東電の社外取締役の兼任の撤回を~數土・NHK経営委員長に申し入れ~

 先週末、政府はNHK経営委員会の委員長・數土文夫氏を東京電力の社外取締役に起用する方針を固めたというニュースが流れ、唖然とした。私も共同代表を務める「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」の運営委員はすぐに、この件について協議をし、數土氏宛てに兼任受諾の撤回を求める申し入れをすることになった。また、直接の当事者でないとはいえ、NHK経営委員会、監査委員会も静観して済む問題ではないと考え、昨日(2012514日)、両委員会の各委員宛てにも質問を提出した。
 社外取締役は業務執行役員とは違って、東電の業務に関わるわけではなく、取締役の業務執行を監視・監督するのが職責だから、とりたてて問題にすることではないという議論も予想される。そうした異論も見越して、私たちは次の2点から、數土氏の兼任を批判し、撤回を求めることにした。詳しくは、以下、掲載する申し入れ書の全文を参照いただきたい。
 一つは、NHKの最高意思決定機関である経営委員会の長の職と、目下、福島原発事故の完全収束に向けた取り組み、原発事故被災者に対する損害賠償、原発再稼働問題、原発施設が稼働ゼロとなった状況での電力の安定供給といった、どれひとつをとってみても、一国規模での重要課題を抱えた東京電力の社外取締役の職は、職務の質と量のどちらから見ても、両立は不可能なこと。
 もう一つは、NHKの経営委員会の長の職と東電の社外取締役の職を兼任することは相互に相反関係を生むこと。そして、ここでいう相反関係には2つの面があること。①東電は目下、NHKの最重要の取材・報道対象である。取材する側のNHKを監督する機関の長を務める人物が取材される側の経営に参画することは、メディアの非当事者原則に反する。②東電は政府の支配下に置かれる実質国有化企業になる。NHKを監督する機関の長を務める人物がそうした企業の経営に関与することは、政府との距離を保ち、自主自立の放送を行うことを使命とするNHKへの視聴者の信頼を揺るがすことになる。

 
その上で、申し入れは最後に、數土氏に対し、
 *NHKの経営委員会の長にとどまって、その職責を全うする意思があるなら、東電の社外取締役に就任する意思を撤回すること、
 *東電の社外取締役に就任して、その職責を担う意思が固いのなら、NHK経営委員長の職を自ら辞すこと、
 を求めた。

 *****************************************************

2012
514
NHK
経営委員会
委員長 數土文夫 様

    
東京電力の社外取締役への貴殿の就任の撤回を求める質問・要望書

           
  NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                      共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 拝啓 貴殿におかれましては日頃よりNHK経営委員長としての重責を担ってご尽力を下さり、厚くお礼申しあげます。
 
新聞報道によれば、政府は511日、実質国有化される東京電力の社外取締役の一人として、貴殿を起用する方針を固め、東京電力は本日、2012年3月期決算と併せて、本件人事を発表すると伝えられています。そして、来る6月下旬に開かれる同社の株主総会後の取締役会で貴殿は現在のNHK経営委員長の職にとどまったまま、正式に社外取締役に就任される予定と報道されています。
 しかし、貴殿がNHK経営委員長の職と兼任の形で東京電力の社外取締役に就任されることについて、当会は以下述べる理由から、これを断じて認めるわけにはいきません。
 会社法上、社外取締役の職務は会社の業務の執行ではなく、いわゆる独立役員として業務執行取締役の職務の遂行を監視し監督することにあるとされています。その一方で、社外取締役は引き受け手がなく、著名人の名誉職的な役職と評されたりしています。しかし、だからといって、今回、貴殿が東京電力の社外取締役に就任されることを是認したり、就任に伴う問題点を軽視したりすることは到底できません。

 1.まず指摘すべき重大な問題は、NHK経営委員長の職と東京電力の社外取締役の職は、それぞれの職責の重さ、時間的精神的な負担の面から両立は不可能だということです。公共放送・NHKの最高意思決定機関の長の職責の重さは改めて説明をするまでもありません。他方、社外取締役の職務も取締役であることに変わりはなく、他の取締役と同じように善管注意義務・忠実義務・内部統制構築義務・監督義務等を課され、相応の報酬を受けます。このうち、会社に対する損害賠償責任に関しては株主総会の決議によって軽減が可能とされているとはいえ、報酬の2年分が最低責任限度とされ、それを超える範囲内では他の取締役と責任を共有する立場にあります。
 具体的に言えば、社外取締役の職務は、取締役会への出席にとどまらず、報酬・指名・監査委員会や各種経営会議への出席、経営陣との打ち合わせ、投資家・取引銀行・取引証券会社等に対する会社説明会への出席、監査法人との報告会への出席等、枚挙にいとまがありません(日本取締役協会『社外取締役の導入実態調査 2011年』参照)。これを見ただけでも兼任となれば、兼任先の業務遂行に相当な負担を要することは明らかです。
 しかも、今回の貴殿の兼任先は一民間企業ではなく、福島原発事故の完全収束に向けた取り組み、原発事故被災者に対する損害賠償、原発再稼働問題、原発施設が稼働ゼロとなった状況での電力の安定供給といった一国規模での最重要課題を抱えた東京電力です。このように重大な課題が山積する東京電力のコ-ポレート・ガバナンスを有効に機能させる上で社外取締役に求められる職責の重さを考えた時、NHK経営委員長の職にある貴殿が東京電力の社外取締役を兼務できるものでないことは常識に照らして自明です。それでも貴殿が東京電力の社外取締役を引き受けられるとなれば、「NHK経営委員長の職務とはそれほど楽なのか」と評されても致し方ありません。

 2.しかし、問題は兼務に伴う時間的精神的負担の大きさにとどまりません。NHK経営委員長としての職責と東京電力の社外取締役に求められる職責がそもそも相反するという点が重大です。このことは2つの面から指摘できます。
 一つは、東京電力が、福島原発事故の完全収束に向けた取り組み、原発事故被災者に対する損害賠償、原発再稼働問題、原発施設が稼働ゼロとなった状況での電力の安定供給といった諸問題について、NHKの極めて重大な取材・報道対象だという点です。NHKの業務執行を監督する立場にある経営委員会の長が、そうした取材先の社外取締役に就任し、相応の報酬を得る一方、善管注意義務・忠実義務等を共有するのは、メディアに携わる者の基本というべき非当事者原則に真っ向から反し、経営委員会の職務遂行の公正性に対する視聴者の信頼を根底から覆すことは明らかです。
 もう一つは、東京電力が政府の実質的な支配下に置かれる会社になるという点です。貴殿がそうした会社の社外取締役に就任され、取締役会の議決に加わって、その決議に係る責任を分有する行為は、貴殿が政府の意思決定と密接に関わることを意味します。そうした貴殿が政治からの独立を生命線とするNHKを監督する経営委員長の職にとどまることは結局、NHKあるいはNHK経営委員会の政治からの自立に関する視聴者の信頼を大きく損なうことは、これまた明らかです。貴殿はこの点をどう認識しておられるのでしょうか?
 以上から、当会は貴殿に対して、次のことを質問もしくは申し入れをいたします。

 1.(質問) 上記の理由により、NHK経営委員会の長の職責と東京電力の社外取締役の職責は両立しがたく、両者は相反するという当会の指摘について貴殿はどのように受け止められるか、お答え下さい。
 2.(申し入れ)貴殿がNHK経営委員長の職にとどまる意思を持たれているのであれば、それとの両立を期し難い東京電力の社外取締役への就任を辞退されること。あるいは、既に、就任を受諾されたのであれば、それを撤回されること。
 3.(申し入れ) 貴殿が東京電力の社外取締役への就任を受諾される意思が固いのであれば、それとの両立を期し難いNHK経営委員長ならびに経営委員の職を自ら辞されること。

 ご多用のこととは存じますが、以上3点の質問ないしは申し入れについて、ご回答を2012524日までに下記あてに書面でお送り下さるよう、お願いいたします。
                     
                              敬具
            

  ご回答の郵送先: × × ×

| | コメント (0)

会長選考の経過に関するNHK監査委員会の調査報告書について意見を送付

新聞でも報道されたが、NHK監査委員会は225日に「新会長任命にいたるまでの過程についての調査報告書」を公表した。

監査委員会の調査報告書全文 
 http://www.nhk.or.jp/kansa-iinkai/condition/pdf/report_110225.pdf 

 これについて、私は昨日(226日)、NHK経営委員会・監査委員会宛に意見・要望を送った。全文は次のとおり。
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/keieiiinkai_kansaiinkai_ate_iken_20110226.pdf


                                                                               
2011226

NHK
経営委員会・監査委員会 御中


   NHK監査委員会の会長選調査報告書に関する意見

                              醍醐 聰

 225日にNHK監査委員会が公表された、「新会長任命に至るまでの過程についての調査報告書」に関する意見をお送りします。この意見は私が所属する視聴者団体の意見ではなく、私個人の意見です。

