選挙を念頭に置いた時に非常に有効で手っ取り早い、格好の材料と化してしまっているということが残念ながら言えるんだろうと思います」という奥園秀樹氏のスタジオ発言も流しました。

 しかし、韓国の政党、特に日韓合意に批判的な野党の姿勢を「世論に迎合」、「ポピュリズム」と決めつけるのは事実経過に反する粗雑な発言です。
 日韓合意に関する評価については韓国野党内でも当初から意見がまとまっていたわけではありませんが、朴大統領の弾劾訴追が国会で可決され、次期大統領選挙が前倒しで実施される公算が出てきたのを受け、世論の動向に阿る形で、日韓合意反対、再交渉を唱え出したわけではありません。
 韓国の最大野党「共に民主党」の文在演(ムン・ジェイン)代表は日韓合意が発表されてから20日後の2016119日に、「慰安婦」被害者と国会の同意なしにかわされた日韓合意は「史上最悪の外交惨事」と批判しています(『朝鮮日報』2016120日)。また、同じ日に、同党の都鐘煥(ト・ジョンファン)報道担当は、安倍首相が慰安婦集めにあたって「強制性」はなかったと改めて発言したのを指して、「韓日慰安婦合意が無効であることを宣言したのと同じだ」と強く批判しています(前掲、『朝鮮日報』記事)。そこで、以下➀~③について質問します。

 ①「世論に迎合」とは自らの政治的信条を曲げて民意に阿ること、「ポピュリズム」とは聞こえの良い言動で世論を扇動することだとしたら、日韓合意に関する韓国野党の政治姿勢にそうしたフレーズをあてがうのは上記の事実経過を曲げた評価だと考えますが、いかがですか?

 ②そもそも、政党が民意をくみ取り、民意を自らの政治活動に反映させるのは、民主主義にかなう政治姿勢であり、非難されるいわれはないはずですが、皆様はそうは考えないのですか?

 ③今回の日韓合意をめぐる韓国の個々の政党、政治家の言動が一貫性を欠き、世論迎合、ポピュリズムと非難すべきものかどうかを決めるのは韓国の有権者であって、日本のメディアではないと考えますが、いかがですか?

Ⅶ. 韓国社会で日韓合意に反対の意見が多いのは合意に関する理解が進まないからではなく、日本政府には加害国としての真摯な謝罪と反省がないと見られているからではないか? 番組はそうした韓国の民意と向き合わず、「合意を守らない韓国に非がある」という予断にもとづいて制作された。

 番組の中で奥園氏は、「決して多数ではない反対の声だけがクローズアップされていくと。その結果、その当事者を無視した合意であるというイメージが出来上がって、それが一人歩きをしてしまうと。合意そのものに対する理解も一向に深まらずに、日本国内にもそれが伝えられて、日本でも韓国に対する反発だけが高まっていくという悪循環に陥っているような気がします」と発言しました。

 1つ目の下線部分は根拠が不確かな発言です。これについては、前記の質問Ⅰ、Ⅱと重なりますので、ここでは立ち入りません。
 2つ目の下線部分は的外れな解釈ではありませんか? 過半の韓国市民が日韓合意に反対し、合意の破棄を求めているのは、合意の内容を理解しないからではなく(理解が進めば日韓合意に賛成する市民が増えるというものではなく)、日本政府が、性格のあいまいな10億円の資金拠出で「慰安婦問題」を幕引きしようとしていることを強く批判し、加害国の日本が10億円の見返りかのように少女像の撤去を迫ることに憤りを感じているからです。こうした憤りは、日韓合意を理解しないからではなく、合意が玉虫色にした点(10億円は法的賠償金なのか、少女像の撤去なり移転なりとリンクした条件付のものなのか)を十分、理解したうえで、「最終的・不可逆的な解決」というフレーズで日本政府が戦争責任を記憶し、未来の世代に引き継ぐ責務を免れようとしていると捉えたからです。
 この点で奥園氏の前記の発言は韓国の民意を、恣意的にかどうかは別として、取り違えていると言って差し支えないと思いますが、皆様はどう考えられるか、お聞かせください。

 なお、「クローズアップ現代」の前キャスターの国谷裕子さん自著の中で次のように述べています。

 「担当ディレクターの書いた番組の構成表の書き出しは、『なかなか理解が進まない安保法制』と言う文章から始まっていた。」「果たしてこの言葉の使い方は正しいのだろうか。」「この言葉は、今は反対が多いが、人々の理解が進めば、いずれ賛成は増える、とのニュアンスをいつの間にか流布させることにもつながりかねないのではないだろうか。そういう言葉を、しっかり検証しないまま使用してよいのだろうか、私にはそう思えた。」

(国谷裕子『キャスターという仕事』岩波新書、20171月、101102ページ)

 「なかなか理解が進まない」という言葉に対する国谷さんの警鐘は奥園氏の上記の発言にもそのまま当てはまると思えますが、皆様はどのように受け止められるか、お聞かせください。

Ⅷ.韓国政府に日韓合意に反対する市民団体を説き伏せる体力がなくなっていることを混乱の原因とみなす発言は、政府に対する市民の言論の自由に関する認識を欠くものではないか?