1.各委員に調査の後遺症、自己規制を生まないように
 監査委員会が報告書の冒頭で、「本調査対象事象は、NHKが最も尊重すべき報道の自由の根幹である取材源の秘匿に関する調査であること、経営委員会は公開と透明性を旨として運営されるべきことには十分な尊重と配慮を払いつつ本調査を実施した」(2ページ)と記されていることに率直に賛意をお伝えしたいと思います。もともと私は、今回の調査が情報漏洩の有無を調べる「犯人捜し」に矮小化されてはならず、視聴者の知る権利、それに応えるがために報道機関に与えられている取材の自由を侵害しないよう配慮されなければならないと考えていましたので、こうした調査の基本姿勢は望ましかったと考えます。
 
 ただし、今回のように個々の経営委員から、職務遂行の過程での情報管理のあり方を聞き取り調査したという事実そのものが、一人一人の委員の今後の言動を委縮させる「後遺症」や発言の行き過ぎた「自己規制」を生まないよう、透明で視聴者に開かれた委員会、委員の言論の自由を尊重する運営に徹していただくよう望みます。 

2.会長選考の中枢にいた小丸氏の責任逃れを許してはならない 
 調査報告書を読み終えて痛感するのは、今回の会長選考の中心人物であり、候補者との接触という点でも重要な情報を誰よりも保有された小丸氏が聞き取り調査に応じられなかったことが、今回の調査を中途半端なものに終わらせた最大の原因になったという点です。 
 
 とりわけ、注目すべきなのは、「就任の要請」だったのか、「打診」だったのかは別にして、経営委員会・指名委員会が候補者の実名、打診の優先順位を決めた1221日の2日前(1219日)に、小丸氏が安西氏と接触し、同氏を会長候補と見立てた対話をしたことを監査委員会が報告書の中で認定された点です。このことは小丸氏が、NHK会長の選考という、経営委員会の職務の中でも最重要事項の一つといえる職務を遂行するにあたって、委員会でまだ合議がされていない段階で特定の人物に独断で接触されたことを意味し、経営委員会の合議体制を根本からないがしろにした行為であったことは明白です。

 小丸氏が監査委員会の聞き取り調査に応じられなかったのは、こうした合議無視の独断専行を調査されるのを忌避するためだったと受け取られても致し方ありません。また、同氏が経営委員長を辞任するだけでなく、会長選考の迷走の事後検証を待たず、経営委員の辞任も申し出、「一市民となったので」という口吻で聞き取り調査に応じなかったことは独断専行の調査から免れる無責任で卑劣な態度と言わなければなりません。

3.非公式のルートで選考・打診が進められた疑念の解明を
 これと関連して見過ごせないのは、松本正之氏を会長に選ぶ段階でも、経営委員会の合議を脇に置いて、経済界の人脈で会長候補の模索・打診が水面下で進行した形跡があるという点です。昨年末から年明けにかけて、いくつかの報道機関が社説や記事の中で、具体的な人選まで経済界の人脈を頼って進められたと伝えています。とりわけ、見過ごせないのは、松本正之氏の名前が経営委員会で出たのは115日が初めてと言われているにもかかわらず、松本氏はその2日前の113日に、JR東海の葛西敬之会長を通じて間接的に会長就任を打診されていたと発言された点です(『毎日新聞』2011116日)。これが事実とすれば、大多数の経営委員が与り知らないところで、経済界の人脈を通じて松本氏への打診が進行していたことになります。

 つまり、下線部分が事実とすれば、安西氏に対する打診の過程にとどまらず、NHK会長に松本氏を決定する過程でも、ほとんどの経営委員が与り知らないところで、経営委員でもない同じ業界の財界人が仲介に入って、松本氏への打診が進められたことになります。この点が事実かどうかを調査するところまで進まなければ、今回の会長選考が残した問題点を掘り下げて解明したことになりません。また、今回の会長選考にこうした非公式な人選・打診のルートが介在したのかどうかは、会長選考の手続きの当否や情報漏洩の有無にとどまらず、選考方法、選考基準にも関わるだけにうやむやに済ませてはなりません。そのためには、監査委員会が小丸氏も含め、関係者に対する厳正な調査をされる必要があると考えます。

4.経営委員会と監査委員会の職責の混在
 最後に、今回の監査委員会の調査報告書を読んで、従来から感じていた経営委員会と監査委員会の職務と権限の分掌に関する疑問がさらに深まりましたので、指摘いたします。
 NHK経営委員会のホームページに掲載されている「NHK経営委員会とは」というページ
http://www.NHK.or.jp/keiei-iinkai/about/index.html)に、<NHKの経営体制>という図解が示されています。この図の中の「経営委員会」と「監査委員会」の関係を示す矢印と職務の分掌の説明文を見ますと、経営委員会は監査委員会の職務執行を監督し、監査委員を罷免する権限を持つ一方で、監査委員会は経営委員の職務執行の監査をするとされています。「監督」か「監査」かという用語の違いはあるにせよ実質的に、経営委員(会)と監査委員会は相互に監督しあう関係にあることになります。2つの組織がこうした相互関係にあることがただちに異常かどうかは慎重に検討しなければなりませんが、今回の調査に当てはめた場合、次のような疑問が生まれます。

 というのは、今回の調査は経営委員全員を対象にしたと記されているものの、調査の進め方を見ますと、監査委員を兼務する3人の経営委員は調査する側、監査委員以外の経営委員は調査をされる側となっています。しかし、私見では、今回の報告書が指摘した経営委員全員による情報共有の弱さ、意思疎通の弱さはつまるところ、経営委員会全体の合議・ガヴァナンスの機能不全を意味します。小丸氏の独断専行と思われる行動が生じたのも、究極の原因を辿れば、経営委員会の合議体制・ガヴァナンスの機能不全に帰着するのではないでしょうか? 
 
 こうした機能不全が生じた原因を究明するには、監査委員がその職務を適切にまっとうされたのかどうかを検証することが不可欠ですが、今回の調査ではこの点について経営委員会は監査委員を対象に調査・検証をされたのでしょうか? 

 このように見てきますと、言葉の上ではともかく、実際には監督(監査)する者とされる者がクロスする現在の経営委員会の体制はガヴァナンスの面で機能不全を生みやすい要因を孕んでいると思われます。ましてや、12名中11名が非常勤という経営委員会が常勤の監査委員の職務の執行状況を監督するのは至難のことと思われます。また、監査委員を兼務される常勤の経営委員が会長選考にあたって指名委員を兼務されるのは、経営委員会内部での職務の執行機能と監督・監査機能の混同を意味しますので、こうした兼務は避けるべきだと考えます。
 以上指摘しました点を委員各位はどのようにお考えでしょうか? 

 「自分たちは放送法で定められた職務の分担に従って粛々と任務を遂行しているまでだ。法制度に関わることをどうこう言えない」と応答されるかも知れません。しかし、経営委員会・監査委員会のガヴァナンスを有効に機能させる上で、現行の放送法に不備があると認識されるなら、その是正を堂々と立法府に要請されるべきではないでしょうか? そうしたアクティブな行動をとおして貴委員会が、NHKの会長選任をはじめとする重責を立派にまっとうされ、わが国における公共放送・NHKを視聴者本位の方向に充実・発展させるために貢献されることを心より願っております。

                              以上

             居間でタオルケットを自分流に「模様替え」して寝入ったウメPhoto

| | コメント (1)

問題の核心に迫らなかったNHK監査委員会の調査~会長選考の調査報告書を読んで~

〔キーワード〕
  調査の後遺症 自己規制 小丸氏の逃げ得 財界人脈 類は友を呼ぶ

調査はどのように行なわれたか
 
昨日(225日)、NHK監査委員会は「新会長任命に至るまでの過程についての調査報告書」を公表した。その全文は次のとおり。
 http://www.nhk.or.jp/kansa-iinkai/condition/pdf/report_110225.pdf 

 この調査の目的は、NHK会長の選考の過程で各経営委員ならびに経営委員会事務局職員が「経営委員の服務に関する準則」(情報の管理、委員会での合意に基づく行動)を遵守したかどうかを検証することにあるとされている。
 この目的に沿って、監査委員会は各経営委員から準則を遵守して行動したかどうかの確認書の提出を求めた。これには経営委員も辞任した小丸前経営委員長を含む当時の経営委員12名全員から提出があったという。その際、監査委員会は小丸氏から、「1219日の候補者〔安西氏のこと〕との接触は、就任の要請でない旨の回答を得た」という。
 次いで、監査委員会は経営委員に質問書を送って回答を求めたうえで、一人一人の委員から聞き取り調査をしたという。なお、小丸氏はすでに経営委員を辞任し、一市民となったので、と述べてこの聞き取り調査に応じなかったという。

 ところで監査委員会は、これら書面ならびに面接を通じて、経営委員会における会長選考の節目ごとに、その段階では正式発表に至っていなかった審議内容(報道事象)をA~Fに区分し、それぞれの審議内容の発生日と、当該審議内容が各種報道機関(週刊誌等も含む)で報道された月日を比較対照した表を示し、各経営委員ならびに経営委員会事務局職員が報道の取材源に関与したかどうか、その他経営委員会の内部資料とされたものをブログやメール等で外部へ流出させた事実がなかったかどうかについて調査したという。

調査で明らかにされたこと
 
監査委員会は上記のA~Fの事象ごとに下線部分について調査した結果を記載している。それらを要約すると、経営委員あるいは経営委員会事務局職員が委員会として公表を控えていた情報を外部に漏洩した事実ないしはそうした事実を窺わせる可能性は確認できなかったと結論づけている。

 その上で、監査委員会は調査を通じて判明した問題点として情報共有の不備、欠陥を次のように列記している。
 ①20101221日に指名委員会が候補者の実名と打診の優先順位を協議した内容は経営委員のみが知る事象であるにもかかわらず、それが1223日以降、各種報道で詳細に伝えられたことは問題であった。その原因としては委員会終了後に多くの経営委員が取材を受けた際に「いわゆる当て取材」が行なわれ、個別に取得した断片的な感触をつなぎ合わせて事象全体の認識が形成され、報道に至った可能性は否定できない。

 ②打診を受けた安西氏が受諾したという事象は同氏と接触した小丸氏から各委員に電話で伝えられたが、これについて伝え聞いた経営委員から情報が漏洩した事実は確認できなかった。また、小丸氏から連絡を受けた委員の受け止め方は一様ではなく、経営委員間で正確な情報交換のルートが存在することが望ましかった。

 ③安西氏がNHK会長職の執務環境(交際費、住居などを指すと見られる)に関して質問した事項は、質問を受けた小丸氏からこの件について照会を受けた協会職員がいたことが確認されたが、当該職員が情報の外部流出に関与したとは認められなかった。しかし、安西氏がどのような執務環境について質問したのかについて承知していた経営委員はいなかった。こうした情報は全経営委員に共有されるのが望ましかった。<以下、省略>

調査が迫らなかった問題の核心
 今回の調査報告を読んだ私の主な感想を記しておきたい。

 ①各委員に調査の後遺症、自己規制を生まないように
 監査委員会が報告書の冒頭で、「本調査対象事象は、NHKが最も尊重すべき報道の自由の根幹である取材源の秘匿に関する調査であること、経営委員会は公開と透明性を旨として運営されるべきことには十分な尊重と配慮を払いつつ本調査を実施した」(2ページ)と記しているのは率直に評価できる。
 特に、今回の調査が情報漏洩の有無を調べる「犯人捜し」に矮小化されず、視聴者の知る権利、それに応えるがために付与されている取材の自由を侵害しないよう求めていた私にとっては、こうした調査の基本姿勢は重要であったと思う。ただし、今回のように個々の委員を呼び出して情報管理のあり方を聞き取り調査したという事実そのものが、一人一人の委員の今後の言動を委縮させる「後遺症」や発言の「自己規制」を生まないか、注意深い監視が求められる。

 ②問題発生の中枢にいた小丸氏の「逃げ得」で終わってはならない
 調査報告書を読み終えて痛感するのは、今回の会長選考の中心人物であり、候補者との接触という点でも最も多くの重要な情報を保有した小丸氏が聞き取り調査に応じなかったことが、情報管理に限っても、会長選考が迷走した真相を解明し責任の所在を明らかにすると言う点でも、今回の調査が中途半端なものに終わった最大の原因といえる。
 とりわけ、注目すべきなのは、「要請」だったのか、「打診」だったのかはさておくとしても、経営委員会・指名委員会が候補者の実名、打診の優先順位を決めた1221日の2日前の1219日に、小丸氏が安西氏と接触し、同氏を会長候補と見立てた対話をしたことを監査委員会が正式に認定した点である。このことは小丸氏が、NHK会長の選考という経営委員会の職務の中でも最重要事項の一つといえる職務にあたって、委員会でまだ合議がされていない候補者に独断で接触したことを意味するから、同氏の服務規律違反は明白である。

 小丸氏が監査委員会の聞き取り調査に応じなかったのは、こうした委員会の合議無視の独断専行を調査されるのを忌避するためと受け取られてもしかたがない。また、同氏が経営委員長を辞任するだけでなく、会長選考の迷走の事後検証を待たず、経営委員の辞任も申し出、「一市民となったので」という口吻で聞き取り調査に応じなかったことは独断専行の調査から免れる「逃げ得」願望の卑怯な態度と言わなければならない。

 ③財界人脈主導の選考を意味した水面下の選考ルートの解明を
 これと関連して、見過ごせないのは、松本正之氏を会長に選ぶ段階でも、経営委員会の合議を脇に置いて、財界の人脈で会長候補の模索・打診が水面下で進行した形跡があるという点である。これについて、私はこのブログに掲載した120日付の記事「類は友を呼ぶの悪習を断ち切るべき~NHK会長選考を振り返って~」の中で次のように記した(下線は引用にあたって追加)。
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/nhk-53dc.html 

 さらに今回のNHK会長の選考過程で露見したのは、民間経営者の資質とNHK会長に求められる資質の混同にとどまらず、上の『東京新聞』社説や数紙の記事にも記されたように、具体的な人選まで経済界の人脈を頼って進められたと伝えられている点である。とりわけ、見過ごせないのは、松本正之氏の名前が経営委員会で出たのは115日が初めてと言われているにもかかわらず、松本氏はその2日前の113日に、JR東海の葛西敬之会長を通じて間接的に会長就任を打診されていたと明かしている点である(『毎日新聞』2011116日)。これが事実とすれば、大多数の経営委員が与り知らないところで、経済界の人脈を通じて松本氏への打診が進行していたことになる。これでは、あからさまな財界主導の会長選びであり、名実ともに「類は友を呼ぶ」である。

 下線部分が事実とすれば、安西氏に対する打診の過程にとどまらず、NHK会長に松本氏を最終決定する過程でも、ほとんどの経営委員が与り知らないところで、経営委員でもない同じ業界の財界人が仲介に入って、松本氏への打診が進められたことになる。この点が事実かどうかを調査するところまで進まないと会長選考が残した問題点を掘り下げて解明したことにならない。こうした財界人の関与の有無は、会長選考の手続き論や情報漏洩の有無の検証にとどまらず、選考方法、選考基準にも関わるだけにうやむやにできない問題である。そのためには、経済人としての小丸氏や松本氏と同じ業界に属する経営委員に対する厳正な調査と狭い人脈や知己に依存した選考方法の限界・弊害を経営委員会全体で抜本的に見直す努力が不可欠である。

 報道によれば、経営委員会は今後も、次回のNHK会長選考に向けて、選考のあり方を検討するという。その推移を注視するととともに、222日に「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティが経営委員会・監査委員会、安田経営委員長代行、井原監査委員に提出した3通の質問書に対して、どのような回答をするのか注目したい。

| | コメント (0)

NHK会長選迷走の検証を情報漏えいの調査に矮小化してはならない

迷走の根源にメスを入れる検証と報道を
 
今日の朝刊を見ると、NHK経営委員会は3名の委員からなる監査委員会が、先のNHK会長選の過程で情報の漏えいがなかったかどうかについて、これまでに委員全員から聴き取りを終え、25日にその結果を報告することにしたと伝えられている。
 個人の名誉やプライバシー、人事の円滑な進行のために候補者として選考中の人物や打診中の人物の個人情報が守秘されなければならない場合があることは確かだ。
 しかし、先のNHK会長選考が前任者の任期切れ間際まで迷走し、最終的にはわずか1日で、候補者と面談もせず、2名の経営委員が提供した限られた情報だけに頼って、「鉄道も放送も公共性においては同じ」という牽強付会の理由で、会長人事を即日議決するという杜撰な選考を招いた根本的原因を究明することなく、「情報漏えい」の有無を調査するだけで終わるなら、問題の矮小化に他ならない。
 この点では、メディアも「情報の漏えい」といった話題性に関心を偏向させず、現在の会長選考制度が公共放送の長を選ぶのにふさわしい仕組みになっているのかどうかという焦眉の問題に論点を引きもどす見識ある報道が求められている。

 昨日(222日)、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」がNHK経営委員会・監査委員会、安田経営委員長代行、井原監査委員に宛てて提出した質問書も、会長選考が迷走した根源的な原因の究明を求めるという趣旨に基づくものであった。ただ、なにぶん、3通の要望・質問書をまとめて提出したことから分量が多くなり、全文を読みとっていただくのは難儀かもしれない。