 番組では日韓両国政府がギリギリのところで歩み寄って合意にこぎつけたにもかかわらず、韓国社会では合意に反対したり、再交渉や合意の破棄を求めたりする意見が広がっていることを懸念する発言やナレーションがしばしば挿入されました。そして、池端修平・NHKソウル支局長は、「パク大統領は、少女像を含む、慰安婦問題の任期中の解決を外交上の大きな実績としたい考えでした。一連の事件で足元をすくわれ、強硬な市民団体を説き伏せるだけの、いわば政治的な体力というものがないのが実情です」と現地の状況をレポートしました(下線は追加)

 しかし、今回の日韓合意は両国の外相が会談を踏まえて、共同記者会見を行い、その場でそれぞれの立場を短い文書で発表したものです。合意は条約でもなければ、両国首脳の署名もなく、両国の国会での承認を経たものでもありません。韓国では元「慰安婦」への事前の説明も了解も経ていないことが問題とされているのは周知のとおりです。

 それでも公的な共同会見の場で発表された文書ですから、両国政府にはこれを尊重する責務があると言えますが、両国国民にはそうした政府間の合意についてさまざまに政治的意見を表明する自由があることは近代民主主義のイロハです。このような前提に立って、以下、お尋ねします。

 ①韓国政府が日韓合意に反対する自国民を「説き伏せる」ことができないのは、朴大統領に「政治的な体力」がないからだと断定できるのでしょうか? 日韓合意自体が民意にそぐわないため、国民を説得できないという別の見方を検討しなくてよかったのでしょうか? ちなみに、『ソウル聯合ニュース』はこの119日、1731分に「日本が反発しても少女像設置は続く 強引な合意の産物」というニュースを配信しています。
 また、国連女子差別撤廃委員会は201637日(現地時間)に日本軍慰安婦問題に関する最終見解を発表しました。その中で、「慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決したというアプローチには、被害者中心のアプローチが十分に反映されていない」と指摘し、日韓合意そのものに欠陥があるという見解を示しています。「最終見解」の英文全文は次のとおりです。

Committee on the Elimination of Discrimination against Women, 7 March 2016Concluding observations on the combined seventh and eighth periodic reports of Japan*
 これらの資料もご参照の上、上記の質問にお答えください。

 ②中華民国大使館前を通る集団的示威行動の許可申請を受けた東京都公安委員会が進路変更を許可条件としたのを不服とし、指示の執行停止が申し立てられた事件について、東京地裁民事第2部は19671123日に申し立てを認める判決を言い渡しています。
 その理由として東京地裁は、憲法が保障する集団的示威運動による表現の自由は、外国人であっても日本国にあって、その主権に服している者には保障される、被申立人(東京都公安員会)は、ウィーン条約222項を挙げて、外交使節団が存在する地点を進路に含む本件集団的示威行動は公館の安寧の妨害、威厳の侵害に当たるとするが、許可申請された集団的示威行動は一部過激なスローガンを記載したプラカードがあったとしても整然とした秩序を保つものとなっており、「公館に安寧、威厳の侵害」を生じるものとは認められない、と述べています。
(判決全文は、第一法規法情報総合データベース、判例ID27603116
 また、米国内の外国大使館周辺で当該外国政府の評判を貶めるような掲示を出すことを禁止する法律の合憲性が争われた事件(Boss v. Barry 事件(1988))で連邦最高裁(485 US 312, 324-291988)はこの法律を違憲と判示しました。その理由として最高裁は、当該法律はパブリック・フォーラムでの政治的言論に対する内容規制に当たると認定したうえで、そうした法律はウィーン条約222項が定めた外国公館、外交官の尊厳を守るべき必要性の限度を超えて、個人の政治的言論の内容を規制するものだと述べています。
 以上のような判例を踏まえると、池端氏の前記の発言はパブリック・フォーラムでの市民の政治的言論の自由に関する認識を欠くものと思われますが、いかがですか? 

Ⅸ.番組は、日韓合意の行き詰まりの原因はもっぱら韓国側にあるという見立てで編集され、日本側の問題に全く触れなかった。こうした編集は政治的公平、多角的な論点を明らかにするよう定めた「放送法」第4第第1項の定めに反するのではないか?
 また、国際問題の報道のあり方を定めた「NHK放送ガイドライン2015」に抵触するのではないか?

 以上で記した質問事項とその説明文を総合すると、本番組は、日韓合意が行き詰まっている原因は、合意の破棄を唱える韓国社会の「過熱」し、「先鋭化」した主張にあるという見立てで編集されたことは明らかです。それは、番組のタイトルが「韓国 過熱する“少女像”問題・・・」と付けられたことにも表れています。また、番組の導入部分では、映像を映し出しながら、

 
「自分たちの思いを韓国社会はわかっていないのではないか。今回、取材に応じた元慰安婦の女性。これまで固く口を閉ざしてきましたが、はじめて胸のうちを明かしました。」

というナレーションが流され、それに続けて、

 a. 「私たちの苦労を韓国の国民は分かっていないのに、あのようなこと(騒ぎ)を起こしている。本当に心が痛みます。」

という一人の元「慰安婦」の声を流しました。さらに、続けて、「LOVE  JAPAN」というプラカードを持った人物が釜山の少女像のそばに登場した映像を映し、

  b.
「(日韓で)もう憎しみ合うのは止めましょう」

と語って、「少女像」を守る大学生らに抗議する場面を大写ししました(下線は追加)。こうした冒頭のシーン設定は、前記のような本番組の編集姿勢を如実に物語っています。

 しかし、日韓合意が行き詰まっている原因は、合意の破棄を唱える韓国社会の「過熱し」「先鋭化した」主張にあるという見立ては、日本サイドの見立てであり、韓国社会や国際社会で共有されているわけではありません。

韓国の世論やメディアの間では違った見方がされていることは、質問書のⅢ、Ⅳの説明文で記したとおりです。
 そのほか、韓国の丁世均(チョン・セギュン)国会議長も、今年の116日、フィジーで開催されたアジア太平洋議員フォーラムで中曽根弘文参議院議員らと会談した際、「多くの韓国人は安倍晋三首相の慰安婦関連の発言や立場について、大変残念に思っているのが事実」と指摘、「それが恐らく状況を悪化させている要因ではないか」と述べています(『聯合ニュース』2017116日、1130分)。
 また、国連女子差別撤廃委員会も日韓合意後にまとめた「慰安婦問題」に関する前記の最終見解の中で、日本の指導者や当局者が「慰安婦」問題に対する責任を軽く見るような発言を行い、被害者に再び心理的な苦痛を与えている、と指摘しています。
 このような各界の意見の状況を踏まえて以下、質問をします。

 ①韓国内では、同国の「和解・癒やし財団」が安倍首相に、元「慰安婦」宛に直接、謝罪の手紙を出すよう求めたのに対して、安倍首相は201610月3日の衆院予算委員会で、「毛頭そのつもりはない」と答弁しました。このような答弁に対して、韓国内では政治的立場の違いを問わず、強い批判、反発が起こっています。
 また、今年1月8日に放送されたNHK「日曜討論」の収録インタビューで安倍首相は、「日本政府はすでに韓国側が設立した元慰安婦支援の財団に10億円を拠出した、次は韓国にしっかり誠意を示していただかなければならない」と発言し、ソウルの日本大使館、釜山の日本総領事館のそばに設置された少女像の撤去を求めたのに対しても、韓国内では強い批判、反発が起こりました。
 皆様は、安倍首相のこうした発言に対して韓国で起こった批判、反発を「過剰反応」、「過熱した反発」と理解されているのでしょうか? それとも、安倍首相のこうした発言は自らの謝罪に誠意が欠ける証しと受け止められても致し方ないとお考えでしょうか?

 ②河野談話(1993)では、「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」と謳われました。しかし、日本の中学校の歴史教科書では2011年の検定で「慰安婦」関連記述がすべて消え、2015年の検定で「強制連行を直接示す資料は発見されなかった」という日本政府の見解を併記することを条件に、かろうじて1社の教科書に「慰安婦」関連の記述が復活しました。
 日韓合意が、こうした日本における歴史教育の現実を不問にしたまま、「慰安婦」問題を「最終的・不可逆的に解決する」と謳ったことに韓国社会では批判が起こっています。
 皆様は、こうした韓国社会から日本に向けられた批判も「過熱した」主張と受け止められるのでしょうか? 

 ③番組は、日韓合意の行き詰まりの原因はもっぱら韓国側にあるという見立てで編集され、韓国社会から日本政府に向けられた批判は、「過熱」「強硬」「先鋭化」というフレーズで印象付けされ、批判の内容を掘り下げた紹介はまったくありませんでした。こうした編集は政治的公平、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにするよう定めた「放送法」第41項第2号、同第4の定めに反すると考えます。皆様はどうお考えか、お聞かせください。

 ④「NHK放送ガイドライン2015は、国際・海外取材にあたっての基本姿勢として、「各国の利害が対立する問題については、一方に偏ることなく、関係国の主張や国情、背景などを公平かつ客観的に伝える」と定めています。
 上記のような本番組全体を貫く編集のあり様は、この規定から大きく逸脱していると考えます。皆様の見解をお示しください。
                                    以上

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「政治部話法」を根絶することが改革の第一歩 ~年末のNHK「解説スタジアム」を視て~

20161230
 
   29日、440分ごろまで4時間にわたって2017世界と日本 安心・安全は」と題した
「解説スタジアム・スペシャル」が放送された。今回は1年の締めくくりという意味からか、「スペシャル」と付け加えられたが、3ヶ月に1度の間隔で、さまざまな専門分野を担当するNHKの解説委員同士が時のテーマを多角的に徹底討論すえるという触れ込みの番組である。
   今回は、
1部 激論!国際社会と安全保障、第2部 暮らしの安心・安全は、第3部 “ゆたかな未来”にむけて、というように3部構成で行われた。時間が時間だけに私が視たのは第2部の中の「防災、原発、エネルギー問題」が議論された部分だけである。出演者は次のとおりだった。
   司 会:鎌田靖、アシスタント:岩渕梢
   討論者:板垣信幸・太田真嗣・後藤千恵・関口博之・竹田忠・
       早川信夫・増田剛・水野倫 之 各解説委員