 そこで、この記事では、3通の文書のエッセンスと思われる箇所を私なりに抽出して再掲することにしたい。NHK会長の選考基準、選考方法はどうあるべきかについての今後の議論の一助となれば幸いである。

 
迷走の根源的理由は経営委員の狭い人脈に頼り、組織を動かす資質に偏向した選考方法にある
 
経営委員会・監査委員会宛の要望・質問書の全文
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/keieiiinka_kansaiinkai_ate_yobo_situmonsho_20110222.pdf

 11 「情報漏えい」についていえば、服務準則が順守されるべきは当然ですが、委員会内で漏えいの「犯人捜し」のような調査が行われ、マスコミ取材も含め、視聴者の知る権利を阻害するような行き過ぎた調査、委員の自由な言論を委縮させるような調査にならないよう、充分に留意されることを要望します。

 12 「経営委員会が組織として決定した手順から外れた行動がなかったかどうか」の調査についてですが、それが、「新会長の選考にあたって経営委は昨年1221日、複数の候補者に優先順位をつけて打診していく方針を決定」したにもかかわらず、「当時委員長の小丸成洋氏は選考方針決定の2日前、安西祐一郎・慶応義塾前塾長に打診していた」という事実を念頭においた調査であるなら、事は経営委員会の合議、ガヴァナンスが有効に機能したかどうかに関わるだけに、当時の関係者を例外なく対象者として厳正に行われる必要があると考えます。

鉄道と放送の公共性をひとくくりにした牽強付会な適格性審議
 とはいえ、私たちは上記の2点を調査することで、会長選考が迷走した原因の根本的な検証になるとは到底考えません。
 むしろ、会長選考が任期切れ間際までもつれ、迷走した最大の原因は、貴委員会が経営委員の限られた知己や人脈に頼って候補者を探そうとされたこと、そのため、顔と人脈が広い経済界に限定された分野から候補者を選考するという流れになり、公共放送の長にふさわしい資質(豊かなジャ-ナリズム精神、放送文化に対する深い理解など)を二の次にして、大きな組織を牽引した経験、手腕が殊のほか、評価されるという歪み・偏向がまかり通る結果になったといえます
 このような歪み・偏向を正当化するために、「鉄道も放送も公共性において同じ」という牽強付会な説明をするのは、自らの選考の行き詰まりを取り繕う不条理な強弁に他なりません

 当会は従来から、他の市民団体やメディア研究者と共同で、NHK会長の選出方法を抜本的に開かれた形にするよう、貴委員会に要望してきました。ここで、「開かれた形」というのは、メディアや法曹関連の学会・各種団体などに推薦を募ると同時に、広く視聴者に推薦を募る公募制を採用するということです。詰めた議論で具体的な方法・手順を定める必要がありますが、こうした公募制の採用は放送法の改正を待つことなく、貴委員会の意思一つで可能であることを銘記していただきたいのです。

 翻って考えますと、受信規約は消費者契約法が適用される双務契約(契約当事者であるNHKと視聴者が権利義務を分かち合う契約)であるにもかかわらず、現行の規約では視聴者の義務ばかりを列記し、権利に当たる条項は皆無です。こうした義務条項に偏重した受信規約を放置したまま、貴委員会が受信料の収納率の向上をNHKに促すだけでは視聴者を代表して理事会を監督する任務を果たしているとは言えません。
 そこで、私たちは放送法の改正を待つことなく、実行が可能なNHK会長選考にあたっての公募制の採用を貴委員会が本腰を入れて今から検討されるよう、改めて強く要望するものです


機能不全の経営委員会の合議体制――問われる委員長代行の補佐責任
 安田経営委員長代行宛の質問書の全文
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/yasuda_iin_ate_situmon.pdf


  こうしたやりとりを読みますと、会長候補者に対して、就任要請の「議決をした報告」をしたのか、「議決前の打診」をしたのかをめぐって小丸経営委員長と他の経営委員との間で根深い認識のずれがあったことがわかります。人事のイロハに関わるこうした手順について、委員長と他の委員間で意思の疎通が欠如し、それが原因となって会長就任の要請を受諾した(と認識していた)人物に経営委員会の側から受諾の撤回を要請するという事態に立ち至ったのは、経営委員会の合議体制・意思疎通に重大な欠陥があったことを物語っています。こうした事態を招いた責任を貴職はどのように受け止めておられるか、ご説明下さい。

 当会は経営委員会の社会的信頼を失墜させた責任は経営委員長の辞任だけで済むものではなく、経営委員全員の責任、とりわけ、委員長を補佐する立場にあった貴職の責任は極めて重く、委員長代行を辞任されてしかるべきと考えています。これについて貴職のお考えをご説明下さい。

国威発揚の資質を買って会長を推す底なしの不見識 
 貴職は松本正之氏を会長に選出することに賛同された理由を次のように説明されています(下線は引用にあたって追加)。

 「(安田代行)<中略> これからの放送と通信の融合の時代に、国際戦略として世界に打って出なければいけない極めて高い技術力であると私は考えています。今後、21世紀の日本の世界への国威の発揚という意味においても、松本氏はたいへん大きな役割を果たしてくれるのではないか、と私は思いました。」

 こうした発言は、公共放送NHKに求められる使命をどう理解するかという根源的な問題に照らして、当会は幾重もの疑問を感じていますが、ここでは1点に絞ってお尋ねします。それは下線を付した部分、つまり、国威発揚の役割を期待して松本氏をNHK会長に選任することに賛同された貴職の見識についてです。

 国威・国益とどう向き合うのかは、歴史上、世界の公共放送がしばしば試練にさらされた根源的な問題です。そうした経験から得られた教訓は、国益を背負い、国威の鼓舞に加担することは放送に限らず、メディア一般の自死を意味し、国家と絶えず緊張関係を保ちながら、時々の国家の権力行使を監視するというメディアの使命の放棄、国益を大義名分にした戦争体制に翼賛する道に通じるということです。

 このようにいうと、国威=戦意の鼓舞と捉えるのは飛躍だと反論されるかもしれません。しかし、スポ-ツであれ科学であれ、それらが国家によって「国威発揚」、「世論統合」の手段として利用されがちなこと、それが偏狭なナショナリズムを培養する素地に使われがちなことは今日も変わりはありません。

 むしろ、言論報道機関という視点からいえば、メディアには国威・国益の名のもとに画一化を強要されがちな言論・文化の自由と多様性を保証する「広場」の役割が期待されています。
 このように考えますと、貴職がNHK会長に期待する資質として、国際戦略・国威発揚を自明のように挙げられたことに私たちは強い懸念を感じざるを得ません。貴職はこうした懸念をどのように受け止められるか、ご説明下さい。


井原監査委員宛の質問書の全文
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/ihara_iin_ate_situmon20110222.pdf

<公共放送としての使命の理解はこれからのことかも>で片付ける杜撰な選考
 貴職は指名委員会を代表して次期会長の資格要件に照らして松本正之氏の適格性を説明される際、「1番目の『公共放送としての使命の理解』はこれからのことかもしれませんが、『公共的サービス』についての使命は十分わきまえていらっしゃると思います」と発言されています。
 しかし、一口に「公共性」といっても鉄道が担う公共性と放送が担う公共性は異質なものであり、その組織の長に求められる資質もおのずと異なることは議論するまでもないことです。NHK会長に求められる第一義的な資質は放送メディアの長にふさわしいジャ-ナリズム精神(指名委員会の言葉でいえば「公共放送としての使命の理解」)がどの程度かということであったはずです。

 この点を「これからのことかもしれませんが」などとあいまいな説明でお茶を濁し、鉄道と放送の「公共性」をひとくくりにして候補者の適格性を判断するのは極めて杜撰な選考と言うほかありません。この点を貴職はどのようにお考えか、ご説明下さい。


非常勤の経営委員長の3.5倍の報酬に見合う職責を果たしたか?
 経営委員の報酬支給基準によれば、常勤経営委員・監査委員としての貴職の年間報酬総額は2,256万円になります(間違っていればご訂正下さい)。これは先のNHK会長の選考当時、非常勤の経営委員長職にあった小丸成洋氏の年間報酬総額(633.6万円)の約3.5倍に当たります。

 このことは経営委員長の職責に比して、常勤経営委員としての貴職の職責の重さがいかほどかを物語るものといえます。さらに、先のNHK会長選考に貴職が監査委員、指名委員会委員としての重責を担われた事実を考えれば、会長選考にあたって生じた上記のような失態の責任の相当部分が貴職にも帰すことを意味しています。