多角的に論点を解説することが期待できる企画だが
   このような討論番組は、各出演者がそれと意図しなくても、各自が忌憚なく持論を語り合うことで、「予定調和的に」、視聴者に焦眉の問題について多角的に論点を解説するという結果をもたらすことを期待できる有意義な番組だと思っている。

   今回も、私が視た範囲でも、傾聴に値する意見がいくつか見受けられた。
 *「除染の費用は原発のコストに入っていない。その一方で、除染し
  ないと国土を失うことになる」(板垣)
 *「廃炉や賠償の費用を全国民の負担に転嫁しようとするのは、
   〔銃後の〕戦争被害への補償を受忍論で放棄させようとするのと
  同じだ」(早川)
 *「原発の再稼働をいかに守っていくかが最初からありきの政策
  で、もんじゅをやめても使用済み核燃料をどうするかが決まって
  いない。
  原発推進だけでやっているのでこういう決め方になる。第三者委
  員会を立ててエネルギー政策の徹底的な見直しをしなければな
  らない。」(水野)

「政治の代弁をする必要はない!」
     討論の中でこんな一幕があった。
 *「(政府が廃炉費用を電気料に課することへの批判については)
   政治担当としては、ぐうの音も出ない」(太田)
 *「政治の代弁をする必要は全然ないですよ」(司会/鎌田)

   太田氏はその前の発言でも、「政府としては・・・」と、まるで政府の報道官のようなセリフを2回、使っていて、私も視ていて、これが「NHKの政治部話法」かと思った矢先だった。解説委員同士がこんなふうに緊張感のあるやりとりをする気風が育つことはいいことだ。

   ただ、原発問題をめぐる討論は全体として、○○担当の解説委員の徹底討論というにしては、密度の薄い討論と思えた。

シャープに意見をかみ合わすには至らなかった
  この種の討論番組の成否は、ファクトベースの議論と鋭い持論がバランスよく展開されるかどうかにかかっている。この点で、私が視た範囲では、今回の「解説スタジアム」はファクトベースの議論が乏しかった。そのため、各委員の持論も雑駁で説得力に欠け、噛み合った討論にはなっていなかった。1つだけ例を挙げて、この点を説明しておきたい。

   終始、「当面原発必要論」を唱えた関口氏が、「自給率が低い日本にとって原子力は維持すべき国産エネルギーだ」と発言したが、これに対し、再稼働反対論者からの正面切った反論はなく、「原発維持政策の下では他のエネルギー開発が育たない。日頃びくびくした状態で暮らすのか、国土を失う危機を避けるのか、大きなテーマの中でエネルギー問題を考えるべき。〔その意味からは〕原発はたたむべき」(板垣)といった、雑駁な反論が出るにとどまった。
   しかし、日本は原子力の原料を自給できているわけではなく、核燃料のリサイクルで得られるウラン、プリトニウムを再利用することを指して「自給」とみなしているに過ぎない。この意味から、原子力は「準国産」などと称されている。
   問題は、そのリサイクルが破たんし、稼働の目途が立たないまま、閉鎖を余儀なくされているという現実である。
   再稼働批判論者が核燃料リサイクルの破綻を強調するなら、それと「原子力=準国産エネルギー」論をリンクさせ、「原子力=準国産」論は、核燃料リサイクルの破綻で夢想に終わろうとしている現実を指摘する意見がなぜ出なかったのか?

   こうした不満が残るが、ネット上では概ね好評で、「もっと昼間にやるべきだ」という意見がたくさん書き込まれた。同感だ。

自律的に「NHK政治部話法」の根絶を
   解説委員同士が「同僚意識」を捨てて、視聴者の前で、真剣勝負で意見をぶつけ合う中で、「NHK政治部話法」を自力で根絶できるかどうかは、NHKの報道番組にジャーナリズム精神を吹き込めるかどうかの試金石といっても過言ではない。


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国民に「伝える義務」を果たすNHKにするために

20161228日 

  「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」の運営委員会は1226日、「籾井会長退任後の当会の運動の進め方」と題する文書をまとめ、同日、会員に通知するとともに、会のHPにアップした。
  http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/ 

 また、翌27日には、この文書を次期NHK会長に就任することが決まった上田良一氏宛に発送した。
 今回の文書は、
  *籾井氏不再任に伴う受信料凍結運動の解除
  *上田新体制のNHKに対する当会の基本的立場
 という構成になっている。

 文書の後半に書かれているように、「当会は従来から、NHKの政府広報化、国策放送化は会長の資質に還元して済む問題ではなく、政治部による報道番組のコントロール、番組制作現場の職員のジャーナリズム精神の劣化といった要因によるところが大きいと考えてき」た。
  そこから、「会長が交代したことによって、NHKの『政府広報』体質が改まるのかどうか、・・・・『会長が籾井氏だから、どうにもならない』といった言い訳が通らなくなったこれからが、NHK職員の矜持と力量が問われる時だと言っても過言ではない」と考えている。
  また、これに続けて書いているように、「目下、日本では数の力に頼んだ愚劣な政治が横行し、憲法『改正』、海外での武力行使、沖縄での米軍の基地機能の拡大強化、本土へのオスプレイ配備、原発再稼働、世代を超えた貧困の深刻化など、悪政の犠牲が広がっている。このような悪政を国民の意思で一掃するには、多くの国民が『事実を知ること』、『参政に当たって十分な判断材料を持つこと』が不可欠であり、そのためにメディア、とりわけNHKが担うべき役割は非常に大きい。」

  この1年を振り返ると、安倍政権の反理性・棄民の政治が対震災被害者、対韓国(「慰安婦」問題に関する日韓「合意」)、対沖縄(基地機能の強化の問題)で際立った年だった。
 と同時に、韓国市民、沖縄県民の権力を振りかざした不条理との非妥協的な運動と比べて、私たち(「本土」の)日本人11人、さらには日本の市民運動の地力の脆弱さ、「情と和の精神が理性を覆う」政治意識のひ弱さを実感させられた1年だった。

 その背景には、1人の有権者として「知っておかなければならない事実」を知らない実態、知らされない実態がある。これからNHKにどう向き合うかを考える時、政府に不都合な事実を「知らせないNHK」を、政府に不都合であればなおさら「知らせるNHK」に変えていく運動を、さまざまな方法、創意で強めることが重要になっていると痛感している。

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  20161226日 
     
       
 籾井会長退任後の当会の運動の進め方

         NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                       運営委員会

 籾井氏不再任に伴う受信料凍結運動の解除
 NHK経営委員会は12月6日の会合で籾井現会長を再任せず、現経営委員で監査委員を兼務した上田良一氏を新しい会長に選出した。NHKの政治権力からの自立と独自の取材にもとづく調査報道の意義をまったく理解しない妄言を繰り返してきた籾井氏の資質に照らせば当然の判断である。というより、資質の点でも品性の点でも、公共放送のトップと真逆の籾井氏を名ばかりの注意で放免し、任期を全うさせた経営委員会の無責任が厳しく問われなければならない。

 籾井氏を退任させたのは、多くの視聴者が粘り強くかつ継続的に籾井氏の言動に厳しい批判を向け、籾井氏が「非行・悪行」を行う度に即刻の罷免を要求して来たことが最大の要因である。各地で開かれた「視聴者と経営委員が語る会」で籾井氏の言動に手厳しい批判が相次いだことも、経営委員会の任命責任の重さを自覚させる大きな力になったのは間違いない。

 と同時に、各地の市民団体が3年近くにわたって続けた罷免要求の署名運動が8万筆を超えたこと、さらに、籾井氏の任期切れ半年前から、21の市民団体が共同で取り組んだ籾井氏不再任の要求署名が4か月足らずで35千筆を超えたことも、籾井会長の退場を促すダメ押しの力となった。

 当会は会長就任会見で籾井氏が「政府が右と言う時、左と言うわけにはいかない」などと発言したことを重大視し、201451日から、籾井会長の辞任を求めて半年間の受信料凍結運動を呼びかけた。残念ながら、それから半年が経過した10月末日に至っても籾井氏は会長職にとどまった。そこで、当会としては当初の呼びかけ通り、その時点で受信料凍結運動の解除をやむなきことと判断し、1117日付でその旨の見解を発表した。
 ただし、当時、籾井氏が会長職にとどまり、NHKの国策報道化が顕著になっていたことから、会員が自らの意思で受信料の凍結を続けるなら、その意思を尊重するという判断も明らかにした。

 今回、会長職への不再任という形ではあるが、籾井氏の退場が確定したことで、受信料凍結運動の所期の目的は達成された。そこで、当会は、会員ならびに当会の呼びかけに応えて受信料凍結運動を続けて来られた方々に凍結の解除、受信料の支払い再開を呼びかける。

上田新体制のNHKに対する当会の基本的立場
 次期会長に上田良一氏が選任されたことについて、「4代続けて財界出身の会長」、「経営委員から会長を選ぶのは異常」といった指摘がある。確かに、財界人の出身母体に由来する利害と公共放送のトップに求められる使命には無視できない利益相反がある。これまで経営委員として同僚だった上田氏と経営委員会が緊張関係を保ちながら各々の職務に専念するかどうかも注視しなければならない。他方、上田氏は今年の5月に函館市で開かれた視聴者と語る会で、

 「受信料は、契約を締結する義務は法律で定められていますが、支払い義務は負っていません。支払いを義務化するということは、『支払いの義務を負わせて、支払わない人に対して罰則を設ける』ということであり、国の力で受信料を徴収するということになりますので、国の影響が及んでくるという懸念があります。」
 「放送、ジャーナリズムが国家権力に追随するような形というのは、必ずしも望ましい形ではありません。」


と発言したことは注目に値する(
NHKホームページ・「『視聴者のみなさまと語る会』in函館」より)。当会は、上田次期会長が今後、こうしたジャーナリズム精神を貫いて職務にまい進するのかどうか、注意深く見守り、是々非々の立場で新執行部と向き合っていく。

 その際、重要なのは会長が交代したことによって、NHKの「政府広報」体質が改まるのかどうかである。当会は従来から、NHKの政府広報化、国策放送化は会長の資質に還元して済む問題ではなく、政治部による報道番組のコントロール、番組制作現場の職員のジャーナリズム精神の劣化といった要因によるところが大きいと考えてきた。「会長が籾井氏だから、どうにもならない」といった言い訳が通らなくなったこれからが、NHK職員の矜持と力量が問われる時だと言っても過言ではない。