 かりに、小丸委員長の独断専行が混乱の一因であったとしても、会長選考の審議の中枢のポジションにおられた貴職には、そうした独断専行を抑止して経営委員会内のガヴァナンスを有効に機能させる責任があったはずです。まして、経営委員長一人の責任に帰せられない経営委員会全体の合議に瑕疵があったとすれば、貴職の連帯責任は一層、加重されます。ところが、今回のNHK会長選考の過程で露呈した経営委員会の失態、ガヴァナンスの機能不全について、貴職が何らかの具体的な責任をとられたという情報を私たちは寡聞にして知りません。

 しかし、当会はこれまでに指摘してきた貴職の幾重もの職務懈怠に照らせば、常勤の監査委員を自ら辞されても不思議ではないと考えています。かりに現職にとどまられるとしても、経営委員の報酬はすべて視聴者が支払う受信料で賄われていることに鑑みれば、貴職が受け取られる月額・期末報酬のうちの常勤委員加算分の一部なりともを返上して、視聴者に対する職務懈怠の責任を明確にされるよう要望します。この点について貴職の意思をお聞かせ下さい。


究極の問題は「選ぶ人の資質」、「選ぶ人の選び方」
 NHK会長の選考にかかわった中心的人物の以上のような言動を確かめていくと、公共放送の長にふさわしい人物を選ぶためには、「選ばれる人の資質」もさることながら、それ以前に「選ぶ人の資質」、「選ぶ人の選び方」を改めなければならないという結論に行きつく。

| | コメント (0)

視聴者コミュニティ、3通の文書をNHK経営委ほかへ提出~先のNHK会長選考の迷走に関して~

 「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は今日(222日)の午前中に、運営委員4名がNHKへ出向き、先のNHK会長選考に関する3通の文書を提出した。

 1.経営委員会・監査委員会宛:「NHK会長選考の迷走から汲むべき教訓は何か~開かれた会長選考に関する私たちの見解・要望・質問~」
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/keieiiinka_kansaiinkai_ate_yobo_situmonsho_20110222.pdf

<要旨>
 ①目下、経営委員会内で進められているといわれる会長選考の過程での服務準則の順守に関する調査のあり方についての申し入れと結果の公表について 

 ②先の会長選考が迷走した根本的原因は、NHKの会長に求められる資質をうやむやにしたまま、個々の経営委員の限られた知己・人脈に頼って人選を進めたため、選考に行き詰まったこと、そのため、最後は顔と人脈が広い経済界に対象が収斂し、大きな組織を牽引した経験を殊のほか評価するという歪み・偏向が生じた。こうした偏向を正当化するために「鉄道も放送も公共性において同じ」などという牽強付会な説明をするのは不見識である

 以下、<質問の要旨>
 ①上記の要旨②で述べたような当会の見解をどう受け止めるか?

 ②今回の人選の迷走を教訓にして、放送法の改正を待つまでもなく、経営委員会の意思で実行が可能な公募制の導入を、本腰を入れて検討すべきと考えるが、どう受け止めるか?

 2.安田経営委員長代行宛質問:「NHK会長選考ならびにNHKと政治の関係に関する貴職の見解についての質問書」
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/yasuda_iin_ate_situmon.pdf


<質問の要旨>
 ①選考の途上で候補者として名前が挙がった人物に対し、小丸経営委員長(当時)は「全員一致で議決したと報告した」と説明しているのに対し、井原委員ら各委員は「議決前の打診をしたと理解している」と発言している。人事のイロハともいうべきこのような選考手順の次元の違いについて経営委員長と監査委員他との間に大きな認識のずれがあったことが会長選考を混乱させた原因の一つと言えるが、これについて委員長を補佐する立場にあった安田氏はどのように責任を認識しているか?我々は辞任に値すると考えるがどう受け止めるか? 

 ②安田氏は松本正之氏をNHKの会長に選任することに賛同した理由として、「国威の発揚という意味で大きな役割を果たしてくれるものと期待して」と発言しているが、公共放送の長に国威発揚に協力する資質を期待するのは筋違いである。

 ③自民党の総務部会に出席して、経営委員会内に服務準則違反があったなどと発言するのは経営委員会の自律性を揺るがせ、政治との緊張関係をおろそかにする言動と思うがどうか? この種の説明は政治家に向かってではなく、視聴者に向かって行なうべきことであり、目線がずれていないか?

3.井原監査委員宛質問:「NHK会長選考に関わる貴職の職務遂行についての質問書」
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/ihara_iin_ate_situmon20110222.pdf

<質問の要旨>
 ①選考の途上で候補者として名前が挙がった人物に対し、小丸経営委員長(当時)は「全員一致で議決したと報告した」と説明したのに対し、井原委員ら各委員は「議決前の打診をしたと理解している」と発言
 している。人事のイロハともいうべきこのような選考手順の次元の違いについて委員長と監査委員他との間に大きな認識のずれがあったことが会長選考を混乱させた原因の一つと言えるが、これについて常勤の経営委員・監査委員・指名委員会委員を兼務した井原氏はどのように責任を認識しているか? 

 ②指名委員会を代表して経営委員会に、松本氏を選考した報告をする際、同氏の適格性に関して、「公共放送としての使命の理解はこれからのことかもしれませんが」などと報告をしたのは公共放送の長を選ぶ組織の中心人物として無責任かつ杜撰な職務遂行と考えるが、このような指摘をどう受け止めるか? 

 ③松本氏の公共放送に関する資質の情報も得ないまま、本人に面談もせず、即日議決をするというのは重大な職務懈怠に当たると考えるが、このような指摘をどう受け止めるか? 

 ④上記①②③で指摘した職務懈怠は、常勤の監査委員の職を辞して責任を明らかにするのに相当すると考えるが、かりに今の職にとどまるとしても、非常勤の経営委員長の約
3.5倍に当たる年間報酬を、受信料を原資にして得ている常勤職の重責に照らし、常勤職として加算された報酬のうちのしかるべき割合を返上して視聴者に対する責任を明確にすべきと考えるがどうか? 

 ⑤政党の部会に出席し、その場で服務規律違反の有無について調査を約束する発言をしたことについて。

| | コメント (0)

新旧政権政党の部会に出向いて政治家の「注文」を聞き取ったNHK会長、経営委員長、監査委員

追記 
この記事の末尾にさきほど
、〔参考〕監査委員は受信料で賄われる報酬に見合う仕事をしているか、を追加した。

新旧政権政党の部会に出向いたNHKと経営委員会の幹部

 NHKの来年度予算案の国会(衆参総務委員会での)で審議される時期になった。10年前のETV番組改ざんの時もそうだったが、この時期、NHK幹部が政権政党の放送関連部会(自民党の総務部会)に出席して予算案の事前説明を行うのが恒例になっていた。さらに、その機会をとらえて、予算以外の問題に関してNHKに対する干渉・圧力となるやりとりが交わされてきた。
 政権が交代した今回、どのような成り行きになるか、私も運営委員になっている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」の運営委員がネット情報で調査したところ、幾人かの関係国会議員のブログ記事から、松本新会長に加え、安田経営委員長代行、井原監査委員までが連れだって、民主党の総務部門会議、自民党の総務部会に出席し、予算案をめぐる質疑もそこそこに、先のNHK会長選考にかかわる質疑に時間が割かれたことが分かった。


これまでにわかった範囲の情報をまとめた文書のURLを貼り付け、皆様にお知らせしたい。

部会ではどんなやりとりが交わされたか
民主党総務部門会議・自民党総務部会に出席したNHK松本会長、安田経営委員長代行、井原監査委員と国会議員との質疑の模様 
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/nhkkaichoetc_no_seitobukai_homon_kiroku.pdf 
 
根源はNHK予算の国会審議・承認制にある
 ここにも記されているように、経営委員会が自律的に協議するNHK会長選考のあり方について、政権政党や特定の政党に属する国会議員の意見・注文を「聞き取り」、果ては質疑の中で一部経営委員の服務規律違反云々にまで議論が及び、経営委員長代行や監査委員が調査を約束するといった事態は、NHKならびにNHKの業務執行を監督し重要事項を決定する経営委員会の存立基盤である、政治からの自立と自律を揺るがす重大な問題である。なぜなら、メディアによって監視されるべき政治がメディアを監視したり、干渉したりする、またそれを甘受するのは、本末転倒の矛盾だからである

 それにしても、NHKの首脳がNHK予算案の国会審議が近づいた時期に新旧の政権政党の部会に出向き、予算案の説明に加え、それと無関係なNHK会長人事、果ては経営委員会の運営にまつわる問題についてまで、「注文」を受け、服務違反云々について調査の約束ごとをするのは政治から自立できない日本の公共放送のお粗末な姿をさらけ出したものといえる。

 このような実態を知らされると、政治家の「注文の聴き取り」ないしは「御用聞きの場」を生まざるを得ないNHK予算の国会審議・承認制を廃止し、独立した放送委員会に審議・承認の場を移すことを真剣に検討する必要性をますます痛感する。ただ、そうした放送委員会の設置は放送法の改正を待たなければならない。それまでの間は、視聴者の監視と批判(経営委員会の会合そのものの公開、ネット中継も含め)により、無定見・体たらくな経営委員会を正し、NHKの予算・決算の審議・最終承認を委ねる(現在も審議・承認は行なわれているが、国会に最終の承認権が委ねられている)のが次善の策と考えられる。

 今回の件について、視聴者コミュニティの運営委員会では、NHK松本会長他、部会に出席した当事者に事実と見識を質すことを協議中であるが、速やかにアクションを起こしたいと考えている。

〔参考〕監査委員は受信料で賄われる報酬に見合う仕事をしているか?

NHKのホームページにリンクされている経営委員会専用サイトに掲載されている「経営委員報酬支給基準」を見ると、経営委員の報酬(平成2041日施行)は常勤・非常勤、委員長・委員長代行ごとに次のように定められている。

 NHK「経営委員報酬支給基準」
 http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/about/pay.html 

 これによると、たとえば、常勤の経営委員で監査委員でもある井原委員の年間報酬は2,256万円(=月額報酬141万円×12+各期末報酬282万円×2)である。

 納税者が自分の納めた税金がどのように使われているのかに関心を向け、税金の受託者である政治家・行政当局者の行動を監視するのが民主主義社会の原点であるのと同じように、監査委員(他の経営委員ももちろんであるが)が受信料で賄われている、これだけの報酬に見合う、視聴者本位の仕事をしているのかどうかを監視するのが視聴者運動の原点といえる。この原点に立ち返って、先のNHK会長人事や今回の政党の部会回りにみられる監査委員の「仕事ぶり」を厳正にチェックする必要がある。


 

| | コメント (0)

NHK経営委員長代行の底なしの無定見

経営委員会に問われる見識――委員長辞任で終わりではないーー
 昨日(125日)開催されたNHK経営委員会で小丸成洋委員長は、今回のNHK会長選任の過程で社会を「騒がせた」責任をとって委員長を辞任することを申し出、了承された。その後、小丸氏は経営委員も辞任する旨、総務省に申し出たとのことである。
 この日の経営委員会では、当面、経営委員長は空席とし、委員長職務代行者(以下、「委員長代行」という)の安田喜憲氏(国際日本文化研究センター教授)がそのまま代行を続けることになったという。いずれ小丸氏を補充する委員が選任された折に後任の委員長が選出される模様である。

 今回の小丸氏の委員長辞任に関する私見は、私も参加する「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」が一昨日、経営委員会宛に提出した申し入れ(このブログの一つ前の記事に掲載)の中で述べたのと同じなので再論は止めることにし、ここでは当面、委員長代行を務める安田氏の、今回の会長選考をめぐる言動を見ておきたい。

 115日に開催された経営委員会後の経営委員長記者会見(ブリーフィング)の発言要旨がNHK経営委員会専用のサイトにアップされている。 この会見には小丸委員長のほか、安田氏と井原委員も同席している。以下は公表された会見録の全文である。

 平成23115日(土)(第1134回)小丸委員長、安田代行、井原委員

http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/briefing/briefing1134.html

委員長代行の支離滅裂な会長推薦理由
 この中で、記者から今回、松本正之氏をNHK会長に選んだ具体的理由を問われて、安田氏は次のように答えている(下線は醍醐が追加)。

 (安田代行) どうしてか、というのは、それぞれ委員によって違いますが、私が松本氏をふさわしいと思ったのは、これは福地会長も言っておられたが、NHKも鉄道も一瞬たりとも気の許せない仕事で、1秒でも気を許せば大事故に繋がります。放送も同じ。そうした同じような職種を体験されているということです。それから、日本のハイテク産業としての新幹線とNHKの持っている技術力、これは、これからの放送と通信の融合の時代に、国際戦略として世界に打って出なければいけない極めて高い技術力であると私は考えています。今後、21世紀の日本の世界への国威の発揚という意味においても、松本氏はたいへん大きな役割を果たしてくれるのではないか、と私は思いました

 鉄道であれ、空輸であれ、多数の人々と物資を運ぶ運輸事業は経済と生活の動脈であるとともに、乗客の生命をあずかる事業として、安全な運輸は生命線である。日本航空が起こした御巣鷹の大惨事やJR西日本が起こした兵庫・尼崎での列車脱線・転覆事故は、「安全の前に利益なし」の鉄則を私たちの記憶に刻み込んだ。最近、続発しているJR東日本のダイヤの混乱も多数の人々の職務と生活に甚大な影響をもたらした。この意味で運輸事業が安全で安定した運輸サービスを提供するという重大な公共性を担うことを否定する人は誰もいない。

 他方、NHKはどうなのか? NHKの事業に関して「1秒でも気を許せば大事故に繋がります」と言われて、意味を理解できるだろうか? NHKが担う災害報道には緊急性、正確性が求められることは言うまでもない。しかし、NHK1秒でも気を許すと、どんな大事故に繋がるのかーー鉄道とNHKの公共性を結び付けるための牽強付会な言い回しには、放送メディアに通じた人物とは思えない松本氏をNHK会長に選任した苦しい釈明の意図が透けてみえる。

 また、日本のハイテク産業としての新幹線とNHKの持っている技術力は、これからの放送と通信の融合の時代に、国際戦略として世界に打って出なければいけない極めて高い技術力という点で共通するという安田氏の発言はどうか。松本氏がリニア中央新幹線の構想づくりに貢献した人物という評価は受け入れるとしても、放送・通信の技術に通じた資質がNHK会長に求められる資質につながるわけではない。NHK会長になによりも求められるのは、言論・報道機関、多様な放送文化を担う組織の長にふさわしい独立不羈の知性である。この面での松本氏の資質を何ら語ることなく、技術面での鉄道と放送の共通性をこれまた、牽強付会に繋ごうとする安田氏の発言は支離滅裂といって過言でない。

国威発揚の役割を期待してNHK会長を推薦した底なしの無定見
 極め付きは、「21世紀の日本の世界への国威の発揚」のためにNHK新会長が大きな役割を果たすよう期待して松本氏を選んだという安田氏の発言である。NHKおよびその長たるNHK会長は国威発揚のために奮闘することが職務というなら、NHKを国営放送と同列にみるに等しい。しかし、NHKは国威を発揚する機関でも国益に仕える機関でもなく、国家と緊張関係を保ちながら、国家の権力行使を監視し、時宜にかなった警鐘を鳴らす機関である。また、国威・国益の名のもとに一元化されがちな言論・文化の自由と多様性を保障する「広場」の役割を担うものである。

 NHK経営委員会が今回の会長選で露呈した醜態、無定見は、小丸氏の委員長辞任で幕引きできるものではない。その反省を示す一つの機会として、小丸氏の後任にどのような委員長を互選するのか、注視したい。

 さらに、いえば、NHK会長の選任という重責を担う経営委員会のメンバーを今のように、総務省の放送担当部署がリストアップした候補者を政府がそのまま国会に提出し、衆参院の同意人事で決める仕組みのままでよいのかを早急に再考する必要がある。「メディアによって監視されるはずの政府・行政(議員内閣制の下で両者は一体化)が、メディアを監督する組織のメンバーを実質的に選ぶ権限を持つという自己撞着を根本から改革しなければ、今回のNHK会長選考で露見したような無定見な迷走が再発する恐れは多分にある。

| | コメント (0)

視聴者コミュニティ、小丸NHK経営委員長の解任を要求

視聴者コミュニティ、NHK松本新会長と経営委員会に申し入れ
 NHK会長選の選考経過が多くの報道機関で伝えられた。それらを総合すると、小丸氏を表の軸にして経済界の人脈で人選が進んだことは間違いなさそうだ。中には、政治が介在したという報道もあった。松本正之氏を新しい会長に選んで人事は落着したが、残された教訓は大変重い。今日25日に定例の経営委員会が開かれるが、そこで今回の会長選考のあり方がどのように総括されるのか注目される。

 私も参加している「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は「余韻が冷めないうちに」視聴者からタイムリーに意見を発信していく必要があると考え、昨日24日、松本新会長と小丸経営委員長に対して文書で申し入れをした。その全文を貼り付けるので、ご覧いただけると幸いである。

 申し入れの柱は、
 1.混乱と醜態をさらけ出した第一次的責任者としての小丸氏の辞任または解任を求める。
 2.所信表明の中で、鉄道とNHKの公共性は同じと語った松本新会長の見識を問う。
 3.今回の選考のあり方から浮き彫りになった、財界人の人脈を頼った閉鎖的な選考のいびつさ、悪弊を改めるため、改めて、公募制、開かれた選考方法(候補者の事前の所信表明など)を求める、