 目下、日本では数の力に頼んだ愚劣な政治が横行し、憲法「改正」、海外での武力行使、沖縄での米軍の基地機能の拡大強化、本土へのオスプレイ配備、原発再稼働、世代を超えた貧困の深刻化など、悪政の犠牲が広がっている。
 このような悪政を国民の意思で一掃するには、多くの国民が「事実を知ること」、「参政に当たって十分な判断材料を持つこと」が不可欠であり、そのためにメディア、とりわけNHKが担うべき役割は非常に大きい。

 当会は今後も、予断をまじえず、NHKの番組をウオッチし、良質の報道・ドキュメンタリィ番組、豊かな文化と教養を育む番組には激励を送り、国策を援護したり、視聴者の知る権利に背いたりするような番組には厳しく批判を続けていく。また、NHKの番組に対し、政治権力の介入や圧力があった場合は報道の自由を守るために毅然と抗議していく。

 当会はNHKの報道の自由を守り、NHKのガバナンス改革を進めていくうえで経営委員会が果たす役割が大きいことを踏まえ、経営委員の選考過程の透明化、選任基準の明確化を求めると同時に、他の市民団体と共同して公募・推薦制を含む経営委員の選考制度の抜本改革を目指す運動に取り組んでいく。
 と同時に、さしあたっては、経営委員会の会議の公開(傍聴)、「視聴者と語る会」の充実(回数を増やすこと、語る会の模様をNHKの番組として放送することなど)を要望していく。

                              以上

 

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「会長が籾井さんだから」の言い訳が利かなくなった時

201612月6日

昨夜のNHKニュース7~
政府広報報道の長期保存版~
 昨夜NHKニュース7をご覧になっただろうか? リアルタイムで視てあ然とし予約で撮った録画を、改めてメモを取りながら視た。NHK報道の政府広報ぶりを示す典型例として長期保存版になりそうな録画だった。放送項目、時間配分は次のとおり。

    2016125日 NHKニュース7 ウオッチ・メモ

 1.  安倍首相、真珠湾訪問 犠牲者慰霊の意向   551
 
2.  イタリア国民投票、首相が辞任表明      619
 
3.  ブレーキ作動などデータ分析、福岡3人死亡事故 338
 
4.  まとめ記事、掲載中止相次ぐ         302
 
5.  超高層ビルに雷 破片落下の危険       341
 
6.  参院TPP特別委 安倍首相、自由貿易の重要性示す 
                         1
25
 
7.  大谷、来期は27000万円   
                      128
 
8. 安倍首相、真珠湾訪問 犠牲者慰霊の意向   234
 
9.  天気予報                    43秒 
 
 

コメント
 1. 安倍首相の真珠湾訪問の意向発表を緊急重大ニュースかのように番組内で2度、延べ825秒を充てた。放送内容も安倍首相の独演、岩田明子記者の協演解説といえるものだった。
 さらに、オバマ氏の広島訪問の返礼といった「強いられた訪問であってはならない」というオバマ大統領の気配りを伝え、「安倍首相独自の判断による訪問である」と字幕付きで伝える念の入れようは尋常ではない。

 2.③は続報。一瞬にして両親を亡くした子供のことを聞くと心が痛む。しかし、「ブレーキ作動などデータ分析」という情報を3番目に338秒を充てて伝える話題とは思えない。

 3  ④⑤は今日7時のニュースで伝えるほどのニュース価値があるとは思えない。もっと時間枠のある「おはよう日本」で取り上げればよいのではないか。

 4. ⑥の扱いに大きな疑問。「国のかたちを変える」とまで言われるTPP協定案。大詰めを迎えた国会審議というのに、質問に立った与野党8人のうち、放送されたのは公明党の議員と安倍首相との一往復の質疑のみ。時間にして125秒。⑦の「大谷、来期27,000万円」という話題よりも短かった。なぜ公明党議員の質問だけなのか? この1点だけでも大問題と思えた。

「会長が籾井さんだから」の言い訳が外れた時

 籾井現会長の不再任が濃厚になったと各紙が伝えている。当然のことというより、今まで罷免もされず、会長職にとどまり続けさせた経営委員会の体たらくが情けない。
 そんな中、今夜のニュース7を視て考えた。今日に始まった感想ではないが。

   籾井氏が会長職を退いたとして、今日のようなあからさまな政府広報はNHKの報道番組から姿を消すのか?

   「会長が籾井さんだから」という言い訳が、「政治部には、上司の指示には逆らえない」という言い訳にとって代わることはないのか?
 