というものである。
 今日の経営委員会の前に全経営委員に届くよう、応対された朝比奈正彦・視聴者センター統括部長を通じて、経営委員会事務局に要望した。

経営委員の面識・人脈に頼った選考のいびつさが露見
 なお、選考の途中の111日に開かれた小丸経営委員長ほか3名の経営委員の記者会見の模様が経営委員会のHPに公表されている。そのURLを貼り付けておく。
 11112日の小丸経営委員長ほか3名の経営委員の記者会見録
 http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/briefing/briefing1133.html 

 これを読むと、候補者選考がいかにずさんなものであったかを垣間見ることができる。特に、安西氏に対し、小丸委員長が、経営委員全員の総意でもない段階で、あたかも全員一致の就任要請かのように伝えたことが混乱を招く原因であったことがわかる。
 さらに、会長候補を人選するにあたっては、資料やネットで調べたと小丸氏は語っている。むろん、それも情報収集の一つの手段ではあるが、福地現会長が任期切れを前にして早い段階で続投の意思はないと表明したのであるから、なぜもっと早くから、委員会で人選の基準を協議し、候補者選考の準備に取り掛からなかったのか、会長の任期切れの124日に間に合うように松本氏を選んだというだけで、経営委員が拍手で安堵し合っていてよいのかーーー職責に対する自覚の希薄さを嘆かわしく思うとともに、悪しき身内意識を見せつけられる思いがした。
 結局、今回のNHK会長選考のどたばた劇は、放送メディアの長にふさわしい人物を選ぶ上で、12人の経営委員の面識と人脈に頼る選考がいかにいびつで不条理なものかを露呈したといえる。こうした限界を乗り越えるには、選考の門戸を視聴者に広げ、多くの人々の英知を集約できる公募制の採用が不可欠である。さらにいえば、NHK会長を選ぶ経営委員の選び方にまで遡及した議論が必要である。

 **********************************************************


NHK会長 御中
NHK
経営委員会 御中

                           2011124
               
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                      共同代表 醍醐 聰 湯山哲守

     経営委員長の解任を求め、NHK新会長の資質を問います


独善による失態続きの小丸成洋経営委員長の解任を求めます

 私達は前NHK経営委員長・古森重隆氏の独善的で専制的な委員会運営を批判し、その罷免を求める中で、経営委員会のあり方、経営委員長の資質を次のように求めました。
 第一に、NHKへの外部からの干渉に対して、放送の自主自立を守る砦として経営委員会を機能させる高い見識と意欲の持ち主であること。
 第二に、公共放送NHKと民間営利企業との経営理念の違いについての明確な認識をもつ人物であること。

 NHKは、多元的で多様な言論・情報が飛び交う文化・ジャーナリズムの「広場」としての役割を担っています。視聴者への還元は、受信料値下げのための無原則な効率化・コストダウンなどではなく、第一義的に「知る権利」に応える調査報道や文化的に良質で多様な番組活動の充実であるべきと考えています。

 私達の要望を受け入れる形で、新経営委員会では、新経営委員長の選出に当たって、経営委員長に課する姿勢として、
合議制に基づく運営、透明性のある運営、視聴者への説明責任を果たす運営、が確認され、
執行部との緊張関係を維持しつつ良好な関係を保てること等が確認され公表されました(平成226月、第1121回経営委員会議事録)。
 はたして今回のNHK会長選出過程ではこうした確認事項が遵守されたのでしょうか。
 伝えられるところによると、前記確認は守られず、委員からの複数の推薦候補を検討するという形が取られたとはいえ、実質的には小丸委員長の独断による「打診」が先行し、候補者の資質や能力について委員会で比較検討された事は一度もないといわれています。相変わらずの密室での委員長の独断的選考であった事が判ります。
 その結果、経営委員の間から、内諾したとされる候補者が自らの交際費や住居など経済的処遇への関心が先立つ人物ではないかとの疑問や、公共放送を担う長としての資質に疑義が噴出し、受諾の撤回を求めるという醜態をさらけ出しました。
 一体、小丸経営委員長はNHK会長(候補)たる人物がどの様な資質を持つ人物だと考えて推薦したのでしょうか。なぜ「打診」をする前に委員会の中で候補者一人一人の資質を確認する作業、例えば候補者の所信表明などをしなかったのでしょうか。これでは実質的に罷免された古森前委員長と全く同じ手法です。
 独善的に委員会内部で討議もせず、密室で強引に決めようとし、失敗した小丸委員長の責任は極めて重いものです。直ちに責任を取って辞任するか解任されるべきであると考えます。

公共放送の長たるNHK新会長の資質を問います

 115日の経営委員会では、松本正之新会長が全員一致で決定したとたん、拍手がわき起こったとの報道があります。期限に追われ、たった数日で候補者を選び直し、その資質を問う事もなくどうして全員一致できるのでしょうか。松本氏は新会長の選出後の記者会見では、「公共機関であるJRの経営とNHKの経営とは『公共』という点で同じであるから自ら責任をもって職責を果たす事ができる」と述べております。

 NHKに求められている公共性とは、前述の如く多元的で多様な言論・情報が飛び交う文化・ジャーナリズムの「広場」を確保することにあります。第一義的に「知る権利」に応える調査報道や文化的に良質で多様な番組活動の充実であるべきです。国民の足を確保することを究極の使命とするJRとは全く異質、異次元な機関であります。早くも新会長の資質が問題として浮き彫りになりました。
 NHK会長や経営委員会が営利目的の企業経営と公共放送たるNHK経営とを同列にあつかい、一部の経営委員が主張するように、民放の補完機能しか求めないとすれば、それは日本のジャーナリズムの死滅です。言論の自由を保障する日本国憲法にも抵触する由々しい事態です。私たちはNHK新会長、経営委員会、経営委員長に対し、「NHK会長には、どの様な資質と見識が求められるのか、NHKはどの様な機関であるべきか」を公開の場で討論し、広く国民の意見を集約する事を求めます。

 最後に、昨年1122日、当会が今回の会長選出に当たって経営委員会に提出した「要望書」に記したように、「経営委員会が公募した会長候補の中から会長を任命する公募制を採用すること」および、その上で、合わせて要望したように、「会長候補について、指名委員会で「候補者」が絞られたあと、経営委員会で即決しないこと(少なくとも1週間をおくこと)。およびその間に「候補者」に「ジャーナリズムと放送の文化的役割についておよびNHK会長就任への抱負」等の所信を表明する機会を設けること」を今回の反省として、「余韻」がさめないうちに検討していただくよう重ねて要望します。   

                                以上

| | コメント (1)

「類は友を呼ぶ」の悪習を断ち切るべき~NHK会長選考を振り返って~

 「鉄道の公共性とNHKの公共性は同じ」と公言する新NHK会長の資質は?
 115日、NHK経営委員会は福地茂雄現会長の後任にJR東海副会長の松本正之氏を選任した。今回のNHK会長人事はこれで決着となったが、選考の過程を振り返って感想を一言でいうと、今回もまた、選ばれる人の資質と選ぶ側の見識が連動していることが浮き彫りになった。
 「今回もまた」というのは、前回200712月の会長選で財界人・古森経営委員長の主導で選考が進められる様を見て、このブログで、
 選ぶ人の見識が問われるNHK会長人事」(20071215日)
  http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_0dc2.html

というタイトルの記事を書いたからである。その中で次のように記した。
 

 「・・・・NHK会長の任命権を持つ経営委員会の長を務める古森重隆氏には民間経営と公共放送の経営の質的な違いを理解する能力・見識が欠けているようだ。上記のnikkansports com が伝えた『経済界のトップは業種が違っても経営できる』という古森氏の発言は、古森氏がNHKも民間産業と業種の違いでしかないと捉えていることをはしなくも露呈したものである。」

 今回、会長に選ばれた松本正之氏は会長受諾の感想を聞かれて、「鉄道とNHKは公共性の面から基本的な価値観は同じだ。これまでの経験を土台に経営に取り組む」(『毎日新聞』116日)と述べている。はたしてそうか?

 一口に、大組織を牽引した経験といっても、民間経営者に求められる手腕はつまるところ、企業価値の最大化に貢献する営利の追求という単一の価値であり、他のすべての価値はこの目標達成のための手段的従属的価値にほかならない。そこでは、いかに公益や文化が喧伝されても収益性の向上に寄与しないかぎりは、経営的には評価されない。鉄道も、経済活動と人の移動の大動脈として、安全で確実な輸送を使命とする点では公共性を担っていることは確かだが、そうした公共性は、尼崎での列車転覆事故、その遠因にもなったと指摘されている日勤教育・成果主義賃金体系、の例に見られるように、利益最大化のための効率性追求によって脅威にさらされているのが常である。

 他方、NHKは「皆様のNHK」を標榜するまでもなく、視聴者の多様な価値観、嗜好に配慮しながら、なおかつ、視聴者が国政に参加するにあたって必要な知見、また自分の人生を豊かにする糧になるような多様な教養・娯楽を提供することを使命にしている。そこでは、すべての視聴者を束ねるような単一の価値は存在しないし、ある価値を他の価値(たとえば国益や国威発揚)のための手段的要素とみなす発想が介在する余地はない(単一の価値で視聴者・市民を染め上げた例といえば、戦時下の大政翼賛報道である)。むしろ、不特定多数の市民に、「異なる意見との出会いの場」を提供し、市民の間に理知的熟議の機会を設けることによって民主主義の発展に寄与するという言論・報道機関としての重責を担っている。

 一口に「公共性」といっても内容が全く異質なことに言及することもなく鉄道とNHKを、古森流にいえば業種の違いかのように、ひとくくりにする人物に、NHK会長としての資質が備わっているのか、出だしから疑問符が付く。松本氏を新しい会長に選んだ経営委員や、新会長を迎えるNHK職員は選任されたばかりのNHK会長が開口一番、上のような発言をしたのをどのような思いで受け止めたのだろうか?

「類は友を呼ぶ」の悪弊を断ち切るべき
 とはいうものの、会長選任権を持つ経営委員の中には、小丸委員長をはじめ、大企業の社長、会長らが数名加わっている。もちろん、経済界の人物だから多様な価値観への理解、合議の作法が備わっていないと決めつけるつもりはないが、長く大企業のトップを務めれば、利益最大化の価値観、トップダウンの意思決定の流儀がしみ込んでいるのが自然であろう。そのような体質が否応なしに浸透した財界人にとって、しかも自分自身がNHKの意思決定・監督機関の長に就いた人物にとって、

 「松本氏は『鉄道で言えばお客さま。放送で言えば視聴者が相手の仕事』と共通性を論じたが、放送事業は政府などの介入を排し、視聴者に正確な情報を届けねばならない。明らかに異質なものだ。・・・・・ NHKの最高意思決定機関、経営委員会はアサヒビール相談役だった福地茂雄現会長に続き、再び経済人を選んだ。なぜ二代続けて経済人か。なぜジャーナリズムに造詣が深い人材に白羽の矢が立たないのか。 経営委の委員長も小丸成洋・福山通運社長が務め、その小丸氏が新会長選びで頼りにしたのが前委員長の古森重隆・富士フイルムホールディングス社長とされる。経済界という限られた範囲での候補者選びは、いびつにさえ映る。」(『東京新聞』2011118日、社説)


という指摘を受けとめる素地があるのか、心もとない限りである。

 さらに今回のNHK会長の選考過程で露見したのは、民間経営者の資質とNHK会長に求められる資質の混同にとどまらず、上の『東京新聞』社説や数紙の記事にも記されたように、具体的な人選まで経済界の人脈を頼って進められたと伝えられている点である。とりわけ、見過ごせないのは、松本正之氏の名前が経営委員会で出たのは115日が初めてと言われているにもかかわらず、松本氏はその2日前の113日に、JR東海の葛西敬之会長を通じて間接的に会長就任を打診されていたと明かしている点である(『毎日新聞』2011116日)。これが事実とすれば、大多数の経営委員が与り知らないところで、経済界の人脈を通じて松本氏への打診が進行していたことになる。これでは、あからさまな財界主導の会長選びであり、名実ともに「類は友を呼ぶ」である。

 経済人が委員長を務める経営委員会が会長選びの過程で見せつけた混迷とNHK会長に求められる資質への無理解が社会の目に露見した今回のNHK会長人事を教訓にして、NHK会長に選ばれる人物に求められる資質と、選ぶ人(経営委員)に求められる見識、選ぶ人を選ぶ方法・基準について、視聴者の間での関心が広まり、かつ深まることが望まれる。

 NHK職員も、候補者の名前(特に内部からの)が出るたびに、差出人不明の「怪文書」を流すという醜態を繰り返すのではなく、自分たちの組織の長としてどのような資質・見識の人物を望むのかを堂々と経営委員会ならびに視聴者に向かって表明するべきである。

| | コメント (0)

全国連絡会、NHK会長選で経営委に緊急の申し入れ

 ひとつ前の記事で取り上げたNHKの次期会長選出に関して、「開かれたNHKをめざす全国連絡会」は世話人・運営委員の間で緊急に協議をして取りまとめた申し入れ書を、本日(11日)午前中にNHK視聴者センターを通じてNHK経営委員会に提出した。
 申し入れに当たっては、全国連絡会の世話人2名が今日1030分に視聴者センターへ出向き、朝比奈統括部長と面会して、申し入れの趣旨を説明のうえ、文書を提出し、今日の午後130分から開かれる経営委員会に間に合うよう、届けてもらうことにした。
 以下は、申し入れ書の全文。

 **************************************************

                        2011111
NHK経営委員会委員長 小丸成洋殿

         NHK会長選出に関しての申し入れ

           開かれたNHKをめざす全国連絡会
             世話人:松田浩 隅井孝雄 醍醐聰 岩崎貞明

 NHKの自主、自立、健全な発展のために努力されておられる経営委員の皆様の日頃のご努力に敬意を表します。
 NHK会長の任期切れが迫り、新しい会長の選出が間近に迫っています。
現在NHKはじめ日本のメディアがデジタル化などに伴う大きな変動に直面しています。また激動が予想される国内外の情勢の中で、NHKなどメディアの動向が問われている時でもあります。日本のマスメディアの重要な一角を占めるNHKの会長にどのような人物が就任するかは、国民全体の重大な関心事です。
 しかし、NHK会長の選出は依然として密室の中でおこなわれていることは、私たちにとって極めて不本意なことと言わざるを得ません。その上、新聞報道では、会長職の交際費そのほか、自らの経済的処遇にことのほか関心を向ける候補者もいると伝えられますが、このような人物はNHK会長としては極めてふさわしくない資質の持ち主といえます。

 NHKは公共性の高い非営利の放送メディアです。そのトップの座には、NHKの公共性を自覚し、権力や財力におもねらず、高潔、清廉、かつ志ある人物が選ばれる必要があります。また国民の受信料によって運営されている以上、財政、経営にも的確な理念を持つ人物である必要もあるでしょう。

 私たちはかねてから会長選出の公開と透明化を、繰り返し要望してきましたが、ここ改めて以下のような申し入れをおこなうものです。

 1.経営委員会は、会長選出基準として、ジャーナリズムと放送の文化的役割についての高い見識を持ち、言論、報道機関の責任者として、放送の自主・自立の姿勢を貫くとともに、公共放送としての的確な経営理念を持つ人物であるか否かを、判断の柱にすべきである。

 2.経営委員会は、会長選出の審議経過を公開するとともに、最終決定の前に複数の候補者を公表し、なおかつこれらの候補者の会長就任への抱負など所信表明の機会を設け、市民、視聴者の判断材料を提供すること。

 3.経営委員会は、この機会に改めて今後の会長選出について、広く市民視聴者に呼びかける公選制を導入すべく、制度的な検討を行うこと。

                               以上


  **************************************************

 
この件については、今日の『朝日新聞』朝刊で候補者として打診を受けたA氏に対するインタビュー記事が掲載されている。その中でA氏は一部報道で伝えられたような会長受諾にあたって3つの点(交際費、都内での居宅、副会長人事)を「条件」として出したというのは事実無根で「説明を求めただけ」と話している。
 また、今朝の『読売新聞』もこの件を大きな紙面で伝え、経営委員会側からA氏に対して会長受諾の撤回要請があったものの、A氏はそれを拒否したと伝えている。その中で、A氏は経営委員会に対して上記3点について「質問書」を出したと伝えている。

 さらに、さきほど(1238分)配信された『時事通信』の報道によるとA氏は会長受諾の撤回要請をした経営委員会に不信感を募らせ、次期会長就任を拒否したと伝えている。

 詳しい事実関係は別にして、この問題について私は次のように考えている。

1.会長就任受諾にあたっての「条件」なのか「質問」なのかは、明確にされる必要があるが、どちらであれ、「関心の向け所」はその人物の資質、見識を表すことに変わりはない。

2.放送メディアの長にふさわしい見識の持ち主かどうかを充分、検討せず、A氏にNHK会長職への就任要請をし、後で受諾撤回を要請するという前代未聞の失態を演じた経営委員の責任は極めて重い。

3.今回のような混乱を起こす究極の原因はNHK会長の選出を極めて閉鎖的に進める悪しき慣行に帰せられる。会長候補にどのような資質を求めるのか、候補に挙げる人物はそうした資質に合致する見識の持ち主なのかどうか、各候補者の所信を事前に公開し、視聴者に判断と意見発信の機会を開くことが不可欠である。

| | コメント (2)

より以前の記事一覧