 NHK
の番組制作スタッフの個としてのジャーナリズム精神の真価が問われ、NHKの報道番組の真贋を見極める視聴者の眼力、醜悪な番組を正す行動力が試される時である。

言論の自由を実践する場はメディアの外ではなく、内にある
  「J氏は新聞社に身を置きながら、『世界』に書いているようなことを組織内で堂々と主張し、上司と闘っているのだろうか。新聞労連の委員長氏は出身母体に戻ったとき、数々の正論をその通りに主張し、堂々と社内で上司と議論しているのだろうか。」

  「『言論の自由』は、対権力との関係において語られるが、しかし、言論の自由を実践する場所は『対権力=メディア企業の外側』ではなく、メディア企業の内部にこそある。」

(高田昌幸「北海道新聞を去るにあたって 『組織』ジャーナリズムとジャーナリスト『個人』の狭間で」『マスコミ市民』20119月)


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3万筆まであと1,000筆~次期NHK会長選考への要望署名~

2016114

〔続報/11月5日、1時34分追記〕 累計3万筆突破
 11月4日24時現在の集約で累計署名数は3万1,503筆となった。
 11月4日の増加署名数: 用紙署名2,379筆 ネット署名96筆
                 計2,475筆

 今日にも3万筆突破
 8
11日以降、全国27の市民団体は連名で次期会長選考に向けた3項目の要望の賛同署名は目下、第三次の呼びかけ中(集約日114日、最終締め切り116日)であるが、昨日(113日)現在で用紙署名到着分とネット署名を合わせ、累計で29千筆を超え、3万筆まであと一歩になった。今日、明日にも3万筆を超える見込みである。

  万単位の署名を積み上げることが、経営委員会に視聴者の声を届ける力の一つになると考えている。それだけに、残る期間内に市民団体の自力と多くの方々のご協力で、ぜひとも3万筆に少しでも上積みする署名を達成したい。

 署名呼びかけの詳細は次をご覧いただきたい。ネット署名の入力フォーマットも入っていて、そのままで送信できます。署名用紙のダウンロードもできます。ご協力をお願いします。
 署名用紙のダウンロード  
   http://bit.ly/2aVfpfH


 
ネット署名の入力フォーム   
  https://goo.gl/forms/G43HP83SSgPIcFyO2
 
ネット署名に添えられたメッセージはNHK改革の宝の山
 今回の次期NHK会長人事に関する要望署名運動は数を追求するだけの運動ではない。ネット署名に添えられたメッセージを読んでいくと、NHKを視聴者本位の公共放送に改革していくための宝の山という気がしてくる。と同時に、NHK問題に関わってきた自分の感性を洗い直す数多くの材料を得た思いがしている。

 メッセージの中のいくつかを、このブログでこれまでに6回にわたって紹介してきたが、以下では、この6日間に届いたメッセージの中から4つを紹介しておきたい。
 すべてのメッセージは、個人情報を伏せて、次のサイトで公開している。
 https://goo.gl/GWGnYc


以下、冒頭に付けるのは通しの番号である。

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2021

NHK番組でフリーランスとして、時折仕事をします。今のNHK体制だと恥ずかしくて、胸を張って自分の仕事を知人に紹介できません。現状の体制を改善するためにも、籾井現会長の再任に強く反対します。」
 
1029 フリーランス 映像関係)

4038
NHKのニュースと論説などは、ほとんどみません。以前のNHKを思うとまったくの、政権のプロパガンダ機関です。とくに、私たち沖縄に住む者にとっては、最悪の『公共』です。ほとんど、沖縄民衆の敵対者といってもいいものです。職員のなかには良心的で、現状を憂えている者も多数いるはずです。このままではのちのち大変なことになります。」

 (1031日/沖縄県)

4645

「国民の知る権利を奪うNHKの在り方、特にニュース報道に抗議します。私は、1956年生まれ、ちょうど中学生の頃、公害訴訟で負けっぱなしの原告側に物申すNHKの報道(朝ドラが始まる前7:458:15)を毎朝見て、歩いて3分の中学校に通ってました。私にとって国とは弱いもの、国民の見方ではないことをこの時代のNHKの報道から学び、憲法を教えたく教員の道を歩んできました。中立とは、日本国憲法が基準ではないのですか?」

111日/東京都)

4682
「偏向報道にうんざりしています。事実関係を淡々と伝えてほしいと思います。ささやかな、私なりの抗議として受信料契約を拒否し続けてきましたが勧誘員玄関ドアを激しく叩くという脅しについに屈し、今年になって契約してしまいました。大男が大声で呼びながらドアをたたくので恐怖を覚えました。所謂お笑い芸人が相方をひっぱたくような番組制作にも受信料が使われているのだと思うと怒りを覚えます。情けないことに、もっぱら衛星放送で映画を視聴して、元を取ったと思い込もうと努力しております『安倍放送局』は早急にやめていただきたいです。」

111日/岐阜県)

4886
「政府が隠し続ける事実を隠す手伝いをするのが、公共放送の役割ではないはずです。

国民の不利益を報じないのは報道機関としての役割放棄です。報道機関自らの報道規制は、先の戦前と変わらぬ事態です。国民に誤った歴史認識を植え付けたりしないで!

国民の目となり耳となり、事実を報道する勇気を持ち続けてください。権力に迎合するのは、容易いことですが、国民の立場に立つことは生半可ではできないこと。しかし、どんな困難な時代でも人間的であり続ける勇気を持ってください。報道の果たすべき役割はとてつもなく大きく、時代を変える力を持っています。それだけに、責任も重大です。報道機関としての誇りをどうかかなぐり捨てないでください。権力に自分を売り飛ばすな!人間であり続けて!」

113日/埼玉県)

 

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上村達男氏のNHKガバナンス論の真贋                ~赤旗編集局への書簡(7/7)

20161020


上村氏の著書の書評依頼に関する経緯に思うこと

  最後に、貴紙と上村氏と私の三者にかかわるエピソードを振り返って思うことをお伝えします。
   昨年(2015年)秋、貴紙の文化部の方から、上村氏の新著『NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか』(201510月、東洋経済新報社)について書評依頼の電話が拙宅にありました。(貴部署はご存知なかったかも知れませんが、確かめていただければ、今でも経緯はおわかりになると思います。)
  私が「お受けしますが、この書物なら批判的な意見も書くことになると思います」と告げると、文化部の方は戸惑われたようで、「そうですか。・・・・それではどうするか検討して、改めてご連絡します」ということでいったん、電話は終わりました。
  約15分後に再度、先ほどの方から電話があり、応対した連れ合いに、「趣旨が違いますので、今回は見送らせていただきます」とのこと。

  それからしばらくして、貴紙の書評欄に、あるNHKOBの方の同書の書評が掲載されました。それは上村氏の著書を高く評価し、私なら指摘したはずの疑問・問題点の指摘は皆無でした。

  書評の評者を誰にするかは雑誌なり新聞なりの編集部の判断に委ねられるものですから、結果についてどうこう申し上げるつもりはありません。私の脳裏に残っているのは、私への依頼を見送る旨、告げられた際に聞いた「趣旨が違う」とはどういう意味なのだろうということだけです。機会がありましたら、「趣旨」とは何だったのか、お聞かせいただけると幸いです。

最後に

  この書簡に書いたような私の考えを私の周りにいる方々に話かけた時、返ってきそうに思える反応、異論は、「あなたが言うような意見の違いは、この時期に持ち出すのは控えた方がよい」、「今は多様な意見を互いに認め合って一致点で共同するべきだ」という「融和論」「多様性尊重論」です。
  実際、このような「融和論」、「多様性尊重論」は、私の経験に照らしても、今日の日本の市民運動の内部で広く共感され、支持される傾向があるように思えます。
  しかし、一致点と不一致点といっても一様ではありません。
  私がこの書簡で指摘した上村達男氏の言説を知った方々が、それでも上村氏を悪名高い籾井NHK会長を退かせる運動のための貴重な人材とみるのか、そうではなく、上村氏は真正の籾井批判者に値せず、同氏のNHK論全般を見れば、むしろ有害な見解が随所に含まれていると見るのか‐――この点を大いに冷静に議論する必要があるというのが今の私の考えです。
  この書簡で記してきた検討に照らせば、私が後者の見解にたどり着いたことは充分、おわかりいただけると思います。

 最後に一言しますと、最近、日本で見受ける「融和論」が「棚に上げる」のは、正確に言うと、「不一致点」ではなく、問題の核心に関わる不一致点を熟議することを避ける「理性の棚上げ」ではないかと私は考えています。


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〔追記〕

  以上(7回に分けて掲載した)が、しんぶん赤旗編集局/同ラジオ・テレビ部に宛てた書簡の全文である。
  連載を閉じるにあたって、この書簡を送った知人から届いた感想への返信をまとめながら考えたことを追記として、載せておきたい。

  私はアンチ共産党でも何でもないが、「主(あるじ)なし」の人間でよかったと最近、つくづく思う。
  今の市民運動を見ていると、「政府が右という時、左とは言えない」という籾井NHK会長の言葉を本当に批判できるのかと思うことがある。「政府」の代わりに「○○党」と置き換えたら、そっくり当てはまるような団体や人たちを見かけることが珍しくない。「左翼」にもタブーがあるような空気なのである。

  言論の自由というと対権力を念頭に、かまえた議論をしがちだが、私たちの日常生活や市民運動の内部でも、共感やほめ言葉は飛び交うが、批判や異論は疎まれがちである。「違いを認め合う」というと、日本古来の「和の精神」に適いそうだが、違いは認め合って脇に置くものではなく、すり合わせ、議論をするべきものではないのか? 

 
 「共闘」がキーワードになった時代のせいなのか、最近は主義の左右を問わず、
「摩擦」を負のエネルギー消費と捉える傾向が強まっているように思える。しかし、力学になぞらえていえば、「摩擦」は自省、進歩の契機として正のエネルギーとなり得るものである。
  というより、私には「摩擦のない同調、共感」はある種、宗教的で不気味な同質化としか思えない
  今は自民党政権を倒すことが革新の大義とされる。それ自体に疑問の余地はない。しかし、ここ数年、私はそうした政治体制の転換の後に来る言論、メディアの状況はいかなるものなのかについて、自分の体験に照らし、思いを馳せることがある。私の言論などは「趣旨に沿わない」と疎まれ、排除される状況になりはしないか、と想像したりする。げんに、その前兆と思える状況も一度ならず体験している。
  自分が生きているうちに、そんな政治体制の転換も深刻な言論状況も生まれそうにないという逆説で、安らぐのが賢い生き方なのかと思ったりするが。


                             (この連載、完)


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